鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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今回はぁ・・・
白兵戦(モビルスーツにあらず)が沢山出ます


首狩り・下

「さて、では出陣の準備ばするど」

「あんたが一緒なら心強いぜ!」

 

敵の距離感を誤魔化すために、長距離航行できる百里と、ブースターで加速させたバルバトスが厄災戦時代の残骸の回廊を通って先行している。なんでも、タービンズはこのような相手から「人をさらう」ような仕事は大得意と言うことで、快く協力してくれた。

そして、イサリビがバルバトスたちを囮に敵艦へ横付けした後は・・・

 

(おい)たちが敵ん船ば乗り込んで斬攪するど!」

 

モビルワーカーで敵艦に突入し、白兵戦で敵本陣をかき乱すのだ。もうすぐその二機とのデータリンクが切れ作戦開始なのだが、その前に豊久から演説があった。

 

「お(まん)らは、確かに一度は金で買われたやも知らぬ!じゃっどん団長がなんば言うたか!わいらは人ぞ!ならば敵も人じゃ。容赦ばするな。下り首は助けい!(てがら)じゃ!(てがら)ば立てよ!」

「おおー!」

「だんちょー!トヨさーん!一生ついてくぜー!」

 

団長の、「ヒューマンデブリも人」という発言を踏まえた演説に、突入メンバーのやる気は最高潮だった。おそらく、これが戦国の武将に求められる才覚なのだろう。

 

『トヨさん!もうすぐだぜ、準備は良いか?』

「おう!いつでん良か!」

 

鉄華団とタービンズの準備は整った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「確か、全部首にしていいんだよね?」

「怖っ!?いや、まあいいと思うよ?」

「よし」

 

いつの間にか敵モビルスーツに囲まれていたが、三日月の第一声は太刀を抜いてからのそれだった。

襲い掛かってきた一機をバルバトスが捌き、モビルスーツ戦闘が開始された。

 

「え、ほんとに首切ってるし・・・うわぁコクピットも潰してるし・・・えぐい・・・」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

一方、モビルワーカー部隊も丁度突入していた。

 

「はっはぁー!首じゃぁ!首おいてけぇ!」

 

豊久は、いきなり曲がり角から顔を出した敵兵を、その姿を認識したとたんに首と体に両断した。流石の少年兵も、銃撃戦が主流なためにあまり断頭された死体など見たことが無かったのだろう。口元を抑えるものもいる。だが、豊久は止まることを許さない。

 

「止まるなぁ!止まったら死ぬど!死ぬなら敵の一人も道連れにせい!」

 

そう言って、次の敵を目がけて走り始める。

 

「おい!援護もなしで突っ込むなよ!」

 

比較的ショックが少なかったシノが、膝立ちで豊久の両側から援護射撃を加え、敵を怯ませ、死体が一つ増えた。

 

「くそ!やってやるぜ!」

 

それに触発されたのか、周りの連中も銃を構えて走り始めた。

 

「薩摩兵子で血迷っとらんものはおらん!黄泉の先駆けは誉れよ!」

「はっ!死んでたまるかっての!」

 

戦闘を豊久が、そのすぐ後をシノが、そして後詰めに他の連中が我先にとブリッジを目指して駆け抜ける。

 

「そこの部屋を確かめい!」

 

突然豊久が立ち止まって、閉まった部屋を確かめろと言う。

 

「おらぁって、何だガキ共じゃねぇか」

 

シノが、敵じゃねぇから安心しなと先を急ごうとしたが、豊久が出ていこうとしない。仁王立ちで少年たちの前に立っている。

 

「お(まん)は敵か!それとも下るか!言え!」

「お、おい、トヨさん」

 

シノは止めようとするが、目の前の少年が銃を構えた瞬間に、豊久は首を刎ねた。

 

「残りのもんはどうする!考えい!お(まん)らは人ぞ!誰かの駒ではなか!自分で考えよ!」

 

その言葉で何かが折れたのか、残りのメンバーは首を折って座り込んでしまった。

 

「誰ぞ、こやつらば連れていけ」

 

なんだなんだと見ていた後詰め連中から、一人が縄で縛って全員をイサリビの方へ連れて行った。

 

「トヨさん、あいつは・・・」

「誉めろ。あ奴は仲間ばまもらんと銃ば握り、ただ一人で歯向かった立派な兵子ぞ。侮辱は許さん!」

 

まさか誉めろ、と言われるとは思っていなかったため面食らった顔をしたシノだが、そうだなと呟いてまた銃を構えた。

 

「敵の本陣は近か!一気に攻め落とすど!」

「ダメっすよ!デブリの連中の書類見つけなきゃ」

「そうじゃ、大将は残して鏖殺ぞ!」

「あーもう、それでいいっす!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「しつこい!何だってのよこのネズミは!」

『あんた弱いね』

 

船外では、三日月がクダル・カデルのガンダムグシオンを圧倒していた。随伴していた五機ほどのマンロディはすでに首無しのコクピットが抉られたガラクタと化していた。

 

「誰か援護しなさい!おい!ああ~もうどいつもこいつも使えねぇ!」

 

普段からマンロディを囮にした戦法を主体にしているクダルは、実力の差もあって苦戦を強いられていた。否、負ける寸前と言ってもいい。

 

「装甲の隙間を狙ってきやがる!何なんだよこいつはよぉ!」

 

装甲の隙間を狙われた攻撃は、辛くも偶然動かした部分に連動した装甲で防いだものの、次は防げないことが分かってしまった。

なんとか、相手の振り寸前の太刀を腕をつかんで止める。

 

「ふざけんなよおい!お前楽しんでるだろう?人殺しをよぉ!」

『は?』

 

すぐに腕は振り払われ、離れ際にグレネードランチャーを放つが、残骸を上手く使われて躱された。

 

「もう~!死んで!死んでほしいよぉ~!」

 

そして、爆風の反動を利用して急接近したバルバトスに足で上半身に取り付かれる。

 

『そうだね。首をしっかり採らないとトヨに怒られちゃうよ』

 

居合術の応用で、首を一瞬で斬り飛ばす。そして、逆手に構えた太刀がコクピットを深々と抉った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「さて、うちらに喧嘩売った代金はしっかり払ってもらおうか」

 

ハンマーヘッドとイサリビから出てきた両船長が、ブルワーズの船長を座らせて問いただす。

ブリッジでは何があったのか想像に難くない程度には血まみれで、船長もすっかり怯えていた。

 

「ヒィ!命だけは!」

「うちの豊久さんですかねぇ・・・」

「やり過ぎだろ・・・」

 

あの殊勝に喧嘩を売っていたとは時と同一人物とは思えない変わりっぷりに流石に同情された。

 

「まあ船とモビルスーツ、後は船とヒューマンデブリの権利書か」

 

船長は終始頷くばかりで碌な反論はしなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「婚約パーティーなど本当に必要か?」

「そう言うなマクギリス。これも貴族の義務というやつさ」

「アルミリアに浮気したなどと言われるとさすがの私も傷つくぞ?お兄様」

「止めろ!」

「その、ボードウィン卿、私のような火星出身者が・・・」

「言うな。別にお前を優遇したからと言って差別が無くなるわけではないが・・・俺はお前のような誠実な人間が差別されるというのが我慢ならない!ああ、俺の自己満足さ!」

「なかなか良いことを言うじゃないか、ガエリオ」

「普段からそう呼んでくれ」

 

そんな掛け合いをする三人へ、門番の声が届いた。ボードウィン家令嬢。つまり、アルミリアが到着したのだ。会場へ「お人形さんのようね」「なんてかわいらしいのかしら」などと主に女性から称賛の声を浴びながら入場する。そして、マクギリスを見つけるなり凄まじい勢いで駆け寄ってきた。

 

「マッキー!」

「アルミリア、皆が見ているし、淑女があまり走り回るものではないよ」

「そうだぞ。お前のせいで家の格が下がる」

「お兄様は黙って!」

「あのなぁ・・・」

「ボードウィン卿、私は・・・」

「よし、アイン!婚約者同士の邪魔をするのは良くないな!俺たちはあっちへ行こう!」

 

よほど居づらかったのか、まるで夜逃げでもするかのような勢いでガエリオはアインを連れてどこかへ行ってしまった。

 

「あれだからお兄様は何時まで経っても結婚できないのですわ」

「ふふ、そうかもしれないね」

 

そう言いつつ、マクギリスはアルミリアの手を取る。

 

「さ、それでは踊ろう。パーティーの主役は私たちだからね」

「その・・・恥ずかしいわ」

「でも、我々が踊らなくてはパーティーが始まらない。ほら」

 

アルミリアは少し恥ずかしいのか頬を軽く染めているが、貴族として正しい教育を受けてきた賜物か、美しくステップを踏んでいる。

ガエリオは、それを上階から見ていた。

 

「やはり、あいつに任せて正解だな」




あまりに差があるギャラルホルンサイドと鉄華団サイド。
ブルワーズはケツの毛まで抜かれました。
マッキーは延々とアルミリアに付き添っていました(成人女性はガン無視)。
マッキー、やっぱり君は・・・

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