幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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暑いです。
蒸し暑いです。
どっかでレンタルチルノやってないでしょうか、レンタルレティかレンタル文でも……あ、熱風になるからダメか。

と言うわけで(?)
2つに分けた一方通行との決戦です。


第75話 「最弱VS最強(前編)」

第一〇〇三二実験場

 

バイクを飛ばして俺と当麻が到着した時、既に実験は終わりかけていた。

10032号は血まみれになって倒れていて、無傷の一方通行が笑いながら見下ろしている。

それを見た瞬間、頭に浮かんだのはミクと最初に出会った夜の事だった。

俺は一瞬膠着していたが、当麻は素早くバイクから飛び降りて駆け出して行った。

当麻に気付いたの一方通行はだるそうに顔を上げた。

 

「おいおい、一体どーなってンだよ。これで乱入者は何回目だァ? いい加減学習しろよォ。んで、今回の場合、実験はどーなンだァ?」

「なぜ……あなたが、ここッ!?」

 

当麻の出現に驚いた10032号が起き上がろうとしたが、一方通行がその頭を踏みつけた。

 

「何だ今度はお前の知り合いかァ? いい加減うンざりなんだよなァ。今度こそ口封じってお約束の展開に……「離れろよ」……ア? なンか言ったかァ?」

 

「今すぐ御坂妹から離れろっつてんだ! 聞こえねえのか三下ぁ!!」

 

当麻の怒りに満ちた咆哮が辺り一面に木霊した。あんな顔をした当麻は初めて見た。

 

「ハァ? オマエナニサマ?」

 

一方通行は当麻の叫びに半ば呆気に取られながらも、またすぐにやけた面に戻った

 

「その様子じゃァ実験や俺の事を知っているみたいだが……」

 

一方通行が何気なく蹴った小石は加速し、当麻の近くにあった柱を撃ち抜いた。

それでも当麻は動じずまっすぐに一方通行を睨みつける。

 

「へぇ、オマエ面白ェな。俺を最強と知ってそンなに牙を……」

「グチャグチャ言ってねえで、離れろっつてんだろ!」

「離れろ、ねェ?」

 

一方通行が倒れ伏した10032号に目を向けた。

まずい。あの野郎!

 

「なら、ちゃんとキャッチしろよ?」

 

そう言って一方通行は10032号を当麻のいる方とは全く別の方向へ蹴り飛ばした。

さっきの小石のようにそれほど加速はさせてないが、大きく跳ね跳んだ。

当麻からは遠すぎて間に合わない。

俺は一方通行の能力を使い、急いで10032号をキャッチした。

見るからに頭部からの出血がひどかったので、負担がかからないように受け止め、ゆっくりと地面に着地した。

 

「ふぅ、危なかった。安心しろ、彼女は無事……とまでは言わないけど、大丈夫だ」

「ユウキ! そっか、良かった」

「アァ? てめェは……そうかそうか、1人じゃ俺に勝てないからお仲間を連れてきましたってかァ? その割には弱そうな雑魚を連れてきたなァ」

 

10032号を抱えて当麻の横に降り立った俺を見て、一方通行は何か勘違いをしていた。

 

「勘違いすんじゃねぇよ、三下。お前をぶっ飛ばすのは俺だ!」

「クッ、クククッ……ホンット、面白れェなァ」

 

意識が朦朧としていた10032号はうっすらと目を開け、当麻と俺を交互に見上げた。

 

「な、何をしているのですかあなた達は、とミサカは問いかけます。ミサカは必要な機材と薬品があれば……モガッ?」

「あーその手の話はもう飽きた。いいから黙ってろ、今治療するから」

 

いつか聞いたようなセリフを言おうとする10032……御坂妹の口に手をあて黙らす。

 

「関係ねぇよ。お前が作りモノの体とか、心とか、そんな小さい事情なんてどうでもいい。ってか俺に聞くのはとんでもなく今更だぞ? この馬鹿は別にして」

「馬鹿は余計だろ……ともかく、俺達は世界にたった1人しかいないお前を助ける為に、ここに立ってんだよ」

 

御坂妹は俺達の言葉が理解出来ていないのか、目をぱちくりさせている。

 

「お前には言いたい事は山ほど残ってんだ。だから勝手に死ぬんじゃねえぞ。ユウキ、御坂妹の事任せた」

「あぁ、俺が言った事忘れるなよ」

 

ここに来るまで、一方通行と戦うに当たっての当麻の取るべき戦法はいくつか教えてある。

当麻は頷くと一方通行へと向き直る。一方通行はさっきからただ笑って見ているだけだ。

 

「私の治療より、彼を止めてください。一方通行の強さはあなたも分かっているでしょう? とミサカは促します」

「俺は一方通行との戦闘には参加出来ない。アイツに任せるしかないんだ。だから、まずはお前の怪我の治療が先だ」

 

あっちは当麻に任せた。なら俺は俺のやれる事をする。

バイクから緊急医療キットを取り出し、応急処置を始めた。

裂傷や火傷、あらゆる怪我に対応した道具はいつも常備している。

幻想支配があるとはいえ、結局は自分の体一つでやっていくんだから、これくらいの装備は必需品だ。

あいにく検査する機器は持っていないが、今は一方通行のベクトル操作能力がある。

これを応用して、血の流れなどを測定し出血個所と骨に異常はないかを診てみる。

脳波が少し乱れて、頭部からの出血がミクの時よりも酷い。

御坂妹の意識ははっきりとしているのが幸いだ。

鎮痛剤を打って、出血個所に薬を塗って行く。

早く病院に連れて行った方がいい事には変わりはない。

けれども今この場を離れるわけにはいかない。

 

「……彼は、あの時のあなたと同じ顔をしていました。とミサカは思い出しながら呟きます」

 

黙って治療を受けていた御坂妹はポツリとそう呟いた。

 

「あの時?」

「数日前、突然実験に乱入し993、ミクを助けようとした時のあなたと、同じ顔で怒っていました。とミサカは答えます」

「……そっか」

 

それだけ返事をして、冥土帰しに電話をした。

 

『もしもし、こんな時間にどうしたんだい?』

「診察予約だ。患者は2人、1人は妹達だ。実験を中断させたが、重傷だ。応急処置はすませた」

『そうかい。君の腕なら問題はないね。で、すぐに連れて来れそうなのかい?』

 

俺の口ぶりから通常の事態とは違うとすぐに感じ取ってくれた。こういうのは流石だ。

 

「いや、まだ無理だ。それと、もう1人追加になる。そっちはまだどんな怪我になるかは分からない」

『なるほど、カレだね? 実験を中断させたと言うけど、君達は今一体どんな状況だい?』

「一方通行と戦闘中。俺は手が出せない」

 

それだけで全部理解出来たようで、冥土帰しは電話の向こうで深いため息をはいていた。

 

『……なるほど、理解出来たよ。またとんでもない事やっているね、君達は。ともかく、死なせないで連れて来てくれ。死んでいなければ必ず治してみせるからね?』

「あぁ、妹達もアイツも絶対に死なせねぇよ」

 

今も向こうで一方通行に吹き飛ばされている当麻に目を向け、電話を切った。

最悪、一方通行を殺してでも死なせない。

その場合、実験がどうなるか予測できないが、それしか道はない。

 

「や、やはりあなたも彼を助けに行ってあげて下さい。とミサカは懇願します」

「……移動するぞ」

 

尚も頼もうとする御坂妹を抱きかかえ、その場を離れた。

出来るだけ頭部に負担を強いないように空を飛び、見晴らしのいい場所へと移動する。

こう言う時一方通行の能力は便利だな。

2人はコンテナ置き場へと移動し、激しい戦いを続けている。

しかし、実際は一方通行がただベクトル操作で一方的に当麻に攻撃しているだけだ。

当麻は幻想殺しを使うどころか、接近する事すら出来ていない。

 

「…っ、は、離して下さい。とミサカは叫びます」

 

今にも飛びだしそうな御坂妹を止める。

 

「ダメだ。今行けば、アイツがああまでして戦っている意味がなくなる。俺が何のためにお前の側にいると思っている?」

「し、しかし、このままではあの人は! とミサカは反論します」

「……まだだ、まだアイツは負けてない」

 

コンテナが派手に吹き飛ばされ、その中で傷だらけになりながらも当麻は立っていた。

さっきと変わらい目をして瓦礫の山に立つ一方通行を睨みつけている。

状況は圧倒的に一方通行が優勢だ。

なのに、一方通行はイラついていた。

 

「チッ、オマエ自分が最弱だって事が理解できていねェのか? そんなに死にたいなら、愉快なオブジェに変えてやンよ」

 

一方通行は壊れたコンテナの中から出てきた袋に目を向けている。

アレは、小麦粉か? だとすれば、一方通行がしようとしているのは!?

 

「いい具合に今日は無風状態だ。こンだけ小麦粉がありゃ、クククッ……よォ三下、粉塵爆発って知ってるか?」

「っ!?」

 

当麻も一方通行の狙いに気付いたようで、一目散にその場から走りだしたが、遅い。

一歩通行が蹴り飛ばしたコンテナが激しくぶつかり合い、火花を散らした。

と、同時に大爆発が起こった。その規模は大きく、あっという間に俺達のいる所まで炎と爆炎が迫ってきた。

 

「ちぃ! 伏せてろ御坂妹!」

「は、はい!」

 

一方通行の能力で防げはしたが、今ので能力を使いきってしまったようだ。

 

「大丈夫か、御坂妹?」

「は、はい、私は大丈夫ですが……か、彼は!?」

「あそこだ。アイツもどうやら大丈夫だ。当然一方通行もな」

 

俺が指さした先では、さっきよりもボロボロになった当麻と無傷の一方通行が対峙している。

 

「オマエさァ、よく頑張ったぜ? この一方通行相手にこうも五体満足で生きているだ。だから……まァ、楽になれ!」

 

一方通行は両手を広げて当麻へと向かって行った。

右手か左手、どちらかが触れても生体電気や血の流れを変えて殺せる魔手。

 

――来たっ!

 

俺と当麻もそう思っただろう。

当麻の幻想殺しを正確に当てれる瞬間、それは一方通行が自分から迫って来た時だ。

一方通行の反射を突破できる幻想殺しの最大の弱点は、右手で触れなければいけない事。

その為には当麻は右手で一方通行を殴る必要があったが、無暗に近寄っても返り討ちが関の山。

それに最悪当麻の右手には何かがあると警戒させてしまう恐れがあった。

だから、当麻に伝えた事、最初は自分から無計画に突っ込み、一方通行を油断させる事。

当麻は無能力者で、切り札もなにもないと思わせる事。

だから当麻は最初こそ自分から突っ込んだが、それ以降は一方通行の攻撃を避ける事に専念した。

と言っても、意識的に専念しなくてもそうせざるを得ない状況になる事は簡単に予想出来た。

それでも、当麻はこの一瞬を待っていた。

一方通行が自分から突進してくるこの瞬間、カウンターの要領で右手の幻想殺しで、ブン殴る!

 

「うおぉぉ~~!!!」

 

当麻の叫んだ次の瞬間、一方通行は飛んでいた。

自分から飛んだわけではない、当麻の右手に殴り飛ばされたのだ。

 

「なンだ、コリャあァァ~~!」

 

一方通行がしばらく自分がどうなったのか理解できないようで、殴られた痛みと鼻から出で手についた自分の血を茫然と眺めていた。

 

「愉快に素敵に、キマっちまったぞ、オマエはァ!!」

 

それでもすぐに立ち直り、近づいてきた当麻に再び手を伸ばす。

 

「ぁ……え?」

 

しかし、その手も当麻の右手に簡単に振りはらわれた。

そして、再び当麻のカウンターが一方通行の顔面を捉えた。

 

「あ、あの一方通行が2度も殴り飛ばされるなんて信じられません。とミサカは目を見開いて驚きます」

 

妹達がここまで驚いた声を上げたのは初めて聞いた。

ミクの時にでもここまでのは聞いた事ないな。

 

「なら見開いた目でよく見ろ。今、お前達の未来がアイツの右手で開かれようとしているんだ」

「ミサカ達の……未来……」

 

人の気配がしてふと目を向けると、フェンスの向こうに美琴の姿が見えた。

アイツ、あれだけ言ってもやっぱり来たか。子猫はどこかに置いてきたようだ。

 

「ガあァァァ~~! クソがァ!!」

 

一方通行はがむしゃらに当麻を捕まえようと迫るが、そんな動きじゃアイツは捕まえられない。

正確に動きを読まれ、的確にカウンターを決められその度に崩れかけている。

 

「なンなンだよっ、その右手はァ~!!」

 

一方通行はさっきまでとは正反対に当麻に一方的に殴られていた。

これも予想通り。一方通行は殴り合いにめっぽう弱い。

向かってくるベクトルの全てを反射させてしまう一方通行は、恐らく殴られた事すらないはず。

喧嘩慣れして一方通行の動きをすぐに読み、反射も無効化する当麻はまさに天敵と言っていい。

最も、能力関係なく天敵だろうけどな。

 

「チョーシ乗ってンじゃねェぞ三下ァァ!!」

 

一方通行は地面を蹴り当麻を吹き飛ばそうとしたが、当麻はそれすらかいくぐり一方通行の喉へ鋭いアッパーを繰り出した。

 

「くだらねぇモンに手ぇ出しやがって。【妹達】 だって精一杯生きてきたんだぞ」

 

これで終わった……か?

 

「何だってテメェみたいなのに、食い物にされなきゃならねえんだ」

 

いや、一方通行の意識は落ち切ってない。

 

「まだだ!!」

 

そう叫ぶと同時に、一方通行の周りに風が舞った。

 

「ぐっ!?」

「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかか――――!!」

 

それは一瞬にして巨大な竜巻となり、コンテナも何もかも吹き飛ばしていった。

 

「ここもまずい!」

「きゃっ!」

 

一方通行の力は使いきったので急いで御坂妹を抱きかかえ飛び降りた。

一方通行レベルの力だと、一度使いきると再び視れるようになるにはタイムラグがある。

美琴の能力みたく、何度も使っていればそういうラグはなく連続使用は出来るけど、一方通行はこの前初めて視た能力だから無理だ。

だから、御坂妹の力を使い電磁石のように、飛び交うフェンスを足場にしてこの場を離れた。

 

「っとと、大丈夫か、美琴!」

「お姉、様?」

 

降りた先に美琴がいたが、こっちに気付いていないし目も向けていない。

 

「え……は……な……んで」

 

美琴が見ている先には、血まみれで倒れている当麻の姿があった。

一方通行のすぐ側にいた為に竜巻に吹き飛ばされ、途中でコンテナか柱に激突したのだろう。

地面に血だまりを作って倒れている姿に、いつかみた妹達の死体がダブる。

 

「えっ……あ、あの人は……」

「くそっ、当麻にまで目がいかなかった!」

「いやああああぁぁ!!!」

 

辛うじて息はあるようだが、それでも隣で茫然としている御坂妹よりも重傷なのは明らかだ。

 

「なンだよそのザマはぁ、立てよ最弱ッ! オマエにゃまだまだ付き合ってもらわなきゃ割に合わねンだっつの!」

 

あれだけ殴られまだあんな元気残ってたのか!

 

「あ、一方通行は何をしようとしているのですか? とミサカはあの人の事を気にかけながら尋ねます!」

「風を一点に凝縮してプラズマを作りだそうとしてるんだ。見ろ、アレを!」

 

一方通行の頭上に巨大な光球が浮かびあがっている。

あれだけでも相当な物だ。どうする? 一方通行の力はまだ視えない。これじゃ能力停止は使えない。

 

「一方通行!」

 

その時、美琴の声が聞こえた。

一方通行が興味なさげな顔をして振り向く。

 

「動かないで!」

 

美琴はゲーセンのコインを構えている。レールガンを撃つ気か!

 

「お姉様!? まさか……!?」

「そのまさかだ、ここにいろ!」

 

御坂妹を置いて美琴の元へ駆けだす。

アイツこの期に及んで自分が死んで実験を止める気だ。

今の一方通行はそれじゃ止まらない!

 

「美琴、よせっ!」

「ユウキ!? あの子は無事!?」

「あぁ、あっちで休ませている」

「なら……後はお願いね。止めてないで。もう、これしか手はないもの!」

 

美琴は諦めきっている。でもそんな覚悟はダメだ。

 

「……やめ、ろ、みさ……」

「良かった、けど、これで終わらせるわ」

 

かすれたような当麻の声を聞いてほっとしたようだが、それでも覚悟は揺るがない。

 

「ダメだ! 今の一方通行は俺達なんか眼中にない! 実験中止なんて命令は無意味だ!」

 

一方通行の目を見た美琴は、思わず手を下げた。

今の一方通行はあのプラズマを使いたくてしょうがないだけだ。

上層部の命令なんて聞くわけがない。

 

「っ! じゃ、じゃあどうすればいいのよ! アレは学園都市中の風を一点に凝縮したプラズマよ! このままじゃみんな死んじゃうわ!」

「……風を、一点に……?」

 

何だろう。美琴の言った事が頭の中で木霊する。

自分でも御坂妹に言ったが、空のアレは風を一点に凝縮したプラズマ、なら風をどうにかすれば……

 

「「……!!」」

 

美琴と同時に顔を上げ、同じモノを見上げた。

 

「同じ事考えたか、流石電気能力者の頂点」

「だ、だけど、私が直接やっても、1人じゃ恐らく……っ!?」

「……他に手はない。ミサカネットワーク、お前も知ってるだろ?」

 

俺と美琴が思いついた手段、それは街中にある風力発電の巨大プロペラを使い、風の向きを変える事。

そして、それは風を集めている一方通行の精密な計算を狂わせ作成中のプラズマを乱す事にもなる。

1つ1つでは力が足りなくても学園都市には数万のプロペラがある。それを使えば、あのプラズマは消せる。

ただし、美琴1人では規模がでかすぎて間に合わない。

それに美琴が直接手を出す事は、恐らく実験中止にも悪い影響が出る。

ならば……美琴以外の者が手を出せば、本来この実験は一方通行と……彼女達の戦いでもある。

俺と美琴はすぐに御坂妹の元へと戻った。

全身包帯だらけでコンテナにもたれかかっている御坂妹を見て、美琴は息を飲んだ。

 

「ひどい……怪我。ユウキ、こんな状態のこの子にさせる気!?」

「……応急処置は済んでいる」

「そういう問題じゃ!……くぅ~!!」

「??」

 

美琴は俺を睨んだが、他に手が浮かばない。

それは美琴も分かっているようで、何事かと俺達を見上げている御坂妹に意を決したように語りかけた。

 

「無理を言っているのは分かってるわ。後でどんな恨み言を言っても、殴っても構わない! だけど、今は今一度だけ、お願いを聞いてほしいの!」

「お姉、様? 一体何を?」

「私は、私じゃみんなを……アイツも『わたしのいもうとたち』 も守れないけど、だけど、アンタなら出来るの! ううん、アンタにしか出来ないの! だから、お願い……私の代わりに、アイツの夢を守ってあげて!」

 

涙を流しながらの懇願。

ずっと1人で無力感と絶望感に苛まれながらも、それでも戦い続けて今なおさらなる無力感に襲われている。

それでも、救えるのなら、自分の妹達を救えるのなら、当麻の夢を救えるのなら、美琴は何でもする。

御坂妹は美琴の言葉を自らに染み込ませるかのように黙って目を瞑った。

 

「その言葉の意味は分かりかねますが……」

 

そして、御坂妹はゆっくりと目を開けた。

 

「何故だか……その言葉はとても響きました」

 

姉の言葉に乗った想いは、妹へとしっかりと届いた。

 

 

 

続く

 




次で終わる……か不明になってきました。
ひょっとしたら後2話必要かも(汗)

今回判明した幻想支配の弱点、美琴以外の超能力者クラスの能力連続使用不能。
幻想入りした時点では解消されてます。

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