鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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めちゃくちゃ空きました!
申し訳ない!
これからもこういうことはあると思います。
なるべく週一で出したいですが、そうでないときはアナウンスを出しますので前書きをご覧ください。ちなみに多分次も空きます。


魂の覚醒

「どうしたトヨさん」

「あれは敵ぞ。打って出るとは骨のあるではなかか」

 

豊久の見据える先には、流れるように直線で突き進むモビルスーツの列があった。

最も、他の人間がそれをとらえたのはレーダーや望遠機能を使ってだったが。

 

「くそ、確かに動きは止まってたみてぇだが短かったか!ミカ!」

『聞いてた。行けるよ』

 

既に、シャトルは地球に向けて発射されている。自由に動けるのはモビルスーツに乗っている三日月と昭弘だけだ。

 

「じゃあ三日月、昭弘と一緒に俺たちを守ってくれ」

『そんなの命令されるまでもないよ』

 

はっ、それもそうだな。そう呟いてオルガは改めて船内に檄を飛ばした。

 

「ここが正念場だ!全員で地球行くぜ!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『長蛇の陣!』

『『疾風怒濤!!』』

 

機影を一つに隠し、前方の一機が目標から見た影になることでモビルアーマーのビームに対抗できる盾になり、ダインスレイブ等の強力な射出兵器と相対した時も生存率を高める。そんな効果を持った接近に向いた厄災戦時代に考えられた陣形なのだが、今回は相手が悪かった。

 

『なぁ三日月、こんな時トヨさんなら』

「兎に角潰せ、気勢を削げって言うよ」

 

凄絶な顔でそう溢しながら、バルバトスが滑空砲のトリガーを何度も引いた。全てが正確に敵モビルスーツのコクピットに命中し、ついにはナノラミネート装甲が砕けた。

 

『やるな』

 

昭弘の声は若干引きつっていたが、それでも効果のほどは認めたらしく自分も射撃を始めた。

 

一方、陣を破られざわつく部下たちを、カルタは一喝した。

 

「落ち着きなさい!あれは見せしめ!陣形を組みなおして敵をとるのよ!冷静に!」

『『はっ!』』

「敵は少ない!一機につき複数でかかれば負けることは無い。そうね?」

『『御意に!!』』

 

地球外円軌道統制統合艦隊の親衛隊は、少なくとも火星支部の人員などとは比べ物にならない程の練度で訓練されている。加えてカルタ・イシューは、閑職へ左遷されても腐ることなく自分を磨き続ける程の向上心を持っている。

 

だが・・・

 

相手が悪かった。

古くは熊襲。火の国で生まれた彼らは神代から大和の王と戦い続け、千年の後に領主を得た。

それは戦場を蹂躙する赤備。

火縄の火線で陣を敷き、剣閃で戦道を開く。

 

「俺たちは薩摩兵子だぞ?」

「その程度でやられるわけないだろ」

 

戦場で練り上げ続けられた兵法は、人間の為の物ではあったがそれ故に阿頼耶識システムに操作される悪魔をこの上なく効率的に運用させた。

関ヶ原では80000を相手に脱出に成功したが、モビルスーツの人間とは比べ物にならない経戦能力が多対一を他に及びもつかないほどの規模で実現させる。

最初は10対1程もあった戦力差が、あっという間に2対1程度まで減ってしまった。

 

「わたしの部隊が・・・こんな・・・」

『こいつが指揮官か』

 

三日月は、豊久に言われたことを忠実に実行していた。声を聞かせられるなら聞かせてやれ。相手が恐れれば恐れるほどいい。特に指揮官の首を落とせば部隊など烏合の衆だ。

今回は敵のほぼ6割を潰してしまったが、残存部隊の追撃を考えれば頭を潰すというのは理に適った行動だ。

 

「私は・・・」

『じゃあね』

 

バルバトスが上段から逆手に持った太刀を振り下ろそうとした時、一機のグレイズリッターが間へ割って入ってきた。

 

『カルタ様ァー!!』

「アドルフ・・・」

 

割って入ったリッターに、バルバトスは素早く順手に持ち替えた太刀で応戦した。重力をイメージしたスラスター制御により、マニュアル操縦機など比較にもならないほどの安定性で、まるで大地に立っているかのように太刀を振るうバルバトス。

 

『このお方は我らの光・・・やらせはせんぞぉ!』

 

だが、押し返そうとするこの親衛隊員の気迫も尋常ではない。技量では劣るものの、決して後に退かない。お互いが一歩間合いを空けたところで、オープンチャンネルで通信が入った。

 

『あんた、名前は?』

「・・・地球外円軌道統制統合艦隊、司令官親衛隊アドルフ・ウェーバー」

『・・・あの爺さんの言ってたことがちょっとだけ分かった』

 

今までは相手の話なんて聞くことも無かったが、必死に味方を守る相手に、自分を重ねてしまっていたのか。相手の事は、多分倒しても忘れられない。

 

「そっか、これも強くなるってことなんだ」

 

仲間だけじゃない、敵の血も被って、固まってそれでも前に進む。

 

「鉄華団参番組、三日月オーガス。ここは通らせてもらう」

『ここはカルタ様の宇宙よ!勝手は許さん!』

 

両雄は再び激突した。が、何故か三日月の動きが鈍る。

 

「これって・・・」

『手こずっているようだな、三日月オーガス』

 

戦況を不利と見たか、何処の物とも知れない鈍色の塗装を施されたシュバルベグレイズが乱入してきた。

 

『我が主モンタークの命により加勢する・・・どうした?』

 

様子がおかしい。戦闘の記録は見たが、あれほどのタフネスを誇っていた男が返事の一つもないというのはさすがに異常だ。緊急事態だと判断したアイン・ダルトンは、グレイズリッターに発砲しながらバルバトスを引っ張って距離を取りイサリビへ入電するが、バルバトスから固辞する声が聞こえて来た。

 

「ちっ・・・イサリビ、聞こえるか?こちらはモンタークの・・・」

『いい・・・もう大丈夫』

 

その声は以前火星聞いたでスピーカーから漏れた声よりも圧倒的な深味があった。

 

『分かったんだ・・・とりあえずこいつは・・・』

 

直後、シュバルベグレイズの腕は振り解かれてしまった。圧倒的なパワーに掴んでいられなかったのだ。

 

『俺が倒す』

 

そして、バルバトスが咆哮をあげた。外見の変化は殆どないが、そのカメラアイは今まで見たことも無いほど澄んだ青に光り輝き、機体はほんのりと赤く染まっていた。

 

「しかしその男は!」

 

そうアインが叫んだ時、バルバトスは既にグレイズリッターに跳びかかっていた。否、跳びかかった跡が見えた。それは、人間の意識が追える速度ではなかったらしい。砕け、腹から切断されたグレイズリッターの残骸と、その向こう側に佇むバルバトスを見て、バルバトスが敵機を切り裂く様子を幻視してしまったのだった。

完全な想定外だった。故に、続く質問も妥当と言えるだろう。

 

「・・・何があった?三日月オーガス」

『アレは、300年前の出来事だってこいつが言ってた』

 

聞いた限りのことで判断すれば、バルバトスと会話をしていたということになる。それは余りにも荒唐無稽に思われたが、思い当たる節が無いわけでもないのだ。

 

『阿頼耶識か・・・』

「じゃあ俺、オルガたち迎えに行ってくる」

 

そうか、と呟きを漏らしてアイン・ダルトンは素早くコンソールを起動した。

元々シュバルベグレイズにはレポートを書けるような機能は無いのだが、マクギリスの要望によりこの機には搭載されていた。

素早く報告書をまとめ上げるアインは、先ほどの三日月の発言を思い出していた。

 

「クランク二尉の事、覚えていたのだな」

 

きちんと墓があったということを聞いてからもしや、と思ってはいたが、改めて本人の口から聞いた言葉には報告書には無い実感が伴っていた。

 

「私も、過去ばかり見てはいられない・・・か」

 

丁度書き終えた報告書をアリアドネからマクギリスへ送信し、シュバルベグレイズは何処かへと飛び去って行った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「んじゃあミカも回収したことだし、行くぜ!地球によ!」

 

シャトルはバルバトスを収容し、地球へと降下を始めていた。

 

「団長、モンタークって人から通信です」

「出してくれ」

 

こちらも、生の通信ではなくビデオレターだった。

 

『このビデオを無事に見ていられるということは、君たちの作戦は成功したということになるね』

 

そこには、仮面を外したマクギリスが写されていた。

 

『何故かそんなことが分かるか?まあ、部下に見張らせて送るビデオを変えただけのことだよ』

 

あいつか、と呟く三日月だったが、当然マクギリスは話を進める。

 

『さて、本題へと入ろう。君たちがこれからどうするか、だが・・・言ってしまうと細かい指示は無いんだ』

 

とんでもない指示が出てくれば文句を送り返してやろう、などと考えていたオルガの眉根が寄せられた。甘いことを言う人間は大抵何か裏があるからだ。

 

『君たちは火星のハーフメタル利権に関する交渉のため、蒔苗トウゴノスケ氏と会談に来ている。そして、その蒔苗氏は現在アーブラウを離れ、オセアニア連邦の小島に住んでいる。ここまでは良いかな?』

 

船内の全員から視線を向けられたオルガは、しっかりと頷いた。ここまでは名瀬を交えて行った会議の通りだからだ。

 

『故に君たちはオセアニア連邦の領土へと降りるわけなんだが、その後の事でね。実は蒔苗氏からも依頼があるそうなんだ』

 

流石にこれは、オルガにも想定外だった。だが、船内の動揺にも、まるで反応を示さず話を推し進める。

 

『簡単に言ってしまえばね、君たちにアーブラウの首都まで、期限付きで護送を依頼したいと言うんだ。交通手段はこちらが用意するので、それに付きっ切りで護衛をして欲しい』

 

仕事の依頼。だが何故か?オルガにはそれが解せなかった。依頼などしなくても、自分たちはある程度下手に出なくてはならない。そこに金を積んでまで依頼するのは・・・

 

『君たちは・・・ここまでその力を世界に示し続けてきた』

 

悪い答えを弾き出すことを予想していたのか、マクギリスはすぐに答えを提示した。

 

『無論、ギャラルホルンが報道を規制し全ての人間が知っているとはいかないが・・・少なくとも各経済圏の政府中枢の者たちは君たちの活躍を把握していたのさ』

 

オルガとクーデリア、フミタンを除く人間たちが首をかしげる中、マクギリスは結論を述べた。

 

『蒔苗氏は、「君たちはプロだ。それに金も払わず仕事の依頼をするようでは逆にわしのメンツが立たなくなってしまうわい」・・・こう仰っていたよ。誇っていい。君たちは、この世界に認められたんだ』

 

じわじわと、船内に高揚した空気が満ちていく。それほどまでに、マクギリスの言葉は分かりやすく鉄華団のメンバーの心を揺さぶったのだった。

 

「おめーら!」

 

オルガがシャトルの後ろから声を張り上げた。

 

「嬉しいよなぁ。俺たちが認められたって言ってやがる。火星のギャラルホルンやら小さい連中じゃねぇ、世界がだ!だけどよ、このまま行ったら俺ら、ダメなんじゃねえか?プロと言われたからにはよ、しっかり気ぃ引き締めてかかろうぜ!

そんでよ、火星の連中に自慢してやんぞ!いいな!?」

「団長・・・俺ら、やるぜ!」

「トヨが言ってた、『勝って兜の緒を締めよ』ってこういうこと?」

「そうじゃ。よか。おるがはほんによか大将ぞ」

 

シャトルは成層圏を突き抜けた。




なんとか書けた・・・
出来が悪くて申し訳ない。
ただただバルバトスを覚醒させたかった回なんだ・・・
許してください・・・

次回はネタが浮き次第です。
多分バルバトスの覚醒についての話が入ります。

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