幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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咲夜のターン!(笑)


第36話 「殺人鬼」

ユウキさんが紅魔館に来て、今日で5日目。明後日には彼はここを出てしまう。

口にすればするほど、心のどこかで少しの寂しさを感じるようになった。

それはあまり味わった事のない感情でもあり、昔はよく味わっていた感情でもあった。

彼が来てから、正確には先日の異変の時から紅魔館が少しだけ変わった気がする。

美鈴はユウキさんの事をよく気にかけていて、フランお嬢様と2人で何かと面倒を見たがっている。

彼女は元から世話好きで人間好きでもあるから、特に変わったとかではないだろうけど。

パチュリー様は、図書館から出てくる事が多くなり、ユウキさんの身体を診察する名目でよく部屋に居る事がある。最初は実験体として彼を見ていたようだけど、最近では彼を見る目が変わってきている気がする。

こぁはどこぞのアイドルおっかけみたく、彼の事を物影から観察している時が多い……正直、怖い。

フランお嬢様はユウキさんを兄として慕っていて、レミリアお嬢様よりもユウキさんの言う事を聞く事が多く、それがレミリアお嬢様には不満だとか。

最近では、パチュリー様に力の制御の使い方を教わっていて、前よりも落ち着いてきている。

レミリアお嬢様は博麗の巫女に負けて、ユウキさんにフランお嬢様との仲を取りもたされて以来、少し雰囲気が柔らかくなった。

前から気にかけていたフランお嬢様へも素直に愛情を示すようになり、フランお嬢様もレミリアお嬢様へ甘えるようになって仲の良い姉妹となった。

 

「お兄ちゃんこっちこっち!」

「フラン、ちゃんと前を見て飛ばないと壁にぶつかるぞ」

 

今日もフランお嬢様は元気にユウキさんと鬼ごっこをしているようだ。私も混ざりたいとは……少し思わないでもなかったりする。

さて、お昼過ぎまで寝ているであろうレミリアお嬢様の洗濯物を片づけましょうか。

 

「「鬼がキター! 逃げろー!」」

 

そう言えば、2人共一緒に逃げているけれど、鬼役は誰なのかしら? メイド妖精には勤まらないだろうし、美鈴かもしれないわね。

と、洗濯物を干そうとしていたら……

 

「まーてー、たべちゃうぞー!」

 

――ズコッ!

 

レミリアお嬢様がノリノリで2人を追いかけている姿を見て、思わずずっこけて洗濯物をばらけさせてしまった。

それでも時間を止めて、床に落ちる前にすべて回収できたけど。

 

「あ、しゃ……しゃくや!?」

「私に借家はありません。で、何をしているのですかレミリアお嬢様? てっきりお休みになられているものと」

「そ、それが寝ようとしたのだけど、ユウキとフランが鬼ごっこしようとしてるのを聞いて……じゃなくて! あの2人が私とどうしても鬼ごっこしたいと言うから仕方なくよ、本当は眠くてだるかったのよ!?」

「はぁ~……レミリアお嬢様、全くごまかせていません」

 

一番変わったのは、やはりレミリアお嬢様かしら?

 

「そうだ。咲夜、あなたも混ざりなさい!」

「いえ、私はまだ仕事がありますから、申し訳ありません。それよりもお二人とも見えなくなりましたが、よろしいのですか?」

「はっ!? そうだったわ。あの2人を早く捕まえないと、私のプリンが食べられる!」

 

――ズルっ!

 

お、お嬢様……おやつのプリンをかけて鬼ごっこをしていたのですか。

またもやこけそうになったのを、どうにかこらえる。

 

「あのお二人が楽しそうなら……それでいい、と思っておきましょうか」

 

やっぱり、レミリアお嬢様が一番変わったわね……色々な意味で。

なら、私はどうかしら。変わったのかしら、それとも昔のままかしら。

こんな数日で変われるほど、単純だとは思ってはいない。あ、それだとお嬢様達が単純って事になるわね。

 

「ふっ、ふふふっ……よう、やく追い詰めたわよ、2人共」

「大丈夫、お姉様? 息が切れ切れだよ?」

「そこまで食べられたくなかったのか、プリン」

「なっ!? 違う……わなくないけど違うわよ! ともかく、これで私が2人を捕まえれば、あなたの血を貰うわよユウキ。眷属にするわけじゃないから、吸血鬼にはならないから安心しなさい。それに私小食だし」

「安心できるか! よしっ、フランここらで俺達の切り札使うぞ」

「うん、いくよー! 禁忌!」

「ダブル!」

「「フォーオブアカインド!」」

「えっ!? ちょっ、スペルカードは反則でしょ!? しかも、よりにもよってそれ使う!? う~咲夜ぁ~!!」

 

聞こえない、私は何も聞いていない。

さーて、早く洗濯物を片づけましょうか♪

 

 

 

それから、洗濯物を干して昼食の準備を始めようとした時、ユウキさんが厨房へとやってきました。

 

「ユウキ様、鬼ごっこは終わったのですか?」

「あぁ、レミリアとフランは少し寝ると部屋に戻った。昼食には起こして欲しいってさ」

 

今頃2人で仲良く夢のなかでしょうね。

 

「ならなぜここに、もうお腹が空いたのですか? 昼食にはもう少し早いですが、何か作りましょうか?」

「いやいや、そうじゃないんだ。咲夜の手伝いしたいと思ってな」

「私の、手伝い? お客様であるユウキ様にそのような事はさせられません」

 

そう言うとユウキさんは申し訳なさそうな顔をしたが、それでも話を続けた。

 

「料理は一応できるけど、流石に咲夜の足を引っ張りそうだから、味付けとかは手伝わないさ。ただ野菜の皮むきさせてもらえないか?」

「皮むき、ですか?」

「リハビリだよ。ナイフで皮むきして手先の感覚を取り戻すんだ。それに、最近素手でばっかり戦ってたからな、ナイフの感覚も取り戻したい」

 

なかなか物騒な事を言っているけど、確かユウキさんは元いた世界では、色々な武器を使っていてその中でもナイフが得意だったわね。

同じナイフ使いとして、少し親近感が沸くわ。

下ごしらえや味付けではなく、野菜の皮むき程度なら問題はないでしょう。

 

「そう言う事でしたら、分かりました。ちょうどこれから昼食の支度をしようとしていたので、よろしくお願いしますね」

「あぁ、ありがとう」

 

こうして私とユウキさんは2人で厨房に立ち、昼食の準備を始めた。

ユウキさんのナイフ捌きは大したもので、正直私よりも早く野菜の皮を剥いている。

それにただ皮をむくだけではなく、剥いた皮はすごく薄い。

たかが野菜の皮むきとはいえ、人数が多いので普段は時を止めてやってはいるが、その手間が省けた分かなり助かるわ。

 

「驚きました。ユウキ様は料理をなさっていたのですか?」

「まぁな、咲夜みたくプロ級ではないけど、それなりにな。で、咲夜、やっぱりそれ辞めてほしいんだが」

「はい? それとは何の事でしょう?」

「敬語と様付けだ。咲夜が俺をお客として敬ってくれてるのは分かるし、職務もあるから慣れようと思ってたけど、やっぱり俺にはどうもな」

 

身体が痒くなる。とユウキさんは苦笑いを浮かべた。

様付けをされた事がない人間には、違和感やむずかしさを覚えるのかもしれないけれど、ユウキさんが大切なお客様なのには変わりはない。

 

「最初に会った時のような、あんな感じで頼む。今は俺と2人だけで、レミリアもいないし。ダメか?」

 

最初に会った時……あの時は警戒心があったけど、彼はそれを感じ取っていたのね。

ちょっと罪悪感が沸く。彼は何もしていない。それどころか親しげに接してくれたのに、私はそれを警戒心で応えてしまった。

ってそれよりも、今私はユウキさんと2人きり、なのよね。

厨房で誰かと2人きり、それも男性とだなんて……初めて、ね。

 

「あの時は失礼いたしました。遅くなりましたが、無礼をお詫びいたします」

「だからそれをやめろっての。俺は……そんな事される程出来た人間じゃない」

 

まただ。また一瞬彼の目に浮かんだ、いや、感情が消えた。

 

「それは、元いた世界であなたが何をしていたか、に関係していますか?」

 

文も霊夢もユウキさんが元いた世界で、どのような生活をしていたか具体的には聞いていないと言う。

ただ、何でも屋として戦争も経験したり、殺し合いも慣れていると言う事だけ。

 

「言ったかどうか忘れたけど、俺は元いた世界で何でも屋をしていた。と言えば綺麗に聞こえるけど、実際は非道な実験を行ったり、被験者になったり、裏切り者の抹殺とかそういう裏の仕事が主だった。フランなんかより俺の方がずっと危険だぞ? 殺した人間は100人以上いるしな」

 

淡々と話す彼の表情は何もない。

普通こういう過去を話す時は、悔いや後悔を表情に浮かべる物だけど。

自分が行った事実を受け止めているのか、それとも彼にとっては当たり前すぎた日常を語っているにすぎないのか。

恐らく両方ね。私にも経験があるし。

 

「だから、こんな自分を慕うフランお嬢様や、気にかける美鈴やこぁが理解出来ない……ですか?」

「よく分かるな。その通りだよ。こんな最低な殺人鬼に好意を向ける彼女達が、理解出来ない」

 

これは……私と同じ。私も昔はこうだった。ここに来るまで、紅魔館のみんなやレミリアお嬢様に出会うまでの私だ。

 

「理解する必要は、あるのかしら?」

「えっ?」

 

下ごしらえも終わり、後は煮込むだけなので私は手を止め、真っ直ぐにユウキさんを見据えた。

彼の目には困惑しかない。

 

「あなたが過去にどんな事をしてきたのか、興味はない……と言えばうそになるけど。それでもあなたがそこまで自分を卑下する程、最低な人間とは私は思わないわ。それはここにいる皆も同じ。それは紛れもない事実よ」

「…………」

「少し昔話をしましょうか……とある少女の昔話よ」

 

――ある所に1人の女の子がいました。彼女は幼い頃から母親と2人暮らしでした。

父親は亡くなっていましたが、彼女には愛情を注いでくれる母親がいるだけで十分でした。けれども、彼女は母親にすら言えない秘密がありました。

物心つく頃、彼女は自分に不思議な力がある事に気付きました。

彼女は時間を止める事が出来るのです。初めて使った時、彼女はその力を理解し恐怖しました。

こんな事が出来るのは人間じゃない。そう思いこんだ彼女は、母親にも誰にも付けず黙っていました。

その力を使う事もせず、ただ力が消えてくれる事だけを願い過ごしました。

ですが、母親にはすぐにバレてしまいました。

母親の頭に屋根から崩れ落ちたレンガが当たりそうになり、彼女は咄嗟に時を止め母親を救いました。

母親は彼女に礼を言いましたが。しかし、その時母親の目に少し浮かんだ畏怖の色に彼女は気付いてしまいました。

運悪く、彼女が住む町の一部の住民にも見られてしまい。それが原因で離れた小さな町に引っ越す事になってしまいました。新しい町に引っ越すと、母親は彼女に厳しい口調で力を使ってはいけないと言いました。

母親の今まで見た事ない表情に、彼女はただうなづく事しか出来ませんでした。

そして、彼女達が引っ越してから少し経った頃でした。町に通り魔が現れました。

霧の濃い夜に、街の誰かが切り刻まれて殺され始めたのです。

誰もその姿を見た者はいませんでしたが、何人もの人がその通り魔に切り裂かれ殺されました。

その通り魔が誰なのか、誰もが疑心暗鬼になりました。

誰にも気づかれず見られずに、人々を切り裂く犯行にふと母親は自分の娘を疑いました。

彼女なら時を止めている間に好き勝手に切り刻めるからです。

母親の問いに彼女は、何も知らない自分は何もしてないと言いました。

母親は自分の疑心を恥じて、彼女に謝りました。

しかし、彼女の力の事が町中に広まってしまったのです。母親が彼女の力について呟いているのを、聞かれてしまったのです。

町の人達は彼女を疑いました。決定的な証拠はないのに、彼女を犯人と決め付けるようになりました。

その度に母親がかばったので、大きな騒ぎにはなりませんでしたが、彼女を調べに来た警官が誰にも気づかれずに殺された事でより一層彼女を疑う声は強くなりました。

ですが、誰も彼女を責めたり問い詰めたりはしませんでした。

そんな事をすれば自分が殺されると思ったからです。

彼女は影で【夜霧の殺人鬼】 と呼ばれるようになりました。

そんな中でも、彼女は何事もなかったかのように振る舞いました。

母親に下手に怯えれば、認めるような物だから普通に過ごしなさいと言われていたからです。

彼女は必死に耐えました。彼女はもう誰にも心を開く事が出来なくなっていましたが、母親だけが彼女の支えでした。

町を出る事も考えましたが、なぜか母親が反対しました。

僅かな間で通り魔のせいで町から人は次々と減って行き、ついに母親もこの町を出て行く決心をしました。

町を出る前日の夜、その日は満月でした。霧も出ていなく、今夜通り魔が出ないだろうと皆が安心していました。

ただ彼女だけは嫌な予感がしていました。彼女の予感は的中しました。

突如、隣の家から悲鳴が聞こえてきました。彼女は家を飛び出しました。

少し前母親が、彼女が作ったお菓子を持って隣家に向かうのが見えたからです。

もしかして母親も襲われたかもしれない。そう思った彼女でしたが、隣家に着くとその光景に驚きました。

そこに居たのは血まみれのナイフを持った母親でした。

 

『……みたな?』

 

狂気に満ちた目で迫る母親を見て、彼女は逃げようとしましたが転んでしまい、逃げれませんでした。

母親が彼女に馬乗りになり、血まみれのナイフを振り降ろそうとした時、彼女は力を使いました。

時を止めて逃げようとしましたが、自分にナイフを振り降ろす母親を見た彼女は、そのナイフで母親を刺しました。

あんなに優しかった母親の自分への憎しみと狂気しかない姿に、彼女も何かが壊れてしまったのです。

隣家から出て、町へと繰り出そうとした彼女は、殺人鬼と呼ばれるに相応しい狂気を持っていました。

その時でした。ふと空を見上げた彼女の目に、1人の幼女が宙に浮かんでいるのが見えました。

 

『なんだ、面白い力を持った人間がいると聞いて来て見れば、ただの人間だったか』

 

その幼女は蝙蝠の翼を持ち、赤い瞳で彼女を見下ろしていました。

その瞳を見た彼女は、正気に戻り返り血で真っ赤な自分の姿に母親を殺した事を思い出し恐怖し、泣き出しました。

幼女はそんな彼女の元に降り立ち、黙って彼女を見てこう言いました。

 

『ここは面白い場所だな。霧の夜に来ればもっと面白い物が見えただろう』

 

幼女が言うには、この町は満月の夜に霧が出ると、人間を狂気に落とし自殺へと誘う特別な場所だったそうです。

そう、殺人鬼はいなかったのです。霧の夜に町人の誰かが狂気に落ち、自殺していたのです。

 

『お前の母親は、前々から過度のストレスがあったのだろうな。だから自殺ではなく他殺に走った。それも霧の出ていない今夜にだ。まぁ、それはお前の母親に限った事ではないが』

 

それを聞き、彼女は更に泣き崩れました。

自分のせいで、力のせいで母親は狂ってしまったのです。

 

『言っておくがこの町にはもう人間はいないぞ? みんな死んでいたからな』

 

幼女が言うには、この町に残った住民は殺し合いをしたらしく、全員死んでいたそうです。

 

『疑心暗鬼が積もり積もって、今夜爆発したのだろう。今夜は血のように綺麗な満月だからな』

 

嬉しそうに言う幼女の言葉に、ふと彼女は空を見上げました。

そこには血のように真っ赤になった満月が浮かんでいました。

 

『さて、今夜は気分が良い。お前、私と来い。何、取って食いはしない。ちょっと家事が得意な人間を探していたのだ。お前の家の料理やお菓子を拝借したが、私好みのいい料理だった』

 

自分は母親を殺した殺人鬼だ。

彼女はそう言うと幼女は笑ってこう答えました。

 

『くっくっくっ、殺人鬼か。吸血鬼のメイドとしては最高ではないか。それに、お前が母親を殺した事が私に何の関係がある? 私はお前が気に行った。だから連れて行く。拒否権はないぞ?』

 

この幼女は人間ではない、吸血鬼だ。それでも私の事を必要としてくれている、それは母親以外で初めてだった。

幼い姿に似合わないその傲岸不遜で唯我独尊な態度が、彼女にはおかしく思い、つい笑ってしまいました。

 

『むっ? 何を笑う? おかしなことでもあったのか?』

『いいえ、あなたに付き従います。お嬢様』

『うむ。その響き、気にいったぞ。その褒美だ、お前に新しい名前をやろう、この良き夜に出会えた記念だ』

 

こうして彼女は、見た目が幼女な主と、新しい居場所と名前を手に入れたのでした。

めでたしめでたし。

 

 

 

 

私の話を黙って聞いていたユウキさんは一言、こう言いました。

 

「良かったなその子、いい主に巡り合えて」

「……そうね。私もそう思うわ」

 

ユウキさんは同情するのでもなく、憐れむのでもなく、ただ少女と幼女の出会いを祝福してくれました。

あぁ、彼は本当にお人よしで優しい人ね。

 

「で、俺にその話をしたのはなぜだ?」

 

分かっている癖に、ユウキさんは小さな笑みを浮かべて尋ねてきた。

 

「改めて言うけど、あなたが過去にどんな人間だったのか、私達には関係ないわ。あなたがフランお嬢様とレミリアお嬢様を助けてくれた、とんでもなくお人よしで、物好きで優しい人。それだけが重要な事よ」

「物好き……ってのは認めるよ。でも、ありがとう」

 

やっと、ユウキさんが笑ってくれた。照れくさそうに、でも心の底から笑ってくれた。

それがすごく嬉しかった。

 

「こちらこそ、手伝ってくれてありがとう。おかげで助かったわ、後は私1人で出来るから。もう席に付いていていいわよ」

 

もう料理はあらかた出来ているので、後は盛り付けるだけだ。お嬢様達を起こしに行こうかしら。

 

「そっか、これくらいならいつでもやるさ。礼を感じるなら、これからはそんな感じで話してくれるとかなり気が楽なんだけど?」

 

そう言えば、気付かないうちに私、口調が変わっていたわね。

 

「そうね。誰もいない2人きりの時だったら……いいわよ」

「あ、あぁ……じゃ、食堂に居るよ」

 

軽くウインクをして言うと、ユウキさんは少し顔を赤くして出て行った。

ふふっ、可愛い所もあるわね。

 

「咲夜~御飯まだ~!?」

「お腹すいたよ~!」

 

と、入れ替わるようにレミリアお嬢様とフランお嬢様がやってきた。

 

「はい、ただいまお持ちいたしますので、席でお待ちください」

「分かったわ。あら、咲夜、顔が赤いわよ? 何か良い事でもあったのかしら?」

「本当だ顔あか~い♪」

 

すぐそこでユウキさんとすれ違ったはずだから、気付いているのだろう。

2人共ニヤニヤといじわるそうな笑みを浮かべている。

こう言う所は姉妹そっくりね。

 

「えぇ、とても良い事がありましたよ」

 

少しでも、ユウキさんの心が癒せたのなら、それはとても良い事。

彼は、あの頃の私よりも深い傷を負っているのだから。

そして、それを哀しむ事をしない、壊れた人なのだから。

 

 

つづく

 




今回出てきた昔話は独自設定です。
よくあの主従の出会った話は見ますが、こんな感じもいいかなーと。

次回は戦闘回+美鈴回です!

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