鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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今回はみんなが「すげぇよミカは・・・」となった地球降下回です。
なお、マッキーの告白はまたあとのほうでやります。今回は出ません。


降下作戦

「さて、ここからが正念場だ」

 

今回の地球降下は、名瀬のアニキ、トヨさんとあのセブンスターズの坊ちゃんも交えて行った。なんでも幼馴染らしく、考えがある、とのことだった。地球外円軌道を守る艦隊を一瞬で動けなくして見せるらしい。しかし、マクギリスのやつが孤児とはな。親近感があるはずだぜ。

話を今回に戻そう。

 

「ユージン、この作戦の成功はお前の腕に懸かってる」

「わ、分かってるって!」

「ならいいさ。頼んだぜ?お前なら任せられるよ」

「当たり前だろ!」

 

明らかに強がっているのだが、オルガには他の人間に任せる余裕はない。

悪りぃけど頼んだぜ。そう心の中で呟いてシャトルへ移る。

 

「ミカ!作戦は分かったな?」

「うん。オルガとトヨが考えたんでしょ?なら成功させるよ。俺が」

 

ミカは何時でも俺の期待に何が何でも応える。それが重しに感じることもあるが・・・今日は頼もしい限りだ。ついでにトヨさんもシャトルの乗り口に来ていた。

 

(おい)の乗れるもびるすーつはなか。馬のなくては戦場ば駆けれんど。武者働きのできんでは父上に申し訳が立たんではなかか」

 

トヨさんを止めるのは本当に苦労した・・・止めてはなぎ倒され止めてはなぎ倒され・・・ああ傷に染みるぜ。

それはともかく、フミタンの説得で何とか踏みとどまってくれたトヨさんもシャトルに乗った。後はモビルスーツ組が出撃するだけだ。

 

ブルワーズから接収した突撃艦も準備が出来た。行くぜ!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「アリアドネに反応!エイハブ・ウェーブ確認。報告にあった船と一致しました!」

「まさか本当に来るとは。いえそれでこそよ!」

 

美しい銀色の髪と、平安の日本貴族のように丸く整えられた眉毛の女性は、しかして平安女性には見られないであろう快活さで艦の全体に指示を飛ばす。

 

『カルタ司令』

「なにかしら、ガエリオ」

『あー、作戦への参加を認めていただき感謝しております』

「そうね。もっと感謝しなさい・・・それで、あの男はどうしたの?」

『あの男?』

「そっ、そんな鈍いことで今回の作戦が務まるの!?」

 

艦の通信担当の者たちはさすがに気が付いたらしく、くすくすと苦笑している。

 

「あの金髪の高慢ちきな、地位のためにしょんべん臭い子供なんぞと婚約したいっつも前髪イジイジしてる男のことよ!」

 

一瞬ガエリオの顔に影が差したが、すぐに吹き出した。

 

「相変わらずの物言いだ。マクギリスなら休暇中ですよ。地球でその子供と過ごしている」

 

どうも、その回答は理に適っていてもカルタの希望には沿っていなかった。

 

「地球に?それで私になんの報告もなかったと?」

『直属の上司でもないあなたに報告する義務が?』

「ガエリオ!あなたも我ら地球外縁軌道統制統合艦隊をバカにするつもり!?」

『いやそんなつもりは』

 

恐らく本当にそんなことは思っていないんだろうなぁと、ガエリオに面識のある親衛隊の面々は思う。

 

「いい!?成果を上げられなかったら承知しない。折檻が待ってるわよ!」

『折檻!?折檻って何・・・』

 

ガエリオがカルタを問いただそうとしたところで、大仰な仕草をしたカルタに合わせて通信が切れた。

 

「統制局の連中にお飾りだなんだと言われてきた私達、その真の実力をここで証明してあげる。我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!」

「「「面壁九年!堅牢堅固!」」」

「アドルフ!遅れてる!」

「申し訳ありません!」

 

親衛隊はよく訓練されているので、ほぼ完ぺきに仕事をこなす。その仕事ぶりは、部下はしっかり面倒を見るカルタの人望あってのことだ。ゆえに、カルタは自身の部隊が精強であり、実戦でも通用することを信じて疑わない。そして事実、地球の大抵のお飾り軍隊よりは強い。

ただ今回は、実戦経験のみででギャラルホルン最強のアリアンロッドにすら迫る鉄華団と、軍略と白兵戦の専門家、島津の男、そして稀代の天才マクギリス・ファリドと、相手が悪すぎるだけだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「調子はどうだ?アイン」

「今のところ問題ありません・・・大丈夫ですか?」

「いや、すまない。全く、思ってもみれば馬鹿な刷り込みだよ」

 

機械化することが絶対悪というのなら、それで命が救われたかもしれない者は死ぬべきなのだろうか?

思い込みとは恐ろしい。あるべき倫理感すら塗りつぶすものだ。ガエリオ自身、差別は辞めようと思ってはいても知らずのうちに差別していたわけだ。

全く持って腹立たしい、と顔をゆがめる。アインの背中を見て吐き気を催す自身も、こうなってしまったギャラルホルンもだ。

 

「お前は、お前こそギャラルホルンにいるべき人材だと俺は思う。自分を犠牲にして大望を成し遂げる人材が、ギャラルホルンには必要だ」

 

マクギリスは、ある意味そうだ。だが、あまりに急進すぎた。だから、ガエリオやアインが仲間となって今がある。

 

「私は・・・自分が判りません。火星の調査員から、鉄華団基地のクランク二尉の墓の事を聞きました。花と言葉が添えられていたと。私には、確かに見えていなかった物がある。結局、クランク二尉も彼らとどこかで分り合えなかっただけなのかもしれません」

 

子供が犠牲になることはない、とクランク二尉は言った。

進んで誰かのために戦う兵士に敬意を表すると墓へ掘られた言葉にはあった、

外から結果を見れば、恩師が少年兵に殺されただけだが、本当に彼らはそんなに冷たいだけの関係だったのか?

アインとクランク二尉のように敬意が行き来する関係ではなかったのか?

死ぬとき、クランク二尉はどのような心持で逝ってしまったのか?

今、アインは人が死ぬことの悲しみをさめざめと実感していた。復讐に駆られていたときの吹き上がるような悲しみとは違う、深々と降り積もるような悲しさだった。死んでしまった人間とは、生前以上に分り合うことが出来ない。残された言葉も、意図を問いただすことが出来ない。全て死んでしまっているのだ。

座ってただぽろぽろと涙を流しているアインを見てガエリオは目をそらし、キマリスを見た。この機体は、遠い昔に先祖が人類を守るために乗り回した曰く付きだ。

そのことは、ずっと誇りに思っていた。だが、マクギリスに言われて愕然とした。先祖は、確実に阿頼耶識システムを体に施していたのだ。全てはモビルアーマーを滅ぼすため。

そのための阿頼耶識、そのためのガンダムフレームだ。

 

「さて・・・性能テストはやらなくてはならない。あれを手に入れて全てを覆すために。必ずだ。行けるか?」

「・・・行けます」

 

アインは、改良されたシュバルベグレイズのコクピットへと乗り込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

地球外縁軌道統制統合艦隊の艦は、すべてが指揮を失い騒然としていた。

まず、イサリビがブルワーズの船を盾に吶喊した。鶴翼に構えた地球外縁軌道統制統合艦隊の艦艇は、包囲網を狭めて砲撃を集中しブルワーズの船は砕け散った。だが、ブルワーズの船は内部ブロックをすべて抜いてナノミラーチャフが詰めてあったのだ。そして、直前にカルタの乗る旗艦にアリアドネから緊急メッセージが入った。

 

『久しぶりだね、カルタ』

 

そう、マクギリスから。

 

『恐らく、このメッセージが送られているということは、君の近くに私が居らず、戦闘が行われているということなのだろう』

 

直後、ナノミラーチャフが展開されたがカルタは聞き入って何もできない。通信が途絶されるが、ダウンロードされたメッセージは言葉の続きを流す。

 

『だから、言っておかなければならないことを言おう。私は・・・アルミリアを世界で一番大事に思っている。故に、君に思いを向けることはできない。君の誇り高い性格に、私は敬意を抱いている。だからこそ、これだけは言っておきたかった。武運を祈る』

 

これがマクギリスの出した戦法。つまり相手の動揺を誘うということで、名瀬からはかなりの不評を食らっていた。だが、かなり有効である。もうイサリビは艦隊をすり抜けて、基地へ攻撃を行っていた。親衛隊がカルタ様!と声をかけて、ようやく我に返る。

 

「なぜこんなタイミングで・・・ああでも・・・・ええい!チャフが撒かれているのなら焼き払いなさい!」

 

どれでも、数瞬で状況を理解して指示を再開したのは訓練の賜物だろうか。それともいつも自室でマクギリスの色々な声を聞いてにやけているからだろうか。

 

「マクギリスにはあとできっちり話を聞かせてもらうわ!」

 

そして、救難信号を受け取って対応した指示を出したカルタは、親衛隊全員に出撃命令を下す。

 

「地球への不埒な侵入者を排して!地球外縁軌道統制統合艦隊の力を示しなさい!」

「「「はっ!」」」




すみません、前半しか書けませんでした・・・
次はアレです。
「サーフィンしようぜ!お前ボードな!」
のアレです。

ちなみに、鉄華団とクランク二尉はアインが思ってるほど素晴らしい関係では無いですが、本編ほど虚しくもないです。豊久や三日月から聞けるであろう情報に納得できるかはアイン次第です。

9/26追記
オルガ視点の豊久の名前をトヨさんに変更しました。

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