夕焼けに誓う幼馴染達   作:椿姫

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コラボ以来の投稿となります。
待ってくれた方々、ありがとうございます。



第46話 「浴衣を求めて」

〜SPACE〜

 

 

「ふぅ…それにしても暑いですね麻弥さん」

 

首に巻いてるタオルで汗を拭き取りながら一緒にバイトしている麻弥さんに声をかける。

 

「そうですね……滝くん、ジブン暑さで溶けてしまうかもです」

「そうなったらもはや異常気象ですよ…」

「あ、雄天くんと麻弥ちゃん休憩入ってー!」

 

バイト仲間であるリィさんの一言を待ってましたと言わんばりに麻弥さんが「了解です〜」と言ってリィさんと交代する。それに続いて僕も休憩に入る。

 

休憩エリアに行ってから麻弥さんは持ってきた飲料水をぐいっと一気に飲み干す。

 

「ぶっはあぁぁ…生き返るぅ…」

「麻弥さん…相当喉乾いてたんですね…」

 

苦笑いしながら僕もドリンクに口をつける。

 

「聞いてくださいよ滝くん!ジブン今日は本当は仕事も無くてオフだったから機材をいっぱい弄りたかったのに急に人が足りなくなったから来てほしいってことになったんですよ〜!」

 

麻弥さんは悔しがりながら愚痴る。

 

「でもその分の休みもらえたのでその日にたっぷりと機材巡りや弄りを…フフへへへ」

「そういう考え、麻弥さんらしいですね」

「も、もももしかして滝くんも機材巡りをしたいと!?」

 

麻弥さんが目を光らせながら顔を迫らせるが僕は申し訳なさそうに断りを入れた。

 

「いや、僕は大丈夫ですよ…」

「そうですか…でももし機材巡りしたくなったらジブンにいつでも連絡をくださいっ!」

「あはは…前向きに考えときますね」

 

話を終えてドリンクをしまうとふとあるポスターに目線が移る。それはもうすぐ開催される夏祭りのポスターだった。

 

「今年ももうこんな時期なんだなぁ…」

 

去年は確か手首を負傷した巴の代わりに祭太鼓を叩いた記憶がある。でも、今年はちゃんと巴が叩くことが決まってあこちゃんも商店街の人達も大喜びだった。

 

「ひまりと一緒に祭り回れるかなぁ…」

 

でもひまりの事だから、

 

『回れるかなぁじゃないよ!一緒に回るのっ!!まわってくれなきゃやだやだ!』

 

なんて言いそうだなぁ…今頃新しい浴衣買いにショッピングモールとかに行ってたりして。いや、流石に考えすぎたかな?

 

「滝くん、夏祭りはやっぱりひまりさんと回るんですか?」

「えぇ、まぁ」

「ふへへ、青春ですねぇ〜」

「麻弥さんはどうなんです?」

「ジブンはですね…今度の夏祭り、パスパレの皆さんと回ることになったんですよ!!」

 

麻弥さんは今からでも楽しみなのが滲み出るほど嬉しそうな表情だった。

 

「浴衣とかは買ったんです?」

「ジブン、以前レポーターのお仕事で使ったのがあるので。滝くんも浴衣で行くんですか?」

「僕ですか?僕は、私服ですかね…」

「ひまりさんと回るなら滝くんも浴衣の方がいいと思いますよ?」

「浴衣もいいかなーって思ったんですけど、僕あまり浴衣着ない人なんですよね……」

 

でも確かに浴衣の方がいいかも知れないな…心の中で僕はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまりside

 

 

〜ショッピングモール 浴衣売り場〜

 

 

「あ〜んっ!これじゃないっ!これも違う〜!」

「お、お客様落ち着いてください!?…て、店長、今何着目でしたっけ?」

「えっと…10から先は数えるのをやめた☆」

「あはは、ひまりったら張り切ってる〜☆ね?燐子?」

「上原さんらしい….です…」

 

私は今、夏祭りに着る浴衣を買いにリサさんと燐子さんとショッピングモールにいる。因みにリサさんと燐子さんは既に買い終わっててあとは私待ちって感じに……

 

「次はコレ!お願いしますっ!」

 

 

〜数分後〜

 

 

「ひまり、元気出しなって?」

「うぅ〜」

「う、上原さん…」

 

結局店の浴衣をあらかた試着してみた私は最後に来た浴衣も結局断念するほかなかった。今はリサさんと燐子さんとカフェで休憩がてらケーキを食べてる。

 

「ま、まさか胸があそこまでキツくなるなんて思わなかったですぅ…」

「店員の人もびっくりしてたもんね…目見開いてたよ?」

「でも…上原さん…スタイルいいですから仕方ないと、思います…よ?」

「そ、それ言ったら燐子さんの方がスタイルいいですって!海いった時凄かったですよねリサさん!?」

「確かに燐子、凄かったなぁ…」

「い、今井さん、言わないでください…恥ずかしいですから…」

 

ホントのことなのになぁ…呟きながらケーキを食べ終えて落胆する。

 

「浴衣どうしよぅ〜」

 

近くの店はあらかた行ってみたけどなんかこう、ぐっとこないんだよねぇ…

 

「ん?あれって…千聖さんと花音さん?」

 

私が見つめるテーブルの先には、やけに上機嫌そうな千聖さんと花音さんがいてその手には大きな紙袋がある。

 

「ほんとだ〜、でもなんであんなに上機嫌なんだろ?」

 

 

千聖side

 

 

「浴衣買うの手伝ってくれてありがとう千聖ちゃん」

「どういたしまして。喜んでくれたのなら私としても嬉しいわ」

 

そう言いながら私は紅茶を1口飲み、徐ろに思った事を花音に聞いてみる。

 

「花音は夏祭り、美咲ちゃんや薫達と回るのかしら?」

「う、うん。ハロハピのメンバーで回ろうってことになったんだ。こころちゃんに誘われたんだけど…迷子にならないか心配で…千聖ちゃんはやっぱり彩ちゃん達と回るの?」

 

そうね、と一言だけ言って再び紅茶に口を付けると声を掛けられる。

 

「千聖さーん、花音さーん!」

「あら?ひまりちゃん」

 

後ろからはリサちゃんと燐子ちゃんも駆け寄ってくる。

 

「松原さん…白鷺さん、どうも」

「2人は買い物帰り?」

「そんなところかしら。今は買い物を終えてこの通り、花音とお茶してたのよ」

「へぇ〜、何買ったの?」

 

リサちゃんに言われて私は紙袋に入ったものを見せる。

 

「うわ〜!浴衣かあ!」

「すごく…白鷺さんにあった色だと…思います」

 

リサちゃんと燐子ちゃんは私の買った浴衣を見て絶賛している。

 

「うぅ〜」

「……ひまりちゃん?そんなに浴衣をじっと見て…どうしたの?」

 

ひまりちゃんは瞳を潤ませながら顔を近づける。

 

「聞いてください千聖さん!実は…」

 

 

〜説明中〜

 

 

「…そういう事だったのね」

 

話を聞くとひまりちゃんは今度の夏祭りの時に着ていく浴衣を新調しようとしていて中々決まらない、ということみたい。

 

「千聖さ〜ん、助けてくださ〜い」

「助けてって…今あるものじゃダメなの?」

「折角ゆうまと夏祭り2人で回ろうって約束したんですよ〜!拘りたいです〜!」

「な、なるほどね…」

 

確かにそうなるとただ可愛くて綺麗な浴衣を勧めるって訳にも行かないわね。だったら…

 

「ひまりちゃん」

「千聖さん?どうしたんですか?」

「今からひまりちゃんの家、行っても大丈夫かしら?」

『え?』

 

私の発言にひまりちゃんを含めた他のみんなも目を丸くしていた。

 

「私の家ですか?だ、大丈夫ですけど…」

「それとこれはもし持ってたらでいいんだけど…合鍵とかあるかしら?雄天くん家のよ?」

 

私がそう言うと花音が入ってくる。

 

「ち、千聖ちゃん…いくらひまりちゃんと雄天くんが付き合ってるからってさ、流石にそれは…」

 

その花音の予想を裏切るようにひまりちゃんはバッグから鍵を取り出す。

 

「合鍵、ありますよ?」

『うそーん!?』

 

 

 

 

 

 

 

雄天side

 

 

「ただいま」

 

玄関の鍵を開けると何故か靴が沢山あった。ひまりの靴は分かるけどあと数人誰だ…?あ、なんでひまりの靴があるのかっていうのはひまりには僕の家の合鍵を渡してるんだよね。ひまりの親が遅い時とか出張でいない時があるしひまり曰く、

 

『合鍵あると恋人らしさってのが増すよね!ね?』

 

と、ちょっと強引に押し切られて合鍵を渡したんだよ。とまぁそれは置いといて…リビングの方に顔を出すとそこには意外な人がいた。

 

「あら雄天くん?お邪魔してるわよ」

「へ?なんで千聖さんが?」

「あ!ゆうまおかえりー!!」

 

不思議がっているとひまりが階段を勢いよく降りてくる。そしてそのまま僕と千聖さんがいるリビングまで突入してきた。

 

「ひまり?こ、これはどういう?」

 

ひまりの後ろには何故か燐子さんとリサさん、花音さんもいた。

 

事情を聞くと、ひまりは新しい浴衣を買いにショッピングモールで大奮闘したけどなんやかんやあって千聖さん達に協力してもらった…ってわけらしい。

 

「そうだったんだ…だから浴衣着て飛びついてきたってわけなんだね?」

 

そう言いながらひまりの頭を優しく撫でる。

 

「えへへぇ…どう、かな?似合ってる?」

「聞いてくる方が野暮じゃない?すっごく似合ってるよ」

「むぅ…頑張ったんだからもっと褒めてよ〜?」

 

ぷくっと頬を膨らませるひまりに対して僕は

 

「…はいはい」

 

と言って頬に優しく触れる。

 

「あのー、2人とも盛り上がってるところ悪いんだけど…」

『あ』

 

リサさんの仲介でようやく今の状況を理解する。ひまりに押し倒されている状態でこんな事してる所をリサさん達に見られてる。恥ずかしくなった僕は慌てて顔を逸らす。

 

「…す、すいません」

「いや〜2人のラブラブっぷりは分かるけど…その、ね?」

 

仲介に入った当の本人であるリサさんも顔を赤くしながら頬をかく。花音さんと燐子さんも同じく赤くなっている。千聖さんはと言うと…

 

「なんでちょっとニヤニヤしてるんですっ!?」

「ごめんなさい…顔に出ちゃってたかしら?」

「出てましたよぉ!!」

 

この後は手伝ってくれたお詫びを兼ねて千聖さん達には夕飯をご馳走した。食べ終わって食器を片付けてるとひまりがあるものを見つける。

 

「ねぇゆうま、これ何?」

 

それは僕がバイト帰りに買ってきた物が入ってる紙袋だった。

 

「あ、それは…」

 

取り出すとその中には、浴衣が入っていた。ひまりはそれを見て驚いている。

 

「えっ!?どうしたのこれ?」

 

祭り当日までは黙ってようと思ったけど…見つかったからもう隠す必要ないかもな…

 

「実は…今度の夏祭り、ひまりと一緒に回るってなったから僕も浴衣を新調しようかなって思って…」

 

恥ずかしがりながらも答えるとひまりは目を輝かせる。

 

「か、勘違いしないでね?今日のバイトで麻弥さんに勧められてそういう話になっただけだからね?」

「なにそれ〜?ツンデレ?」

「ち、違うってば!!」

「素直に『ひまりと浴衣着て回りたい』って言ってよゆうま〜♡」

 

す、素直に言ったら…なんか恥ずかしいじゃん。そう思いながらしばらくの間、浴衣のことでひまりにからかわれ続けることになるのは今の僕は知るよしもなかった。

 





次回はゆうまとひまりの夏祭りです。
たっぷりイチャつかせたいと思います。
オンゲキ(新作音ゲー)クソ楽しすぎてやばいっす☆

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