幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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あ、気がつけば日付変わってた・・・


第55話 「騒霊ライブ」

アリスの家で春の光が変化した花弁をもらった俺達は、今度こそ白玉楼へ向かった。

マヨヒガで手に入れた羅針盤の示す先は雲の上だった。

さっきまでは猛吹雪だったけど、今は晴れてはいないが雪は止んでいるので飛びやすい。

 

「こんな小さな花弁で結構暖かくなるもんだな」

 

魔理沙が花弁の入った巾着を見ながら言った。

雪は止んだとはいえ、まだ寒さは厳しい。

でも、花弁が春の暖かさを放ってくれているので、俺達は寒くなかった。

 

「花弁一枚でこの暖かさはすごいわね。それにしても、なんで妖夢はこれを集めようとしているのかしら?」

「幻想郷に永遠に冬にするつもり、なわけないわね」

「春を集めて独り占めする、ような感じでもなかったな」

 

咲夜の疑問は俺も霊夢も感じていた事だ。

 

「うーん、案外一年中春にして、一年中花見をしたいだけかもな」

「それはないだろ」

「それは魔理沙だけでしょ」

 

魔理沙だけは能天気だった。

そう言えば、異変の最中は妖精たちが興奮して騒いだりしてるはずなのに、今回はまだ一度も会ってはいない。

チルノや大ちゃんには会ったけど、あの2人はいつも通りだった。

 

「この寒さで妖精達も冬眠中?」

 

その割には紅霧の時は、ひっきりなしに襲ってきたけどな。

 

「うちのメイド妖精達も寒い寒いと、なかなか炬燵から出てこないのよね」

「あんたの所のはいつも役に立ってないじゃない」

「紅魔館に炬燵あったのかよ。今度借りておこう」

 

洋館に炬燵、なんてアンバランスな。

 

「ってか魔理沙、咲夜を目の前にして堂々と泥棒宣言するなよ」

「盗むとは言ってない。借りてくだけ借りてくだけだぜ」

「それは残念ね。魔理沙限定で永久的にレンタル禁止よ」

 

などと雑談をしながら白玉楼を目指し、ドンドンと飛んで行く。

やがて羅針盤が示す雲を越えた所で、俺達は妙な感覚におそわれた。

 

「これは結界ね、間違いないわ。私がこんなに近付くまで気付かないなんて、相当な代物よ」

「で、霊夢これは破れそうなのか? なんなら私がマスパで一発吹き飛ばそうか?」

 

霊夢は結界を見て難しい顔をした。

結界を張ったり破ったりは霊夢の十八番だけど、これは難しそうだ。

魔理沙が力づくで突破しようと八卦炉を構えると、どこからか声が聞こえてきた。

 

「騒がしいわね。騒ぐのは私達の専売特許だと言うのに、お株を奪わないで欲しいなぁ」

「リリカりゃんリリカちゃん、この人達幽霊じゃないみたいよ。ちゃんと足がある!」

「足があるのは私達もでしょ? でも、生きてる人間なのは間違いないわね」

 

声はすれども姿は見えず、どうやら2人組の女の子らしいけどどこにいるんだろう?

微かに気配はするけど、とても薄い。

 

「どこにいるの? 出てきなさい!」

 

俺達は辺りを見渡して警戒した。だけど視界が悪くて間近にいる霊夢達の姿以外何も見えない。

 

「どこに? どこにって、私達はどこにでもいるわよ。ほら、あなたの後ろにも……うらめし、ゲボォッ!?」

 

突然背後に僅かな気配と共に声が聞こえたので、思いっきり肘打ちすると見事に当たったようだ。

後ろを振り向くと、水色の髪をしてピンク色の服をきた女の子が空中でうずくまっていた。

感触的に俺の肘打ちがちょうどみぞおちに入ったみたいだな。

 

「お、おねえちゃーん!?」

 

そこへ茶色が混ざった銀髪の少女がスッと現れ、蹲った女の子にかけよってきた。

どうも2人は姉妹のようだな。しかも、現れ方やこの気配から言って恐らくこの2人は人間でも妖怪でもない。

 

「うわっ、綺麗に決まったなぁ。すごく痛そうだぜ」

「あ、わ、悪い! 大丈夫か? いきなり背後に気配したからつい……」

「だ、大丈夫……です。こっちこそ驚かそうとして、すみません……」

「まぁ今のは正当防衛ね。それに幽霊ならこれくらいどうってことないでしょ」

「たしかに、そうですけど、痛いモノはいたい……」

 

霊夢も気付いていたようだ。この2人は幽霊。妖夢と似た気配がしたから分かった。

でも、妖夢と違い完全な幽霊のようだけど、俺の打撃がなんで効いたんだ?幽霊って確か触れないんじゃなかったか? あ、妖夢の半霊は触れたから幽霊にも打撃は効くのか。

と思ってよくよく2人をもう一度視てみると、どうも幽霊とは違う気がする。

 

「霊夢、この2人幽霊とは少し違う気がするんだけど」

「うーん、そう言われてみればそうかも……こいつら何者かしら?」

 

とここで、何か考え事をしていた咲夜が2人を見てアッ、と声を上げた。

 

「どうも聞いた事あるような声だと思ったら、彼女達はプリズムリバーじゃない。この子達は幽霊じゃないわよ。騒霊と自分達で言っているわ」

「騒霊? 咲夜、この子達の知り合いか?」

「えぇ、この子達は紅魔館近くの森にある廃洋館に住んでいるの。ユウキさんが殴ったのは二女のメルラン、でそっちの赤い服はリリカ、他に長女のルナサがいるわ。3人合わせてプリズムリバー3姉妹と言うわけ」

 

彼女達は幽霊とは少し違い、ある少女が無自覚で生み出した幻想の存在で、ただ楽器を演奏するだけで基本的には無害らしい。

たまに紅魔館でライブをしているらしく、この前の宴会では声をかけたが先約があって来れなかったらしい。

 

「へぇ、これが噂の騒霊か、噂でしか聞いた事ないのよね」

「私も初めて見るぜ。でも、案外普通だな。それに弱そうだ」

 

霊夢も魔理沙も初対面のようだ。

確かに、感じる力は2人共それほど強くはない。

姉のメルランが少し強い程度か。

 

「あ、咲夜! なんでこんな所にいるのよ!? それとそこのあなたいきなりヒドイじゃない」

「こんにちは、リリカ。私達はこの先に用があってきたのよ」

「いきなり、ってその言葉はそっくりそのまま返す。顔面裏拳じゃなかっただけ、まだマシだろ?」

「どっちでもヒドイわよ!」

 

しかも結構手加減したんだけど、綺麗に入ったから運が悪かったようだな。

 

「ユウキってたまに怖い事言うよな……」

「そうかしら? 私でも同じ事されたら夢想封印するわよ?」

 

霊夢も怖い事言うな。あ、さっき夢想封印でぶっ飛ばされた魔理沙が顔を青くした。

それを見て咲夜が軽いため息をつきながら、リリカに俺達の紹介をした。

 

「あーこれが噂に聞く紅白巫女と白黒魔法使いね。で、ヒドイ男」

「こっちも噂ではあんた達の事聞いてるわ。後、せめて名前で呼びなさいよ」

「おう、白黒だけど霧雨魔理沙様だぜ」

「ヒドイのは否定はしないけどさ」

「ぅ~やっと収まってきたわ……私達は今日白玉楼からライブの依頼があってきたのよ。私達は騒霊だから、冥界との行き来も自由なの。今は姉さんを待っている所よ」

 

そう言えば3姉妹って言われてたものな。

 

「で、あんた達はこの先に行きたいのね……うーん」

 

リリカは何やらしばらく考え込み、やがてポンと手を打った。

 

「あっはっはっ、よくぞここまで来たわね。さぁ、ここから先へ行きたければ私達を倒して行きなさい!」

 

 

・・・・・ポカーン

 

 

突然リリカがふわっと更に上空へ浮かびあがり、腰に手を当てて何かのポーズを取りながらそう言い放った。

俺も霊夢達もメルランですら目が点になって、何が何だか分からない。

 

「あっはっはっ、よくぞここまで来たわね。さぁ、ここから先へ行きたければ私達を倒して行きなさい!」

「もう一度言わなくても聞こえてたっての!」

「え、えっと……ね? リリカちゃん、最近外の世界のトクサツ、にハマっちゃったみたいで、たまにこうなるのよ」

 

あー……そう言う事か。

 

「翻訳ありがと、メルラン。要するに悪役ごっこがしたいわけか」

 

なんか急に頭痛くなってきた。

それは霊夢や咲夜も同じようで、魔理沙だけが1人興味が湧いたみたいだ。

 

「面白そうじゃん! 少し付き合ってやろうぜ? 弾幕ごっこしてなくてウズウズしてた所なんだ」

「その意気やよし! さぁ、私とおねえちゃんの2人を見事に倒してみよ!」

「えぇー!? 私もやるのぉ!?」

 

メルランは思いっきり嫌な顔をしたけど、気持ちはよくわかる。

 

「もう面倒だからパパっと終わらせましょうよ」

「そうだな……うん、深く考えたら負けだな」

 

霊夢が御札を取り出し俺も拳を握ったが、咲夜が俺達を手で制した。

 

「ここは私と魔理沙がやるわ。霊夢は雪女とやったし、ユウキさんはもしこんな上空で弾幕ごっこの途中で幻想支配が切れたら、地面へ真っ逆さまよ?」

 

確かにここに来るまでまた魔理沙を視てその魔力で結構飛んだせいで、少し消耗している。

だけどこの程度は問題ないし、万が一切れた時は再度誰かを視ればいいだけだ。

 

「そう、なら今回は2人に任せるわ。ユウキさんもそれでいいでしょ?」

「ま、そうするか。んじゃ見学させてもらうぜ」

 

霊夢と俺は少し離れた場所で、2対2の弾幕ごっこを見学する事にした。

 

「すぐに終わらせるわ。魔理沙、足を引っ張らないでね」

「そっちこそ。まぁ、最初は私に任せとけ!」

 

魔理沙はどこからか小瓶を取り出し、空中に放り投げた。

 

「先制の花火は私が頂いたぜ!」

 

小瓶は緑の光を放ちながら、メルランとリリカに向かって飛んで行く。

スペカではなく改良した通常弾幕か、まるでミサイルだな。

 

「これがマジックミサイルだ!」

 

と思ったら本当にミサイルだった。

簡単にかわされたけど、魔理沙のミサイルはまだ尽きそうにない。

 

「ほらほらほらぁ!」

「うわっ、ちょっと、しつこい!」

「魔理沙にばかり気を取られると、あっという間に終わるわよ?」

 

リリカが飛んで避けた先には咲夜が待機していて、ナイフを雨のように降らせた。

あのナイフ弾幕ごっこ用で殺傷力はないと言ってたけど、当たると痛そうだ。

 

「リリカ!?」

「お前の相手はこの私だぜ!」

 

メルランがミサイルを避けながらリリカの援護に行こうとするが、魔理沙が今度はレーザーを放ちながらそのゆくてを阻む。

 

「むっ、やられてばかりじゃいられないよ!」

「私達の演奏、たっぷり味わうよいいわ!」

 

2人は手をかかげると、空中に楽器が現れた。

メルランはトランペット、リリカはキーボードだ。

 

「騒霊の本業、見せてあげる!」

 

そう言うと現れた楽器に触れてもいないのに、勝手に演奏を始めた。

どうやら自由に楽器を作り出し、手を触れずとも演奏できるのが、彼女達の能力らしい。

 

「久々にあなた達の演奏を聞くのも悪くないわね。魔理沙、気をつけなさい。メルランの音は聞く者の感情を高ぶらせる躁の音色を出すのよ。変に気持ちが高ぶったりして暴走しないでよ」

 

なるほど。自由に演奏するだけじゃなくて音そのものにも能力があるのか。

学園都市にも音を操る能力者はいくらかいたけどな。

 

「へっ、そんなの聞くまでもないぜ。弾幕ごっこ中の私は年中無休で昂ぶってるんだぜ! んじゃお前の音にも何か能力があるのか、リリカ?」

「うーん、あるにはあるけど、今は無意味かな」

 

魔理沙はキーボードから放たれる音の弾幕をかわしつつ、レーザーで反撃しているがさっきよりも命中率が悪い。

咲夜もメルランに応戦しているけど、少し動きが変だ。

 

「ふふっ、不本意に昂ぶった感情の中でうまく弾幕をコントロール出来るかしら?」

 

興奮状態に無理やりさせられると、思ったように身体を動かせなくなる。

これは俺にも経験がある。

 

「あはははっ、だったらこうだ! 【星符・メテオニックシャワー】!」

 

すっかり興奮状態になった魔理沙はおなじみのスペカを放った。

気分が昂ぶっているせいか、いつもよりもド派手にばら撒いている。

 

「わわっ、私も負けないわよ! 【鍵霊・ベーゼンドルファー神奏】」

 

リリカも負けじと回転しながら迫ってくる弾幕をばら撒き始めた。

 

「【冥管・ゴーストクリフォード】」

「【幻符・殺人ドール】」

 

咲夜とメルランもスペカを使い、ナイフやら赤や白の弾幕を撃ちあっている

 

「危ないわね…」

 

俺達はさっきから黙って見るけど、実は流れ弾が結構飛んで来ていて地味に危ない。

 

「派手に撃ちあうのは綺麗でいいんだけど、もうちょっと考えてよね」

「まぁ、4人共夢中になってて周りに気を使う余裕ないだろ」

 

俺と霊夢は結界を張って流れ弾幕を防いでいる。

幻想支配で霊夢の霊力を使い、2人分の結界を張っているのでかなり頑強なものだ。

 

「とはいえ、これ以上離れてみるのもつまらないわね。それにしてももう1人はどこにいるのかしら?」

 

俺も霊夢もプリズムリバーの最後の1人の事を気にして、メルランとリリカを魔理沙と咲夜に任せていた。

だけど、最後の1人は一向に来る気配がない。

最も、騒霊も幽霊の一種みたいなもので気配がなく突然現れるかもしれないな。

 

「2人の姉だよな。もうすぐ来ると言っていたし……実はもう俺達の近くにいたりして」

「案外また私達の後ろにいるとか?」

「そのとーりです。あなた達良い勘してますね」

「「うぉ!?」」

 

背後から急に声と気配がして、振り向くと金髪に黒い服を着た少女がいつの間にか浮かんでいた。

何となく変な予感がしていたので、今度はいきなり肘打ちする事はなかったけどな。

 

「あんたいつからそこにいたのよ!?」

「ふっふっふっ、実は弾幕ごっこが始まる前からずっといました」

「それ結構前じゃないか? なんで今まで出てこなかったんだ?」

 

俺はともかく霊夢にすら気付かれずに潜んでいるなんて、すごいな。

 

「……弾幕ごっこが面倒だった、から?」

「いや、そこで疑問形になる意味が分からん。ってか俺に聞かれても困るぞ」

「じゃあ、そう言う事にしよう。私は弾幕ごっこが面倒だった」

「な、何なのこの子は」

 

2人してがっくりと肩を落とす。

脱力系と言えばいいのか、ゆったりとのんびり話すこの子はどこか理后を思い浮かばせるな。

 

「あ、私はルナサ、あそこにいる2人の姉、よろしく」

「あぁ、よろしく、俺はユウキだ」

「博麗霊夢よ。で、2人の妹は弾幕ごっこの真っ最中だけど、あんたはどうするの?」

 

やるなら私が相手になる、と目で語る霊夢を見て、ルナサはかなり長く考えて呟くように言った。

 

「ん~、私も観戦していい?」

「……好きになさい」

 

もう相手にするのも疲れるのか、霊夢は適当に返事をして魔理沙達へと向き直った。

ルナサは俺と霊夢の間に入るようにふわふわと浮かんできた。

 

「ねぇ、ユウキ君。音楽は好き?」

「音楽? いや、好きでも嫌いでもないな」

 

学園都市にいる時も特に好きな歌手やグループもいなかったし、部屋で聞く事もなかった。

学校で授業は合ったけど……受けた記憶ないな、ほとんど休んでた気がする。

 

「ふーん。私の音は相手を鬱にする音楽だけど、聞いてみる? お手軽に死ぬほど鬱になれるよ? ちなみに私の専門はバイオリン」

「いや、それを言われて聞きたがる奴は稀だと思うぞ? 能力抜きになら演奏聞いてみたいけど」

 

いざとなれば幻想支配で能力停止させて聞けば……って、それじゃ演奏する能力も使えなくなるか。

ルナサの音は相手を鬱にする、か。メルランとは正反対だな。

 

「そう言えば、あのリリカって赤いの。あれはどんな音を出せるの?」

 

霊夢が弾幕を放っているリリカを指さして尋ねた。

リリカの音にも何かしら効果はあるのだろうけど、特に変わった音には聞こえない。

しいて言えば心に響かない、個性がない音には聞こえる。

 

「リリカは幻想の音を出せるの。具体的に言えば私の鬱にする音、メルランの躁にする音を合わせて聞き心地のいい音にするの。だから私達は3人一緒にライブをするの。弾幕ごっこをする時も3人一緒」

 

ルナサとメルランの音を調和させる音ってわけか。

考えてみれば、ライブする時に毎回相手を鬱にしたし躁にしていたら、観客はたまったもんじゃないもんな。

 

「と言う事は、今あの2人はそれぞれに弾幕ごっこしてるけど、実質的には……」

「うん、メルランもリリカも実力は1/3人前程度。だから、あの2人は負ける。ほら、負けた」

 

ルナサの言う通り、メルランもリリカも弾幕を浴びて、目を回していた。

 

「ふー、良い運動になったぜ」

「弾幕ごっこは久々だったけど、まぁ何とかなったわね」

「ぅーん、まけたぁ~……」

「き、今日のところは私達の負けよ。でも、おぼえておきなさい。お姉ちゃんがいればあなた達なんて……ってお姉ちゃん!? そんな所で何してるの!?」

 

リリカがルナサに気付いて、こっちへすっ飛んできた。

騒霊だからそんなにダメージ受けてもすぐに回復か?

 

「やっほー」

「やっほー! じゃない! いたなら何で加勢してくれなかったの? おかげで私もメルランお姉ちゃんも負けちゃったじゃない」

「ぅ~姉さん。遅過ぎ!」

 

リリカだけじゃなくメルランも抗議の目でルナサを睨むが、当の本人は首を少しだけかしげた。

 

「妹達が立派に1人でやれるように、影で見守る為に私は手を出さなかった……と言うのはどう?」

「「ダメ! ってか私達に聞くな!」」

 

どうやらルナサは妹達に対してもこんな感じらしい。

 

「じゃ、私達はもう行くわね」

 

霊夢はもう関わりたくないようで、さっさとこの場を後にしようとした。

 

「あ、ちょっと待てよ。結界はどうしたんだよ」

「そんなもの。弾幕ごっこしてる間に穴開けたわよ。ユウキさんが結界の弱い部分探ってくれたおかげで案外簡単に破れたわ」

 

弾幕ごっこが始まってから、俺が幻想支配で結界を視て、弱い部分を見つけて霊夢が破った。

あれ? 咲夜がなぜか不機嫌そうな顔をしているぞ?

 

「そう言えば、霊夢に抱きかかえられて何かしてたわね、ユウキさん」

「うっ、見てたのかよ。よくそんな余裕あったな」

「時を止めた時にたまたま目に映っただけよ」

 

俺が結界を視ている間、飛ぶ事が出来ないから霊夢に抱えられながらだったのが、少し恥ずかしかったと言えば恥ずかしかったな。

 

「ほうほう、お姫様だっこならぬ王子様だっこと言うわけですか」

 

ルナサがそれを聞いて、興味深そうにしている。

メルランとリリカは少しにやけ顔だ。また肘打ちしようかな。

 

「なんだそれ。俺は王子様って柄じゃない」

「そうよ。それに抱きかかえてたって、私はユウキさんを支えていただけよ? あーもう、ほらさっさと行くわよ!」

「ぐぇ、霊夢、首、くるしい……」

 

霊夢が俺の襟首を掴み強引にこの場を後にした。

正直、地味に首苦しい。

 

「くっくっくっ、霊夢をいじるネタがまた増えたな。じゃあな、お前ら。今度ライブ聞きに行くぜ」

「また紅魔館でライブお願いしますね。フランお嬢様にも聞かせたいので」

「はいはーい、いつでもどこでもプリズムリバーは演奏しますよー!」

「今度は本当の私達の演奏を楽しんでね」

「ユウキ君、またねー」

 

プリズムリバー3姉妹に手を振り返しながら、俺達は破れた結界の先へと進んだ。

てかいい加減、手を離してくれないかな霊夢。

 

 

 

 

 

「結界が破られて、亡霊たちが騒がしくなってきた。どうやら、やってきたみたいね。しかも春を持ってきてくれたようね……妖夢、行ってくれるかしら?」

「はい、幽々子様。今度は油断しません。残りの春を必ずや持ってきます」

「まぁまぁ、向こうからやってきたのだから、そう焦る事はないわ。それよりも……あの少年、彼は絶対に通してはいけないわよ?」

「……わかりました。では、行って参ります」

 

 

「…………彼の力は危険、危険なのよ……でも、もうすぐ……もうすぐで、私(ワレ)の封印が解けるわ」

 

続く

 




はい、プリズムリバー戦でした。
次回はいよいよ妖夢戦。そして、幽々子戦です。
シリアスさが増していく……予定です。

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