幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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第156回 「ステージ2:永遠亭」

永遠亭

 

竹林での弾幕ごっこを終え、てゐと共に永遠亭にやってきた俺達をお京が出迎えてくれた。

 

「いいらっ、しゃい。ユウキさん、文さん」

 

が、お京は足がガクガクと震えていて辛そうだった。

 

「大丈夫か? なんとなく何があったか予想出来るけど」

「へ、平気、です。ちょっと石抱された、だけですから」

 

だと思った。って、石抱ってたしか正座の上に石を乗せる拷問だったよな。

似たような拷問なら俺もやった事あるけど、アレをされて足痺れただけってお京も妖怪だから頑丈なんだな。

でも、これも凝りすぎたトラップを仕掛けた罰だからどうこう言うつもりはない。

トラップの被害にあって文句の1つも言うつもりだった文も、流石にこんな状態のお京には何も言えなかった。

 

「ようこそ永遠亭へ。歓迎するわユウキ君、文。早速始めましょうか」

 

そこへ永琳がやってきた。

アレ? ここの弾幕ごっこの相手って輝夜じゃなかったっけ。

 

「こっちはいいけど、輝夜はどうしたんだ?」

「あぁ、姫様なら、うどんげ達と一緒にトラップを作ったから今お仕置き中よ」

「あのお姫様もトラップに一枚かんでたんですか。何をしてるのでしょうか」

 

文が呆れかえっているけど、俺も同感だ。

 

「実は、お京が作ってた泥団子に私が作った薬をこっそり混ぜてたのよ。と言っても身体が痒くなったりクシャミが止まらなくなったりそういうクスリね。だからお仕置き中なの」

「あ、当たらなくて良かったです」

 

なんでそんなクスリがあるんだよ、とは突っ込まないでおこう。

 

「というわけで姫様に代わって私が相手をするわね」

「なんだか嬉しそうですね。まさか永琳さんも……」

「あら、私はうどんげとは違うわよ。最近診療ばかりで身体動かしてなかったのよ。だからたまには運動もしないとと思ってたら、こういう機会が来たから嬉しいのよ。それに相手がユウキ君なら思いっきりやっても問題ないし。あなたは弾幕ごっこのプロ。それも回避に関しては幻想郷一でしょう?」

 

ストレッチしながら嬉しそうに話す永琳。

で、俺だと何が問題ないのだろうか。

 

「いくらなんでもそれは買いかぶりすぎだろ」

「流石は永琳先生、分かっていますね!」

 

なぜか文が得意げになっている。

弾幕ごっこのプロは霊夢や魔理沙の事を言うのだし、回避に関してはそこそこ出来るとは思うけど幻想郷一は言いすぎだ。

 

「ともかく、私のストレス発散に付き合ってね、ユウキ君」

「結局それが本音か。ま、いいけど。永琳先生にはお世話になってたしな」

「ふふっ、ありがとう。それで弾幕ごっこなのだけど、今回はユウキ君が私に触ったら終わり、というルールはどうかしら?」

 

永琳がそんな事を提案してきたけど、基本的に今回俺は文の判断に従う事にしているので何も言わない。

 

「永琳先生に触ったら、ですか。何を狙っているのですか?」

 

なぜかジト目で文が永琳に尋ねているけど、永琳にそこまで深い狙いはないと思う。

 

「いえ、ただそっちの方がそのカメラで撮るユウキ君の写真写りが良いと思ったからよ。そうでしょう?」

「ま、まぁ、それは、その、どうでしょう?」

 

永琳は、そう言って意味ありげな視線を文に送る。

文もそれに何かを察したようで言葉を濁している。

なんか2人だけで通じる物があるようで。

俺には関係、はあるだろうけどどうでもいい事だ。

 

「文、俺はお前の指示に従うと言ったろ。でも、俺が素早い動きで弾幕を避ける動作はしない方がいいんじゃないか?」

 

だから竹林では弾幕を素早い動きでかわすよりも迎撃するのを優先させた。

 

「それはそうですが。予定が早まったと思っておきましょうか。では、ユウキさん、今後の弾幕ごっこの動きは相手に応じて対応を変えるという方針で行きましょう。今回は永琳先生の言った通りでお願いします」

「あぁ、分かった」

 

今回は迎撃+回避で永琳に近づいて触ればいいって事だ。

永夜異変の時、永琳と輝夜の弾幕ごっこを見たが、相手が輝夜だったら早く終わりそうなルールだけど、永琳はそうはいかない。

 

「勝ち負けは関係ないけど、すぐに落ちたら取材にならないからな。最初から全力で行く【幻符・幻想支配モード文】」

 

文の力を発動させ、両手のナイフと両足に風を纏う。

 

「あら、かっこいいわねソレ。じゃ、私も遠慮なく【天呪・アポロ13】」

 

永琳を中心に赤と青の弾幕が展開された。

流石、俺を接近させないようなスペルカードを使ってくるな。

俺は一直線に永琳に向かって飛びつつ、廊下や床を蹴り縦横無尽に弾幕を回避する。

永夜異変の時もだったけど、今の永遠亭の廊下は外からは考えられない程拡張されている。

咲夜が紅魔館の空間を広くするのと同じような原理で、永琳が永遠亭の空間を広げた。

 

「ホントに素早いわね。ちょっと趣向変えましょうか。【錬丹・水銀の海】」

 

それまでの弾幕と違い、永琳を中心に幾つものレーザーが放たれ行く手を阻んできた。

レーザーの合間を大玉の弾幕が放たれてくる。

こっちの進路を塞ぐ弾幕はフランも使うが、あっちは誘い込む迷路型でこっちは動きを捕らえるトラップ型って所だ。

どちらにせよなかなか永琳に近づけないのには変わりない。

 

「あらあら、私はここよ~? 早くいらっしゃい、私に触れてごらんなさい♪」

「あんな上機嫌な永琳様、初めてです」

 

オホホホと笑いながらハイテンションな永琳にお京が驚いている

確かに、永琳は上機嫌だ。

変な薬でも飲んで頭ラリってるのかな。

 

「お師匠様、最近ストレスたまってたから……」

 

そう言っててゐが苦笑いを浮かべている。

ストレスの原因が何なのかは聞かないでおこう。

天井や壁を蹴ってフェイントしかけながら弾幕をかいくぐりって、なんとか永琳の死角から近づく事が出来た。

これで触れば終わりだけど、こんなに早く終わっていいのだろうかと思いながら肩に触れようとしたが、あっさりと躱された。

 

「流石ね。でも、こんなに早くは終わらせないわよ?」

 

頭上から降るような弾幕が放たれ、永琳から離れて仕切り直し。

その時、普通に離れたのでは芸がないかなとバク転しながら戻ってみた。

 

「いいですよ、ユウキさん! そういう動きです!」

 

文がハイテンションになっていたので、こういう動きをすればいいのかと今更ながら理解できた。

 

「次、いくわね。【神脳・オモイカネブレイン】」

 

永琳が次に使ったスペルカードは、異変の時に見たものだ。

弾幕とは違う赤い大玉が現れ、そこからレーザーが俺を囲むように放たれ、同時に永琳からも連射力の高い弾幕も放たれる。

このレーザーはさっきのスペルカードと違い、消えはせず完全に檻のように俺を閉じ込めている。

狭い空間の中で弾幕をよけ続けなければならず、身体を小刻みに動かし避けていく。

ただし、こんな動きでは文の求める動きじゃないと思ったので、学園都市でたまにみかけたストリートダンサーの動きを真似てみた。

普段、俺が避ける動作は必要最低限の動きしかしないので見ている方はつまらないと思う。

まぁ、それでも文達は踊っているように見えると褒めてくれているけど、実際の踊りとはこういう動きなのだ。

と言っても、学園都市から踊りなんてした事がない俺の踊りはぎこちないだろうけどな。

 

「いいです、いいですよー! ユウキさん、優雅です!」

「おー! ゆーちゃんかっこいい!」

 

これで文が満足してくれるのならいいだろう。

てゐとお京は拍手をしていた。

今更ながら、両手のナイフを全然使ってない事に気づいた。

なので弾幕を打ち返す事にした。

俺を囲っている檻を切るよりは、永琳から放たれる弾幕を打ち返す方が絵になろうだろう。

 

「へぇ、切り裂くだけじゃなく打ち返す事も出来るのね。やっぱり面白いわ」

 

見様見真似の踊りをしながら弾幕を打ち返していくが、それでも弾幕が濃く永琳に近づく事は出来ない。

その時、ふと普段よりも力が消耗していない事に気付いた。

いつもは力を込めたナイフで弾幕を切り裂くよりも、打ち返す方が消耗するはずなのだが今は打ち返すのも切り裂くのも以前より消耗を感じない。

 

「これなら、試してみるか」

 

弾幕を避けつつ、ナイフに力を溜めこむイメージ。

今までよりも俺の力が、文の力がナイフに伝わり刀身に流れ込む感覚がした。

そして、その力が十分に注ぎ込まれた。

 

「ここだ!」

 

両手のナイフを永琳に向けて投げ放つ。

咲夜のようにまっすぐ投げるのではなく、横回転するように投げた。

するとナイフに纏った風が勢いを増し、小さな竜巻となって弾幕を切り裂いていった。

 

「「っ!?」」

 

永琳と文が驚きで目が見開いていた。

すぐに永琳はその場を飛び退き、どうにか躱した。

ナイフはそのまま突き進み、壁へと突き刺さった。

 

「危なかったわ 「はい。タッチと」 あ、あら?」

 

永琳がナイフに意識が向いた瞬間、俺は永琳の身体にタッチをした。

実はナイフを投げたと同時に全ての力を足に集中させ、爆発のように風を起こしてロケットのように突進していた。

のだが、思ったより勢いが付きすぎていて、タッチのタイミングが目測よりもズレてしまい……

 

――ムニュ

 

「「「っ!?」」」

「あはっ♪」

 

勢いあまって危うく壁にぶつかりそうになったけど、どうにか止まれた。

永琳に触れる時、何か柔らかいものを触った感覚がしたけど、頬っぺたかな。

まぁ、どこにしても永琳に触れる事が出来たのでこれで弾幕ごっこは終わりだ。

 

「よしっと、これにて終了。お疲れ様、永琳。どうだ? 少しはストレス解消できたか?」

「え、えぇ、そうね。別のストレスが溜まりそうだけど……まぁ、これはこれでいいかしら」

 

なんだか的を得ない返答だけど、とりあえず満足したって事かな?

で、永琳はそれで終わったのだが、文となぜかお京が物凄く不機嫌な顔でこっちを睨んできてる。

対照的にてゐはニヤニヤと面白い物を見たような顔をしている。

 

「いやぁ~さっすがゆーちゃん。最後の最後にやってくれたね♪」

 

てゐは楽しそう、いや、面白そうに言うけど、そんなにすごい事やったかな。

 

「俺の投げたナイフが永琳の弾幕を切りさいた事か? あれはどちらかと言えば文の力のおかげだぞ」

 

俺がそう言うと、文は深いため息をついた。

なんだか呆れかえってるような気がするけど、なんでだろう。

 

「いえ、あれはどちらかと言えばユウキさんの力だと思います。私の風では弾幕を吹き飛ばすにはあの程度では無理ですから」

 

要するに弾幕を切り裂く力+文の風で、永琳の弾幕を突破出来たと言う事か。

使ってみて分かったけど、この力の使い方は結構応用できそうだな。

 

「と・も・か・く! ここでの弾幕取材は終わりましたので、次! 行きますよ!」

「あらあら、お茶でも飲んでゆっくりして行けばいいのに」

「いいえ! これ以上ここに居ると危険ですので、では失礼します!」

「なんでそんな急いでいるんだよ。あ、永琳、てゐ、お京またな! 鈴仙と輝夜によろしくなー」

 

そう言って文に手を引かれて永遠亭を後にした。

もう少しゆっくりしても良かったけど、思ったより疲れが出ていないからいいか。

 

 

「またいらっしゃい♪」

「まったねー」

「え、えーりん……掃除終わったわよぉ、あら? ユウキは? まさかもう全部終わっちゃったの!?」

「あら、姫様、うどんげ。掃除ご苦労様。ユウキ君ならもう帰ったわよ?」

「そんなぁ~あれ、師匠? なんだかツヤツヤしていませんか? それにお京はなんでそんなに不機嫌なの?」

「……知りません!」

 

なんか俺達が飛び去った後の永遠亭が騒がしくなってたけど、気にしないでおこう

 

 

続く

 




永琳と変な事になりましたが、フラグは立ちません。
ユウキに対しては、お姉さん目線になりつつある永琳。
次のステージは紅魔館です。

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