幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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ユウキに何か武器を持たせるつもりでしたが……いらねぇーなーという結論(笑)


第4話 「妖精」

Side ユウキ

 

『いい、ユウキにとうま? 妖精って言うのはね古くから宗教的にも魔術的にも非常に密接な関係が……』

『だーもう! 分かったよ、分かりましたから、ながーい解釈はまた次の機会にって事で、出ないと特売に遅れる』

『お前が、天使が実在するなら妖精はいるのかなー、なんて言うからだぞ当麻。タイムセールに付き合ってやってんだから、とっとと買い物済ませるぞ。インデックスも続きは買い物が終わって当麻の家で夕食食べながらじっくりと話してあげなされ』

『うん、分かった。ユウキにはまた今度教えてあげるね』

『ってこらー! 何1人逃げようとしてるんでございますか、ユウキ! 夕食御馳走するから最後まで付き合ってくれ』

『はいはい。あ、タイムセール終了まで後1分切った』

『何~!? 不幸だあ~!!』

 

 

なんて、当麻やインデックスと妖精の話で盛り上がったけど、まさかこんな妖精に出会うとは思わなかったな。

 

「ねーねー、ユウキー魚まだー?」

「チルノちゃん。まだ始めたばかりだからもう少し待とうよ」

 

俺の目の前には水色の髪をして氷の結晶のような羽を生やした少女、チルノ。

そしてもう1人、こっちは緑髪をサイドポニーで纏めて、背中に羽を生やした少女、大ちゃんがいる。

2人は妖精と呼ばれる存在でその中でも特に力の強い存在らしい。

チルノは氷の妖精、大ちゃんは大妖精と呼ばれているが、大ちゃんと呼んで欲しいと言われた。

 

「まぁ、2人のおかげで釣りが出来る訳なんだけどな」

 

少し前、紫に言われて湖にやってきた俺は、朝食の魚を釣る事にしたのだが、当然釣り竿などあるわけがなくどうしようかと考えている所に2人がやってきた。

2人は初対面の俺にも人懐っこく話しかけてきて、流石に邪険には扱えなかった俺は釣りをしようとしていた事を話すと。

大妖精、大ちゃんが湖で拾った釣竿を渡してくれた。

なんでも、人里の人間の忘れものらしく餌のミミズも地面を掘ればすぐに出てきた。

で、2人も釣りをするのを見ていると言うわけで今に至る。

 

「なぁ大ちゃん。ここってよく釣りに来る人多いのか?」

 

女の子にちゃん付けなぞした事もないので、かなり恥かしいがこう言わないと拗ねられたのだから慣れるしかないか。

 

「はい、人間もよく見かけますし。あそこに住んでるメイドや妖怪も釣りに来る事ありますよ」

「あそこって、あの赤い館の事?」

 

湖の反対側に赤い館が見える、見た感じ一面真っ赤っかの洋館で……趣味が悪い。

 

「そうそう。名前はなんだっけ……えっと、なんとかまかん……まかんこうさっぽう?」

 

なんだその、緑色の異星人が放ちそうな怪光線は。

 

「違いますよー紅魔館。紅の魔が住む館、紅魔館です」

 

ん? 聞いた事がない声がしてふり返ると、そこには釣り竿と大きなバケツを持ち、チャイナ服を着た赤い髪の女性が立っていた。

 

「おはよう、チルノちゃん、大ちゃん」

「おはようございます」

「あ、みすずだ、みすずー!」

 

もう、ゴールしてもいいよね??

 

「いえいえ、紅美鈴。ホン・メイリンです! 中国って言われるよりはマシですけどね」

 

チャイナ服の女性、紅美鈴はたはは、と苦笑しながら2人の妖精に挨拶して、俺に向き直った。

 

「あなたは初めましてですね。改めまして私の名前は紅美鈴です。美鈴と呼んで構わないですよ」

 

人懐っこいその3だな。でも、彼女の笑顔は太陽のように眩しかった。

こんな笑顔を見たのは……いや、見せてもらったのはいつ以来かな。

 

「あ、俺は 「ユウキさん、外の世界からやってきた外来人さん。ですね?」 なんで知ってるんだ?」

 

霊夢、文、紫としか知りあっていないのに。

 

「これですこれ、さっき届いたばかりですが、これで知ったんですよ」

 

と美鈴が取り出したのは、文々。新聞と書かれた新聞だ。

そう言えば昨日、文に取材受けたんだっけか。幻想郷中に配達されているらしいから俺の事を知ってる人がいるのも分かる。

 

「良ければ読みますか? というより、一度読んだ方がいいでしょうね」

「えっと、どれどれ……日本語で書かれてるのか良かった、これなら俺でも読める。何何?」

 

≪新たな外来人現る。名前はユウキ、でも謎。年は16、らしいが謎。人里の少女を妖怪から守っていた所を博麗の巫女に救出される、悪い人ではない、けど謎。身体能力は高く戦闘経験も豊富で戦争に参加した事もあるとか、やっぱり謎≫

 

「……なんじゃこりゃー! 謎しかないだろうがぁ~!!」

 

あんなに取材受けた意味が全くない! 受けない方が良かったと心の底から思った。

 

「あ、あははは……気持ちは分かりますけど、落ち着いて下さい。ユウキさんが悪い人ではないと言うのは会ってみて分かりましたから」

「会って数分も経ってないのにそこまで言われると、かえって怪しいんだが?」

「ユウキさんは優しい人ですよ?」

「うん、ゆうきはいいやつだ!」

 

根拠のない褒め言葉だ。チルノと大ちゃんは見た目同様に子供だからそうなるのか?

 

「こう見えて私は、人の気を感じる事が出来るんです。で、あなたからは悪い気を感じません。ですから悪人ではありません!」

 

悪人には見えない。そう言われるよりは具体的だな。

 

「で、美鈴はここに何しに来たんだ?」

「あ、そうでした! 実はですね、この湖の魚を釣ろうかと思って来たんですよ。咲夜さんに頼まれまして」

 

そう言って美鈴は俺の隣に座り、釣りをし始めた

 

「咲夜?」

「はい、十六夜咲夜さんです。紅魔館のメイド長をしているとっても瀟洒な人ですよ。料理も作っているので魚を取ってきて欲しいと言われまして」

「なるほど、どうでもいいが、俺に敬語はいらないぞ? 俺の方が年下だろうし」

「これは、癖……みたいなものですね。門番しているとキツイ言葉では品が問われると言われたので」

 

昔は荒んでましたよ。と苦笑いを浮かべる美鈴の竿がピクリと反応した。

 

「おっ、早速来ましたね!」

 

早いな。と感心していると、俺の竿にも反応があった。

 

「あー! ユウキにもかかってるよ!」

「2人共がんばってください!」

 

チルノと大ちゃんに応援され、腕に力が籠る。

何だろう、この感覚……初めて味わったかもしれない。

それからしばらくして、2人して獲物と格闘し、ようやく魚の姿が見えてきた。結構大きいな。

 

「「せーのぉーー!!」」

 

自然と美鈴と息が揃い、一気に魚を釣り上げる事が出来た。

 

「うわっ、おっきぃ~!」

「滅多にいないですよ、こんな大きいの!」

「ふぅ、大物を釣り上げると気持ちがいいですね」

「そうだな。で、これくらいじゃ足りないんだろ?」

 

確かに大きな魚を釣れたが、あの洋館で使うにはまだまだ足りなく見えた。

 

「多いに越した事はありませんから。干物にするか、パチュリー様に魔法で保存してもらうつもりでしたし」

「パチュリー?」

「えっとですね、パチュリー様は……」

 

と、その後も釣りをしながら紅魔館に住む住民の事を聞く事が出来た。

主である、幼い吸血鬼レミリア・スカーレット、瀟洒なメイド十六夜咲夜、地下にある巨大図書館に住むパチュリー・ノーレッジ、その手伝いをしている小悪魔など。

それだけでなく、美鈴は聞いてもいない彼女達の能力を自慢げに語ってくれた。

よほど、紅魔館のみんなが好きなようだ、とても楽しそうに誇らしげに教えてくれたが、初対面の人間に教えていい事なのだろうか?

ちなみにチルノと大ちゃんは、時折釣りの様子を見つつ近くを飛び回って遊んでいた。

 

「それからですね、フランドール様という……「美鈴!」…あ、咲夜さん!」

 

突然美鈴を呼ぶ声がしたと思えば、銀色の髪をしたまさに【メイド!】と呼ぶに相応しい風格をした十六夜咲夜が空から現れた。

舞夏や鞠亜が見たら悔しがるだろうな。見る事は絶対にありえないけど。

それしても、幻想郷では人里の一般人以外は、大抵空を飛べるらしい……羨ましい。

 

「釣りをしてると思えば、随分と楽しそうにしているわね」

「い、いやこれは……」

「美鈴に色々尋ねたのは俺だ。そちらの門番を長く引き留めて悪かったな」

 

と、そこで初めて咲夜は俺の事が目に入ったように振り向いた。

 

「あら、あなたはもしくかして……新聞にあった謎の外来人さん?」

「謎は余計だ、謎は。俺はユウキ、朝飯を釣りに来たら美鈴がやってきて、色々教えてくれてたんだ。それにおかずの魚なら大量に釣れてるぞ」

 

大きなバケツ一杯の魚を咲夜に見せると、かなり驚いた顔をした。

 

「驚いたわ、ここってこんなに魚いたのね」

「私もびっくりですよ。きっとユウキさんのおかげですね」

「何もしてないのに、褒められても嬉しくもないんだけど?」

 

どうも美鈴は紫と別の意味で調子が狂う。

 

「それより、これ俺が釣った分も持って行ってくれよ。少し多く釣り過ぎたからな」

「…………」

 

釣った分の魚を差し出すと、咲夜は半ば睨むように俺を見て怪訝な表情を浮かべた。

どうやら美鈴と違い、咲夜は俺を警戒しているようだ。左手を何か掴もうとしているかのように構えている。

こっちの方が俺としては楽だけどな。

 

「ねぇねぇ、ユウキ。お腹すいたよぉ、早く焼いて食べようよぉ」

「(ぐぐぅ~)……はぅ」

 

服を引っ張りながらチルノが空腹を訴えてきた。

妖精が魚を食べるのかと疑問に思ったが、大ちゃんのお腹の虫が騒ぎ出したので妖精もお腹はすくようだ。

 

「と言うわけで、俺はこの2人に魚焼かなきゃいけないから、これ渡すぞ。じゃあな」

 

押しつける形で魚の入ったバケツを渡し、3匹の魚を手に去ろうとしたが、その肩を美鈴に掴まれた。

 

「ちょっと待って下さい、ユウキさん。せっかく知りあった縁じゃないですか。咲夜さんもそんな警戒しないでくださいよ」

 

……何が言いたいんだろう?

 

「はぁ……分かったわ。ユウキさん、それからそこの妖精たちも、お嬢様が寝ているから館には入れれないけど、門の所で待ってなさい」

「流石、咲夜さん♪ ほらほら、行きますよー!」

「えっ? ちょっ、マテ、俺飛べ……なぁ~!?」

 

返事をする前に美鈴に手を掴まれ、あっという間に湖を文字通り飛びこえる事になった。

眼下にはポカーンと、口を開けているチルノと大ちゃんと、額に手をあて深く溜息を付いた咲夜がいた。

 

Side out

 

 

続く




紅魔館って湖の中島じゃなくて湖の畔でいいんですよね?紅魔郷と東方求聞史紀では描写違うみたいですし。

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