鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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そろそろ話が畳めそうな予感…
肉おじ様出てないけど!


死して尚

『ねぇ、これ、何?』

 

バルバトスの目が、赤く変わっている。

 

「恐らくは、ガンダムフレームの対モビルアーマー用システムといったところかな」

 

連鎖反応のようなものか、アガレスの目も赤く変わっている。

 

「恐らく本来はモビルアーマーのエイハブウェーブを感知しただけで変化するのだろうが…」

 

実際に姿を現すまで、レーダーに反応すらなかった事の答えがこれなのだろう。流石に、エイハブウェーブで構造を励起させているナノラミネートへの直接接触では伝搬したようだ。

 

一度立ち止まった二体のモビルスーツに、モビルアーマーが尾を変形させ大きく旋回した。アガレスは棒高跳びの要領で躱し、バルバトスは刀で上へかちあげた。

 

『うん、これなら殺しきれる』

「流石だ!」

 

先程とは比べ物にならないほどの速度で、バルバトスがモビルアーマーへ吶喊する。

袈裟斬りだ。

躱された。一瞬で回転しながら体を沈め、先ほどのバルバトスのように足を蹴りだす。

 

「はぁっ!」

 

しかし、槍のような勢いで突き出された脚は、アガレスの棍が地面に叩きつけた。爆風と強化されたガンダムフレームの出力によって、片足は完全に折れた。

しかし、モビルアーマーもその程度では止まらない。尾を地面に突き刺して、体を固定する。それによって、モビルアーマーの体は宙に浮いた。

 

『頭借りるよ』

 

先程の斬撃を受け流された三日月が、アガレスの頭を踏み台に蹴りを頭部に当てた。しかし、モビルアーマーは動かない。否、頭部は原型を留めていない。しかし、モビルアーマーは体全体をハンマーとしてバルバトスに叩きつけた。

 

「三日月・オーガス!!」

 

今度こそ、完全に吹き飛ばされた。

 

『だい、丈夫…』

 

バルバトスは、岩に叩きつけられていた。モビルスーツそのものには異常は無いが、おそらくは衝撃ですぐには動けないだろう。しかも最悪な事に、モビルアーマーの砲門から高音が響き始める。

 

「アガレス!」

 

強化された脚力で、一瞬でアガレスはバルバトスとモビルアーマーの間に割って入った。そして、黒い杭が空気を切り裂いた。

爆発音がする。

 

『…チョコの人?』

「なんとか無事だ」

 

アガレスは、棍で一本の軌道を変えた。更に、腕の装甲を利用して二本目の軌道を変えたのだ。その代償に、アガレスの左腕からは火花が散り、煙も上がっていた。

 

「後は、頼む」

 

意識が遠くなるのを、マクギリスは感じた。しかし、確信もある。三日月・オーガスならば、必ずや彼の厄災の首印を上げるだろうと。あの男の方も、手は打ってある。待ち受ける勝利を幻視しながら、マクギリスは、短い眠りに落ちた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「何なんだよあのでかいモビルスーツはよぉ!」

 

モビルワーカーを走らせて突進を始めた豊久を追いかけて、流星号とグシオン・リベイクが町へと降りて来た。流石の緊急事態に議会も一時中断され、町はパニックの渦に包まれかけている。

街へと一直線に駆け下りてくる武装した、しかしギャラルホルンではない集団に、人々の抗議の声が上がりかけた。しかし、人垣が出来ようというのに、モビルワーカーには全くスピードが落ちる気配が無い。

 

「おい、アレって…」

『トヨさんでしょ、てか、俺らも行かないで良いの?』

 

後ろを追うトレーラーが、シノ達の前で止まった。

 

「シノ!急いでくれ!早くしないとトヨさん本気で生身のままモビルスーツに突っ込みかねないぜ!」

「解った!おいガリガリ、あんたらは後で来るんだろ!?」

「ああ!もういいから早く行け!」

 

モビルワーカーからフラップに飛び乗ったシノは、そのまますぐにコクピットへ滑り込んだ。

 

「アイン、俺たちのモビルスーツ到着までの予想時間は?」

「あと10分ほどかと!」

 

これでも、マクギリス個人のパイプを最大限活かした結果である。

 

「しかし、なんであのモビルスーツは動かない?」

「解りません。しかし、何時までもあのままというのは考えにくい事です」

 

街がパニック一歩手前で止まっているのも、彼の巨大なモビルスーツが動かないという事にあるだろうか。避難誘導が上手くいっているのか、市民の声はほとんど聞こえなくなっていた。

段々と閑散としてきた街に、ショッキングピンクのグレイズが立ち上がる。

 

『流星号、いくぜぇぇぇぇぇぇえ!』

「待て!もっと様子を…」

 

ギャラルホルン時代とは眩暈がするほど違う勢いに、思わず叫んでしまう。しかし、遂に、と言うべきか、巨大なモビルスーツの目に灯が灯る。ゆらりと動き始めた機械とは思えない生々しい動きに、思わずガエリオは絶句した。まるで、人間が運動前に脱力しているようですらある。

同時に、モビルスーツの手甲から暗い色のブレードが顔を覗かせる。更に、背部で三つの円形の物体が大きな音を立てて背中にマウントされた。

 

「あれは」

 

ギャラルホルンの人間ならば、誰もが知っているその形状。少し、空気が震えるような感触と共に、巨大なモビルスーツの全身に光が駆け巡った。

 

「エイハブリアクターが、三つ?」

『先手ヒッショウだぜ!』

 

黒いモビルスーツは、サブアームを展開し容易くバトルアックスの柄をつかみ取った。

 

『ああ…』

 

底冷えするような声が、黒いモビルスーツから漏れた。

 

『今は、何年だ?』

『クソ!』

 

持ち替えたアサルトライフルを、流星号が頭部へ撃ち込む。阿頼耶識システムによって驚異の収弾率を発揮した弾幕は、凄まじい速度のダッキングと回し蹴りで中断させられた。

 

『私が、俺が、僕がここにいるのは、何故だ』

 

蹴り足に引っかかった流星号が、宙に舞った。どうにかスラスターで無事に着地した。

 

『おい!ヤバすぎるだろ!何だよアレ!』

「わからん!分からんが、ギャラルホルンの負の遺産であることは確かなようだ!」

 

モビルスーツが、舗装された道路を砕き、絶叫した。思わず、全員が耳を塞ぐが、暴力的なまでの振動が文字通り脳まで伝わるかのようだった。全員が顔を歪め、見上げる中で、男の声が響く

 

『いいや、そんなことはどうでも良い…

俺を…俺を殺したあの7人は何処だァァァァア!!!!!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「あれこそが、我が家の最大の遺産…」

 

モニターを見て、イズナリオ・ファリドは顔を歪めた。

 

「殺してさえしまえば、後はどうにでもなる…拾われた分際で私に盾着いた罪は、高くつくぞ、マクギリス」

 

暗い部屋には、二つの情景が映っている。一つは、圧倒的な力で全てを破壊し蹂躙するアーブラウ首都の様子。

もう一つは、海岸で目にも止まらないような高速戦闘を繰り広げるモビルアーマーと二機のモビルスーツだった。

 

「ダインスレイブの準備は?」

『は、それが…』

「何?」

 

突然、ドアをノックする音がした。ここまで来れていることが、男の身分を証明しているようなものだ。イズナリオが手元のボタンを押し、ドアが開いた。

 

「久しぶりですな、ファリド公」

「それ程でも無かろう。して、何用かな?エリオン公」

 

やせ型のイズナリオとは好対照に、肩幅や胸板の厚みのある体を震わせて、ラスタル・エリオンは大笑した。

 

「解っておいででしょう」

「私が負けるとでも?」

 

ラスタルの意味ありげな顔に、イズナリオの顔がピクリと歪む。

 

「はっきり言えば、戦況は好ましくないですな」

「これを見てもかね?」

 

丁度、片方のモニターではマクギリスの乗るアガレスがダインスレイヴを受け止め動きを止めていた。イズナリオは、口元の笑みが深くなるのを堪えた。

 

「況してや、アーブラウにいるのは彼の英雄の影法師。火星の乞食共がガンダムフレームを持ち出したところでどうにもなるまい」

「なるほど、そこまで手を打っておられたとは」

 

ラスタル・エリオンの笑みは、やはり崩れなかった。不可解、といった面持ちで、イズナリオは尋ねる。

 

「まさかあれが勝つとでも?スラムの孤児だぞ?」

「なるほど、確かにそうかもしれませんな。しかし、残念ながらスラムの子供の方が一枚上手だったようですな?」

 

ラスタルの背後からゾロゾロと、銃を構えた兵士が並び出た。

 

「セブンスターズ6人の可決により、イズナリオ・ファリド、貴方を拘束する」

「なっ」

 

セブンスターズの人間が、拘束される。過去に例すらない事態に、イズナリオは狼狽する。

 

「な、どうやって、私を拘束できるというのだ!?」

「それは、後で本人に聞くのが良いでしょう。連行しろ!」

 

ラスタル・エリオンは、海岸の映る画面を見て深い笑みを浮かべた。

 

「やはり、人間とはすばらしい物だな」




(思いついた)アガレスの設定
アガレスの棍にはナノマシンが塗布されている。衝撃を熱量に変換し、爆轟現象を発生させ、空気中や真空中に散ったナノマシンはアガレスのエイハブウェーブに反応して再集結する。なお、爆発は一発まで貯めることが出来る。
敵は、殴られた面で発生する爆風でただの打撃を超えるダメージを受ける。所謂、速さと威力の両立を目指した結果。

黒いモビルスーツ
通常の三倍近い体躯のモビルスーツをギャラルホルンで新規製造した高出力エイハブリアクター+ガンダムフレームからはぎ取ったツインリアクターで高速稼働させている頭の悪いジ・Oのようなモビルスーツ。ただし中身が例のあの人なのでシャレになっていない近接戦闘能力を誇る。が、流石にバエルに乗った状態よりは弱い。
武装はツインソード・レプリカのみ(今は)

モビルアーマー
ハシュマルより少し上位の量産型モビルアーマー。今後何かの役に立つだろう(確信)ということで初代ファリド公が隠し持っていた。他も似たり寄ったりな事をしているが持っているだけで使わない核のような物なので、それを持ち出したファリド公は…わかるね?
ハシュマルの粘性合金ワイヤの発展形のような尻尾を持っており、喰種の赫子のように自在に変形する。強度的にはダインスレイヴを受け止められるほど。切断にも打撃にも使える素敵仕様だが、アグニカさんはブレードでみじん切りにしていた。
ダインスレイブは二門持っており、割と容赦なく撃ち込んでくる。
ビーム砲は持っているが、正直対モビルスーツ用兵装への転換期に作られた機体なのでAIもあまり重要とは判断していない。
正直液体金属兵装とかかっこよすぎて好き(ターミネーターを見ながら)

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