天災兎と人喰いトカゲ 〜Armour Zone〜   作:TearDrop

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お待たせしました。
今回から第2章に突入します。新しい物語が始まるので、今後とも気を引き締めて、皆さんに少しでも楽しんで頂けるように頑張りますので今後ともよろしくお願いします。

それでは、第2章スタートです。

お気に入りと評価が増え、評価バーが黄色になっていて、僕の中のアマゾン細胞が溶原性細胞になってしまいました←


第2章 DIE SET DOWN
EP.14 Neo


 目の前を飛び交う無数の銃弾。

 飛び散る鮮血と肉片。命だった者たちが、そこら中に転がっていく。

 赤い獣と緑の獣。二体の獣は命を削り合い、血を流しながら戦っていた。赤い獣は緑の獣を切り裂き、幼き少年の下へ歩んでくる。

 しかし、鎧の様な物を纏った女性達が放つ銃弾が赤い獣を撃ち抜いていく。血を噴き出す赤い獣は、それでも少年の下へ歩んでくる。

 緑の獣は少年の下へ行かせない様にしているのか、赤い獣に飛びかかると地面に押し倒し、腕の刃で赤い獣の緑色の複眼を切り裂いた。

 目から血が噴き出し、切り裂かれた目を抑えながら赤い獣は苦しみ、悲痛な叫びを上げながらそこら中を転がり回る。

 少年の名を叫びながら苦しむ赤い獣。

 それを見下ろす緑の獣は、ゆっくりと自分の下へ歩みを進める。少年は手に持っている物を抱えながら緑の獣を見つめる。

 緑の獣は少年が持っている物を見た途端、固まる。少年が持っていた物はーーー何処の誰かも知らない、細い女性の腕だった。

 

 ◇◇◇◇

 

 街灯が照らすだけの暗い夜道。

 フードを被る少年は、小さい頃の夢を思い出しながら赤いバイクに跨っていた。耳には小さなインカムらしき物がはめ込まれており、仲間である少女から指示を待っていた。

 少年の名はーーーチヒロ。今では都市伝説として扱われている〝アマゾン〟に育てられた少年。小さい頃の記憶は余り覚えておらず、気づいたら仲間である少女と共に行動していた。

 チヒロの任務は、都市伝説と扱われているアマゾンの駆除だった。幾ら都市伝説と扱われていても、各地でアマゾンが発見されている。

 チヒロと少女は自分達を保護したIS学園の教師である織斑千冬からの指示を受け、アマゾン駆除を行なっている。

 そしてもう一人、チヒロ達の同行者が来ているが恐らくは二人の監視も含まれているのだろう。すると、チヒロのインカムに少女の声が聞こえる。

 

『ーーーチヒロ、アマゾンを発見した。例の合流地点に追い込む。後は頼むぞ』

「分かったよ、マドカ……」

 

 少女ーーー織斑マドカの指示を受け、チヒロは赤いバイクーーーネオジャングレイダーを駆り、合流地点へと向かった。

 そして、合流地点へと着いたチヒロはジャングレイダーを降りると丁度良いタイミングで白い機体ーーーサイレント・ゼフィルスを纏ったマドカが豹に酷似したアマゾンと共にチヒロの下へ現れた。

 チヒロは背負っていたバッグから赤い鳥の顔を模したベルトーーーネオアマゾンズドライバーを腰に装着すると、注射器の様な物を取り出しドライバーのスロットに差し込み、スロットを上げると注射器の中の液体をドライバーへと注入する。

 そして、チヒロの目は赤く光りーーー

 

「ーーーーアマゾンッ!」

 

 《NEO…!》

 

 次の瞬間、チヒロの身体は赤い炎に包まれていき、爆風が三回巻き起こる。

 そして炎が消えた瞬間、其処に居たのは血管のような赤い模様が入った青色の体表面に垂れ目状の赤い複眼。その上から黄色のバイザーと銀色の装甲を全身に装着した戦士ーーーアマゾンネオが立っていた。

 そして、ネオが走り出すと現れたヒョウアマゾンに向かって走り出し、ラリアットを叩き込む。地面に倒れるヒョウアマゾンに追撃を叩き込んでいくネオ。

 

「ガァアアアアアアッ!!」

 

 ヒョウアマゾンはネオの猛攻を防ぐ事が出来ず、次々と攻撃を叩き込まれていく。

 しかしヒョウアマゾンはネオの攻撃の隙を突き、ネオの腹部に攻撃を叩き込む。怯むネオだったが、ドライバーに嵌め込まれている注射器ーーーアマゾンズインジェクターのレバーを押し込むと、ドライバーから電子音声が流れる。

 

 《Blade…Loading…!》

 

 その瞬間、右腕のパーツが開くと右腕からアマゾン細胞が変異した武器ーーーアマゾンネオブレードを展開すると、ヒョウアマゾンを切り裂いていく。

 黒い血を噴き出すヒョウアマゾンは成す術もなく、ネオの攻撃で切り裂かれていくが負けじとアマゾンネオブレードを掴む。

 しかし、ネオはそのままヒョウアマゾンの腕ごとブレードで切り裂いた。黒い血を噴き出すヒョウアマゾンは地面に倒れ、ネオはブレードをヒョウアマゾンに突き刺していく。

 まるで今までの恨みを晴らすかの様に、自分の中の怒りを全てぶつけるかの様にーーー。

 気づけばヒョウアマゾンは形を残したまま絶命していた。ネオはブレードを上げ、ドライバーからインジェクターを取ると変身を解除する。

 

「ハァ……ハァ……」

「……チヒロ、大丈夫か?」

「マドカ……俺、またやっちゃった……このアマゾンは〝母さんを殺した奴〟じゃないのに……!」

 

 チヒロの言葉に、マドカは顔をしかめる。すると、二人の下に蒼いISを纏った少女ーーーセシリア・オルコットが着地した。

 

「チヒロさん、マドカさん。任務ご苦労様です。お疲れでしょうが、学園に戻り次第メディカルチェックがありますのでお忘れなく」

「……分かったよ」

「それと、マドカさん。メディカルチェックの後、織斑先生がお話があるそうですわ。」

「あぁ……」

「アマゾンの死体は調査班が回収しますので、私たちは戻りましょう」

 

 セシリアはその場から飛翔し、飛び去る。マドカもセシリアを追いかける様に飛び去り、チヒロもネオジャングレイダーに跨り、その場を去る。

 

 ◇◇◇◇

 

 ーーーIS学園。

 アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成されるーーーが、もう一つ理由がある。

 三年前の〝ある出来事〟により、アマゾンの存在が知られてしまった。しかし、アマゾンの存在は今では都市伝説として扱われているが、人知れずアマゾンの被害は絶えない。

 だが、アマゾンに対抗する為にISを用い、アマゾンの駆除を試みている。その事実を知るのは、数人しかいなかった。

 IS学園の教師である織斑千冬、山田真耶。IS学園の生徒であるセシリア・オルコット、織斑一夏。一夏に関しては、三年前にアマゾンを目の当たりにしている為である。

 

「はい、これでメディカルチェックは終了です。お二人とも、今日はゆっくり休んでください」

「はい……お休みなさい」

 

 メディカルチェック後、チヒロとマドカは医療室から出る。マドカはチヒロと分かれ、千冬の下へ向かうとチヒロは与えられた部屋へと戻る。

 チヒロとマドカがこのIS学園に来てから一週間が立っていた。色んな事情で、チヒロとマドカはこのIS学園にやって来た。

 初めて織斑千冬と会った時は呆然とした。何せ、マドカと千冬が余りにも似ていたからだ。しかし、マドカや千冬にどういう関係なのか聞いても何も答えてはくれなかった。

 言えない事情でもあるのだろうと、チヒロはそう考えることにした。自分の部屋に戻ると疲れからか、ベッドに倒れる様に眠りについた。

 

 そして場所は変わり、モニタールーム。

 其処には織斑千冬とマドカが、大きなモニターに映る画像を見ていた。其処には、先ほどの戦闘でネオが駆除したヒョウアマゾンの死体が映っていた。

 

「アマゾンの事は、束や一夏から聞いている。本来なら駆除されたアマゾンは泥となると……。しかし、この三年で駆除してきた内の数体は、〝形を残したまま〟死んでいる。心当たりはあるか?」

「……私が知っているのは、死んだら泥となるアマゾンだ。形を残したまま死ぬアマゾンなんて聞いたこともない。もしかすると、新しいアマゾン……」

「念の為、束にもこの事は伝えてはいるが、あいつらも何かと忙しい。結果が来るまで時間が掛かる。それとーーーチヒロの事だが……新種のアマゾンから検出された細胞とチヒロの中の細胞が一致している。これは何か関係がーーー」

「違うッ。チヒロは何も関係ない……チヒロはただの〝人間〟だ……」

「ーーーそうか。私は別に、チヒロを駆除しようとは思っていない。だが、亡国機業がチヒロを狙っているのは確かだ。〝元〟亡国機業のお前が何故チヒロを連れて此処に来たのかは深く聞くつもりもないが、いつか話してもらうぞ?」

「……分かっている、姉さん」

 

 ◇◇◇◇

 

 ーーー翌日。

 チヒロとマドカ、セシリアと一夏はアマゾンの被害が起こったと報告があった現場までやって来た。

 街から少し離れた場所にある家屋の前に車とネオジャングレイダーを止めると、既に家屋の前に調査班が立っていた。

 

「お疲れ様です。被害状況は?」

「既に家屋の中は確認しましたがアマゾンの姿はありませんでした。しかし此処から少し離れた場所にある教会の方へ血痕が続いている為、恐らくは街へは行っていないでしょう」

「そうですか……私達はこのままアマゾンの捜索へ向かいます。後の事はお任せしますわ」

 

 セシリアは調査班にそう告げ、チヒロ達を連れて血痕が続く教会へと向かった。血痕を追ってやって来たチヒロ達は大きな教会の扉の前に立つ。扉にはベッタリと血痕が付いており、セシリアが指示を出す。

 

「チヒロさんと一夏さんは裏口から、私とマドカさんはISを纏って上空から中を偵察します」

「分かった。チヒロ、行こう」

「うん……!」

 

 チヒロは一夏と共に教会の裏口へと向かい、セシリアとマドカはISを纏い、空中へと飛ぶ。裏口へとやって来たチヒロと一夏。

 一夏が扉を開け、中を確認するとアマゾンがいないか調べる。中にはアマゾンの姿は無く、一夏がチヒロに頷くとチヒロは裏口から教会へと入り、それに続いて一夏も中へ入っていく。

 教会の中は既に使われていないのか、あちこちに椅子やろうそくが倒れていた。祭壇やカーペットも埃だらけであり、長年使われていないのが分かった。

 

「チヒロ、どうだ?アマゾンの気配はするか?」

「うん……多分、二階にいる。それに、血の臭いも……」

 

 チヒロと一夏は二階へ続く階段を上がり、二階の待合室らしき部屋の前に立つ。そして、インカムでセシリアとマドカに通信を送る。

 

「二人とも、待合室の前にいるけど、空から何か見える?」

『えぇ。待合室の中にアマゾンが居ますわね……人を食べていますわ……』

『チヒロ、こっちは何時でもいける。準備はいいな?』

「うん……!」

 

 チヒロと一夏は頷き、扉を開ける。クワガタに酷似したクワガタアマゾンはチヒロ達に気づくが、いち早くチヒロがネオアマゾンズドライバーにインジェクターを装填し、スロットを上げる。

 

「アマゾンッ!!」

 

 《Neo…!》

 

 インジェクターを押し込み、アマゾンネオへと変身したチヒロ。

 爆風で窓ガラスが割れ、一夏は廊下へ吹き飛び、クワガタアマゾンは怯む。ネオはクワガタアマゾンと共に窓ガラスを突き破り、地上へと落下する。

 地上に叩きつけられたクワガタアマゾンとネオは立ち上がると、ネオがすぐさまクワガタアマゾンに攻撃を叩き込んでいく。

 クワガタアマゾンも応戦するが、ネオは攻撃を避けていくとインジェクターを押し込む。

 

 《Blade…loading…!》

 

 アマゾンネオブレードを生成し、クワガタアマゾンに斬りかかる。

 クワガタアマゾンは切り裂かれ、黒い血を噴き出す。ネオはさらなる追撃を叩き込もうとするが、クワガタアマゾンの腹部にある肢がネオに突き刺さる。

 

「ぐっ……!」

 

 ネオが膝を付いた瞬間、クワガタアマゾンがネオに攻撃を叩き込んでいく。一気に形勢が逆転し、クワガタアマゾンの猛攻がネオを襲う。しかし、それを阻止する白い刃。

 

「チヒロ、大丈夫か!?」

「一夏……!」

 

 白いISーーー白式を纏った一夏が、雪片二型をクワガタアマゾンに斬りかかる。クワガタアマゾンは雪片二型の斬撃を避けていく。

 それでも、クワガタアマゾンに斬りかかる一夏だったが、彼は白式を纏ってまだ数日しか経っていないのである。まだISの技術が未熟である一夏が勝てる相手ではなかった。

 ネオもアマゾンネオブレードで、一夏の雪片二型と共にクワガタアマゾンに斬りかかるがクワガタアマゾンはそれを避け、ネオに追撃を叩き込む。

 しかし、一夏とネオをサポートするかのように上空から一発の蒼い銃弾がクワガタアマゾンの右肩を撃ち抜いた。

 

「セシリアッ!?」

「マドカさんっ!」

 

 次の瞬間、マドカのサイレント・ゼフィルスの武装の一つであるライフルーースターブレイカーがクワガタアマゾンの腹部を撃ち抜いた。

 黒い血を噴き出すクワガタアマゾンは、フラフラとその場から逃げ出そうとする。

 

「ま、待てッ!」

「おい、チヒロッ!」

 

 トドメを刺そうと、ネオがクワガタアマゾンを追いかけようとした時だった。クワガタアマゾンの先に黒い服に身を包んだ一人の少女が立っていた。

 

「此処は危険だ!逃げろっ!」

「アイツは……!?」

 

 ネオが少女に叫ぶが、マドカだけは違った。少女に見覚えがあったからだ。何せ、その少女はーーーー。

 

「ーーーターゲット、確認」

 

 三年前の戦いで、ハルカ達と共に行動していた、元亡国機業の構成員ーーーイユだったからだ。イユは左腕に装着されている鳥の顔を模した腕輪のスイッチを押すと、静かに呟いた。

 

「ーーーーアマゾン」

 

 何処からか、カラスの鳴き声が響き渡る。

 その瞬間、イユの身体は炎に包まれていき、炎が消えると其処にはカラスに酷似したアマゾンーーーカラスアマゾンが立っていた。

 そして、カラスアマゾンはクワガタアマゾンに向かって走り出した。

 クワガタアマゾンは腹部の肢でカラスアマゾンに襲いかかるが、カラスアマゾンは跳躍すると右足でクワガタアマゾンの頭部を蹴り飛ばした。

 瞬殺だった。ネオが苦戦したアマゾンを一瞬で駆除したのだから。

 

「ターゲット、排除」

「君は一体……?」

「もしかして敵か……?」

 

 ネオと一夏が武器を構えるが、セシリアがそれを制止した。

 

「お待ちなさい、二人とも……彼女は敵ではありません」

「だけど、あの子もアマゾンじゃないか」

「アマゾンだからと言って、悪い人ばかりではありません。実際、チヒロさんは私たちの味方ですし、決してアマゾン全員が敵だとは限りませんわ」

「……そうだな。悪かった……君、一体誰なんだ?」

「私はイユ。篠ノ之束の命を受けて、お前達のチームに加入する事になった」




如何でしたでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。此処で少し皆様にご報告があります。第2章では本来、原作に合わせて物語を作成しようと思っておりました。
ですが、考えていたシナリオだと大幅な原作改変になってしまう事になる為、第1章に引き続き、同じように第2章もオリジナルストーリーで進めていく事になりました。このような結果になってしまって申し訳ないです。

次回も少し時間が掛かりますが、どうかお楽しみに、

もしよろしければ、ご意見・感想・評価・お気に入り登録・批評をよろしくお願いします。

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