鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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最近のハイライト
・調子に乗ってソファやらテレビ台やら本棚やら買った結果金がなくなる
・二万円課金するも爆死するFGO
・実家への帰省費用で吹き飛ぶ四万円
・そんな状況で買ってしまったロードエルメロイⅡ世の事件簿1~5

結論:死にかけ

まあ創作は(ネットなどのランニングコストをガン無視すれば)タダなので・・・

少し空いたので前回との整合性とれてなかったらごめんなさい


かく語りき

物心ついた時、俺は試験管の中にいた。橙の薬液の向こうに、白いひらひらとした影が揺らめいていたことをよく覚えている。自立した思考の欠片も無く、俺はただ無為に浮かんでいるだけだった。世界はこの二色で出来ているのだと思っていた。だが、そんな日々も唐突に終わりが来た。

ある日俺は、世界が急速に色を失っていくことに気付いた。否、世界は二色以上の色彩に溢れていることを知った、と言うべきか。

光、音、匂い、質感…今まで存在しなかった全ての刺激が、感覚器を叩く。

世界が認識できた。光、鉄、アルコールの匂い、響いている物が言葉という事も、そしてどうやら、それが自分の名前らしいという事も。

 

「ああ…成功だ、アグニ計画は、遂に…」

 

満願が成就した、或いは、報われた、と形容すべきものだろうか。俺を覗き込む目は、周囲の照明を考慮してもなお明るく見えた。男の青い目に、自分の金色の髪と赤い瞳が映っている。

 

「遂に、我が娘と妻の仇を…」

 

同時に、俺を胸に掻き抱く男の目は、俺を見ているようで見ていなかったように感じた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「どうしたの?警報が鳴ってるわけでもないのにモビルスーツハンガーなんて」

「いや、そろそろ来そうな気がしてな」

 

その言葉と同時に、アラートが鳴り響く。

 

『緊急警報。南方150km地点にモビルアーマーのエイハブウェーブを感知。モビルスーツパイロットは直ちに出撃してください』

 

眼を見開いた彼女は、至極当然の事を口にする。

 

「そんな馬鹿な」

「所詮は勘だよ、モンターク嬢」

 

バエルが、重力ベクトル変換型カタパルトへ乗る。

 

「アグニカ・カイエル、バエル、出撃する」

 

結果から言えば、この日は大戦果だった。

この日出撃可能だったのは自分のみ。反応から一つと目されていた目標、モビルアーマーは、偽装用のエイハブウェーブステルス型ナノラミネート塗装を自立開発しており、約30のモビルアーマーが500以上のユニットを引き連れて波状攻撃をかけてくるのだ。

バエルに出来る事は、ただひたすらに切るのみだった。

最初に生産特化型のモビルアーマーを、10台の砲撃型が放つ20のダインスレイヴの弾幕を躱しながら一撃で破壊する。

一撃で機能中枢を貫いて止めた生産型を、プルーマに向けて蹴り倒し、一気に20機ほどを停止させる。

空中に籠のような軌跡を描くダインスレイヴを、ブレードで逸らす。

モビルアーマーには、この距離のダインスレイブを認識してから回避するほどの処理スペックは無いため、砲撃型はこれで全滅。

残るは、第三位階の近接型が5機と第四位階の万能型が四機、第二位階のモビルスーツ型が一機だ。

一歩ごとにプルーマを蹴り潰しながら、近接型二機を同時に相手取る。

 

嗚呼、弱い。連携が100%の力しか生んでいないモビルアーマー群を見て、そう嘆息していた。否、機械がこうだからこそ、人間は素晴らしいと考えるべきか。

 

残るは、モビルスーツ型が一つ。数分で五体を分解し終えると、基地へと歓声と共に帰投した。

人間には、心がある。心が人間を繋ぐ。だから人間の連携は強く、機械には決して滅ぼす事は出来ないのだ。

 

「お帰り、アグニカ」

「ああ、ただいまだ、モンターク嬢」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

試験管からも訓練所からも出て、世界を見た俺は人間を美しいと思った。造詣や人種などではなく、ただ美しい心という機能を持っていると。それだけで、今の世界を守る価値があると思った。

 

だから、失敗した。

 

仲間が大切に過ぎた。モンタークが、ムーが、シマヅが、イシューがファルクがエリオンがバクラザンがクジャンがファリドがボードウィンが…

自分の命よりも、大切、だった、のに

 

(理性)には、その日の事をはっきりとは思い出せない。

 

珍しく、イシューが苦戦していると聞いた。それでモンタークと戦場へ駆けつけると、ファリドが、モンタークの乗るザガンに銃口を突きつけていた。

 

会話をしただろうか。記憶にあるのは、溶鉱炉のように熾り続ける怒り、怒り、怒り…

 

気が付くと俺は、暗い試験管の中に居た。時間の感覚を奪う拷問のようだと、昔学習装置から得た知識から考える。昔日にはそのようなものを作った心が理解できなかったが、今は分かるような気がした。

人間は、俺が思うような存在ではなかったのかもしれない。

無間の暗闇はしかし、俺の意識を途絶えさせるに足るものではなかった。理性は蝕まれ、意識の大部分が狂ったような怒りに飲まれていく。

僅かな論理思考回路が、実感する。失った物が大きすぎた。俺には、彼らしか、彼女しか、居なかったというのに。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『お前が生き残るっていう選択肢は無いよ』

『だってお前は余りにも強すぎるし、純粋すぎるだろう?』

 

怜悧な、まるで情の無い声が鳴る。

押収された、イズナリオ・ファリドの所持していた300年前の音声記録である。

血を佩くような叫びと、怒号、銃声が乱雑に鳴り響き、一瞬静かになった。間をおいて、再び音声が響く。何処からか、すすり泣くような声も聞こえて来た。

 

『流石に今この戦況で殺すのは馬鹿だとは思うけど、これは仕事で、決まった事なんだ』

『お偉方も馬鹿だよな?確かに状況は好転して、初めて戦力は拮抗を始めた』

『でも、お前が居てこそなんだろうが…まあ、他の64機…いや、ボードウィンとクジャン辺りはまじめにやるかもな』

『アイツらが全滅寸前まで行けば、まあ何とか勝てるかもってところだ』

『イシューが纏めるし、多分シマヅ辺りが戦況を無理やり優勢にする』

『お前は、必要が無くなったんだよ、アグニカ・カイエル』

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

今や圧縮され続け極みへと至った怒りが、戦場に巨大な影を落としている。リミッターの外れたガンダム二機が、盾のように砲火を投げ込み続けるモビルスーツたちを守っていた。それでも尚、戦場には一瞬の隙を縫う攻勢に撃ち落とされた味方の残骸が転がっている。時には撃ち込んだダインスレイヴを投げられ、時には不用意に近づきすぎて切り落とされる。

今の世界で最も練度の水準が高い月統制統合艦隊・アリアンロッドの兵士ですら片手間のように撃ち落とされていく光景に、中継を見るラスタル・エリオンは冷や汗を流しながらも笑っていた。

 

「ああ、あれこそは我が祖先が討ち取った獣か、はたまた乱世の英雄か」

 

最初こそは間断なく指示を飛ばしていたラスタルも、イオク・クジャンの回収命令を出してからは退き気味に戦え、という程度にしか指示を出していない。

最早、戦場に存在を続ける事すら厳しいだろう、そう感じたからだ。辛うじてジュリエッタが食らいついているようだが、最前線で黒い暴風を捌き続ける二機に比べれば余りに役者が足りない。

音で見ているだけでも唸りを上げるような勢いで、棍が剣を弾き下ろし、ピンク色に塗装されたグレイズがアックスで下ろされた腕に斬りかかっていく。

伸びきった肘関節の表面を、アックスがなぞった。と、同時に、雷光のように加速したバルバトスが下から太刀で切り上げる。火花が散ったのを見て、気が緩んだのだろう。グレイズは、襤褸のように揺れる腕で吹き飛ばされた。追撃のブレードを、バルバトスは受け止めている。

 

勝負あったか。片腕が使い物にならなくなったことで、最早あれ程の攻撃性能も無ければ精密な姿勢制御も出来まい。その証拠に、上空に再配備したダインスレイヴ隊の射撃は、1発が命中し、動かなくなった腕を吹き飛ばした。センサーアイにグシオンの3点射が命中し、腕と反対側の足がバルバトスとシュバルベ・グレイズによって切断された。

二本目の足に、アガレスの棍が命中し、凄まじい威力で爆発して電気系統のスパークが飛ぶ。

 

遂に、巨人は膝を落とした。バルバトスの太刀が、一刀で首を落とし、最後に残った腕をジュリエッタが何度も突き、壊した。

五体を寸断されたシュバルベ・グレイズの上に、アガレスが立ち、抜刀した。

 

「!これは」

 

オペレーターが、右往左往している。何処からか、回線がジャックされているのだ。

 

『また、お前が俺を殺すのか』

『俺は、サミュエル・ファリドではありません。いや、ファリドですら、ない』

 

戦闘宙域の全員が聞く中で、マクギリスは宣言した。

 

『我が父の名はモンターク…アグニカ・カイエル、貴方の子孫だ』




まあ予想はついたかなというネタ。
・アグニカ教入信
・バエル欲しい
・カリスマ
・超絶パイロット技能

に説明がつく便利理論。
尚、現在の戦場に居る、又は居たMSは
ほぼ無傷
・バルバトス
・アガレス
・グシオン・リベイク
・ダインスレイヴ装填組グレイズ×5機
・ダインスレイブ発射組グレイズ×4機
腕が動かないくらい(中破)
・グレイズ・カスタム(ジュリエッタ)
・シュバルベ・グレイズ(アイン)
行動不能(中破~大破)
・流星号
・近接型グレイズ(アリアンロッド所属)×30
・ダインスレイブ発射組グレイズ
撤退
・キマリス
行動不能(元から)
・グレイズ・カスタム(イオク・クジャン)

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