鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
・ゼルダの伝説BotWをプレイした
→ミファーさんを救出するもガノンに対するヘイトが溜まりすぎてハイラル城に吶喊
→何度死んでもガノンに攻撃を繰り返す
数日単位で三番が続いたりしました。
まあガノンもハイラルで何かに絶望して厄災化したってこともあるのかも・・・絶対悪とまでは言えないのかな?
だが水のカースガノン、てめぇは駄目だ。
「ん?」
通された部屋で少ない荷物を降ろした時、怒鳴り声が下方から響いてきた。此処へ案内した男の声だっただろうか。威張り散らしていたが、島津の名を聞かされた瞬間に犬かと思えるほど遜ったのは記憶に新しい。
こんな男が主力部隊の頭とはな。口には出さなかったが、豊久はそう思った。
「なんじゃ、あれは」
その男は、銀髪の少年に掴みかかっていた。
「てめぇ!大人を舐めんのもいい加減にしろ!」
「それで尊敬しろ、なんて言われてできるか!」
堪忍袋の緒が切れた、と殴りかかる男の腕を、黒髪の少年が掴んだ。
「隊長、マルバが呼んでた」
「…っち、覚えてやがれよ」
一瞬の迷いを見せるも、男は腕を振り払い地面に唾を吐きかけて去っていった。
地面に腰を落としていた銀髪の少年が、黒髪の少年の手を掴んで起き上がった。身長差は親と子程もあるが、両者の間には強い信頼が伺える。
「なんだよ、アンタもさっきの模擬戦の文句でも言いに来たのか…いや、見ない顔だな」
「島津豊久じゃ。お前、名前は」
いきなり敵意を見せていた少年は、警戒心を隠す素振りも見せない。ただ、名前を名乗られて答える事はして見せた。
「オルガ・イツカだ。参番組の隊長をやってる」
「さっきの男と、ないごてあがん事になっておった?」
それを聞いたオルガは、挑戦的に笑った。
「さっき会った模擬戦で、あのオッサンの部隊を負かしてやった。それでアレだ」
それを聞いて笑った豊久を、二人は珍しい物のように見ていた。
「やっぱり弱いんだのう。まあ筋も骨も通っておらんような男じゃ。無理もなか」
「話が分かるな、えっと、豊久さん、つったっけ?こっちは三日月だ」
「こんにちは?」
それで豊久は、やる事ができた、そう言ってその場を後にした。
「あいつ…」
「どうかしたのか?ミカ」
「強いね。一番組の連中でも相手にならないと思う」
「珍しいな。お前がそんなこと言うなんてよ」
そうして、いつも通りに一日が終わった。そして翌日。
「今日からお前らを鍛える。島津豊久じゃ!」
「まじかよ…」
◇◇◇◇◇◇
席に着いて、穏やかに微笑んでいた。目の前の男も、外見の良い顔が綻ばない程度に笑っている。
「この度は交渉の場を設けていただき、感謝の念に絶えません…」
「いえいえ、あのギャラルホルンの創始者、アグニカ・カイエルの子孫と話ができる機会など、そうはありません」
はっきり言って、目の前で自分同様に愛想笑いを浮かべる男が、好きなわけではない。向こうがどうかなどは、知る由もない。それでも、今二人の男が利権のために結託しようと、由を結ぼうとしている。
「では、食糧生産の話を早速」
「おお、気が早いですな。しかし、早く決まるべき事でもある」
今回、ユーラシア大陸の北部、旧ロシア領を実効支配しているこの男は、糧食を送る用意があるとの打診をしていた。それが、どのような見返りを求めてのものか、マクギリスには見極める必要があった。
「エイハブリアクターの優先交渉権、ですか」
「ええ。そのような物は元来存在しないのでしょうがね。現状は、セブンスターズと結びついた組織、個人が手に入れている。そうでしょう?」
優先権。その程度なら、容易い。だが、本当にそれだけなのか。マクギリスは、目を見て尋ねた。
「優先権。ええ、無理のない範囲の報酬だと思えますが…一つ、分からない事がある」
「と、言いますと?」
「何故、我々なのか、ということです。ご存じでしょうが、エリオン家と私は冷戦状態にある。それを、我々に肩入れするというのは、どういった理由があるのでしょうか」
やはり、男は笑っていた。ただ、目から口まで、本当に笑っていると思えた。
「私はね、嫌いなんですよ、ラスタル・エリオンが」
嫌い。それは、本当かもしれない。だが、自分とそう違う人間でもないだろう、とも思える。
「あなたも、似た人間ではある。だが、あなたは若い。まだ、ラスタル・エリオンよりも変わり様が有るだろうと、そう考えたのです」
暗に、何時かは手を切るかもしれないと言っている。それは、良い。何時か裏切るかもしれないが、それが決戦の後であるなら、手の打ちようもある。何より、信じ続けられる味方など、この世界に数えるほどしか居ないのだから。
「そうですか。では、交渉は成立としましょう」
「ええ、最高の小麦を届けさせます」
今も、握手を交わしながら、笑顔の下でお互いがお互いを嫌いあっているのか。遣る瀬無さなど、無かった。ただ、無性に。自分を信じて待っているアルミリアに、一杯の紅茶を淹れてほしかった。
ガエリオを見ていると、あの直向きさ、純真さが将来に失われることは無いのだろうと、確信にも似たものを持つことができた。
◇◇◇◇◇◇
モンターク商会が斡旋した施設には牢屋があり、そこには二人の虜囚が居た。
「今日も来たのですか…毎日ご苦労なことです。ですが、私から話すことは何もありません」
「そうか…まあいい。飯だけは置いていくぞ。食べろよ?」
面識がある、という事で、ガエリオがジュリエッタ・ジュリスの世話を任かされていた。ジュリエッタは頑なに何も話そうとはしないが、捕虜として扱う、というマクギリス、オルガ、クーデリアの主張で、食料は与えられていた。
もちろん自白剤などが入っているわけでもなく、本当に、クーデリアやアトラが作ったものを他のメンバー同様に分けているだけなのだ。
そしてもう一人の捕虜、カルタ・イシューはむくれていた。
「おいカルタ、いい加減に機嫌を直せ。そりゃ騙したのは悪かったとは思うが」
「知らない、知らない!知らない!!」
壁に拳を叩きつけて、カルタ・イシューは首を振った。
「どうしてあの場で死なせなかったの!?私は…この私が虜囚の辱めを受ける等と!」
カルタ・イシューは、鉄華団の誰かに世話をさせると自殺しかねない、という事で、カルタの世話もまたガエリオの仕事になっていた。ただ、ジュリエッタと違い、食料にあまり手を付けないためあまり顔色が良くない。
「そんなにマクギリスに振られたのが堪えたのか?」
「な、何を言っているのかしら!私にはさっぱり分からないけれど!それでも不敬だわ!私があんな男に何を言われても気にする道理がないでしょう!」
やれやれ、と、ガエリオは苦笑いを浮かべた。確かに自分は腹芸は苦手だが、この態度で良く騙せていると思えるものだ。
「お前が死ななかったのは、カルタ。マクギリスが必要だといったからだ」
壁を向いていたカルタが、その言葉を聴いた瞬間に振り向いた。笑うな、とガエリオは自分に語り掛ける。ここで笑えば、カルタはまたへそを曲げるだろう。まだ笑うな。そう思いながら、ガエリオは言葉を続けた。
「お前の能力は必ず必要になるから、そう言ってお前を救出させたんだよ、あいつは。だからこうして食料も毎日届く」
「まあアイツが?そこまで言うのなら?私としても吝かではないわ。早く食料を渡しなさい、ガエリオ」
親衛隊は良いのか。いや、忘れていないが、あえてこう振舞っているのだろうか。どちらにせよ、自分の仕事はカルタ・イシューを死なせない事だと、ガエリオは考えている。
トレーに乗った食料を差し入れ口に置き、ガエリオは牢を後にした。
MSが格納されている倉庫では、アインが鉄華団のパイロットを相手にシミュレータを動かしていた。
「今日こそ、クランク二尉の機体からそのふざけた塗装を剥がさせてもらうぞ!」
「はは、俺が負けたらな!」
確かに、鉄華団で唯一運用されているグレイズの塗装はあまりにも、アインの言葉を借りるのなら、下品だった。今、アインは阿頼耶識の訓練もかねてシミュレーターで現在の所有者であるノルバ・シノと一騎打ちを繰り返していた。二人とも直情的なきらいはあるが、その軽薄そうな頭のどこにとアインが驚く程に、ノルバ・シノの戦略は豊かだった。
例えば補助戦力、或いは障害として配置されているモビルワーカーを投げる、銃を投げる、バトルアックスをわざと弾かせて背負い投げにするなど、阿頼耶識を使いこなすことには一日の長があるようだ。
もちろんアインは真剣なのだろうが、シノにはそれを楽しんでいる節が見受けられる。それでも、シノという男は負ければ潔く色を変えるのだろう。そういった芯が感じられるため、ガエリオは大した悪感情を持ってはいなかった。
「お前ら、飯だそうだぞ」
「お、じゃあ早く決めなくちゃな!」
「舐めるなよ!」
食事を摂るスペースでは、豊久が凄まじい勢いで米を掻き込んでいた。見る見るうちに米は無くなり、椀に触れた箸が、チンッと景気の良い音を立てる。
「昌弘!お前も早う食え」
「ちょ、待てよまだぁぁ!?」
引きずられていく昌弘に、その場に居合わせたその場に居合わせた多くが心中で手を合わせた。
◇◇◇◇◇◇
「イオク、今日の取引の内容は覚えているな?」
「もちろんであります!」
答えて、焼いた牛肉を上品に口へ運ぶイオクに、ラスタルは破顔した。マクギリス程に実務力があれば。そう思った事もあっただろうか。それでも、このイオク・クジャンが持つ、人に慕われるという才能は得難い物だった。
率直さは、自分からは失われて久しい。いや、弟が、そうだった。純真で、太陽のように明るかった弟。家人にも、好かれていた。それを思い出す屈託のなさだった。
厚く切った牛肉の赤身ステーキに塩を振って、自分も口に入れた。旨い。油が口の中を廻る感覚を、塩が引きたてているようだった。
「では、その背景はどう読む」
「それは…」
慌てて口の中のものを飲み込んだイオクは、必死に考えている。考えてはいるが、答えにたどり着くことは出来なかった。
「申し訳ありません、分かりませんでした」
「まあ、良い。これも覚えておけよ、イオク」
オセアニアの海域で発見された鉱床の、分配をラスタルが仲裁した。一つは明確な親マクギリス派であるが、それも公平に分けたつもりだった。
「今回の件は、マクギリス派の切り崩し工作に発展させることが可能な物だった。何故かな?」
「それは…もしかして、あの中にマクギリス・ファリドの仲間がいたのでしょうか?」
頭が悪いわけではない。ただ、疑うことを知らない純真さを残しすぎている。それは、人を引き付ける物でもあるし、消さずにいることが望ましいことは確かだった。それでも、未来の頭目であることを考えれば、今のままで良いはずは無い。
如何に、良い部分を共存させるかだった。
「そうだ。あちらもこちらの悪評を分かりやすく広めるようなことはするまいが…楔を打ち込む罅くらいにはなる」
「そうでしたか…次は、必ず答えて見せます」
ジュリエッタが捕らえられてから、MSの訓練にも積極的だった。昔に比べれば、そこらの兵士ほどには良くなっているのだろう。しかし、いつまでもモビルスーツパイロットとして働かせるわけにもいかない。
ジュリエッタの判断は、半分正しかった。結果が伴っていれば、完全に正しかった。ギャラルホルンの関係者でありながら、アグニカ・カイエルの子孫を躊躇いなく狙うことができるというのは、得難い人材であっただろう。
しかし、居ないものは居ない。
鳥のささ身をフォークで刺し、胡椒を振る。
肉に、火を通せば焼ける。ナイフは、研げば鋭くなる。だが、すべての物事がそう単純ではないのだ。
頭を下げて退出していくイオクに鷹揚に手を振り、閉まった扉を見たラスタルはぽつりと口にした。
「お前が生きていれば、どうしたかな、ハンザ」
マルバの執務室にて
「参番組ち言うたか、あの部隊の訓練ば俺に寄こせい」
「そ、そんなこと言ってもよ、アンタ一人で」
「寄こせ」
「はい」
結論:従うか死ぬか。マルバは死ななかった。
イオクに強化フラグが立ちました。退場フラグ(死に非ず)も。
イオク様は対鉄華団殲滅兵器としての運用を作者は推奨いたします。
ハンザはエリオンの弟です。