夕焼けに誓う幼馴染達   作:椿姫

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今回は節分の話になります。個人的に出番の少ないポピパメンバーとの絡みも混ぜました。まぁ殆ど出番なかったあの人を出したいという僕の考えですけど。


第42話「節分と豆撒き 時々ポピパ」

雄天side

 

 

「ふぅ…」

 

家全体の掃除を終えて僕は掃除機をしまう。最近する機会がなかったから今のうちにしないといけないんだよ……

 

「さて…そろそろ行かないと…」

時間を確認した僕はそう呟き豆と恵方巻の材料を買いに行く準備をしようすると家のチャイムが鳴る。玄関の戸を開けると

 

「ゆうまぁーーっ!!」

 

ひまりが勢いよく抱き着いてくる。

 

「おはよひまり、どうしたの?」

「ねぇねぇ、今日は何の日かわかる!?」

「節分でしょ?今から僕その豆とか恵方巻の食材買いに行かないといけないんだけど…」

「え!?買い物行くのー!?私も行く!連れてって連れてって〜」

 

そう言いながらひまりが頬ずりしてくる。

 

「来ていいから1回離れて、ね?」

「は〜い」

 

そう言ってひまりは離れる。

僕はちょっと待ってと言ってその場を後にして部屋から財布とバッグを取りに行く。玄関まで戻ってくるとひまりは隣に来て僕の手を取り引っ張る。

 

「じゃあ出発だ〜!えいえいおー!」

「ちょ、そんな腕引っ張ったら痛いから!?」

 

はぁ…全くひまりったら。毎年僕やひまり達で集まって豆撒きはするんだけど今年も鬼の役は巴がやるのかな…前に巴が、

 

『豆撒きの時期になるとアタシが鬼やることになるんだよな…』

 

って言ってため息ついてたな…今年は僕がやろっかな。そんなことを思いながら僕はひまりと買い物に行った。

 

 

有咲side

 

 

「あーりさー!!」

「うわっ!なんだよ香澄!?」

「今日は何の日か分かるー!?」

 

ったく、なんで私が答えなきゃ…ってそんな顔キラキラさせんな!?

 

「あーはいはい、節分だよ」

「そう!節分!だから有咲ぁ〜、鬼の役やって〜」

「やっぱそう来たか……ってはぁっ!?」

 

は?今こいつなんて言った!?私に鬼の役!?

 

「ふざけんな!!お前がやれ!!普段迷惑かけたりしてんだからその償いしろよ!!」

「有咲しかいないんだよ〜!」

「何でだよっ!他にいるだろっ!?おたえとか沙綾とか!!」

 

鬼役になったら絶対投げつけられまくるじゃねぇか!

 

「皆にこの前聞いたら『有咲が適任じゃないか』って言ってたも〜ん!だからお願〜い!」

 

本当にそうなのかおたえと沙綾の顔を見るとおたえは親指たててるし沙綾は若干苦笑いだし……お前ら後で覚えてろよ…ん?

 

「おい、りみも私が良いって言ったのか?」

 

そう言ってりみの方に身体を向ける。

 

「えっ!?わ、私は言ってないよ…気付いたらそう言う話になってて…」

 

なんだよ…だったら良かっ、いや、良くねぇ!!

 

「ね?お願い有咲……ダメ?」

 

再び香澄が目をキラキラさせてこっちを見てくる。

 

「いいか……なんて言われても私はやんねーぞっ!!」

 

そう言って私は蔵から出た。

 

「待ってよ有咲〜!?」

 

香澄達が追っかけてくる気がしたが私はお構い無しに走っていった。

 

 

雄天side

 

 

買い物を終えた僕とひまりは帰る途中でつぐみの家に寄ることにした。

 

「お疲れ様雄天くん、ひまりちゃん…荷物多いね…」

 

つぐみは僕のエコバッグを見ている。その中には恵方巻に使う材料とこれでもかというくらいの豆が入っていた。

 

「これは…まぁ若しかしたらモカがいっぱい食べるかもしれないから保険…かな?」

「あはは…去年モカちゃん豆撒きの豆食べてばっかりだったからもしかして?」

 

つぐみの苦笑いに僕も頷く。投げずにただむしゃむしゃしてたからね…今年もそんなふうになるかと思うと沢山買っておかないとって思っちゃうし…

 

「あれ?」

「つぐみ?」

「今窓の外走っていったのって…有咲ちゃん?」

 

見てみるとそこにはぜぇぜぇと息を切らして走ってる市ヶ谷さんがいた。そしてそのまま、店の中に入ってきた。

 

「はぁ…はぁ…」

「有咲ちゃんどうしたの?」

「は、羽沢さん…いやぁ、ちょっと色々あって…」

「もしかしなくても…香澄?」

 

僕がそう聞くと市ヶ谷さんが僕とひまりが座っている席に来て懇願する。

 

「分かってくれるかっ!?そうなんだよっ!香澄のやつが…」

 

 

〜有咲説明中〜

 

「ってわけなんだよ!何とかしてくれ!ええと…おまえの名前なんだっけ?」

 

市ヶ谷さんが僕に聞いてくる。

 

「あ、まだちゃんと自己紹介してなかったね。僕は滝河雄天、下の名前でも苗字でも呼び方は何でもいいよ?」

「じゃあ滝河、香澄を説得すんの手伝ってくれないか!?」

「説得ってそんな大袈裟な…ていうか市ヶ谷さんそんなに鬼の役嫌、なんだね?」

「当たり前だろ!?誰が好き好んで豆当たられなきゃいけねぇんだよっ!?」

 

市ヶ谷さんは必死になって弁解する。よっぽど嫌なのか…巴の気持ちがわかった気がする…

 

「ねぇねぇゆうま」

 

ひまりがつついてくる。

 

「どうしたのひまり?」

「ゆうまと有咲ちゃんの話聞いてたらいいこと思いついちゃったんだ〜」

 

ひまりがニヤニヤしながら話す。こういう時は何かするんじゃないかと今までの経緯から察することが出来る。市ヶ谷さんも不思議そうにひまりを見る。

 

「う、上原さん…?」

「ひ、ひまりちゃん……?」

「ふっふっふ〜、ポピパと私達で一緒に豆撒きするってのはどう?もちろん鬼役は……」

 

そう言ってひまりは僕の方を向く。それにつられてつぐみも市ヶ谷さんも僕の方を見て……ん?

 

「えっ!?ちょっと待って僕が鬼役前提なのそれ!?」

「滝河…お前私の代わりに生贄…身代わりになってくれるのかっ!?」

「サラッと生贄って言ったよね!と言うか身代わりでも大して意味変わってないよ!?」

「ゆうまぁ」

 

ひまりがうるうるさせながら僕を見る。

 

「お願ぁ〜い、今日だけ私達と有咲ちゃんの為に……ね?」

「い、いくらひまりからのお願いでもそ、それは…そ、その……」

「……………お願い♡」

 

ふと横を見るとつぐみと市ヶ谷さんも僕を見ていた。そして僕が「やる」と言うのをずっと待っている。

 

(うわ〜、もうこれ絶対断れないタイプのやつじゃん……)

 

暫し考えて僕は「しょうがないなぁ」と言って鬼の役を引き受ける事にした。

 

「やったぁ!ありがとゆうま♪」

「滝河…お前良い奴だな…」

 

そんなわけで僕が鬼の役をすることになりました。その後は市ヶ谷さんと一緒に家まで行くと香澄がなんで僕といるのか聞いてきて事情を話すとあっさり納得してくれた。のはいいんだが…

 

「それで雄天君、どこで豆撒きするの?」

 

香澄がそう言うとどこでやるかはまだ決まってなかったからなのかみんな考え込む。すると市ヶ谷さんが口を開く。

 

「あ、あの……う、うちは家、広いからみ、みんな来るか?」

 

市ヶ谷さんの提案にみんなが目を細める。

 

「ありしゃあ〜!」

「か、香澄っ!!抱きつくな〜っ!?」

 

香澄が市ヶ谷さんに勢いよく抱きつく。

 

「ありがとありしゃあぁ〜大好きぃ!!」

「ちょま、勘違いすんなっ!!別にみんなでやりたいとかじゃねーよ!?滝河が鬼の役代わりにやってくれるから場所を提供してやったんだよっ!!」

 

そう言ってる市ヶ谷さんの顔はどこか嬉しそうだったがあまり茶々を入れるわけにも行かなかったので僕もひまりもそっとしておいた。

 

「お、おい滝河!!見てないで助けろっ!?」

「あ、もしもし蘭?今からさ…」

「聞けえぇぇぇぇぇ!!」

 

市ヶ谷さんの声は虚しく空に響いた。

 

 

 

 

 

 

このあとは、蘭やモカ達と合流して市ヶ谷さんの家にみんなで向かった。夕飯は市ヶ谷さんのおばあちゃんと僕で節分の料理を作り振舞った。恵方巻を1本じゃ足りないと言い出したモカが6本も食べた時にはびっくりしたよ…口の中もっふもっふしながら「おいひー」なんて言ってたし。食べ終わってからは鬼の役を引き受けた僕とやることが確定してる巴が鬼に扮してやったわけだけど…

 

「鬼は外ー!!福は内ー!!ほらほら!鬼さんは逃げないとーっ!!」

「ちょ、ひまりっ!痛い!」

 

ひまりは何故か容赦なく投げてくるし、

 

「お、鬼は外………は、恥ずかしいからやんないっ!」

 

蘭は恥ずかしがってやんないしモカは、

 

「もぐもぐ……お豆おいし〜」

「ちょいモカっ!?投げる前に食べないでっ!?」

 

豆撒き用の豆を口いっぱい頬張って投げてないし!ま、まぁたえや香澄は無論容赦無しに投げてきた。予想出来てたけどね…牛込さんは可哀想って言って投げないし…つぐみはつぐってたし、まあ色々カオスでした。

 

豆撒きのあとは一斉に解散して家に帰ることになった。僕は夕飯を結局食べてなかったので家で食べることにした。だってみんなすごい勢いで食べるからさ…まぁ喜んでくれてたし何よりだよ。

 

「さて…」

 

買った材料の残りを使って恵方巻をつくる。

 

「今年の方角は……南南東だったかな?」

 

僕は早速食べようとすると、

 

「ゆうま〜ちゃんと喋らずに食べられるかな〜?」

 

リビングのソファにひまりが座っていた。

 

「おうっふ!?ひ、ひまりっ!?いつからいたの!?」

「ん〜?ゆうまが恵方巻を作ってた時からだよ?」

「えっ!?マジでっ!?」

「マジだよ♪因みに私の潜伏スキルはA+だよ♪」

「潜伏スキルって何!?どこのサーヴァント!?」

「そんな事はいいじゃん♪早く食べないと」

 

ひまりに流され僕は恵方巻を食べ始める。なんだっけかな…喋らずに食べ終えればいいんだよね?

 

(今年もひまりと……みんなと一緒に『いつも通り』の日常を送れますように……)

 

半分くらい食べながら横を見るとひまりがずっとニヤニヤしながら僕の事を見てる。謎の羞恥に耐えながらも食べ続ける。

 

「……あ、そうだ♪」

 

なにか思いついたのかひまりは僕の前にきてそのまま僕の肩に手を置く。何をするかと思いきや、僕が食べてる恵方巻を反対側から食べ始めた。何をしてるのか状況が掴めない僕に対してひまりは迷わず食べ進めていき食べ終わるころには僕とひまりの唇が触れていた。

 

「えへへぇ〜、これだったらお願いごと、叶うよね?」

「……いきなりそういうのは卑怯なんじゃない?」

「いーじゃんいーじゃん♪じゃあ私帰るね〜、おやすみ♪」

 

ひまりは上機嫌で階段を駆け上がっていった。

 

「全く…今年もひまりには振り回されそうだな…」

 

そう呟き僕は皿を片付けた。

 





学校の方であった技能試験と論文発表会を終えて一安心しています…が、水木とテストがあり安心できません椿姫です。今回も読んでいただきありがとうございます。

次回更新はバレンタインデーになるかと思います。チョコよりも甘々な話書けたら自分を褒めてやりたいです…

他の小説も更新していけたらなと思います。

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