幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
なんとか形に出来ましたー


第157回 「ステージ3:紅魔館(前編)」

日も暮れてきた頃、俺と文は紅魔館に到着した。

今後の予定は紅魔館で夕食をとった後、弾幕取材を行い今日は紅魔館で泊まる予定となっている。

 

「別に博麗神社に戻ってもいいんだけどな」

「まぁまぁ、霊夢さんの了承は得ているんですから」

 

紅魔館で俺が泊まる部屋って決まってるけど、ベッドが1人用にしては妙に広いんだよな。

しかも、夜中に外から複数の争う気配がして落ち着かないし。

 

「おや、紅魔館の前が騒がしいですね」

 

門に美鈴とレミリア、フラン、それにボロボロになっているこぁが木に逆さづりにされていた。

さらにこぁには、『私はまたやらかした大馬鹿者です』と書かれた板が付いていた。

それに見て何となく何があったか察してしまった。

 

「あ、ユウキさん……それに文じゃない」

「どーも、美鈴さん。私をおまけ扱いしてくださってどーも」

 

なんでこの2人はいつも火花散らしてるんだか。

あーあ、弾幕ごっこ始めちゃったよ。

今日の弾幕取材相手は美鈴じゃなく、レミリアとフランだってのに。

 

「レミリア、フラン。一体こんな所で何をしてるんだ? てっきり中で待っていると思ったんだけど」

「いらっしゃい、ユウキ。今日は楽しみましょう……と歓迎したいのだけど、ちょっとトラブルが起きちゃってね」

「今、紅魔館の中滅茶苦茶になってるの」

 

レミリアとフランによると、俺と弾幕ごっこをするために紅魔館内を以前の紅霧異変の時のように迷路にする予定だったそうだ。

咲夜が普段能力で紅魔館内を広くさせているが、その能力をパチュリーが魔法で強化して迷路を作り、その中でレミリアとフランが待ち構えている部屋を探しだすと言う趣向にするつもりだった。

ところが突如魔法が暴走してしまい、レミリアとフランとこぁが紅魔館外にはじき出されてしまった。

それどころか、強固な結界が紅魔館全体に張られてしまい、レミリア達が何をしても中に入れなくなってしまったようだ。

ちなみにこうなった原因は、こぁがパチュリーの魔導書にイタズラ描きをしたせいだった。

 

「なるほど。で、咲夜とパチュリーはどこだ?」

「2人とも紅魔館の中よ、妖精メイド達数名もね。本来、私とフランを見つけて倒したら迷路が解除されるのだけど、それが今は咲夜とパチェを見つけて倒さないといけなくなっているのよ」

 

魔法が誤作動して、迷路を作っている咲夜とパチュリーが迷路のキーとなっているので、レミリアとフランとこぁは部外者と見なされ追い出されたってわけか。

 

「フランの能力で迷路を破壊出来ないか? 制御に不安あるなら俺がやるけど」

「それも考えたのだけど、それをやると連動して紅魔館が爆発するみたいなのよね」

 

それもこぁのイタズラの副作用ってわけか。

そりゃ簀巻きにされて逆さづりにされるわけだ。

 

「解除するには、迷路の挑戦者として登録されている俺が中に入って攻略しなきゃいけないって事か。で、同行できるのは文だけ」

「そういう事。言っておくけど文はあくまでユウキの同行者という立場よ。下手にユウキに手を貸したら排除されるかもしれないから、気を付けなさい。けどいざとなったら」

「分かってますよ」

 

いつの間にか文と美鈴は弾幕ごっこから戻っていた。

で、レミリアが何に心配してるか分からないけど、そこまで危険を感じないから問題ないだろう。

 

「じゃ、行きますか」

 

こうして俺と文は、迷宮と化したと言う紅魔館へと入って行った。

さて、どんな迷宮になっているのやら。

 

 

「ユウキさんだー!」

「いらっしゃいませー!」

 

紅魔館に足を踏み入れた俺達は、メイド妖精達の接待を受けていた。

目の前には紅茶やケーキ、どれも咲夜が用意したようだけど、正直ちょっと困惑している。

 

「なぁ、咲夜とパチュリーはどこにいる?」

「うーん? 分からない! メイド長はユウキさんが来たらこれを出しなさいって言われて、そのままどこかに行っちゃった」

「行っちゃった、というより、紅茶とケーキ用意した途端パーっと消えちゃったよね?」

 

この様子じゃメイド妖精達は、紅魔館が迷路になっている事にも気付いてなさそうだ。

 

「どうやら咲夜さんは、ユウキさんのお出迎えの用意を終えた所で魔法に巻き込まれたようですね」

 

だとすれば、咲夜は状況が分からず迷路の中を彷徨っている可能性もあるか。

 

「咲夜の事だから一瞬で状況理解してそうだけどな」

「そうですねぇ。案外普段通り掃除でもしてるんじゃないですか?」

 

いつも冷静な咲夜の事だから、そんな気がする。

メイド妖精達にパチュリーの魔法が解けるまでここを動かないように言って、俺達は先へと進んだ。

次の部屋には誰もいなく机もテーブルも何もないく、ただ『①』とかかれた立札があるだけだ。

だけど部屋の造りや内装に違和感があった。

 

「こんな部屋、紅魔館にあったかな」

 

執事やってた時に紅魔館の部屋は全部見て回っているので間取りとかすべて覚えている。

けど、こんな殺風景な部屋はなかったはずだ。

 

「トラップは、なさそうですね。迷路の通路用に作った部屋でしょうか?」

「多分そうだろうな」

 

レミリアの性格上、鈴仙みたいなトラップを仕掛けるとは思えないし、仕掛けるとしたらもっと大々的なトラップだろう。

そう思って次の部屋に進んだ。

 

「②と書かれた立札に、ドアが2つか」

 

先ほどの部屋ではドアが1つしかなかったが、次の部屋では2つに増えていた。

立札が何を意味しているのか何となく分かった。

とりあえず右の部屋に進んでみる。

 

「どうやら当たりの様ですね」

 

ドアの先の部屋には『③』と書かれた立札があった。

そして、ドアは3つに増えていた。

 

「間違えたらどうなるんでしょうねコレ」

「最初からやり直しかな?」

 

ならばと念の為、俺と文は別のドアを開けようとしたが、なぜか文が選んだ方はドアノブが回らない。

 

「多分、ユウキさんしか開けられないようになってるのではないかと」

 

確かに、俺の選んだドアはドアノブが回る。

無駄に凝った造りだな。

そうして数分後、俺達は順調に進んでいた。

 

「………」

 

目の前にある立札に付いている番号が、⑳

ドアの数は20に増えていた。

壁一面ドアって……

 

「いやいやいや、流石にノーミスでここまで来れるのはおかしいじゃないですか!?」

「多分これはお遊びだな」

「お遊び、ですか?」

「そう。パチュリーの元々の魔法か、こぁのイタズラの影響なのかは知らないけど、最初からハズレのドアなんてなくて、ただ部屋が進むと単にドアの数だけ増える仕掛けなんだよ。で、おまけに俺だけしか開けられないドアって事」

「そんなバカな仕掛けをしてるんですか」

 

相手の精神力削るおバカなトラップとしては結構効果的かもな。

思えば以前、紫も同じような馬鹿なトラップを仕掛けたっけ。

 

「妖怪って馬鹿な仕掛け作るのが趣味なのか。文達も妖怪の山にこういうトラップを仕掛けてたりするのか?」

「こんなのと一緒にしないでください! 妖怪の山は、天狗が見張っているので侵入者はすぐに見つけて駆けつけて排除するのでこんなの不要です! まぁ、にとりとかは、自分の縄張りになら付けてるかもしれませんけど」

 

以前にとりに学園都市でのセキュリティについて聞かれた事あったな。

そうこうしているいちに、今までの部屋と違い踊り場のような広い部屋にたどり着いた。

どうやらこのドアが最後だったようだ。

 

「……」

 

部屋に入った瞬間、すぐにナイフを抜き頭上に構えた。

と、ほぼ同時に頭上にナイフを構えた咲夜が降ってきた。

 

――カキンッ!

 

俺と咲夜のナイフがぶつかり合う。

すると、咲夜はまた姿を消した。

 

「うぇぁ!?」

 

数秒にも満たない一瞬の出来事に変な悲鳴をあげた文だったが、そこは記者。

すぐにカメラを構えて撮影を始めた。

 

――キィンキンッ!

 

咲夜は前後左右あらゆる角度から現れて俺に一撃を加えるとすぐに姿を消し、また別の角度から奇襲を仕掛けてきた。

時間停止を連続で使用して奇襲を仕掛けているのだろうけど、こんなに連続して使用する事は前は出来なかったはず。

幻想支配で咲夜を視ればどんな使い方しているかは分かる。

が、今は文の力を使っているし、そもそも今回の取材中に文以外の力は視ないと決めているのでその手は使えない。

それと咲夜はナイフを投擲専門に使っていて斬撃にはあまり使ってなく、そこまで得意ではなく妖夢との斬り合いなら確実に負けると言っていた。

でも、そこまで妖夢と差があるようには思えない斬撃を繰り出している。

 

「ふふっ、強くなっているのはあなただけじゃないのよ。私だって強くなってるんだから」

「ひょっとして、時を止める時間を短くする事で連続して時を止めれるようになってる、とか?」

「………」

 

無言で睨みつけられて斬撃が激しくなった。

どうやら当たりだったようだ。

 

「ユウキさんってズルいですよね。これが出来るようになるまで私がどれだけ訓練したと思いますか? なんであっさり見抜くんですか?」

「それは、なんか悪かった」

 

咲夜にジト目で睨まれた。

ほとんど勘だったんだけどな。

 

「でも、ユウキさんも流石ね。風を纏って結界代わりにして私の奇襲を察知して迎撃してくるなんて」

「迎撃なんて言えないぞ。防ぐのでやっとだっての」

 

俺は文の力で周囲に風を吹かせて流れを感じ、咲夜が時間停止直後に一瞬だけ乱れた場所にナイフを振るい防いだ。

でも、一瞬すぎてナイフで防ぐのが精一杯で反撃までは出来ない。

 

「コホン、お2人さん。そろそろ弾幕ごっこをしてもらえませんか?」

 

文が咳ばらいをしながら言ってきた。

確かに、さっきから斬り合いばっかりだったな。

 

「あら、その割には文も随分と写真を撮っていたじゃない?」

「それは勿論、今回はユウキさんの勇姿はバッチリ撮っていくと霊夢さんにも言ってきましたので」

「どうせそんな事だろうと思ったが、博麗神社で霊夢とこそこそ話してたのそれか」

「ありゃ、やっぱり気付いていましたか」

 

それ以外にも話してた事ありそうだけど。

 

「では、気を取り直して弾幕ごっこの続きを……って、咲夜さんどうしましたか?」

 

咲夜はナイフをしまいと両手をあげていた。

 

「私は気が済んだからこれでいいわ。さ、2人共先に進んで」

「えぇ~そんなぁ~これからじゃないですかぁ」

「俺としてはどっちでもいいけどな。急がないとパチュリーがヤバいって話か?」

「察しがいいわね。多分だけど、当初の予定より複雑な造りになったからパチュリー様の魔力消耗が激しいんじゃないかしら」

 

迷路を作るのも維持するのもパチュリーの魔力を元にしている。

だから、こんな複雑な迷路を長時間維持するとそれだけパチュリーの負担が大きくなる。

 

「えぇ!? それじゃ遊んでないでさっさと弾幕ごっこすれば良かったじゃないですか」

「しょうがないでしょ、今さっき気付いたのだもの。というわけでユウキさん、パチュリー様の事おねがいね」

「あぁ、分かった」

 

迷路の番人である咲夜は出番が終わってもこの部屋から出られないそうだ。

こうして、俺達は次の部屋へのドアを開けて……

 

――ゴンッ!

 

頭にタライが落ちてきた。

流石に避けれなかった。

 

「あ、言い忘れてたけど、小悪魔のせいで次の部屋からはトラップが大量に仕掛けてあるわ。気をつけてね」

「あぁ、十分に身に染みたよ」

 

こんな単純なトラップに引っかかる自分が情けなかった。

 

「文、お前は大丈夫だったか?」

「……大丈夫に見えますか?」

 

文の方には漬物石が落ちたようで、頭にデカいタンコブをこしらえていた。。

初めて小悪魔が悪魔らしいと今更ながら思った。

 

 

続く




マンネリにならないようにしているつもりですが、果たしてどうなのやら・・・
次回はパチュリー戦です。

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