幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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2回目の魔理沙戦、決着です。


第48話 「再戦(後編)」

「私の弾幕。かわせるものならかわしてみろ! 使うのは3枚だぜ!」

 

私はユウキに向けて弾幕を張りつつ、突進した。

別に箒でぶつかるつもりはないけど、それでもただ黙って弾幕を張るだけじゃ済ませたくなかった。

 

「なら、御言葉に甘えて……」

 

ユウキがそう言った瞬間、姿が消えた。

幻想支配を使ったわけじゃない。

ユウキはただ全力で突進する私に向かって、ただ走っただけ。

それなのに消えたように見えた。

 

「こっちだこっち」

「なっ、いつのまに!?」

 

後ろから声が聞こえてふり返ると、ユウキは私の後ろにいた。

 

「いや、ただ全力で走って通り抜けただけなんだけど、そこまで驚くか?」

「……あっ」

 

ユウキは少し呆れたように苦笑した。

それを聞いて、私も自分の浅はかさに呆れてしまった。

なんて事はない。ユウキの言う通り、驚く事じゃなかった。

私は今まで霊夢やアリス、空を飛ぶ相手ばかりと弾幕ごっこをしていたので、地を走る相手と弾幕ごっこをした事がなかった。

それに弾幕を放つ自分に向かって反撃もせずにただ黙って走り抜けるだけなんて、そんな奴はいなかった。

だから意表を突かれたのかもしれない。

私もほぼ全速でユウキに向かって飛んだので、ユウキも全力で走れば相対的に消えたように見えてしまうのは当たり前だ。

思えばユウキはフランを相手にした時と同じ事をしただけ、ただ全力で走って弾幕を突破した。

しかも今回、私はスペルカードを使っていない、ホントにただ弾を撃っただけ。

フランの時に比べたらかわすのは簡単だ。

 

「や、やりにくいぜ」

「おいおい、始まってまだ数秒でそのセリフかよ。しっかりしてくれよ、チャレンジャー」

 

挑戦者……か。安い挑発だ。

確かに私はユウキに負けて、そのリベンジに来たのだから確かに挑戦者だ。

 

『いや今回、幻想支配は使わない。魔理沙の弾幕やスペカを全部かわしてやるよ』

 

あいつは笑いながらも真剣な表情で私にこう言った。

私には、それが許せなかった。

天才、ユウキにはまさにその言葉に相応しい。

魔女パチュリーの魔力を得ただけで、その全てを理解して、適切に使って私を負かせたんだ。

元の世界で色々な修羅場くぐりぬけてきたからとはいえ、初めて会った時は力任せの素人だと思っていたのに。

弾幕ごっこの素人に私が苦心して編み出した魔法があっさりと破られた。

しかも、私の知らない弱点をついて。

私がどれほどの努力を、研究を重ねて生み出したのか知らないのに、こいつはあっさりと……破った。

それがどうしようもなく許せなかった。

アリスや霖之助はそんな私を察してか気遣ってくれたけど、それが余計にみじめに感じた。

けどこれはただの嫉妬。ユウキは何も悪くない。それは分かっている。

だから宴会で会ったユウキにも普通に接しようとした。

まぁ、意識せずに普通に話したつもりなのに、最初は少し嫌味っぽい挨拶になったけど。

けれども、そんな私の心中を知ってか知らずかアイツは私の嫌味を気にせず、いつもと変わらない風に返してきた。

それがまた私には不快だった。これもアイツが悪いわけじゃない、私の自爆だ。

アイツはアリスの魔法についても一目で看破した。だけど、アリスは私と違って驚いただけで、嫉妬している様子はない。

そればかりか、アイツの事を気に入ったようだ。

パチュリーもそうだけど、自分の魔法を簡単に暴かれて悔しくないのか?

聞いてはみたくなったけど、私は聞けなかった。

その後、アイツは風見幽香にも目を付けられた。

霊夢や紫ですら警戒する程の危険な相手、風見幽香。

幽香の殺気をアイツは涼しい顔で受け止め、更にそれを上回る程の冷たい殺気で返した。

ほんの一瞬の出来事だったけど、あの時のアイツの顔は忘れられない。

その殺気はアリスやパチュリー、霊夢達ですら固まるほどのものだった。

あれがアイツの本気、いや、あれでもほんの片鱗でしかないはず。

その事に気付き、また、あの時私を負かした時、アイツは全く本気じゃなかった事にも気付いた。

結局、宴会で悔しさと嫉妬心だけが増しただけだった。

 

「っ、だったら! 【星符・メテオニックシャワー】!」

 

両手を突き出し、大型の星型弾幕をアイツにむけて放った。

最初に使うスペルカードは3枚と言ったけど、こんなに早く1枚目を使う事になるとは思わなかった

 

「相変わらず魔理沙のスペカは綺麗だな」

「そりゃどうも。そのまま当たってくれると嬉しんだけどな」

「無理だな、それは」

 

アイツは余裕そうに笑いながら、次々と私のスペカをかわしていく。

時には顔をそらし、時には身体を捻り、必要最低限の動きでかわしていた。

 

「このっ!」

 

撃ち方を変えて、アイツの周りを回りながら撃ち放った。

それでもアイツは余裕そうにかわしていく。

弾速をあげてもそれは変わらず、まるで踊っているかのようにかわす様は少し優雅に見えた。

結局アイツには掠りもせず時間切れになり、スペカの効果が切れてしまった。

 

「魔理沙さーん。3枚で足りるんですか―!?」

「うるさいな! まだ2枚も残ってるぜ!」

 

文が笑いながら何か言ってきたけど、気にしない。

そう、まだ2枚も残っている。勝負はこれからだ。

さっきはつい挑発に乗って、貴重なスペルカードを1枚使ってしまった。

しかも、あのスペカは一度アイツに使っている。かわすのは簡単だっただろう。

相手は反撃も飛行も出来ない。まずは通常の弾幕でアイツの動きを少し観察しないと。

 

「もう終わりか?」

 

アイツは右手をクイクイと動かし、かかってこいと挑発してきた。

2度も挑発に乗ってたまるか。

 

「まだまだ!」

 

さっきと同じ轍は踏まない。今度はアイツを囲むように飛びまわって弾幕を撃ってやる。

 

「そう来るよな!」

 

アイツは私の動きを読んでいたのか、一目散に林へと走った。

今日はあまり積もってないとはいえ、雪の中をあんなに速く走れるなんて。

そんな事より……

 

「狭い林の中なら思う存分飛べない、そう思ったのか? 浅はかだぜ!」

 

伊達に魔法の森の中でずっと生活しているわけじゃない。

こんな木々が生い茂った場所でも、飛びまわって弾幕を撃つのはお手の元だ。

走りまわるアイツに向けて、弾幕を放った。

木が多少邪魔でうまく当たらないけど、アイツの姿は見失わない。

 

「だろうな。でも、こっちの方が俺も動きやすいんだよ!」

 

そう言うとアイツは一つの大きな木の枝につかまり、器用に登り始めた。

 

「猿かお前は!」

 

人里の大人でもここまで速く木登りする奴はいない。

あっという間に空に浮く私と同じ高さの枝にまで登った。

 

「幻想支配を使わないとは言ったけど、それだけだ。他に使えるものは何でも使う。いいハンデだろ?」

「なめる、なぁ!」

 

私はアイツに向けて手から魔力レーザーを放ったが、アイツは他の枝に飛び移って難なくかわした。

そう言えばここら辺の木々は密集しているだけじゃなく、枝の1本1本がかなり太い。

 

「ほらこっちだ!」

「っ!?」

 

アイツはあっという間に枝を飛び移り、私の横にまで移動してきた。

咄嗟に弾幕を放ったけど、アイツはまた枝を飛び移ってかわした。

なんて言う脚力だろうか。速度は私の方が断然に速いはずなのに、アイツは枝と枝をうまく跳び、私を圧倒していた。

 

「くっそぉ!」

 

アイツを追いかけながら、弾幕を放つが当たらない。

私の弾幕は霊夢のと違って攻撃力は高いけど、ホーミング性能が良くない。

 

「待て!」

 

だから私が直接狙って撃つしかない。

今度自動遠隔操作の固定砲台魔法でも作ろうかと思った。

次々と弾幕を放つが、アイツは枝に飛び移って行くだけじゃなく、時にいきなり反転して私のすぐ真横を通過したりと変則的な動きをしてきた。

 

「結構な攻撃力だけど、当たらなければどうと言う事はないんだぞ?」

 

と言う挑発的な言葉と共に。

速度で勝っている私が先周りして狙えばいいけど、それをさせてくれない。

アイツは木々の密集している箇所を縦横無尽に駆け回っている。

自分の優位なフィールドから離れようとはしなかった。

それでもあんなに激しく動き回っているんだ。

いくら体力があっても、そろそろ疲れがみえてもおかしくはないはず。

そう思っていると、アイツの駆けまわる速度が落ちてきた。

ここで決める。

 

「これで、どうだ!」

 

八卦炉を取りだし、前を跳ぶユウキに向けた。

ちょっと過激だけど、広範囲で高威力のコイツを使えば、どこに跳びまわっていようと捕える事が出来るはずだ。

私の取っておきの十八番。

 

「【恋符・マスタースパーク】!」

「ちょっ、待ちなさい!!」

 

どこからか霊夢の声が聞こえたけど、私は構わずに放った。

前は図書館内だからそれなりに範囲を狭めて放ったけど、今回は本気だ。

まぁ、これが当たっても死にはしない……はず。

 

「ど、どうだ。やったか!?」

 

私が八卦炉を降ろして、前を向くとマスタースパークが放った痕には、大きな穴が空いたように木々や枝が吹き飛んでいる。

これは……やりすぎたかもしれない。まさかアイツは……

 

「そういうセリフを言う時は大抵やってない。フラグって言うんだ、覚えておけ」

 

少し血の気が引きながらそう思った時、不意に下からアイツの声が聞こえてきた。

 

「っ!? ユウキ!?」

 

ちょうど私の下にある木。そこにアイツは立っていて、笑みを浮かべながら私を見上げていた。流石に少し息が切れているようで、白い息がアイツの口から漏れていた。

 

「い、いつのまにそんな所に!? アレを避けたのか!?」

「図書館の時よりも広範囲だったから焦ったけどな、けどそれが返って良かったんだよ。あんな極太の魔力砲を撃てば、お前の視界はかなり遮られる。マスタースパークが放たれる寸前に、下に飛び降りて隠れたんだよ。ま、ここら辺の枝が太さの割に柔らかくて助かったけどな」

 

そうか、マスタースパークは確かに広範囲魔法砲撃だけど、それを撃つ時私の視界は遮られる。

その一瞬の隙をついて、アイツは柔らかい枝のしなる反動を利用して、地面に飛び降りるように避けたのか。

この高さから落ちても下には結構な雪が積もっていて、大怪我をする事はない。

 

「で、続きと行きたいんだが……少し待ってくれ、さっきの場所に戻るから」

 

私がマスパで空けた跡を見ながら、アイツは苦笑いをした。

アイツが見ている先には、霊夢が鬼のような顔をして浮かんでいる。

その横では文が呆れ半分といった表情で、私達の写真を撮っていた。

 

「ま~り~さ~! 大切な森をこんなにしてくれて、どう責任取ってくれるのかしら?」

「ちょっ、霊夢! わ、私のせい……だけど、ユウキがここに逃げ込むのも悪いんだぜ!?」

「ユウキさん?」

「……アハハハ」

 

霊夢が睨むと、アイツにしては珍しく乾いた笑みを浮かべて明後日の方を向いている。

 

「ともかく、やるなら境内でしなさい!」

「「わ、分かりました」」

 

それから場所を元いた境内に移して、小休止になった。

ユウキは大丈夫と言っていたけど、霊夢と文が休めと言って無理やり休ませる事にしたからだ。

あの2人があそこまで他人を心配するなんて、かなり意外だ。

休んでいる間、冷静に今までを振り返って私はふと、ユウキの挑発にずっと乗っていた事にやっと気付いた。

安い挑発には乗らないつもりで、乗っていないつもりだったけど、私はしっかりと乗せられていた。

これは……負けたかな。

 

「どう? 少しは頭冷えた?」

 

ユウキと離れた場所で休んでいた私の元に、霊夢がやってきた。

 

「霊夢……何の事だ? 私の頭はずっと冷えてるぜ?」

「あらそう? ユウキさんの挑発に乗って、2枚もスペカを無駄に消耗させられたように見えたけど?」

「うぐっ、そ、そんな事はないぜ?」

 

精一杯強がったつもりだけど、霊夢のニコニコ顔を見て両手をあげて降参のポーズを取った。

 

「はいそうです、見事にしてやられました……」

 

ユウキは私が3枚スペルカードを使うと言った時、既にどういう種類のが来るか予想していたはず。

1枚目の連射型を持ち前の動体視力と反射神経で攻略した後、すぐに場所を移動した。

狭い場所でチマチマと動かれて、私がイライラして木々毎高威力のマスパを使ってくるのを狙った。

あんなに速く枝を跳びまわれるなら境内のような開けた場所よりも、森の方がマスパを避けやすくなる。

私はその狙い通りにマスパを使ってしまった。

 

「あら、意外と素直ね」

「なっ!? わ、私はいつも素直だぜ!」

「神社に殴り込んで来てからさっきまで、ううん、ユウキさんに負けてからずーっと、素直じゃなかったように思えるけど? ユウキさんに図書館で負けてからの魔理沙、らしくなかったしね」

「う、うぐっ……」

 

全部見抜かれていた。

だから霊夢に会うのは避けていたのに……でも、アリスや霖之助にも見抜かれたんだし、霊夢ならもうとっくに見抜いているかも。

 

「それにしても、それまで私の事見抜いていてよく止めなかったな」

 

今はもう大丈夫だけど、あの時の私はひょっとしたらユウキを傷付けたかもしれない。

それほど、私はユウキが許せなかった。

昨日チルノに負けた時、何が起きたのか分からなかった。

フラフラとその場を後にして、気が付いたら家で寝ていて文が新聞を置いてそれを読んだ。

ユウキがチルノに教えたスペカで私が負けた。

記事を読むと、ユウキがチルノの能力を使いあのスペカをすぐに思い浮かんだそうだ。

私が新しい魔法を作るのにどれだけ努力と苦労を重ねたか、それを笑われた気がした。

チルノは魔法使いじゃないし、私と使う力も何もかも違うけど、それでも許せなかった。

ユウキは私が苦労して編み出した魔法の弱点を一瞬で見抜いたばかりか、もっと隙がなく美しいと思える新しいスペルカードを即興で生み出したんだ。

これが、天才。私とユウキの力の差をまざまざと見せつけられた気がした。

だから、今日リベンジを挑もうと思った。

 

「ん? そうね、魔理沙はユウキさんをかなり妬んで憎んでいるようにも見えたけど……ユウキさんなら大丈夫と思ったのよ」

「少し会わない間に、ユウキに大層な信頼を寄せるようになったんだな。へーふーん、なるほどなるほど」

 

意地悪そうに言うと、霊夢の顔が真っ赤になった

 

「なっ、何を言い出すのよ。そういうのじゃないわよ。ただここ数日ユウキさんと一緒に住んで、少しは彼の事が知れたから……それだけよ」

「ん、霊夢、そのブローチどうしたんだ?」

 

今気付いたけど、霊夢の胸元に見慣れない綺麗なブローチが着いている。

こんなもの霊夢は持っていなかったはず。

 

「あ、これは香霖堂でユウキさんに貰ったのよ……っ!? か、勘違いしないでよね。彼は世話になるからその御礼でくれたのよ!?」

「あーうん、分かった。御馳走様」

 

これ以上聞くと体中から砂糖が出そうになったので、話題を終え……ようとしたのだったけど。

 

「ちょーっと待って下さい! 今の話もう少し詳しく! 何だか見慣れないブローチしてるなと思いましたけど、ま、まさかユウキさんに貰ったものだったのですか!?」

 

離れた所でユウキと話をしていた文が、私達の話を聞いてすっ飛んできた。

結構地獄耳だな。

 

「ちょっ、文。いきなり胸倉掴むんじゃないわよ、服が伸びるでしょ!」

「良く見ると結構高級そうじゃないですか。ユウキさん、なんで霊夢さんにコレを!? まさか……プロポーズしたんですか!?」

 

溜息を吐きながらながらこっちにやってきたユウキに、この世の終わりな表情を浮かべた文が跳び付きながら尋ねた。

 

「どうやったらそこまで話が飛躍するんだよ。香霖堂でちょっとした仕事の報酬でもらったブローチを、これから世話になる霊夢にあげただけだ」

「な、なんですって……わ、私には、私には何かないんですか!? 私もかなりお世話しましたよ!?」

「あるわけないでしょ。あんたはユウキさんの変な記事書いただけじゃない」

「そんな事ありません!」

 

……何だろう。しばらく家に引きこもっていた間に、霊夢も文もキャラが変わり過ぎてないか?

文は宴会の時からこうだったか。

そんな事より、何だか弾幕ごっこの続きをする空気じゃなくなったな。

と言うか、霊夢と文が弾幕ごっこを始めそうだぜ。

 

「……で、お前はもう休んでなくて大丈夫なのか、ユウキ?」

「さっきは食べた後に激しく動いたからで、別に問題はない。続き、するか?」

「いや、いい。あのまま続けても、多分ユウキには勝てないだろうし。なんかもう、今日は満足した」

 

それを聞いてユウキは少し驚いた顔をしたけど、私は嘘を言っていない。

傍から見れば一方的な弾幕ごっこだったけど、私は満足だ。

ただ逃げるだけじゃなく、考えて動き回る相手にいかにして弾幕を当てるか。

考えてみれば、それはそれで立派な弾幕ごっこだ。

霊夢は私をらしくないと言ったけど、本当にそうだ。

ユウキは確かに天才で、嫉妬もしたけど……でも、それは結局ただの八つ当たり。

 

「そうか、魔理沙が満足したらないいか。今日は引き分けだ、俺も楽しかったしな」

 

弾幕ごっこ中のユウキは、とても楽しそうに見えた。

弾幕を放てず、空も飛べずにただ走りまわって避けるしか出来ないのに、それでも楽しそうだった。

それを見て、私は心のどこかで恥ずかしいとさえ思った。

ユウキはこんなに弾幕ごっこを楽しんでいるのに、私は何を思って弾幕ごっこをしているのだろうと。

 

「……ごめん」

 

私は聞こえるか聞こえないかの小声で、ユウキに謝った。

ユウキは聞こえていたのだろうけど、特に何も言わずに笑顔で霊夢と文が始めた弾幕ごっこを眺めていた。

 

「弾幕ごっこって、見ていてもやっていても楽しいな。すごく好きになったよ、弾幕ごっこ」

「……そうだな」

 

それを聞いて、罪悪感が増した。

 

「初めて弾幕ごっこした相手は魔理沙で、今日もまたやったけど、やっぱ魔理沙相手にすると面白いな」

「お、面白い?」

「あぁ、真っ直ぐで力強くて綺麗で、図書館でやった時に思ってたんだ。またやりたいってさ。で、今日またやる事ができた。避ける事しかしなかったけど、それでも十分に楽しかった。魔理沙が相手だったからな」

 

何だかとても意外な事を言われた。

私として楽しい? 私の弾幕が面白い?

私はユウキを妬んで、憎んでさえいながら弾幕ごっこをしたというのに。

 

「それは、ユウキが弾幕ごっこをそれほどしてないせいじゃないのか?」

 

つい捻くれた事を言ってしまった。

 

「うーん、紅魔館に居た時も神社に居た時も。それなりに弾幕ごっこはしていたんだけどな。本格的なのは図書館で魔理沙相手が初めてだったけど、魔理沙とやってて一番楽しいな」

「そ、そうか……」

 

そう言われるのは初めてだったから、素直に嬉しかった。

 

「またやろうぜ、魔理沙」

「あぁ、その時は今日見せられなかった新しい魔法を沢山見せてやるぜ!」

「うーん、流石に幻想支配使わずには厳しそうだな。うん、今度やる時は霊夢の力を借りる事にしようかな」

「げっ、そ、それは反則だぜ!」

 

もう私には、ユウキへの敵対心はなかった。

少し妬む気持ちはまだあるけど、それでも恨む気持ちはなかった。

今日は引き分けに終わったけど、今度こそユウキに勝って見せる!

その時までにもっと魔法の精度磨いておかないとな。

弾幕ごっこは私が一番大好きなのだから。

 

つづく

 




魔理沙とは決着付かずの引き分けになりました。
改良したスペルカードは次の異変までお預けです。
魔理沙とはライバルと言う感じになっていきますね。

さて、そろそろ次の異変に向けた話が進んでいますが……次回はあのキャラが出ます!

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