何か身体に乗っかっている感覚に眼が覚める。
「ここは……っ!」
ゆっくりと体を起こそうとするが、軽い頭痛に再度枕に頭を鎮めた。
どうやら紅魔館のベッドの上らしい。服も寝間着に着換えさせらていた。
未だ包帯が巻かれて思うように動かない左手を見つつ、気絶する前に何があったかを思いだす。
「そうか、フランの能力を封じて俺はそのまま……ふぅ、我ながららしくない事をしまくったな。それにあんなセリフまで吐いて、数多のジジイ辺りがあの場にいたら笑い死にするだろうな。色々な意味でありえないが」
そう、らしくない。幻想郷に来てからの俺はらしくない事ばかりだ。それも自覚するのは行動してから。
こっちに来てから調子が狂いっぱなし。いや、それはここに来る前からか……アレ?
「なんだ? 幻想郷に来るまでの記憶が……曖昧?」
正確には第三次大戦が終わって、当麻と学園都市に戻ってからの記憶に霞がかかったかのようにはっきりしない。
幻想郷に来た時も確か、何が起きたのか思い出そうとした。その時女の子、梨奈が狼妖怪に襲われていて考えるのは後回しにしたはず。
それから色々あって、寺子屋にいた2日間も学園都市にいた頃の事を考えていたけど、幻想郷にくる直前の事は……
「っ!? 頭が、いてぇ……久々に能力封じを使ったせいか」
幻想支配の奥手、能力封じ。コピー出来た相手の能力を使用不能に出来る。
ただし、制限時間がありその時間は俺自身にも分かっていない。
それに相手にもよるが力を封じている間は、俺もコピーした能力を使う事が出来ずまともに動けなくなる事もある。
「例え相手がレベル5だろうと視れば視るほど能力をコピーすればするほど、俺の体が適応してコピーした能力の使用時間や封じていられる時間が伸び、封じている間でも自由に動けるようになる……あのババァはそう言ってたな」
レベル2、3程度の相手なら初めて視た能力でも、数秒使用不能にしてその間に接近し無力化出来た。
美琴はレベル5だが、何度も幻想支配を使って体が慣れたのか、あまり動きに制限がかからなくなった。
当麻に電撃お見舞いしようとした時に、能力を封じて後ろから思いっきりどついた事もあったっけ。
「なら、幻想郷の人間や妖怪、神ですらその力に慣れちまったら。封じる事も出来るようになる……かも」
自分で言ってて少し怖くなってくる。だけど、あくまで個人相手には有効なだけ。能力者集団相手には1人1人封じていたら、動きが鈍りこっちがすぐにやられてしまう。
魔術師や聖人や神の右席、天使に対しても基本的には同じ。最初は、魔術師はともかく聖人や天使の力は全く幻想支配使えなかったけどな。
聖人は2度目にアックアを相手にした時神裂の力を少しだけ使い、天使相手ではベツレヘムの星でこれも数秒だけ。
それだけ、リスクのある切り札。俺が相手の能力を封じる間に、別の人がトドメをさすのが理想的。
そして、能力封じは体力を物凄く消耗する。だから、フラン相手でも使えなかった。
「って、フラン! あれからどうなったんだ? ん? 外がうっすらと明るいな」
カーテンの隙間からうっすらと陽の光が差し込んできている。
手を伸ばして開けると、まさに日の出と言う時刻になっていた。景色がよく視えているので紅い霧はもうないようだ。霊夢がレミリアを倒して、解決したと言う事だろうな。
頭痛も収まってきたので起きようとしたが、今度は足が重い。何かが乗っている感覚だ。
そう言えば、眼が覚めた時もそういう感覚だったはず。
で、視線を窓の外からベッドに戻してみると、そこにいたのは。
「……フラン?」
ベッドの上には、フランが俺の足に覆いかぶさるように寝ていた。目には涙の跡が見える。
「なんでフランがここに?」
なぜフランがいるのかさっぱり分からなかったが、窓から日の光が差し込んできているので吸血鬼の彼女に当たれば害になるはず。
そう思いカーテンに手を伸ばすと、別の手が伸びてきてカーテンを閉めた。
「おはようございます、ユウキ様。お身体はいかがですか?」
メイド長の咲夜が微笑みながらそこに立っていた。
「おはよう咲夜。左手以外は特になんともない」
「それは良かったです。それとフランお嬢様は、ユウキ様が倒れてからずっと付き添っていましたよ」
「えっ? なんで?」
心底分からなかった。なんでフランが俺なんかに付き添っているのか。
咲夜は眉をひそめたが、すぐに真顔に戻った。
「なんで? と申されましても。フランお嬢様は、私の友達を助けてとレミリアお嬢様やパチュリー様に泣きついて大変だったんですよ? レミリアお嬢様や美鈴、それに霊夢まで結構動揺していましたし……も、もちろん私もですよ? ユウキ様は全身血だらけで左腕もグシャグシャだったんですから」
なぜか慌てたように言葉を付けたした咲夜を可愛いと思ったが、口には出さなかった。
それにしても、左腕は複雑骨折だったのか。ここまでの重傷はトリックやアックアを相手にした時以来かも。
「いらない心配をかけたみたいだな、ごめん咲夜。で、ユウキ様って何だよ。様はいらない。呼び捨てでいい」
「いえいえ、ユウキ様は紅魔館のお客様で恩人です。呼び捨てには出来ませんわ」
「恩人? 俺はそんなんじゃ……「お兄ちゃん!」……ガフッ!?」
俺の声は、目を覚ましたフランの大声とタックルによって遮られた。
胸元に文字通り飛びこんできたフランの一撃、もろに急所に入った……
「フランお嬢様。ユウキ様はけが人ですので、あまりそういう事をされると……」
流石に咲夜も苦笑いを浮かべている。フランはハッとすると、俺の顔を見ながらおずおずとベッドから降りた。
「ご、ごめんねお兄ちゃん」
「いや、気にするな。これくらい慣れ……てるのは別の奴だな。俺は慣れてないか」
慣れているのは当麻とかツンツン頭とかウニヘッドとか鈍感ハーレムキングだな、うん。
「それではユウキ様、こちらにお着替えを置いておきます。外にいますので着替えましたら声をかけてください。レミリアお嬢様がお待ちの食堂にご案内します」
「早く着替えてねー」
咲夜とフランが部屋を出て1人になり、ベッドに置かれた俺の服を見る。
確か、ボロボロになっていたはずの防寒服もズボンも元通りになっていた。
この短時間でここまで綺麗に直っているのは、能力か魔術か何かしたのかもしれない。
「さて、用も済んだし……行くか」
着替えを済ませ窓の外を見ると、紅魔館の門がすぐそこにある。
美鈴はいないようだが、門番がいなくていいのだろうか?
これなら、ここから出ても気付かれない。と、窓を開けようとしたら視線を感じた。誰かに視られている感覚。
恐らくレミリアが何かしらの方法で俺を探知しているのだろう。
「男の着替えに興味があるのか?」
どこへでもなくそう呟くと気配は消えた。今のは単に着替えを覗いていたわけじゃない。
俺がここから黙っていなくなるのは不可能だぞ。そう言っているように思えた。
面倒だが、左手が使えない状況で力づくでここから出るのは厳しい。ならば、大人しくしていた方がマシと判断。
「……ちっ、こういうのが嫌だから寺子屋抜けだしたってのに」
結局は変わらず、か。
そして、咲夜とフランと一緒に食堂に案内され、少し早い朝食となったわけだが……
「で、これはどういう状況だ?」
「どういうって、両手に華で男冥利に尽きるって所じゃないですか? 大も小もだなんて、ユウキさんったら幸せ者♪ ほら、あーんして下さい」
右隣に座って、フォークで刺したステーキを俺に向けて来る文に、ひとまずチョップをかます。
「ん? お兄ちゃん、肉より魚がいいのかな? だったらこれ、どーぞ♪」
そして、左隣に座ってスプーンですくった魚のスープを俺に向けるフラン。流石にこれは素直に頂いた。
向かいの席から思いっきりプレッシャーをかけられたからな。
「外の世界では良く言うでしょ? FISH or MEAT? ってね」
こんな状況を面白そうに眺めているのは、向かいの席に座っているレミリア。
てかそれ使いどころが間違っている! 海外
「BIG or SMALL? でも良さそうね。で、霊夢はそこまで不機嫌になるなら、なぜじゃんけんに参加しなかったのかしら?」
レミリアの隣で興味深そうにこっちを見ている、パチュリー・ノーレッジと名乗ったネグリジェの少女。
「別に、私は不機嫌になってないわよ。ただの寝不足、早く神社に帰ってゆっくり寝たいの」
パチュリー・ノーレッジの向かい側、俺の2つ右隣の席には霊夢。こうもあからさまに不機嫌なのはなんでだ?
2つ左隣の席には、不機嫌というか悔しそうな顔でチラチラこちらを窺っている美鈴。
メイドである咲夜は食卓には付かずレミリアの後ろに控えているが、美鈴と同じようにこっちをチラ見してくる。
どうやら、俺を挟んで座る席に誰が座るかで文、咲夜、美鈴、フラン、レミリアでじゃんけんしたようだ。
左手が満足に使えない俺の食事の世話係、と言う事らしいが……両利きだから別に困らないんだけどな。
で、勝ったのが文とフラン。レミリアは負けたが自然と俺の向かいの席に座っているので満足そう。当主だからだろう。
食卓に付かないのに、なんで咲夜はじゃんけんに参加したんだ?
まぁ、ここまでならまだいい、ある程度予想していたから。
問題は……
「なんでここに紫がいる?」
「あら、外来人のあなたが異変に巻き込まれたと聞き、様子を見に来たらここの当主様に食事に誘われたのでご一緒しているだけですわ」
八雲紫がなぜか、紅魔館の食卓に座っている。それも当主であるレミリアの横。
レミリアは横目で紫を睨んでいる。きっと招かれざる客だったんだろうな。それでも食事を出しているのは、紅魔館当主としての誇りとかそんなんだろう。
「……私は、慧音からあなたの様子を見てきて欲しいと頼まれて来たら、あなたが寝ていると聞いて起きるまで待っていて良い。時間も時間だから泊って行き朝食も用意しよう。と当主様からちゃんと言われてここにいるからね」
紫に対しての皮肉交じりに、モンペを履いた白い髪に赤いリボンを付けた少女、藤原妹紅はポツリと呟いた。
彼女は慧音の親友で、寺子屋にいた間に話には聞いていたが、実際会うのは初めてだ。
この食堂に入ってきて彼女と視線があった時は、自己紹介と共に思いっきり睨まれた。
なぜか、と思ったが、慧音に心配かけたからだ。と言われ納得。
それからは無愛想と言うか、感情を表に出さす静かに食卓に付いている。
慧音にもこの妹紅にも後でちゃんと謝らないとけないな。
「こんなに賑やかな食事は久々ね、レミィ。あなた楽しそうよ」
「それは勿論よ、パチェ。何せこうも肴になる面白い状況はないからね」
面白い状況。文とフランから交互にパンや飲み物を勧められ、それを霊夢や咲夜が睨み、美鈴はじーっと羨ましそうに見つめ、レミリアやパチェ、紫は暖かい笑みを浮かべそれを見守る。
「思いっきり食べにくい、空気的に」
「だからーこうやって私が食べさせてあげると言っているじゃないですか~? そ・れ・と・も、口移しが良かっ……ってフォーク!? フォークで刺そうとしないでください! 冗談です、冗談!」
「おひいひゃん、ふぉうぞ(お兄ちゃん、どうぞ♪)」
「何してるのフラン!? ちょっとバ鴉! 幼くてモラルとか常識とかが不足してる私の妹が、あんたの真似しはじめたじゃないの!?」
「幼くてモラルとかって……あなたがそれを言うの、レミィ?」
「フランお嬢様。口に食べ物を詰めて話すのはマナー違反です。ユウキ様のお世話は私が致しますので、ご安心を」
「さりげなく何言っているんですか!? それなら私がします! 咲夜さん、じゃんけんで真っ先に負けたじゃないですか!」
「あぁもう、ユウキさん! 1人で食べれるならとっとと食べちゃって! こいつらうるさくて食事にならないわ!」
「あらあら、嫉妬は良くないわよ、霊夢……はい、嘘です。冗談です。言い過ぎましたから、無言で夢想封印の構えしないでちょうだい」
「あぁ~もう、不幸だーー!!」
ここまで賑やかで騒がしい食事は久々だけど、俺を巻き込むな!
「……いや、あなたが中心なんだけどね? 馬鹿ばっかだな、ここ」
我関せずと黙々と食事をする妹紅が唯一の救いだな、はぁ~。
慌ただしい朝食が終わり、ラウンジに場所を移してのティータイムとなった。
美鈴とパチュリーと文はいない。それぞれやる事があると行ってしまった。
妹紅と霊夢と紫がなぜまだいるのかは分からないが、俺は今すぐにでも出て行きたかった。
けど、どこに行くなと無言のプレッシャーに押され、出て行く機会を失い場に流れている。
咲夜が入れてくれた紅茶を一飲みした後、紫が静かに口を開いた。
「回りくどい言い方ではもうあなたは聞かないと分かったので、単刀直入に言います。ユウキさん、前にも言いましたがあなたは博麗神社を拠点として暮らして下さい。これはあの時と違い、8割命令2割お願いが混ざったものと思って下さい」
「「はぁ~~!?」」
俺と霊夢の声がハモった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ紫! どうしてそういう結論になるわけ? さっき話してたのはユウキさんを保護観察下に置くって話でしょ!」
「あなたにしては察しが悪いわね、霊夢。だからこそ博麗神社であなたの側にいるのが一番なのですよ?」
「幻想支配はその能力以上に、不安定さゆえに妖怪や神すら脅かすものになりうる。だからこそ、早く幻想郷の力に馴染ませて、安定化させてユウキ自身にうかつに使用させないよう律する。確かに霊夢がうってつけ。と言いたいのね?」
なるほど、紫は俺の道中の行動を見て、幻想支配に対する警戒の仕方を変えたか。
確かにフランと対峙した時みたいに中途半端に能力をコピーさせたり、封じられるのがもし他の妖怪達にまでされれば、パワーバランスが崩れる恐れがある。
幻想支配は使えば使うほど能力に慣れて安定した使用法が出来る。
学園都市の能力者の根元にあるのは、科学が引き起こす異能の力。それに幻想支配が馴染めば自由に扱える。
事実、幻想支配が使えるようになった頃はレベル2相手でも満足に使えず、と思えばレベル3の能力を暴走させた事もあった。
だけど、色々な超能力を使って行くうちに幻想支配が科学の異能に最適化され、初めて会ったレベル5は例え第一位の一方通行相手でも問題なく使えた。
ま、解析不能な軍覇の力はどうにもできなかったし、ある意味一方通行以上の無限の応用力な未元物質は、満足に制御しきれなかったりもしたけどな。
幻想支配の法則性については、科学側トップの学園都市や魔術側トップのイギリス清教、神の右席達ですら掴み切れていなかった。
紫の危惧は正しい……が、博麗神社で霊夢と同棲ってなるのは何か違う気がするけど、幻想郷の新参者で居候の身としては明確な理由がない限り、あまり反論は出来ないな。
「だからあんたの近くが一番でしょ。わざわざ神社にしなくても」
「あらあら? 今まで外来人を寝泊りさせる事になんの抵抗もなかったのに、なぜ彼だけ特別扱いなのかしら?」
「うぐっ、そ、それは……ユウキさんはずっと幻想郷にいるわけだし。1つの場所に縛り付けるのは……」
「いえいえ、博麗神社に引き籠れとは言いません。寺子屋でアルバイトしたり、紅魔館や別の場所で数日お泊りとかは問題ないですよ。ただ、生活の拠点……あなたの家を博麗神社にしていただければ」
……やっぱ物凄く文句を言いたい。幻想支配が関係ない理由が混ざっている気がする。
と言うかさっきから俺全く意見言っていないのに話が進んでいる!
「で、物凄く色々言いたそうな顔してるけど、あなたはどうなの? あ、慧音からの伝言言っておくわね。たまにでもいい、寺子屋に来てくれると私も助かるし、子供達も喜ぶだろう。ちなみに、慧音の異常な世話焼きは今に始まった事じゃないから、気にする事ないわよ?」
私も最初はうっとおしく感じた事もあったし。と、何やら妹紅に経験談を語られますます言葉が出なくなった。
「それなら、まずは紅魔館がユウキの世話をするわ。左手はしばらく使えないし、せめてそれが治るまで看病するわ。紅魔館の主としての責任で、義務よ。問題ないでしょスキマ妖怪?」
「流石お姉様。うんうん、そうしようそうしようよ、お兄ちゃん!」
レミリアの提案に、フランはもろ手をあげて賛成し喜んでいる。
「そうですわね。ユウキさんの意思をそろそろ聞かせて頂きたい所ですけど、いかがかしら?」
その場にいる全員の視線が集中する。
「俺は誰の世話になる気も、これ以上借りを作る気もない。霊夢や慧音、レミリアへの借りは何らかの形で必ず返す……と、言ったら?」
「別に? どうもしないですわ? 今は」
紫は扇で口元を隠しているけど、絶対に嫌な笑み浮かべているな。
「私は貸しにした覚えはないわよ。この前助けたり、幻想郷の説明したのだって、博麗の巫女としての責任を果たしただけよ」
「さっきも言ったけれど、あなたの傷は私の妹が原因。ならばその手当も世話も紅魔館当主として当たり前よ? 貸しだなんて思われたくないわ。むしろ私個人はあなたに借りがあるのよ」
「お兄ちゃん、私のせいで怪我させちゃったんだもん……私達といるの嫌?」
霊夢はそっけなく、レミリアはあくまで当主としての威厳を出しているみたいだが、どちらかと言えば姉としてだな。
フランについては……ロリコンホイホイだな、この上目遣いは。
「慧音も多分、いや絶対こいつらと同じ事言うと思うわよ。それにしても、話に聞いてた以上に強情ねあなた。どうしてそこまで意地張るの?」
分からないわね。と妹紅が言っているが分からないのは俺の方だ。
「なぁ。どうして、そこまで俺にしてくれるんだ? ここにきて数日で、みんなともロクに話していない俺なんかに」
「その言葉はそっくりそのまま返すわ。大体、あなたが先に私達にしてくれた事をそのまま私達がしているだけよ」
レミリアが言うと、フランも咲夜も頷き、霊夢も同意見と言う顔だ。
「俺が……した事。俺はただ、自分がそうしたいと思った事を……学園都市でもしていた事を、していた、だけ」
そこで言葉に詰まってしまった。俺がしていた事は元いた世界でもしていた事……なのに、なぜこうも結末が違うんだろう。
「私もお兄ちゃんも独りぼっちで同じ。昨日そう言ったら、自分は違うって言ったよね? 私が独りぼっちじゃないから、自分とは違うって意味だったよね。でもそれって……お兄ちゃんは独りぼっち、なんだよね」
そうだ。フランは1人じゃない。レミリア達家族がいる。だから、本当に1人なのは俺の方。
「でも、それは違うよ。やっぱりお兄ちゃんも私も一緒だよ。だって、お兄ちゃんだって1人じゃないんだもん。フランと一緒でそれに気付いていないだけ。だから、フランと一緒!」
俺は1人じゃない? 確かに元いた世界で俺は1人、だった。けど、今は違う。霊夢も口では無関心と言いつつ、フランと対峙していた俺を心配してくれた。
美鈴も俺の為に実力を試してきた。咲夜やレミリアも慧音も、みんな俺を見ている。
それが、嬉しい。それがとても苦痛に思えたが、気付きたくなかったけど、気付いてしまった。
気付かなければ良かった……と、
「分かったよ。みんな、これから……よろしく頼む」
それに対してレミリア達、霊夢や妹紅も口元に笑みを浮かべてこう返してきた。
「「「「ようこそ、幻想郷へ!」」」」
つづく
これにて紅魔郷終わりです。
ユウキが幻想郷の一員になるまで、が紅魔郷でした。
ま、本当の意味での一員はまだ先ですけどね。
次回は過去編(禁書目録・幻想御手編)です。
過去編は数回に分けてやりますが、どれも数話で終わらせればいいけど、10以上話数使う過去編もありそうな予感(汗)