幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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1年以上ぶりの投稿、もう開き直ってます!(コラ)


第158回 「ステージ3:紅魔館(後編)」

この先にはトラップがある。そう咲夜から忠告されていたので、身構えていた俺達だったが…

 

――ビリッ!

 

「痛っ!? 何なんですかこの地味な嫌がらせは!」

 

ドアノブに触ると静電気が起きるようになったり。

 

――ツルッ!

 

「ぎゃふんっ!?」

 

ドアを越えた床が凍っていて滑りやすくなっていたり。

 

――ネチョッ!

 

「うぇ~ネバネバ……」

 

納豆が大量に空から降ってきたり。

 

とまぁ、ほとんど文にしか被害いってないから問題ない。

つい最近同じような光景を見た気がする、こぁとてゐって同類なんだな。

 

「ここゴールか……文、大丈夫か?」

「あ、あはは、もう次は矢でも槍でもなんでもこいですよ!」

 

多大な犠牲(文)を払いながらも俺達はやっと目的の部屋にたどり着いたようだ。

 

「あぁ、いらっしゃい。やっと、きたわね」

 

扉をあけると、やつれたような顔をしたパチュリーがソファーに座って待っていた。

 

「待たせたな。って、随分疲れているようだけどどうした?」

 

持病のせい、と言うわけでもなさそうだ。

魔力をかなり消耗してる感じがする。

 

「あの小悪魔のイタズラの影響、ですか?」

「それもあるわ。こぁのせいで紅魔館内の迷宮が解除出来なくなって、その分私の魔力を消耗しているのよ。けど、これは微々たるものだからさして影響はないの、ただ…」

 

そこでパチュリーは、深く息を吐きながら奥の扉へと目を向けた。

その扉には結界が張られているようだ。

 

「今度あなたと弾幕ごっこする時の為に用意したゴーレムが暴走しちゃったのよ。自分で作っておいてなんだけど見た目と性能がなかなか厄介でね、あそこに封印するだけやっとなのよ」

「あなたが作ったゴーレムなら止めるなり、破壊するなり出来ないんですか?」

「やってみたけど無理ね。そのゴーレムはとても素早くて通常の弾幕は簡単に避けるしスペルカードとか魔法は使う暇を与えてくれなかったわ」

 

 

「なるほど。それであそこに封印したってわけか」

 

部屋の中に魔法陣が描かれたドアがあった。

前来た時はあんな部屋なかったはずだ。

 

「もうこれ以上魔法を使うのはキツイからあなた達に任せるしかないのよ。しかも、ゴーレム達はこの迷宮の解除キーの一つとなっちゃっててどっちにしろ止めるしかないの」

「分かった。で、性能が厄介なのはともかく、見た目が厄介ってどういう事だ?」

 

パチュリーは俺の顔をじっと見て深くため息を吐いた。

まさか、俺が手を出しにくい見た目をしていると思ったのか。

例え見た目が梨奈みたいな女子供や老人でも問題ないのだが。

と思ったら、俺をビシッと指差しだした。

 

「あなたよ」

「はい?」

「だから、あなたの見た目をしているのよ。私の作ったゴーレムは」

「ちょっと、どういう事ですか? なんでユウキさんのゴーレムなんか作ったんですか!?」

 

なぜかそっくりさんを作られた俺本人よりも文の方が興奮している。

 

「幻想支配の実験の為にあなたの見た目から何からそっくり再現したゴーレムを作ろうとしたのよ。アリスと違って私は新しい命を生み出そうとしたわけじゃないから魂とかは全く考えていなかったわ」

 

新しい命を生み出す目的で作った上海や蓬莱とは違うといいたいようだ。

 

「で、見た目や身体能力だけじゃなく幻想支配まで再現しようとしたのが失敗だったみたい。幻想支配は使えず、おまけに制御不能になっちゃってね。自動で侵入者を排除するために動くだけになっちゃったの」

「そういう事ならとっとと終わらせるか」

 

見た目が俺でも、幻想支配が使えないなら問題ない。

 

―ドガッ!

 

その時、奥の部屋のドアが蹴破られた。

どうやらパチュリーの封印を自力で破る程度には強いらしいが、問題はそこじゃない。

 

「結界が弱まってるとはいえ、力づくでこじ開けるなんて流石あなたのゴーレムね」

「そんな事言ってる場合ですか! なんですかあの数! 作ったの1体じゃなかったんですか!」

 

部屋から出てきたゴーレムの数は20体くらいいる。

そのどれもが目に包帯を巻いている以外は俺そっくりだ。

なぜか服装は執事をしていた時の服装なのだが、そこはどうでもいい。

ゴーレム達を見て、握った拳に力が籠り身体が熱くなるのを感じた。

見た目こそ俺の姿だが、あれはゴーレム、魂すらないただの人形、作り物、道具、ゴミ……なのに、どうしようもなく腹立たしい。

あんな中身のない出来損ないと比べる事自体失礼なのに、どうしても頭に浮かんできてしまう、比較してしまう、思い出してしまう。

御坂妹達の……ミクの姿が、脳裏に浮かんできた。

彼女達はクローン、これはただのゴーレム。

全くの別物なのに、なぜか同じにしか思えなかった。

 

「おい、パチュリー。コイツら止めるにはどうすればいい? バラバラにすれば止まるか?」

「そ、そこまでしなくても、造りは人間と同じ。心臓か脳に当たる部分を破壊すれば止まるわよ」

 

俺の質問にパチュリーはなぜか怯えと困惑が混じった声で答えたけど、そんな事は今はどうでもいい。

 

「そうか。なら、さっさとコイツら、破壊する」

 

まずは手前の一体の胸にナイフを深く突き刺した。

 

 

「そうか。ならさっさとコイツら、破壊する」

 

そうユウキさんが言った時には、彼はゴーレムの胸にナイフを突き刺していた。

それから瞬きをする暇もなく、近くにいたゴーレム2体の首を掻っ切った。

あれは私の風の力で加速して一気に接近して、ナイフに風を纏って3体のゴーレムを瞬時に破壊したのね。

でも、私にはそれよりも気になる事があった。

 

「っ!?」

 

隣でパチュリーが息をのんでいた。

その表情には、困惑と恐怖が浮かんでいる。

彼女がこんな表情を浮かべるのは初めて見た。

 

「どうしましたか、そんな顔をして」

 

返ってくる答えは分かっていたが、それでも私は聞いた。

 

「……ユウキが、怒ってる」

「えぇ、そうですね。彼は、心底怒っています」

「初めてかもしれない。ユウキが心の底からの感情を表したのは」

 

私も同じ事を思っていた。ユウキさんは明らかに怒っている。

ユウキさんは、喜怒哀楽を出す事はあってもそれはどこか仮面を被っているように感じられる表情だった。

以前萃香さんが、周りを安心させるための演技として感情を出しているだけだと言った。

それは私達も気付いていた。けど、今回のは演技じゃない。

でも、今回は違う。彼は、心の底から怒っている。

 

「私が、無断で彼をコピーしたゴーレムを作ったから、かしら?」

「さーそれだけじゃなさそうですけどね。ところで、なんでナイフまで再現したんですか?」

 

ゴーレムの両手にはナイフが握られていて、ユウキさんの攻撃を防いでいる。

最初こそゴーレムを3体瞬殺して流れをつかんでいたユウキさんだったが、ゴーレムはすぐに連携攻撃を仕掛けてきて防戦一方になった。

感情がない分、仲間がやられても動揺がないのだろうか。

いや、ユウキさんをコピーしたゴーレムなら当然の反応ね。

 

「幻想支配のデータ取りも兼ねて、だったのだけど。こんな事になるなら不要だったわね」

 

パチュリーはどうもユウキさんのデータを使って何かを作ろうとしているようだ。

それが彼の役に立つかどうかは分からないけど、今回は失敗だったわね。

 

「それにしても……」

 

ユウキさんが、自分のゴーレムを見て一瞬固まった時、口にした名前。

 

「ミク、って誰でしょうね」

 

 

自分の姿をしたゴーレムは、なかなかに手強い。

最初こそ簡単に3体ほど瞬殺出来たけど、それでも数は多い。

 

―キンッ!

 

左右同時から襲い掛かるゴーレムのナイフを両手で受け止めた瞬間、背後から2つの影が時間差で攻撃を仕掛けてきた。

わざと体勢を崩して両側の攻撃をいなして、カウンターで蹴りを仕掛けたが、それもかわされた。

なるほど、力も速度も幻想支配使っていない俺と同等か。

まぁ、俺の姿をしたゴーレムなのだからそれくらいは強いか。

それにしても…

 

「俺のコピーなのに、連携がうまいな」

 

俺は学園都市にいた時も、幻想郷に来た時も連携なんて数える程しかしてない。

なのに、俺のコピー達は妙に連携がうまい。

恐らく、コイツら作る時にパチュリーが弄ったのだろうな。

元々このステージで俺はコイツらと弾幕ごっこする予定だったみたいだし……ん?

このゴーレム、幻想支配使えないのにどうやって俺と弾幕ごっこするつもりだったんだろうか?

 

「ともかく、そろそろいいかな」

 

文の力が十二分に圧縮された事を確認して、図書館の天井まで一気に跳び上がった。

そして、それを追うようにゴーレム達が一か所に集まった。

決めるのは、ここだ。

 

「【大紅葉崩風(おおもみじくずし)】」

 

――ゴウッ!

 

眼下に向けて大きな竜巻が発生し、残ったゴーレム達を飲み込んだ。

幻想支配が使えるなら対処法はあるが、コイツらにはない。

続けて、竜巻の中心に向かって回転しながら急降下した。

竜巻の中でもみくちゃにされているゴーレム達の首を風を纏ったナイフが次々と斬り落としていく。

地面に着地すると同時に竜巻は止み、後には首のないゴーレム達が転がるのみとなった。

 

「終わったぞ、パチュリー」

 

パチュリーの方を向いたのだが、なぜかさっきはドン引きした様子だったのに今はジト目で睨んできていた。

 

「……まぁ、いいわ。迷宮解除するからちょっと待ってて」

 

パチュリーは盛大なため息を吐いて、迷宮の解除を始めた。

 

「図書館の中であんな大きな竜巻起こされたらそうなりますよ」

 

苦笑しながら文が言うので辺りを見渡したら、本がかなり散乱していた。

弾幕ごっこで傷つかないように結界は張ってあったが、それでも風で散乱するのは防げなかったか。

20体近くのゴーレムを一気に倒すにはああするしかなかったから仕方ない。

 

「で、さっきのスペカ。私の【紅葉扇風】を元にした新しいスペルカードですか?」

「あぁ、竜巻で相手を高速して上空からトドメを刺すんだが……使えそうか?」

 

言っておいてなんだが、このスペルカードは弾幕ごっこで使うのは厳しいよな。

 

「使えるわけないじゃないですか!? あんな相手を確実に殺すグロテスクなのスペルカードとしてあり得ませんから!? 霊夢さんに問答無用で夢想封印されますよ!?」

「ま、そうだよな」

 

ゴーレムを一気に壊す為に考えたスペカだし、弾幕ごっこ向きじゃないよな。

 

「でも、アレをああして応用すれば、いけるかもしれませんね」

 

文には何かのヒントにはなったようでメモ帳に書き込み始めた。

と、その時、迷宮が解かれた気配がした。

 

「ふぅ~これで元通り、ね。おっと」

 

疲労からかパチュリーが倒れそうになったので、かけよって抱きかかえた。

文の力がまだ残っていて良かった。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

この程度で礼を言われるのはやっと慣れた。

と思ったら、今度は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

ドン引きしたりジト目で睨んだり、今日のパチュリーは忙しいな。

 

「……それと、ごめんなさい」

「ん? なんで謝るんだ? 迷惑かけた事か? この程度のドタバタももう慣れたぞ」

 

特に紅魔館に来ると毎回何かしらトラブルに巻き込まれるからな。

 

「あなたのコピー、勝手に作ってごめんなさい。せめて一言相談すればよかったわよね。あなたが怒るのも当然だわ」

「えっ? どういう事だ?」

 

俺が? 怒っていた?

 

「呆れた。自覚なかったんですか? 物凄く怒ってましたよ。あんな顔梨奈ちゃん達には見せられませんね。なんかデジャブですけど」

「そっか、俺は、怒っていたのか。なら気にするな、パチュリー」

「「いや、気になるわよ!」」

 

おう、2人してハモらなくても。

 

「俺が怒っていたのなら、パチュリーに対してじゃない。少し、昔を思い出しただけだ」

「そう、あなたがそういうのなら私もそれについては気にしないわ。ただ、あなたに迷惑をかけたのは事実。貸しにしておくわね」

 

相変わらず律儀だな。と、思っていると複数の気配がこちらに向かってきていた。

 

―バンッ!

 

「ユウキさぁ~! 大丈夫でっ、きゃーー!!? 私のユウキさんのく、くっ、くびがぁ~!? 大丈夫ですか、生きてますか!? 今人工呼吸しますからね!?」

 

扉は破壊しかねない勢いで飛び込んできたのはこぁだ。

散乱している俺の首なしゴーレム達を見てムンクの叫びのような顔で絶叫した。

 

「いやいや、まずは主であるパチェの心配でしょう? で、誰があんたのユウキさんか! と言うか人間なのに首が飛んでるのに生きてるわけないでしょう!? あとどさくさに紛れて無意味な人工呼吸しようとするな!」

 

一緒にやってきたレミリアがツッコミまくって、その後ろではフランと咲夜が呆れた表情を浮かべていた。

 

「お疲れさまでした、ユウキさん」

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

普通に労ってくれる咲夜とフランがとてもありがたい。

 

「あれ? これのユウキさん、ひょっとしてパチュリー様が作ったゴーレム? えっ? って事はこれで全部ゴーレムですかー!?」

 

こぁは、やっと散乱している首なしが俺ではなくゴーレムだと気付いたようだが、何をそんなこの世の終わりみたいな絶望した表情しているんだ?

 

「パ、パチュリー様!? ひょっとしてユウキさんのゴーレムは、全滅ですかー!?」

「そうよ。言っておくけど、修繕したり作り直す気はないわよ」

「そ、それじゃ。私の補佐用に一体くれるという話は? せっかく添い寝とか一緒にお風呂に入ろうと思ってましたのに!? 今度私がユウキさんのゴーレム達と一緒に弾幕ごっこする話は!?」

 

おい。俺のゴーレムの使用用途についてちょっと物申したくなってきたぞ。

 

「当然なしよ。元はと言えば、あんたのイタズラのせいでこうなったのよ。罰としてゴーレムや散らばった本の片づけ終わるまでご飯も睡眠もなしよ!」

「そ、そんなぁ~罰ならレミリアお嬢様とフランお嬢様と美鈴さんから散々受けたのに~」

「私からはまだだったわよね、こぁ?」

「えっ!? 咲夜さんもですかー!?」

 

なんか向こうで盛り上がってるけど、無視しておこう。

おや、レミリアとフラン、それに咲夜も異様な雰囲気でパチュリーを取り囲んでいるぞ?

 

「あら、パチェ? 罰ならあなたも受けてもらうわよ?」

「わ、私も? 迷宮魔法の失敗はしたけど、私のせいじゃ……」

「そっちじゃないわ。コレの事よ」

 

そういってレミリアが指差したのは俺のゴーレム。

 

「パチェ、あなた、私達に内緒でこんなものを作っていたの、ネ?」

「お兄ちゃんのゴーレムで、何ヲスルツモリダッタノカナ?」

「しかも、こぁにはしっかり口止め料払おうとして、確信犯ですよね、パチュリー様?」

「えっ? い、いや、その、それは……今度ユウキが来た時に、ちゃんとお披露目するつもりだったのよ!? ちょっ、3人共怖い……むきゅ~!?」

 

……さて、夕食はまだ先になりそうだな。

そう言えば、文がさっきから静かだな?

 

「文、俺達は客間に行ってよう、ぜ?」

「その手があったか、ならアリス……は、絶対ダメね。にとりにでも作らせようかしら。あーでも、霊夢に気付かれそう」

 

こっちもこっちで何かブツブツ呟いていたの1人で客間に行っている事にした。

 

結局、夕食を食べれたのは夜もすっかり更けてからだった。

 

 

続く




次は来月中には更新、したいなぁ

この小説だけの裏設定:この時ユウキが使ったオリジナルスペルカードを元に文が生み出したのが【シャッターチャンス・イズナドロップ】

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