幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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早く幻想郷の話にもどりたーい(笑)


第24話 「幻想御手」

7月19日

 

 

爆弾魔である介旅初矢に会う為、正確には彼の記憶を読みとる為に面会に来た。

が、思っていたよりあいつのしでかした事が大きくて、まだ警備員の取り調べ中との事で会えそうにない。

会う方法はいくらでもあるが、そこまで焦って会う事ではないと判断した。

 

「ま、幻想御手の事とかは警備員にもそれなりに情報流したし、何かあれば取り調べですぐに分かるか」

 

最も、都市伝説レベルの話なので、警備員も本格的に疑うかは怪しいが、そうなれば俺自身で調べ直すだけ。

それに介旅初矢はレベル2だと言う事も改めて確認されたと言うし、これで幻想御手の使用者と言うのは濃厚だ。

 

「おっはよ~ん。な~に、朝から難しい顔をしてるんだい、ユウキく~ん?」

「青ピ、キモイからその口調は止めろ。次は問答無用で殴るぞ?」

「あっはっは、明日から夏休みになるからって、無駄にハイテンションになるのは仕方ないぜよ、ユウやん」

 

などと教室で1人考え事をしていると、ハイテンションな青ピと学校にいるからか、呼び方がフランクモードになってる元春に声をかけられた。

 

「2人共おはよう。あれ、当麻はまだか?」

「うーん、俺より早く出たはずなんだけどにゃー」

「またどこぞで女の子相手にフラグ立てとると違うますん? くぅ~、想像しただけで腹立たしいわぁ」

 

元春は当麻の隣の部屋に住んでいる。青ピもしょうもない予想をして、1人怒りに燃えているが当麻の事に関しては割と当たるんだよな。

なんか道に迷った女の子を送ったり、落し物した女の子に出会って一緒に探したり、不良に絡まれた女の子を助けて逃げ回ってたり……アレ、これ全部何回かあった事だな。

 

「ユウやん、ユウやん。お前さんも青ピと似た顔してるぜい?」

「何!? それはまずい。青ピ菌に感染してしまったかも、今日は早退して病院で精密検査してもらわねば」

「それなら今日は終業式で午前中で終わるからぴったりだにゃー」

「ちょ、人を病原菌扱いするのやめてもらいます!?」

 

その後、始業ベルギリギリでようやく当麻がやってきた。

今日遅れそうになった理由は、女の子の落し物を一緒に探してたら犬の尻尾を踏んで逃げ回っているうちに、ドンドン学校と反対方向に行ってしまったから。

ちなみに、当麻の遅刻理由について密かに賭けをしていた俺らは見事に誰も当たらず、賭けは不成立となった。

 

 

 

今日は1学期最後の日なので、午前中は終業式とHRだけで終わり、皆は明日からの夏休みをどう過ごすか話しながら帰って行った。

俺は元春を屋上の人目がつかない場所に呼び、情報を収集する事にした。

 

「で、こんな屋上に呼び出して何の用だ、ユウキ? まさか告白……じょ、冗談だにゃー。振り上げた拳をおろしてほしんだにゃー!?」

「ったく、俺は今幻想御手について探っているんだが、そっちで何か掴んでないか?」

「ふむふむ、あいにくと最近そっち方面は手薄だったからな。あまり掴んでないぞ?」

 

あっという間にフランクモードから仕事モードに口調が切り変わる。

元春はここ最近学校で見かけなかったし、何か忙しかったんだろうな。

 

「そうか、こう決定的な情報がなくてな。イマイチ不確定情報ばっかなんだよな」

「都市伝説として祭り上げられてはいても、どれも本当のような嘘情報ばかりだ。結局は自分で地道に探すしかないぜ? それかスキルアウトの連中なら知ってるかもな。あいつらこういうのには詳しいから」

「幻想御手作った誰かさんは、モルモットとして最適なスキルアウトにわざと情報流してるかもしれないな」

 

とすれば、あいつらに溜まった貸しを返してもらうとするか。

 

「ありがとな。ところで、お前から見て幻想御手……どう思う?」

「木原のユウキからそんな事聞かれるってのは、何だか妙な気分だが……俺から見れば黒も黒、上から下まで真っ黒って所だ」

「……だよなー」

 

それはつまり、幻想御手は学園都市の闇が関わっていると言う事。

尼視が情報出し渋っているのも、それが関係しているからだろう。

 

 

 

元春と別れ、俺はヅラ……浜面達に会う為にあいつらのアジトの1つにやってきた。

あいつらはちょうどATM荒らしの計画を立てていたようで、俺が音もなく忍びよるとアタフタと慌てふためいた。

特に慌てたのが、以前ちょっとお世話をした2人、村櫛と礼拿だ。

 

「あ、ああああんたは!?」

「こ、この前はお世話になりました!」

「いや、今日はお前ら潰しに来たわけじゃないからそうかしこまるなよ、な?」

 

俺としては普通に良い笑顔で答えたはずなのだが、当の本人達は違ったとらえ方をしたようで抱き合いながら怯えきってしまった。

 

「あまりうちのメンバーを脅さないでもらえないか、ユウキ」

「ただでさえあの一件で、こいつら駒場の旦那から制裁受けたんだからさ」

「別に俺は脅してるつもりはないっての、利徳、浜面」

 

ゴリラのような大柄な男、駒場利徳。そして、その横に付き添うようにやってきた浜面仕上。

こいつらは前から色々腐れ縁で、面倒を見たり厄介事を押しつけたりしている。

今日はもう1人、忍びのはしくれである半蔵がいないようだ。

 

「それで、今日は何の用だ?」

「まさか……」

 

浜面がと机の上に広がった計画書に目を移した。

俺もさっきチラリと見たが、なかなかに良くできた計画だった。

これなら楽にATMを盗む事もできるだろう……盗んだ後はすぐに捕まるだろうけど。

 

「安心しろ、そんな計画を潰しに来たわけじゃねぇよ。この前の、こいつらの貸し返してもらいにきた」

 

それを聞き、利徳と浜面は同時に深いため息をついた。

 

「分かった。貸しは貸しだからな。それで俺達は何をすればいいんだ?」

「幻想御手について何か知ってる事はないか? なんでもいいんだ」

 

俺が幻想御手と言う単語を出した瞬間、数人がわずかながら反応した。

 

「何人かは知ってるって顔してるな」

「実は昨日、幻想御手をなかなかの高額で買わないかと話を持ちかけられたばかりだ」

 

なるほど。でも利徳の性格から言えば、恐らく……

 

「勿論、蹴ったがな」

「ふっ、だよな」

 

こいつが都市伝説上の未確認な怪しいブツに手を出すなんて、そんな危ない橋を渡るはずがない。

 

「そいつらのグループは情報が少ないが、溜まり場ならいくつか掴んでいる」

「半蔵。お前今までどこに行ってたんだよ」

 

突然この場に居ない声が聞こえ、浜面が後ろを振り向くと現代風忍者と言う服装をした服部半蔵が立っていた。

 

「駒場のリーダーから、昨日俺らに接触してきたグループが胡散臭いから少し探ってこい。と言われてたんだよ。まぁ、あいつらが実際幻想御手を持っているかどうかは不明だぜ。ほれ、ユウキの旦那」

 

そう言って俺にメモ紙を投げ渡した。メモには、話に出てきたスキルアウトグループの顔と溜まり場についての情報が書かれていた。

 

「サンキュウ、半蔵。ともかくこれから当たって見るか。あ、そうだ。お前ら幻想御手には手を出さない方がいいぞ。色々とヤバそうな気配するからな」

「あぁ、気を付けるようにしよう。何か分かれば連絡する」

「よろしく。それとあんまり派手に動くなよ。上層部の目に止まるような動きすれば、俺がお前ら消す事になるぞ?」

「わ、分かった……お前を敵に回すのだけは勘弁だ」

「同感。旦那に勝てる手段がうかばねぇよ」

 

2割程度の冗談を交えた警告をすると、利徳達は心底嫌な顔をしつつ頷いた。

 

さて、意外に有力そうな情報手に入れたし、どこから周るかな。

割とこのグループ活動範囲長いな。

 

 

 

半蔵の情報にあった溜まり場4件のうち、3件はハズレ。

残り1件はファミレス。晩飯もまだ食べてなかったんで、ちょうどいいかもしれない。

で、お目当てのスキルアウト達を見つけたので、早速接触してみようかと思ったが……

 

「幻想御手について知りてぇだぁ?」

「うん! ネットで偶然お兄さん達の書きこみを見つけて……」

 

なぜか知らないが、超ぶりっ子(死語)と化した学園都市最強の電撃使い、レベル5第3位の御坂美琴がそこにいた。

 

「はぁ、この店に入る時から嫌な予感がしまくりましたのは、このせいだったのですわね……はぁ」

「そんな嫌な顔するなよ黒子。俺だって幻想御手の情報持って来たんだからさー」

「それにしても、大丈夫でしょうか、お姉様。色々な意味で」

「俺も心配だな。色々な意味で」

 

ハンバーグセットを食べながら、向かいの席でメロンフロートを飲んでいる黒子に嬉しそうに話しかける。

なんでも、黒子と美琴も涙子と飾利の情報からこのスキルアウトの事を知り、接触を図ろうとしているらしい。

それなら男の俺が行くよりも、まだガキな美琴の方が警戒心抱かないだろうと、美琴の探りを見守る事にした。

勿論、美琴本人は俺が見ている事など知るよしもなく、世間知らずなお嬢様設定のブリっ子(死語)を演じている。

 

「しつけぇぞ。ガキはもうおねむの時間だ」

 

流石にこれで引っ掛かれば苦労はないか。

 

「え~? 私、そんな子供じゃないよぉ☆♪」

「っ!?……くっ、くくっ、ちょ、調査のために、カメラ持って来ていて、ぷっ、正解だな。大丈夫か、黒子?」

 

いつの時代のお嬢様設定をしているのか知らないが、三文芝居全開の美琴の演技に思わず噴き出しそうになるのを押さえつつ、ここっそりと高性能カメラでばっちりと動画に収めた。

黒子はと言うと、耐えきれずメロンソーダーを盛大に吹きだしそうになり、思いっきりむせ返っていた。

 

「確かに子供とは思えないなぁ。俺はあんた、好みだぜ」

「わ~、嬉しい♪」

 

半蔵のメモにロリコンの疑い大。と書かれていたが、こりゃ正解だな。

そこに小さく駒場のリーダーと同類? と書かれていたが……これは見なかった事にしよう。

それからもスキルアウトと美琴のセクハラまがいのコントは続き、黒子は発狂寸前となりテーブルに激しく頭を打ち付け始めた。

 

「はー……はー……はーー!!」

「落ち着け黒子。過呼吸に陥ってるぞ? 気持ちは分かるけど」

 

これは黒子でなくても誰でもこうなりそうだ。こうかはばつぐんだ!

 

「ぐすっ、私……私、ひぐっ、もう幻想御手しか頼れるものがないの、っぐ、だから……ダメ、かな?」

 

とうとう美琴の奴、泣き落としに入った!? しかも涙まで浮かべて!?

 

「」

 

あ、黒子の口から魂が抜き出ているような気がする。もう本来の目的が頭から抜け出ているなこりゃ。

そう言う俺もさっきから腹筋がヤバい。少し離れているとはいえ、ばれないように笑い声をかなり抑えるのはキツイ。

この動画は永久保存しておこう。

 

「ったく、しょうがねぇな。泣くな、教えてやるよ。幻想御手」

 

あ、今美琴、俯いたままものすごーく邪悪で黒い笑み浮かべた。

俺でもあそこまで悪い笑みは……いつもしてるな、うん。

 

「わぁありがとう、お兄ちゃん♪」

 

もう止めて、黒子のライフはゼロよ!

 

「ま、まぁこれでやっと幻想御手の事が……ん?」

 

と、ここで嫌な予感発動。なぜなら向こうにとっても見覚えのあるウニ頭。そのウニヘッドは、溜息吐きながらこっちに向かってきていたのが見えたからだ。

 

「これこれ、変態紳士ども。よってたかって女の子の財布を狙うんじゃありません」

「あっ? なんだてめぇは!?」

「「(またお前・アンタか!)」」

 

今絶対俺と美琴の心の声は一致したな。

で、これからの流れは、あれだな……トラップ発動、上条当麻のお約束という不幸だぁ! ってか?

当麻はこのロリコン共から、美琴を守る為に口出ししてきたんだろうが、美琴そっちのけで口論になってしまった。

そのうちトイレに行っていた仲間がぞろぞろと現れ、形勢が不利とやっと分かった当麻が逃走。

その間も美琴は諦めずに、ロリコン共に必死に食いつこうとしてるが、全部スルーされていた。

 

「あ、当麻が逃げた。それをロリコン共が追いかけて、美琴もそれを追いかけて……さて、どーしようか」

 

とりあえず、まだこっちの世界に戻ってきてない真っ白い黒子に伝票をちゃっかり渡し、当麻達を追いかける事にした。

 

「あ、会計は全部この連れが払う事になっているんで」

「わかりました。ご利用ありがとうございました。」

「えっ? ちょっ! な、なんで私があなただけでなく、あのチンピラどもの会計までしないといけないんですのー!?」

「無銭飲食を未然に防ぐだなんて、流石風紀委員は違うなー♪」

 

まだ何か言ってきてる黒子の声援(?)を背に受けながら、ファミレスを後にする。

 

ちなみに、後日黒子に今回の美琴の動画を渡す事でチャラにした。

……あれだけは絶対に消さないでおこう。

 

 

 

それから、少し離れた路地裏で美琴に黒子……くろこげにされたスキルアウト達の1人を尋問したが、これが大外れもいい所だった。

 

「お前ら、実際は幻想御手の事はロクにしらない。金になりそうなバカなガキから法外な金をネコババしてただけ。って事でいいのか?」

「へ、へい……そう、です」

 

そう、こいつらあれだけ豪語しておきながら、肝心の幻想御手については何の情報もない。

と言うのも、こいつら自体別の相手から偽物の幻想御手を受け取っていたわけだが。

 

「…………まぁ、言いたい事は山ほどあるが、お前らみたいな雑魚に構ってるのはバカらしいが、一言だけ言っておく」

「な、なんでしょう?」

 

 

「このロリコンどもめ!!」

 

この時、背後で美琴が当麻に放った最大級の落雷が落ちたらしい。

何夫婦漫才してるんだあの2人は。

 

結局この日の収穫は、新しい美琴弄り動画だけだった。

 

つづく

 




お待たせしました!ついに次回彼女が登場します!
彼女を待ってた人はいる……よね?(ォイ)

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