幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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とあるシリーズで一番好きな子達がとうとう出た―!


第65話 「アイテム」

朝飯兼昼飯をどこで食べようかフラフラ散策したが、昼時なのでどこのレストランやファーストフード店も混んでいて、結局ファミレスに落ちついた。

ここも混んではいたが、6人ほど座れる大きな隅っこの席が空いていたのでそこに座る。

何を頼もうかとメニューを覗き込んでいると、入り口から騒がしい声が聞こえてきた。

 

「だぁ~、結局麦野のせいでここも満員御礼なわけね……」

「私のせいじゃないでしょ。フレンダが片付けに手間取ったからでしょ!」

「いえいえ、超お二人のせいです! おかげでこんなに混んだ時間になったじゃないですか!」

「……北北東から信号がきてる」

 

聞いた事ある声がしたので、顔をあげると入り口付近で話してる女の子達と目が合った。

 

「あれ? 最愛? それに理后に沈利?」

「ん~? あーあなたは!」

「ゆうき、ひさしぶり」

「あん? げっ、お前かよ……」

「?? だれ?」

 

彼女達は四者四様の反応をしてきた。最後の金髪少女は知らないけど、他の三人は色々と顔見知りだ。

 

「お客様、申し訳ございませんがあちらの方々とお知り合いでしたら、相席は可能でしょか?」

 

その様子を見ていたウェイトレスが俺に相席を尋ねてきた。

 

「あ、俺はいいですよ。彼女達が良ければ」

 

別に知り合いじゃなくても相席くらいどうって事はない。

今は完全にフリーだし、見られてまずいものも持ってない。

それに最愛達とは久々だから話すのもいいな。

 

「私は超構いませんけど、麦野はどうですか?」

「他の奴と相席よりはマシか、しょうがないわね」

「結局、何だかよくわからないけど、麦野達がいいなら私もいいよ?」

「ゆうき、ここ座るね」

 

そう言って、彼女達は俺の席へと座ってきた。

俺の横に最愛、正面に理后が座りその横に沈利と金髪少女が座った。

 

「お前らに会うのも数カ月ぶりだな。相変わらず元気そうで何よりだぜ、アイテム」

「まーね。そっちも相変わらずって感じね。色々話は入ってきてるわよ。また第三位と一緒に暴れたんだって?」

 

そう言ってうすら笑いを浮かべたのは、麦野沈利。

これでも学園都市最強のレベル5の一角を担う超能力者だ。

彼女とは昔から幻想支配の実験や、暗部絡みの仕事でよく会う事が多い。

最近は組んでいなかったけど、色々と裏で活躍しているのは聞いていた。

 

「もうそんな話流れてるのかよ。てかそういう情報がなんでお前らにまで入るかな」

「ユウキはやる事がたまに派手で、超目立つから仕方ないです。しかも、たった1人で能力使わずに十数体の駆動鎧を撃破だなんて、こっち側でさえ目立つのが当たり前です。本当に暗部なんですか?」

 

ウェイトレスが持ってきた水を飲みながら、こっちをジト目で見るのは絹旗最愛。

レベル4の大能力者で、以前俺が潰した暗黒の五月計画被験者の1人。

あの時よりも表情が豊かになっているようで、安心した。

 

「表だって目立ってなきゃ後はどうでもいいんだよ。今回だって華はレールガンに譲ったし」

「大丈夫、そんな目立ちたがり屋なゆうきを私は応援してる」

 

ボケーっとソファーに身を任せてだらっとしながら、微笑みかけてくるジャージ姿の少女は滝壺理后。

俺の能力との関係で、彼女とは実験で知り合った。

そして、幻生を殺すついでとして彼女をとある実験から解放した。

 

「どこをどう解釈したら俺が目立ちたがり屋になるんだ、理后?」

「へぇ~この人も暗部関係なんだ。私はフレンダだよ」

 

物珍しそうにこっちを観る金髪少女、名前は知らないし会った事も多分ない。

 

「お初だな、俺はユウキ。アイテムに人が増えてたとは知らなかったな」

「そう言えば、絹旗と滝壺を連れてきたのはお前だったよな。全くうちは託児所じゃないんだっての」

「他の奴らより沈利なら任せられると思ったからな。それに案外面倒見もいいし」

 

最愛や理后をそれぞれ解放した後、暗部に渡す事は決まっていたがどこに渡すかは俺が決めた。

他の所よりも沈利の方が 【まだ少し】 はマシと思ったんだけど、その判断は正しかったな。

 

「ふんっ、おだてても何も出ないわよ」

 

照れ隠しなのかぷいっとそっぽを向いた麦野。横に居たフレンダが怪訝な顔をした。

 

「麦野が……面倒見がいい?」

 

その一言で麦野の耳がピクリと動いた。

ま、すぐ隣にいるんだから当然だけど、フレンダはアホなのか?

 

「むぎのは優しいよ、フレンダ?」

「そうですね。ユウキに紹介された時は超怖い人だと思いましたけど、実際はそこまででもなかったですし。怒らせると超怖いですけど」

「あ、あんたたち……」

 

麦野は感動で震えている……わけがない。そんな女じゃないのはよく知っている。

このままだと朝食兼昼食タイムが台無しになりそうなんで、とりあえずメニューを突き出してみた。

 

「おい、沈利。じゃれあうのは後にしてさっさと注文しろよ。今週はサーモンフェアって事でお前の好きな鮭づくしだぞー」

「ゆ~う~き~? いくら私が鮭好きだからって、この状況でそんなもんに目を奪われる子供とでも思ってんのかぁ、あぁん!?」

「……相変わらず涼しい顔で人を怒らせるのが超得意ですね、あなたは」

 

テーブルから思いっきり身を乗り出して襟首を捕まえようと迫る麦野に、俺の隣でメニューを眺める最愛が深く溜息をはいた。

 

「ふふっ、ゆうきは変わらないと思ったけど、やっぱりどこか変わった」

「?? どういう意味だ?」

 

尼視やテレスに言われれば嫌味に聞こえるけど、人畜無害で天然な理后に言われると物凄く照れ臭さが増すな。

 

「そのままの意味だよ。ね、きぬはた?」

 

最愛も理后の言葉に同意するように小さくうなづいた。

そんなに変わったかな、俺?

 

「ん~話がわかんないー! 結局こいつは一体何なのー!?」

 

フレンダは1人蚊帳の外なのが不満なのようだ。

 

「うるさいフレンダ。いいからあんたはさっさと自分の仕事をしてくる。私アイスコーヒー、今は甘いのがいい気分だからシロップとミルクを忘れずに」

 

沈利達は最初にドリンクバーを頼み、それからじっくり何を食べるか決めるようだ。

で、フレンダはアイテムの中ではドリンクバーの往復係みたいだな。

 

「あ、私はメロンソーダで」

「わたしはオレンジジュース」

「俺はアイスティー」

「はいはーい、結局通路側に座った私がこういう役回りな訳よ……ってなんであんたまで!?」

 

席を立ちかけたフレンダにビシッと指を刺された。

 

「なんでって、そりゃ俺もドリンクバー頼んだからだろ?」

「そっかーそれなら仕方ないよね……って違う! なんで、私が、あんたの分も、持って来なきゃいけないのよ!」

「なんでって、俺は一番奥にいるし、最愛に避けてもらうのも悪いだろ?」

「フレンダ、それは私が超邪魔だから、とっととどっか行けと言ってるのですか?」

「ひぃっ!? 絹旗目が怖い、目が! 違うから、そういう意味で言ったんじゃないからぁ!」

「良いからさっささと行ってこい!」

 

冷たい笑顔の最愛に怯えるフレンダを蹴り飛ばして、沈利は俺へと向き直った。

 

「んで、あんたがここにいるって事は偶然か? それとも面倒事か?」

「安心しろ、今回はただの偶然だ。一仕事終えて昼食をどこで食べようかブラブラしていただけ」

 

暗部では偶然を装って、意図的に自然と接触させられるなんて事はよくある。

 

「ならいいけど、私らも同じようなもんだし。続けて面倒な仕事おしつけられるのはごめんよ、特にあんたが絡む仕事はね」

「その気持ちはよーく分かる」

 

結構面倒な事多いからな。俺と言うか尼視のせいだけど。

 

「おまたせ。結局、1人で4本持つのはきつかった訳よ」

 

そこへフレンダが器用に4つのグラスを持って帰ってきた。

意外に早く戻ってきた事と、グラスの持ち方から場馴れしているのが分かる。

本人からすれば、そんなの言われても嬉しくないだろうけど。

 

「器用だな、フレンダ」

 

だからといって本人に言わないわけではない。

 

「ふふーん、そこはコツよコツ。慣れればどうってことないわ! ……なーんでこんなの慣れちゃったんだろ私」

 

俺達にグラスを渡しながら軽く落ち込むフレンダ。

沈利とは違った意味で、根は良い奴なんだろうな。

 

「ん? あれ?」

 

持ってきたグラスを見て、ある事に気付いた。

 

「ふふーん、ドリンクは持ってくるけど、付属品は持ってくるとは言ってない! さぁ、何も入ってない紅茶を飲むか、絹旗をどけて自分で取りに行くか!」

 

なんだその中途半端な嫌がらせは。

でも、フレンダ、お前はやっぱ馬鹿だな。

 

「俺は別にこのままで十分だけど、沈利はそうじゃないだろ?」

「えっ? あっ!」

「フレンダ~? 私、シロップとミルクって言ったよねぇ? 聞こえなかったのかしらぁ?」

「それとフレンダ、自分の分超忘れてますよ?」

「あぁ~~!?」

「大丈夫だよ、ふれんだ。私はそんなドジっこなふれんだを応援してる」

 

フレンダは慌ただしく席を立ち、シロップとミルクを律義にも俺の分も持ってきてくれた。

 

「あぁ~疲れたぁ~……それもこれも」

 

ソファにうなだれたフレンダからなぜか睨まれた。

 

「あんた、だから一体何者だっていうの! 麦野達の知り合いって事はレベル4くらい?」

「いや、俺はレベル0」

 

嘘は言ってない。レベル0とは言ったけど、能力がないとは言ってない。

 

「ふ~ん、後でちょっとヅラ貸して。初対面の奴に舐められたらこの業界終わりって訳よ!」

 

俺がレベル0と分かるとフレンダの態度が変わった。さっきまで散々からかわれたのが癪に障ったらしい。

でも業界って、芸能界やスポーツ業界じゃないんだから……

それにヅラ……

 

「ふれんだ、それはヅラじゃなくて面じゃない?」

 

かっこよくきめたつもりだろうけど、理后につっこまれて固まった。

 

「カツラ? 変装用はいくつかあるけど、今日は持ってないな。どうせならハゲになれるカツラかしてやろうか? でもその長髪が邪魔だな」

「私が手っとり早く髪の毛吹き飛ばすか」

「麦野がやると毛根が超死んでしまいます。私が引っこ抜きましょうか」

「ハゲのカツラなんているかぁ! 麦野と絹旗も悪ノリしないで! 2人にやられると毛根どころか頭皮が無くなる!」

 

さっきからツッコミに忙しい奴だな。

 

「はぁ、はぁ……な、なんて厄日なの今日は……」

「どーでもいいけど、俺……さっき喧嘩売られた? しかも、暗部として?」

 

ニタリとものすっごく悪顔でフレンダを睨むと、沈利達は揃って哀れな表情をフレンダに向けた。

 

「あーフレンダの補充が必要か、ったく爆弾系に強い奴ってなかなかいないのよねぇ」

「あ、あれ~? 麦野? なんで私がこれから死んじゃうって話で進んでるの?」

 

沈利が9割以上素で反応すると、フレンダがたらりと汗を流した。

 

「フレンダ、超忠告しておきますけど、ユウキは超超強いですよ? 少なくとも私じゃ勝てません」

「き、絹旗~それはちょーっとオーバーなんじゃない? そ、それに流石に麦野なら瞬殺出来る……?」

 

最愛の忠告(?)に汗をだらだら流しながら助けを乞うように麦野を見たが、視線をそらされた。

 

「当然負ける気はしない、けど……認めたくないけど、勝てる気もあまりしないわねぇ。こいつ色々と面倒だから」

「た、たきつぼ~?」

 

最後の砦とばかりに理后へと目を向けるが、彼女は珍しく真面目な顔をして……フレンダに向けて手を合わせた。

 

「大丈夫だよ、ふれんだ。私はそんなふれんだのお墓参りにはサバ缶を忘れない」

「せめてそこは最低限応援して!? もうお墓の中確定!?」

 

結局、ここにはフレンダの味方はいなかった訳だな。

 

 

 

続く

 




はい、当初の構想ではヒロインはアイテム+吹寄+番外個体+オルソラでシリアス少なめのラブコメだったんですよねー
でも、どっかでみたような構想だったんで、ボツ。
ちなみにその際浜面はフレメアと黒夜が取り会う予定でした(笑)

次回からシリアスが増していきます。
が、GWを挟んだ6日か10日に更新予定です。

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