幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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このままだと今年は早く桜が咲きそうだなぁ。
めっちゃ雪ないし暖かい。



第58話 「西行妖」

見た事もないような巨大な桜の木。

その下で死んだように倒れ伏した、八雲紫とその式神八雲藍。

そして、その上で優雅に踊る亡霊の姫。

彼女が恐らく幽々子という白玉楼の主で、妖夢に春を集めさせた元凶ね。

 

「な、なんなんだよこりゃぁ……」

 

隣で魔理沙が恐怖と困惑を合わせた声を出しているけど、私も同じような感想ね。

あの扇を使って優雅に踊っている幽々子、と言うよりその背後の巨大樹から、今まで感じた事のなような強くておぞましい妖気を感じるわ。

 

「綺麗でしょ、この西行妖。幻想郷の春と紫達の妖力でようやくここまで花を咲かせたの。せっかく持ってきてくれたのだから、あなた達のも……頂くわね」

 

幽々子が扇を一振りすると、そこから弾幕が放たれた……けど、これはただの弾幕じゃない!

 

「魔理沙、避けて!」

「もちろんだぜ!」

 

なんとかギリギリでかわせたけど、私と魔理沙がいた地面が大きく抉られている。

この亡霊、私達を殺す気で弾幕を撃ったわね。

 

「どういうつもり? あなた、幻想郷に長いんでしょ? 弾幕ごっこくらいは知っているはずでしょ?」

「えぇ、知っているわよ。うふふっ、今のはお気に召さなかったようね。なら、これはどうかしら?」

 

今度は小さなレーザーのような弾幕。これも私達を殺す気でいるわね。

このままじゃ埒が明かないわ。それに幽々子の様子もおかしい。

何かに憑依されているかのようなこの殺気と狂気、何がどうなっているのよ。

 

「魔理沙!」

「あぁ、任せろ!」

 

私が幽々子を引き付けて、その間に魔理沙が紫と藍を救出する。

紫から何が起きているのか聞かないと、西行妖といい幽々子といい、レミリアの時とは違い過ぎるわ。

 

「私が相手よ!」

 

陰陽玉を取り出し周囲に浮かせて、御札を構える。

相手が殺しに来ている以上、容赦も手加減もしない。でも、それはいつもの事。

 

「うふふっ、何分持つかしら?」

 

幽々子が扇を振う度に赤と紫の弾幕が放たれる。

紫の弾幕は私の進路を塞ぐ壁になり、赤の弾幕が私目がけてくる誘導弾と言うわけね。

回避しつつ、御札を投げつけたり陰陽玉から弾幕を撃っているけど、すべて紫の弾幕に防がれている。

 

「まったく、ルール無用ってわけね! だったら一気に決めるわ 【霊符・夢想封印】」

 

本気の夢想封印。

これで倒せるとは思わないけど、ダメージを与えるなり隙を作るなりは出来るはず。

 

「それっ♪」

 

そのはずだったのに幽々子は陽気な掛け声と共に扇を一振りするだけで、夢想封印をかき消してしまった。

 

「な、なんですって!?」

 

今扇から放たれたのは、明らかに妖気の衝撃波、それも夢想封印を消すほどの強力なもの。

でも妙ね。亡霊とは言え元は人間のはず。

なのになぜさっきの衝撃波も弾幕にも霊力ではなく、妖力が感じられるのかしら?

こいつ、まさか……

 

「そう言えば、まだ名乗ってなかったわね。私は白玉楼の主、西行寺幽々子。ここ冥界の管理を任されているの。ここであなたが死んだら私の配下に加えてあげるわ。だから安心して……逝きなさい」

「黙りなさい!」

 

叫び声のする方をみると、魔理沙に助け出された紫と藍が息も絶え絶えに幽々子を睨んでいた。

2人共かなり弱っている。

 

「あら、紫。まだ生きていたの。あれだけ妖力を吸い取ったのに」

「その、姿でその声で……それ以上、幽々子のフリをするのは、やめなさい。西行妖!」

 

紫の叫びに、幽々子の口が裂けそうなくらいに広がり、邪な笑みを浮かべた。

 

「紫、どういう事? 最初から説明しなさい」

 

幽々子の弾幕が止んだので、紫の方へと飛んだ。

衰弱は藍の方が酷く、魔理沙が近くの木に寄りかかるように寝かせた。

紫は肩で息をしながらもフラフラと立ちあがって、幽々子を睨んでいる。

 

「この異変、最初は確かに幽々子が自分の意思で始めた事。けれども、少しずつ幽々子は封印の溶けかけた西行妖に意識を乗っ取られていったのよ。妖夢も私も、それに気付く事なくね」

「おいおい。話が全く見えないぜ。大体西行妖って何なんだよ」

 

魔理沙が尋ねると、紫はしばらく黙った後、幽々子を見て話し始めた。

 

「簡単に言うわね。西行妖、あれは人間の生気を吸って妖怪化した桜の木なの、私ですら手を出せないほどに強大な妖怪樹。でも……」

 

紫はそこで一端言葉を切った。まるで何か言いたくない事があるかのようね。

基本的に話をはぐらかしたりする事が多いけど、ここまで言い淀むのは珍しいわ。

 

「幽々子が自分の亡骸を使って封印して以来、春になっても花を多少付ける事はあっても満開になる事はなくなったの。幽々子が亡霊となり、冥界の管理を任されるようになったのはそれからの事。今も西行妖の下には幽々子の亡骸が眠っていて、封印を守っているの」

「じゃあ、幽々子は自分で自分の封印を解こうとしたのかよ!?」

「……幽々子は生前の記憶を全て失ったわ。亡骸を封印に使ったせいでもあるけれど。彼女は西行妖の事も忘れたはずだった。けれども、春を集めて西行妖の花を咲かせる事が出来れば、自分の記憶が戻ると思ってしまったの。勿論、その下に自分の亡骸がある事も知らずにね」

 

生前の記憶を戻す為に春を集めていたのね。

でも、ならばなぜ今頃紫が動いたのかしら。自分から動く事など滅多にないはずなのに。

 

「で、あんたは一体今頃何をしようとしたのよ?」

「……私は最初幽々子の好きにさせるつもりで放って置いたわ、監視はしていたけれどね。例え幻想郷中の春を集めても、西行妖が満開になる事はないし、それより先に霊夢が解決すると思ったのよ」

 

ここで紫に睨まれた。

異変に気付かずここまで大事になったのは、私にも責任が……ないわけないわよね。

 

「……でも、予想は外れたわ。西行妖の封印は徐々に解けていき、そればかりか埋められた亡骸を通じて幽々子の意識をの取って行ったの。私も気付かなかった……気付いた時にはもう手遅れに近かったわ。だから妖夢が離れた隙に、私と藍で再度封印しようとしたのだけど、逆に妖力を奪われ封印を解く手伝いをしてしまった」

 

紫と藍、幻想郷でも最強のコンビの妖力を奪うだなんて……

 

「西行妖は封印される前よりもずっと強大になっているわ。まだかろうじて封印の力が残っているけど、あなた達の春の光をもし取られたら、完全に封印が解けるわ」

「もし、封印が解けたらどうなるのよ?」

 

あまり想像したくない事だけどね。

 

「幽々子は亡骸ごと消滅して、西行妖は幻想郷中の妖怪や人間、妖精ありとあらゆる生者の力をたやすく奪い。幻想郷は冥界に、いえ、西行妖に呑まれるわ」

「そ、そんな……ウソだろ?」

 

魔理沙が冷や汗を流している。紫の表情が決して冗談でも大げさに言っているわけでもない事を物語っている。

かくいう私も、少し怖い。

 

「今の西行妖なら出来るわ。でも今ならまだ、間に合うわ。私も藍も妖力がほとんどない、それに妖力じゃ吸収されてしまうの。だから、霊力や魔力で幽々子を……西行妖を倒して、再度封印するのよ」

 

レミリアのように幻想郷を支配するわけではない。

幻想郷が滅びる。これは今までなかった最大の異変、ね。

 

「魔理沙……やるわよ」

「あぁ、幻想郷滅亡の危機、こりゃ本気でやらなきゃな」

 

魔理沙は軽口を言っているけど、その表情は今まで見た事ないほど固い。

私も自分がどんな表情しているか分からない。

最初はただ春が来ないだけの異変のはずだったのに、それがここまでの大事になるなんて。

 

「それで……話は終わったか?」

 

幽々子、いえ西行妖の声が変わった。

さっきまでは上品な女性の事だったのに、今は邪悪でおぞましい声になっている。

もう幽々子の演技はする必要なくなったという事ね。

今までなぜか黙っていたけれど、それは自信の表れかしら?

 

「えぇ、博麗の巫女として、お前を封印する!」

「普通の魔法使いとしても、放ってはおけないぜ!」

 

私達は左右に散らばり、同時に弾幕を……いえ、攻撃を始めた。

 

「食らいなさい!」

「それ!」

 

魅せる為の弾幕ではなく、倒す為だけの弾幕を放つ。

私も魔理沙も周囲にばらまくのではなく、当てる為の軌道で放った。

 

「弱いな。そこの妖獣の方がまだ強い攻撃だったぞ?」

「なにぃ~!? 全然効いてない!?」

 

私の御札と霊力弾も魔理沙の魔力レーザーも効かなかった。

まるで見えない壁に阻まれたかのように、当たる直前で消えてしまった。

 

「私と藍の力を吸い取ったせいで、耐性がついてしまったのね……」

 

紫が私と魔理沙に目で合図を送った。無言で頷き、再度霊力を溜めた。

しかし、西行妖も黙ってされるがままになるわけじゃない。

扇を振う度に妖力の波動が襲いかかってくる。

とっさに私達は防御結界を張ったけど、簡単に破られて弾き飛ばされてしまった。

これじゃ力を溜めて強力な攻撃をする隙もないじゃない。

 

「西行妖の攻撃は必ず避けなさい! あなた達でも防ぎきれないわ。それに今のアイツは幽々子の能力を少しずつ使えるようになっているわ!」

 

ただでさえ避けにくい攻撃なのに、必ず避けろとは紫も無茶を言う。

 

「幽々子の能力って何よ!?」

「死を操る事が出来る能力、よ。文字通り簡単に相手を殺せる、動作も何も必要ないわ」

「いぃ~!? そんなのフラン以上に反則だぜ!」

 

フランは破壊の目を自分の手に生み出し、それを握りつぶす事で能力を発動させていた。

けれども、幽々子は何も動作もいらないらしい。

 

「そんなの反則どころか無敵じゃない!」

「でもまだ完全に使えるわけではないの。死に誘われやすくなる程度だけど、まともに攻撃を受ければ、タダでは済まないわ」

 

どっちにしろ、これを食らったら怪我じゃすまない規模だと言うのはとっくに分かってるわ。

まずいわね。早くしないとユウキさんが来る。

西行妖じゃユウキさんでも相手が悪過ぎる。

 

「魔理沙、あんたがやりなさい! 【夢想封印 散】」

 

力を籠める隙がない以上、低威力でも広範囲攻撃で相手の隙を作るしかない。

その間に魔理沙が強力な一撃を放てばいい。

魔理沙の魔法は、溜めが必要ないものじゃ隙を作れるものはないから。

 

「効かぬわ!」

 

案の定、西行妖は扇を振りかき消していく。

 

「【夢想封印・集】!」

「ちっ、無駄だぁ!」

 

広範囲にばら撒かれた弾幕を一気に集束させる。

これならすぐに全てはかき消せない。

その間、魔理沙が十分に魔力を籠める事が出来た。

 

「いくぜ……【マスタースパーク】!」

「何っ?」

 

狙うのは西行妖……の本体。

あれだけ巨大な樹、それも動けないのなら良い的になるわね。

これなら多少なりでもダメージが……ない!?

 

「ウソだろ!?」

 

またしても見えない障壁に阻まれてしまった。

 

「ふっふっふっ、ようやく……だな」

「っ!? 危ない、逃げなさい!」

 

紫が叫ぶと同時に西行妖の巨大樹が眩い光を放ち、私と魔理沙は見動きが取れなくなってしまった。

 

「か、体が……」

「……くっ、動かない?」

 

そればかりか胸元から巾着に入れていた春の光が現れ、西行妖に吸い込まれていった。

 

「これで残りは、いや、これで十分か!」

 

邪悪な笑みを浮かべたまま西行妖に乗っ取られた幽々子の体は、本体である巨大樹に吸い込まれ融合を始めた。

 

「まずいわ。もう封印が完全に解けてしまう!」

「もう手遅れだ。死して我が従僕となれ、博麗の巫女!」

「逃げろ、霊夢!」

 

西行妖から巨大な桜色の弾が私に向けて放たれた。

体が思うように動けず、霊力も溜める事が出来ない。

このままじゃ避けれない! 当たる!?

 

「霊夢!」

 

その時、ユウキさんが突然現れ、私を突き飛ばした。

直後、光弾がユウキさんを包みこんで爆発した。

一瞬何が起きたか分からなかったけど、ユウキさんが私を庇って、代わりに攻撃を受けた。

それを理解して、私は頭の中が真っ白になった。

 

「ユ、ユウキさ……ユウキさん!?」

「ユウキ!?」

 

私と魔理沙の束縛が解け、爆発へと駆け寄った。

爆発の中からボロボロになったユウキさんが現れ、飛んできた咲夜が抱きかかえた。

 

「ユウキさん、しっかりして下さい、ユウキさん!」

「お願い目をあけて、ユウキさん!」

 

咲夜と私が必死に呼びかけているけど、ユウキさんはぐったりとして目を開けない。

ユウキさんの服はほとんど吹き飛び、焼け焦げている。

あちこちに傷があり、血がでているけど思ってたよりも重傷には見えない。

ただ、ユウキさんが巻いていたマフラーがバラバラになり、燃えだして消えて行った。

 

「これは、パチュリーの魔法?」

 

それを見た魔理沙がマフラーの切れはしを掴んだ。

 

「このマフラー、ずっと何も感じなかったけど今はパチュリーの魔力を感じるぜ!」

「まさか、パチュリー様がマフラーに魔法をかけていた?」

 

魔理沙の言う通り、何の変哲もなかったはずのマフラーから魔力を感じるわ。

 

「あぁ、ユウキの怪我が思ったほどひどくないのも、きっとパチュリーがマフラーに守護と身代りの魔法をかけていたからだ」

 

ユウキさんが命の危険にさらされるほどの攻撃を受けたら、魔法が発動してマフラーが防御してダメージを肩代わりする魔法。

それをパチュリーが美鈴の作った魔法にかけていたようね。

 

「良かった、本当に良かった……」

「パチュリー、美鈴。ありがとう」

 

自分でも不思議なくらい、心の底から安堵した声が出た。

 

「って安心するのはまだ早いぜ、霊夢」

「えぇ、そう……ね。まだ終わってなかったわね」

 

声に怒りが籠る。自然と拳を握りしめた。

ユウキさんをここまでした西行妖と、自分に腹が立った。

 

「彼は私が預かろう」

 

そこへ藍がふらふらとしながらも、ユウキさんの側へと寄ってきた。

 

「あんたもボロボロじゃない。そんなナリでユウキさんを任せて大丈夫なの?」

 

さっきよりは少しは回復したみたいだけど、藍はまだ歩くのがやっとと言ったところね。

 

「責任を持って私が彼を死なせない。だから、霊夢達は西行妖を頼む」

「……分かったわ」

「いいの、霊夢?」

 

咲夜が不安げな表情を浮かべたけど、今の私達にユウキさんを守る余裕はない。

マフラーのおかげで比較的軽傷とはいえ、このままじゃ危ないわ。

 

「大丈夫よ。紫よりは信用出来るわ。それで、咲夜、妖夢は倒したの?」

「いいえ、ユウキさんが勝ったけれども、倒してはいないわ。あそこにいるわよ」

 

ユウキさんは妖夢を倒さなかったのね。まぁ、予想は出来たけど。

咲夜が指さした先には、茫然と西行妖に取りこまれてかけている幽々子を見上げる妖夢の姿があった。

 

「幽々子……様? 幽々子様!」

「待ちさない、妖夢!」

 

刀を抜き、走りだそうとした妖夢を紫が止めた。

 

「紫様? どういう事ですか? どうして、幽々子様があんな御姿になっているのですか!?」

 

半泣きで紫に詰め寄る妖夢。

それに対して紫は淡々と今起きている状況を説明した。

だけど、口調はともかく紫も珍しく辛そうな顔をしているわね。

 

「……そ、そんな。それじゃあ私が春を集めたから、幽々子様は」

 

崩れ落ちる妖夢を紫が支えた。

 

「しっかりしなさい、妖夢。幽々子を助けられるのはあなたしかいないのよ」

「幽々子様を、私が?」

 

紫の言っている事が良く分からないと言う顔をしたけど、私達も分からず顔を見合わせた。

 

「魔理沙、咲夜。あなた達で西行妖の攻撃を引き付けなさい。その間に妖夢が幽々子と西行妖の繋がりを断つのよ、その白楼剣で」

 

紫が妖夢の持つ2本の刀のうち、短い方を指さした。

 

「白楼剣は人の悩みを断ったり、幽霊を成仏させる事が出来る剣。その奥義は見えない物を断つ事にあるの。だから、西行妖と幽々子の繋がりを断てば、西行妖は弱体化するわ。そこを霊夢が霊力を限界以上にまで溜めて、特大の結界を張るのよ」

 

白楼剣の事はよくわからないけど、これしか手はなさそうね。

紫は幽々子を助ける事を前提として作戦を話している。

この事が少し引っ掛かるけど、気にしても仕方がないわ。

 

「よっしゃ、任せろ。私のスピードであいつの目を回してやるぜ!」

「どこが目なのか分からないけどね。私は良いわよ。ちょっとむしゃくしゃしている所だったし」

 

魔理沙と咲夜はやる気十分ね。

2人共、ユウキさんがやられて少し怒っているようだわ。

と言う私も、結構怒っているけど。

 

「分かったわ。で、あんたはまだ能力が使えないの?」

 

紫がスキマを開いたり、境界を操る能力を使えばもっと楽に行くはず。

異変には口出ししないけど、幻想郷の危機ともなれば進んで動くのが紫だし。

 

「無理ね。これでも結構フラフラなのよ……」

 

なのに紫はきっぱりと無理と言った。

いつものように言い淀んだし出し惜しみしているわけじゃない。

本当に今の紫は能力が使えない。

 

「最初に言っておくわ妖夢。これが失敗したら……幽々子ごと、西行妖を消すしかないわ。もう復活するまで時間がない。幽々子が完全に取り込まれたら終わりよ」

「っ!? そ、そんな……」

 

紫が真面目な表情で話す。これは本気ね。

幽々子を助けたい気持ちは強くあるけど、幻想郷を守るためには犠牲にする事も厭わない。

 

「心配するなって、まだ何が何だかイマイチよくわからないけど、要はお前がちゃんと斬れば良い話だろ?」

「そうね。あなたの剣の腕はユウキさんも認めていたでしょ?」

 

魔理沙と咲夜の言葉に項垂れていた妖夢が顔を上げた。

 

「幻想郷を守るのは私の役目。けど、後味悪い結末なんて、私は御免よ」

 

私の言葉が最後のひと押しになったのか、妖夢はさっきまでの泣きそうな表情を一変させた。

 

「……分かりました。皆さん、よろしくお願いします」

 

妖夢の表情に陰りはない……ようは見える。ちゃんと決心がついたのなら良いのだけど。

 

「藍、ユウキさんの事頼んだわよ」

「あぁ、こちらこそ。幽々子様の事、お願いする」

「今の西行妖の攻撃は、即死攻撃と思いなさい。あの強さじゃ防ぐのも無理よ。絶対に避けなさい」

 

紫の言葉に頷き、私達はそれぞれの武器を手に西行妖に向き直った。

藍に介抱されているユウキさんに目を向ける。

 

「待ってなさい、ユウキさん。あなたが目を覚ます前に……ケリをつけるわ!」

 

 

 

続く

 




この幽々子は西行妖に憑かれているので、弾幕は原作とは違うものになってます。
なので、蝶のような優雅さは皆無です。

あぁ、自分も藍に介抱されたい(ォイ

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