天災兎と人喰いトカゲ 〜Armour Zone〜 作:TearDrop
アマゾンズseason2終わってしまいましたね。千翼とイユはあれで良かったんだと思います。最後に千翼はイユの笑顔を見ることが出来、仁さんは千翼を送ることが出来たんですから。
そして、この作品はまだまだ続きますのでよろしくお願いします。
※今回の番外編は、仮面ライダーアマゾンとのクロスオーバー作品になっております。そういったクロスオーバーが苦手な方はお戻りください。尚、オリジナル設定等が含まれますのでご注意を。
EP.8.5
時間は、ハルカ達がアルファと共にISを纏ったシグマタイプーーイユと戦闘を開始する一時間前。ハルカ達は蒸し暑いジャングルを歩いている時だった。
「ハルカ〜おんぶして〜……束さん歩き疲れちゃったよぉ……」
「暑いからヤダよ。でも、流石に暑すぎるね……スコールでも降れば、止んだ後に涼しい風が吹くらしいけど、今のところ雨雲は見えなーーー」
「ん?どうしたのハルーーー」
「お二人ともどうしまーーー」
ハルカが絶句しているのを見た束とクロエは、ハルカの視線の先にあったものに絶句した。目の前に広がっていたのは、既に風化した遺跡だった。
まるで古代遺跡のような外観に、建物などはボロボロに風化していた。ハルカ達は歩みを進め、遺跡を探索し始める。
「これって……昔の古代遺跡とかかな?」
「そうだねぇ。束さんはこういうのには興味ないけど、調べてみる価値はありそうだね」
「ハルカさん、束様、これを見てください。これはもしかすると……」
クロエが見つけたのは、大昔に描かれたであろう壁画だった。よく見ると、トカゲのような戦士と下半身が巨大な顔をした怪物と戦っている絵が其処には描かれていた。
ふと、束がトカゲのような戦士の絵を見て呟いた。
「う〜ん……これって雨宮ジンが変身した時の姿に似てるねぇ」
「アマゾンアルファに似てる戦士……でも、腕輪をしてるって事はアルファじゃないし、何処となくシグマにも似てるね」
「色も違いますし、強いて言えば、ハルカさんが変身したアマゾンオメガにも何処となく似ていますね。それにしても……この怪物は何なのでしょうか」
クロエが言う、怪物の絵は赤い身体に下半身には大きな顔があり、それに対峙するアルファとオメガに似ているトカゲの戦士。
三人が壁画を見て悩んでいると、後ろの方からハルカ達を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと其処に居たのは、白い髪に白い髭を蓄えた老人だった。
「お主達、ここで何をしておる?」
「あっ、ごめんなさい。怪しい者じゃないです。僕たち、少し探し物をしていて……途中でこの場所を見つけて……あの、ところで貴方は?」
「儂はこの遺跡に住んでおる〝バゴー〟という者じゃ。お主達は?」
「僕はハルカって言います。この人は篠ノ之束で、そしてこの子はクロエ・クロニクルって言います。あの、ここは一体何なんですか?」
「ここはかつて、古代インカ帝国があった場所じゃ。そこに描かれている壁画は、かつてこの村の戦士ーーアマゾンが悪しき怪物ーー十面鬼と戦った時の絵じゃ。〝ギギの腕輪〟と〝ガガの腕輪〟を巡っての激しい戦いにアマゾンが勝ち、この村は平和になった」
「戦士アマゾン……僕たちの知ってるアマゾンじゃないね」
「そうだね。もしかしたら、束さん達が戦ってるアマゾンと大昔のアマゾンは別の存在なのかも」
「少しよろしいでしょうか。バゴー様が言う、〝ギギの腕輪〟と〝ガガの腕輪〟とは一体何なのでしょうか?」
「そうじゃな……簡単に言えば、インカ超古代文明のオーパーツじゃ。合体させることで超古代文明のパワーを発揮する事ができ、超人的な力を得る事ができる代物じゃ」
ハルカは壁画に視線を移す。
確かに、戦士アマゾンと十面鬼の腕には腕輪が嵌められている。大昔に存在した戦士と怪物はこの腕輪を巡って対立していた事が分かったハルカ達。
「でも、一度でいいからその腕輪を見てみたかったねぇ。腕輪って今でもあるの?」
「〝ガガの腕輪〟はもうこの世にはない。今代のアマゾンと今代の十面鬼の戦いの後、〝ガガの腕輪〟は消えたと言われておる。不思議な事が起こらん限り、二度と見ることはできんじゃろう」
バゴーはそう言うと壁画から離れ、その場から歩き出す。ハルカ達はバゴーについて行くと、歩きながらバゴーに話しかける。
「あの、〝ガガの腕輪〟がこの世に無いのなら、〝ギギの腕輪〟はどうなったんですか?」
「〝ギギの腕輪〟は代々受け継がれておる。数十年前に儂が今代のアマゾンに〝ギギの腕輪〟を授けた。彼は今でも世界の平和を守っておることじゃろう」
「もしかして、今代のアマゾンさんはこの村で……?」
「そうじゃ。彼はこのアマゾンで育ち、アマゾンとして十面鬼の悪事を阻止したのじゃ。その後の事は儂には分からんが、この世界が平和だという事は彼は世界を守ったのだろう」
ハルカ達が知らない出来事。
そんな出来事が数十年前に起こっていたとは、束ですら知らない事だった。一度でいいから、バゴーの言う彼に会ってみたいと思ったハルカ。
ふと、遠くの方から機械音が聞こえてきた。恐らくIS部隊がシグマを探しているのだろう。一刻も早くシグマを見つけなければならない。
ハルカ達がバゴーに話しかけようとした時だった。
突如地面から黒いモヤのような物が現れ、モヤは人型へと姿を変えていく。その数は多くて五つ。
そしてモヤは消え、その場には五体の異形が其処に居た。クモの異形ーークモ獣人。コウモリの異形ーー獣人吸血コウモリ。カニの異形ーーカニ獣人。ハチの異形ーーハチ獣人。そして嘗て戦士アマゾンと戦い、敗れた十の顔を持つ異形ーー十面鬼ゴルゴス。
「ゴルゴス!何故お主が此処に……!?」
「我々ゲドンはこの時を待っていたのだ!嘗てギギの腕輪を奪ったアマゾンに復讐する為に……!」
「復讐じゃと……!お主は何処までやれば気が済むのじゃ!お主は野心に囚われすぎておる!」
「ええい、黙れ!!獣人達よ、やってしまえ!」
ゴルゴスは獣人達に指示すると、獣人達はハルカ達に襲いかかる。
ハルカは獣人の攻撃を避け、束達を下がらせた。クモ獣人の攻撃を避け、ハルカは手に持っていたアマゾンズドライバーを装着し、グリップを捻る。
「アマゾンッ!!」
《Omega…!Evolu…E…Evolution…!》
緑色の炎と爆風で獣人達を吹き飛ばし、ハルカはアマゾンオメガへと姿を変える。その姿を見たゴルゴスとバゴーは驚愕した。姿こそ違えど、アマゾンに似ていたからだ。
「アマゾンだと!?何故お前がその姿に……!」
「彼もまた、戦士アマゾンだというのか……?」
「生憎、僕はあなた達の知るアマゾンとは違います。だけどこの状況は見過ごせない。十面鬼!僕が相手だ!」
「ふんっ!我々が用があるのはアマゾンだけだ!お前などに興味はない!獣人達よ、やってしまえ!」
獣人達はオメガへ襲い掛かるが、オメガは獣人達の攻撃を避けていき、拳と蹴りを叩き込む。しかし、今まで戦ってきたシグマタイプとは違って、獣人達は油断ならない存在だった。
獣人達の攻撃がオメガに直撃する度、痛みと共にアマゾンに対する獣人達の復讐の思念が伝わってきた。
ーーアマゾンに復讐を……!
ーー貴様のせいで我々は……!
ーー我々は蘇った……!
ーー人間を食わせろ……!
獣人達の怨念とも言える思念が、獣人達の攻撃によって身体中に伝わってくる。
オメガに着々とダメージが通るが、オメガは攻撃を振り払いグリップを引き抜くとアマゾンサイズへと生成し、獣人達を切り裂いていく。
しかし獣人達に痛みは無いのか、切り裂かれてもお構いなしにオメガにダメージを与えていく。
「我々に実体はあっても、貴様のダメージなど通らない!我々はアマゾンに復讐する為に蘇った残留思念!貴様の攻撃など、我々には通用しない!!」
「そんな……!」
「そんなの卑怯です……!」
「卑怯で結構だ。我々はアマゾンに復讐する……その為にも、お前達は邪魔だ!!」
ゴルゴスが腕を振るった瞬間、下半身の顔面部分から火炎を放出し、オメガに襲いかかる。火炎によって周りを包まれるオメガ。
このままではやばいと感じたオメガはすぐさま空中へ跳躍したが、巨体を浮かせたゴルゴスがオメガに突進し、地面に叩きつける。
地面に叩きつけられたオメガに対して、ゴルゴスは更に顔面部分から溶解液を放つ。オメガはすぐさま溶解液を避け、自分が倒れていた場所に視線を移す。
溶解液によって地面は溶け、ゴルゴスの恐ろしさを実感した。
「くっ……!迂闊に近づいたらやられてしまう……それなら!」
オメガはグリップをアマゾンウィップへと生成し、ゴルゴスに叩きつけていく。
数発の攻撃を喰らったゴルゴス。
しかし、ゴルゴスはアマゾンウィップを掴み、オメガごと地面から空中へと放り投げると、自分の下まで引き寄せ拳を一発ーーーオメガへ叩き込んだ。
「ガッーーーーーー」
余りの衝撃にオメガは目の前が真っ暗になるのを感じたが、地面に落ちた瞬間に目が覚める。ダメージが大きすぎたのか、オメガは動けずにいた。
ゴルゴスは獣人達に指示すると、獣人達はオメガに向かって走り出し、オメガに襲いかかる。未知の敵との戦いに慣れていないオメガは苦戦を強いる。
切り裂かれていくオメガは、黒い血を流しながら獣人達に蹂躙される。
そんなオメガの姿を見てる事しかできない束達。ふとクロエが両手を合わせる。自分に出来るのはこれくらいしか無い。祈る事しかできない。
ーーーお願いです……神様や悪魔でも構いません。どうかハルカさんを……助けてください!
その時、不思議な事が起こった。
突如、遺跡中に声が響き渡った。獣のような叫び声と共に、空中に浮遊していたゴルゴスが謎の攻撃によって切り裂かれた。
一体何が起きたのか、ゴルゴスと獣人達は分からなかった。それはオメガ達も一緒だった。しかし、オメガの前に立つ一人の戦士を見て、バゴーやゴルゴスは驚愕する。其処に居たのはーーー
「「アマゾンッ!?」」
ーーー嘗てゴルゴス率いるゲドンと戦い、そしてガランダー帝国を壊滅、真のゼロ大帝を倒した英雄である戦士〝アマゾン〟が其処に居たのだ。
壁画で見た絵と全く同じ姿をしており、まさしくトカゲの戦士だった。
迷彩色の身体に、ド派手な背鰭や額から生えたツノ、垂れた赤い目や白いマフラー、そしてブーツ。腰のベルトもオメガやアルファ、シグマが装着しているアマゾンズドライバーと似ており、銀色の腕輪もオメガが付けているレジスターと酷似していた。
アマゾンは振り返り、オメガに手を貸す。オメガは一瞬躊躇したが、アマゾンの手を取り再び立ち上がる。
「あなたが、アマゾン……?」
「アマゾン、声、聞こえた。助けてっていう女の子の声。アマゾン、助けに来た」
「女の子の声……もしかしてクロエが?」
「まさか……くーちゃんがアマゾンを呼んだの?」
「わ、私は唯、ハルカさんを助けてって祈っただけです……まさか、本当に来てくれるなんて……」
クロエの祈りは、確かにアマゾンへと届いたのだ。
アマゾンはクロエの下へ歩むと手を組み、小指だけを立てる。その仕草は嘗て、アマゾンが幼い少年〝マサヒコ〟から教わった〝トモダチ〟の印である。
「アマゾン、クロエ、トモダチ。アマゾン、トモダチ、必ず助ける」
「トモダチ……」
クロエもアマゾンの見よう見まねで手を組み、トモダチの印をアマゾンに見せる。アマゾンは頷き、オメガに視線を向ける。言葉は交わさなくとも、想いは同じであった。オメガとアマゾン、二人の戦士が今、蘇ったゴルゴスに立ち向かう!
「アマゾンライダー……!お前に倒された我々の恨みを思い知れっ!!」
ゴルゴスの叫びに、獣人達は吠える。
アマゾンとオメガも雄叫びを上げると、獣人達に立ち向かっていく。拳と蹴りを叩き込み、腕の刃で獣人達を切り裂いていく。
その光景は正しく獣の戦い。
しかし、一つだけ違った。オメガとアマゾンは〝守りたい者〟の為に戦っている。壊す事しかできないゴルゴス達とは訳が違った。
オメガはカニ獣人とハチ獣人を腕の刃ーーアームカッターで切り裂いていく。オレンジ色の血と黄色い体液が身体から噴射しながら苦しむカニ獣人とハチ獣人にトドメを刺すべく、オメガはグリップを捻る。
《Violent Strike……!》
足の刃ーーフットカッターが鋭く伸び、逆回し蹴りでカニ獣人とハチ獣人を切り裂く。二体の獣人は血を噴き出しながらその場に倒れ、絶命した。
一方アマゾンは、ワイルドな戦い方でクモ獣人と獣人吸血コウモリを圧倒していた。嘗ては苦戦したゲドンの獣人でも、今のアマゾンが負けるはずがない。
アマゾンは腕の刃で獣人達を切り裂いていく。時には跳躍し、クモ獣人の腕に噛み付くとそのまま腕を引き千切る。苦しむクモ獣人だったが、それを援護するかのように獣人吸血コウモリが羽を振り回しながらアマゾンに襲いかかる。
しかしアマゾンはそれを避け、跳躍しコウモリに飛びかかると羽を切り裂いていく。血を噴き出しながら地面に膝をつく獣人達目掛けて、アマゾンは跳躍すると腕の刃で獣人達を切り裂き、絶命させる。
一気に四体の獣人を倒されたゴルゴス。
「何故だ……何故我々が……!?」
「貴方は僕達が持っているものを持ってない。僕達は〝守りたい者〟が居る。貴方は〝守りたい者〟が無い。それが、貴方の敗因だ!」
「黙れ……黙れぇええええっ!!」
「行きましょう、アマゾンさん!」
ゴルゴスが顔面部分からミサイルを放つとアマゾンはオメガと共に跳躍する。
それと同時にオメガは左腕を、アマゾンは右腕を天に掲げる。
それは今までの獣人を葬ってきた、これから先も受け継がれるであろう技。〝大いなる悪を切り裂き、平和を脅かす悪を断つ技〟ーーその名は……!!
「「大切断っ!!」」
二人の刃が、ゴルゴスを切り裂いた。二人の必殺技を喰らったゴルゴスは赤い血を噴き出しながら、苦しみながら地面に倒れる。もがき苦しむゴルゴスは、アマゾンを睨む。
「これで終わったと思うな……我々は必ず蘇る!アマゾン!お前を倒すまでは……フハハハッ……ガアァアアアアアアアアッ!!」
断末魔と共に、ゴルゴスと獣人達は黒いモヤと共に消え去っていった。突如として蘇ったゴルゴスと獣人は再び倒されたのだった。
◇◇◇◇
「それじゃあ、僕達はこれで」
ハルカ達は先を急ぐ為、バゴーとアマゾンに別れを告げていた。
「関係のないお主達を、儂らの戦いに巻き込んでしまった。すまなかった」
「気にしないでください。それに、僕もアマゾンさんに助けてもらいましたから」
「アマゾン、束、トモダチ」
「と、トモダチ……アハハハ……」
流石の束も困惑しているのか、それともアマゾンの姿に少しばかりビビっているのか分からなかった。しかし、こうしてアマゾンと出会えた事はハルカにとって大きな出来事になった。
「それじゃあ、僕達はこれで……」
「お世話になりました」
「バイバーイ」
ハルカ達はその場を後にする。アマゾンとバゴーが見送り、ふとハルカが振り向いた時だった。
アマゾンの隣に立っているバゴーの姿が、少しずつ消えていったのだ。何が起きたのか分からないハルカだったが、きっとまた何処かで会えるだろうと、心の中で囁いた。
すると、アマゾンがハルカの下へ駆け寄ってきた。
「アマゾンさん、どうしました?」
ハルカが問いかけると、アマゾンはトモダチの印をハルカに見せた。
「アマゾン、ハルカ、トモダチ」
「ーーーありがとうございます。僕もアマゾンさんとトモダチです」
ハルカもアマゾンにトモダチの印を見せる。時代を超え、時を超え、こうして二人のアマゾンの物語は幕を閉じた。
如何でしたでしょうか。楽しんで頂けたら幸いです。
今回は仮面ライダーアマゾンズと仮面ライダーアマゾンのクロスオーバーになっております。公式でもアマゾンと繋がっている部分は無かったので、今回の番外編ではアマゾンとクロスさせようと前々から思っていました。それでは、少しばかり世界観設定を。
→今回の世界観設定
本文にある通り、嘗て大昔に初代アマゾンと初代十面鬼がガガの腕輪とギギの腕輪を巡って戦いを繰り広げていた。
それから時が経ち、今代のアマゾンーー山本大介ーーが十面鬼とゼロ大帝を倒し、世界に平和をもたらした。
それは、束達が生まれるずっと前の話である。原典の仮面ライダーアマゾンとは少しばかり設定が異なる部分がある為に、原典とは言えない。いわゆるパラレルワールドである。
→ゴルゴスと獣人達
本文にある通り、残留思念が具現化し蘇った姿。本来なら大ショッカーのせいにしようかなと思っていましたが、そんな事をするとややこしくなる為ボツ。当時の子供は獣人達に怯えていたのかな?
次回は第2章の幕開けになります。少し投稿に時間が掛かると思いますがよろしくお願いします。