1話 プロローグ
【◼️◼️視点】
一面の焼け野原、未だ勢いの衰えない炎、
そんな中、2つの小さな影が走っていた。
兄と思われる少年、それに手を引かれ怯えながらも走る少女。そんな2人を囲むようにして上がった炎に、少年は息をのんだ。
(どうするっ、どうすればいい!!)
妹はすでに疲れ果て、もう意識もはっきりしていなかった。彼自身もう限界である。考えに考えた結果、彼は1つの結論に至った。
(妹は、妹だけは、絶対に生き延びさせる!!)
そう考えた途端、彼は妹の上に被さり、妹を炎から守ろうとした。そんな2人を、炎は容赦なく包み込んだ。
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「誰か、誰かいないのか!!」
知らない人の声がする。誰だろう。とても悲しそうな声だ。私は声のする方を見た。
「誰でもいい!誰か返事をしてくれ!」
見るとそこには知らない男の人が泣きながら叫んでいた。私はここにいるよ……、駄目だ。声がでないよ。ここにいるのに………。私はこのまま死んでしまうのかな。そんな事を考えていると、男の人は私に気がついた。
「!?」
すぐに走ってきて、私を抱きかかえた。そして私がかろうじてだけど生きている事を確認すると、
「あぁ、生きていてくれたんだね!……ありがとう!」
その言葉を最後に、私は意識を手放してしまった。
目を覚ますと、そこには知らない天井があった。暫くその天井を見ていると意識がはっきりしてきた。そこで辺りを見渡してみると
「!?目が覚めたの!よかった……。あっ、早く先生を呼ばなきゃ!」
私に気がついた看護師さんが、とても驚いて先生を呼びに行った。先生の話によるとどうやら2日間目を覚まさなかったらしい。
「……ところで君、自分のお名前は言えるかな?」
「えっ?」
突然そんな事を言われて少し驚いた。でもそこで、自分が名前を言っていなかったことに気がついた。けど、そこで異変に気がついた。
私の名前は、私の、名…前……、あ、れ……?
「私、の、名前って……何?」
先生によると、私は記憶喪失らしい。先生の隣に立っていた看護師さんは泣きながら私の手を握ってくれたけど、私はあまりピンとこなくて、涙もでなかった。そのとき、私の頭に浮かんできた言葉があった。
「シロウ………。」
「!?もしかして記憶が少し戻ったのかい!?シロウというのは君の名前か?他に思いだしたことは?」
「……わかりません。」
私は少し怯えちゃったのか、小さな声でそういった。そんな様子を見たのか、看護師さんが「もう!怖がってるじゃないですか!」と怒りながらいうと、「す、すまない……。」と謝ってきた。
「いえ、びっくりしたのは本当ですけど、もう大丈夫です。」
と2人にいった。
「いや、本当にすまなかった。でも、何か思い出したらすぐにいってくれ。それと、せっかくだから君が思い出した、士郎、という名前を君の名前にしよう。」
「あ、いいですね。名前が無いと不便ですから。それじゃ、これからよろしくね、士郎君。」
「?君達は何か勘違いしているのではないか?。」
別の先生が1人そんな事を言いながら入ってきた。2人はどういうことかという眼差しでその人を見た。
「この子は女の子だ。」
瞬間、2人は固まった。
話を聞くと、 どうやら2人は私の手当てをしてくれた人じゃなかったらしく、なおかつ髪が短い私を男の子と勘違いしたらしい。先生や看護師さんは、私の名前を少し考えてこようと言ってくれたが、私は士郎という名前を忘れてはいけない、とても大切な名前の様に感じ、とっさに、
「…嫌!!」
と叫んでしまった。2人はそんな私に少し驚いていた。私ははっ、と我にかえり、咄嗟に顔を隠してしまった。
先生が優しい声で、何が嫌なのかを聞いてきた。
「わ…たし、シロウじゃ…なきゃ…やだ…。」
少し涙まじりに言うと、2人は、君がその名がいいなら、と言ってくれた。私は顔を出して心からの笑顔をむけた。
そして私は、士郎と名付けられた。
病院での生活は2週間くらい過ぎただろう。私はここでいろいろなことを教えてもらった。ご飯やお風呂、トイレやそのほかの生活に必要なこと。人にあったら挨拶をする事。当たり前の事らしいけれど今の私は、その当たり前の事さえも忘れている。でも、あまり気落ちはしていない。確かに昔の記憶はもうない。でも、私にはまだこれから先がある。だから、また最初から覚えていけばいい。そんな事をおもって、この2週間を過ごしてきたし、これからもそうして生きていくつもりだ。そんな2週間を過ぎた今日、私にお客さんがきているらしい。私が何も覚えてない事は伝えてあるって先生がいってたから少し安心だけど一体誰だろう……?
そこにコンコン、とドアを叩く音が聞こえた。私は先生だと思って「どうぞ〜。」と少し軽めに返事をしてしまった。ドアが開いた。すると知らない男の人と女の人がはいってきた。もしかして、この人たちが私の、お、お客さん!?その事に気づくとさっきの返事がとても恥ずかしくなって、思わず顔を隠してしまった。顔を隠すのは私の癖だと先生に笑われたから、もうしないって誓ったのに…うぅ〜…。そして布団から少しずつ顔を出して入ってきた2人を見た。2人はそんな私を見て、男の人は急に顔を抑えて後ろを向き、女の人はギラギラした目で私を見つめてくる。私、何かしたかな?
色々あってやっと落ち着いたらしく、男の人が私に話しかけてきた。
「やぁ、君が士郎ちゃんだね。」
「はい。」
「率直に聞くけどけど、きみはこのまま孤児院に預けられるのと、初めてあった夫婦に引き取られるの、どっちがいい?」
「えっ?」
突然の事で私は何が何だかわからなくなった。
「もう、切嗣ったら。そんな言い方じゃこの子も混乱するでしょう?」
女の人がそう言うと男の人は「あぁ、ごめん。」と謝った。
「ごめんなさいね。うちの人が。あなたも困っちゃったわよね。」
「い、いえ。」
そのあと話を聞くとどうやら2人は見ず知らずの私を引き取ってもいいというのだ。どうやら2人には娘もいて私にその子の姉になってほしいとも言われた。孤児院に行くのとこの人たちに引き取られるの、どちらも知らないところに行くならと私は深く頭を下げて、
「よろしくお願いします。」
そう返事をすると、女の人は、
「もう、そうじゃないでしょ。」
と言ってきた。え、何か違ったのかな、と私が考えていると、
「私達はこれから家族になるのよ。そんな緊張しないで。私達には笑顔を見せて。」
そう言われると、涙が出てきてしまった。それを拭って、2人に向かって、とびきりの笑顔で、
「よろしく!お父さん、お母さん!」
そう言うと、お父さんは倒れてしまい、お母さんは私に抱きついてきた。大丈夫かな、とも思ったけど、多分大丈夫だろう。
これからの生活が楽しみ!!
私はこういうのを書くのは初めてなので、正直不安です。
自分で何回も読み直しましたが、どこかおかしな点があるかもしれません。誤字なども含めて教えて頂けたら嬉しいです。また、感想やアドバイスもお待ちしています。