魔法の森
弾幕取材の為、永遠亭に向けて迷いの森を進む俺と文。
その道中で大ちゃんやチルノ達に弾幕ごっこを仕掛けられたが、チルノ達が自爆したのでなかったことになった。
「うーん、やっぱり一度くらいした方がいいですかねぇ?」
文はさっきから何かを考え込んでいる。
まぁ、どうせろくでもない事だろうからほっといてるけど。
「うん、決めました! 本命の前に一度研修しましょう、研修」
「お前はさっきから何を言っているんだ?」
「いえ、さっきやりそこねたユウキさんの研修を行おうと思いまして」
「なんでだよ。文の力使って弾幕ごっこをするだけだろ」
なぜ弾幕ごっこの取材に研修が必要なんだ。
「ちっちっちっ、確かにユウキさんは弾幕ごっこにはかなり慣れてきていていますが、私が今回行うのは特別な取材なんです。普通に弾幕ごっこを取材するだけじゃ、わざわざユウキさんに頼みませんよ」
つまり、いつも行う弾幕ごっことは違う弾幕ごっこをしなければいけないって事か。
派手に動き回ればいいとは言ってたけど、どういうのが派手になるのか。
「で、その特別っていうのは具体的には? ずっと言ってるけど、派手に動き回るってのはどういう風にだ?」
「例えばですね。避けなくていいものまで大袈裟な動きをして避けるとか、スペルカードも派手な動きや弾幕を放つものを使って欲しいんです。ユウキさんの弾幕ごっこは動きは綺麗ですけど、無駄がなさ過ぎるんで」
無駄がなさすぎる、か。
俺の弾幕ごっこは基本的には回避だからな、無駄な動きしていたらあっという間に落とされてしまう。
「それだと写真写りが良くないって言うのか?」
「いえいえ、それでも綺麗な絵面になりますから問題ありません。ただ……」
「ただ?」
「飽きました。私も読者も」
文の言葉に思わずずっこけそうになった。
飽きましたって、なんだそりゃ。
文はまだわかるが、読者も、って。
そこまで文の新聞に読者いるとは思えないけど。
「というわけで、私が欲しい写真を撮る為にやっぱり研修が必要なんです!」
ただ研修って言いたいだけだと思う。
そういえば、ここはアリスの家が近いな。
アリスなら上海達を使った多角的な弾幕を使うし、写真写りが良い弾幕ごっこの練習になるかな。
「ん~そこまで言うならアリスの所寄って行くか?」
「はい、寄りましょう! ぜひ寄りましょう!」
なぜか文はものすごく乗り気だった。
乗せられた気がするが、目的が分からない。
アリスの家
というわけでアリスの家にやってきた。
家にはアリス以外にもパチュリーがいた。
「それで私の家に来たわけね。文と2人なんて珍しいと思ったらそういう事」
そういうとアリスはパチュリーの方をちらっとみて、なるほどと呟いた。
「道理で今日のパチュリーは機嫌がいいわけね。でも、それなら私にも言ってくれたら取材に協力したのに」
「いやぁ、アリスさんには伝え忘れてました。まぁ、そういうわけで私とユウキさんは今日から少しの間ですけど、2人っきりの密着取材なんです」
なぜか文が自慢するようにアリスとパチュリーに言うが、特に2人はどうとも思ってないようだ。
「2人っきりの密着って、行く先々で誰かいるじゃない。これから永遠亭には鈴仙、妹紅もいるかもしれないし。で、うちにはレミィや妹様や咲夜達。白玉楼には妖夢がいるわね」
パチュリーの言う通り、今回は文と2人きりってわけじゃない。
「いいんです。そこに行くまでが2人っきりなんですから! 早速さっき出鼻をくじかれましたが」
「チルノ達みたく道中に出会うのだっているでしょ? だから私達に自慢しても意味ないわよ」
アリスと文は、何か俺には分からない話をしているのでほっとこう。
そういえば、パチュリーに相談したい事があったんだった。
紅魔館で相談するつもりだったのだけど、ここで会えたのは良かった。
「なぁ、パチュリー。ちょっと相談があるのだけど」
「あら、あなたから相談てかなり珍しいわね。いいわよ。どんな事かしら?」
俺が声をかけるとパチュリーは少し笑みを浮かべて答えた。
アリスの言う通り、確かに今日のパチュリーは機嫌がいいみたいだ。
パチュリーもなんだかんだと面倒見いいから相談をされると嬉しいのかな。
「実は文から今回の取材で頼まれ事をされて……」
「ふーん」
なぜ急に不機嫌に戻った。
なんだか今回なぜって思う事が多いな。
幻想郷に馴染んだつもりだったけど、まだまだ分からない事が多いな。
「その頼まれ事って言うのが、新しいスペカを作って欲しいって事なんだよ」
「新しいスペカねぇ。以前氷精に教えたように文の力を使ってって事よね? それは私に聞くよりも自分で考えた方が早いじゃないの? 幻想支配はあなた自身の力じゃない」
「それはそうだけど、風の力って言うのが応用力高すぎて方向性が決まらなくてさ。文は方向性含めて俺に任せるって言ってるし。だから多様な属性魔法が得意なパチュリーに聞いてみたんだよ」
学園都市でも風系の能力ってあまり使った事ないしな。
まぁ、パチュリーの属性に風はないけど。
「なるほどね。うん、だから私を頼ったのね。流石ユウキ、わかってるじゃない」
また上機嫌になった。
今日はそういう日なのか、確か女の子にはそういう日があるって土御門言ってたな。
「で、風の力を使ったスペルカードね。うーん、なら風の力を使って弾幕を反射する、のはどうかしら?」
「弾幕を反射? いいのかそれ?」
このナイフを作った時に霊夢から弾幕の反射は反則みたいな事言われたんだけどな。
「普通に反射するのではなく、スペルカードを使っての反射なら問題ないわ。スペカをスペカで相殺したりするでしょ? あれと同じよ。それにそっちの方が美しいわ」
なるほど、弾幕ごっこって美しさを競ってるんだもんな。
「ありがとう、パチュリー。それが分かれば色々と思い浮かんでくる」
「あの~? 何2人だけで盛り上がってるんですか?」
いつの間にかアリスと口論を終えた文がこちらを睨んできた。
アリスもジト目でこっちを見ている。
「ん? あ、そっちの話は終わったか? なら、アリス、弾幕ごっこに付き合ってもらっていいか?」
「そうねぇ。お茶会も始まったばかりで肴も欲しかった事だし。ちょうどあなた用に試してみたいスペルカードもあったしね」
「ありがとな。あと、スペルカードは出来れば包囲攻撃型のを俺に使って欲しいんだ。アリスならあるだろ?」
「ふふっ、ますますちょうどいいわね。試してみたいスペカはちょうどそのタイプよ。早速始めましょうか」
こうして、俺達は外で弾幕ごっこをすることになった。
思えばアリスとはあまり弾幕ごっこした事なかったな。
パチュリーに作ってもらったナイフの試し斬りした時と、あとは2、3回程度だ。
なのに、俺用のスペカを用意するなんて魔理沙並みに勉強熱心だな。
「それじゃ、使うスペルカードは1枚ね。行くわよ!」
小手調べとばかりにアリスは最初、人形を使わずに弾幕を撃ってきた。
いつもやる弾幕ごっこなら森の木々の合間を駆け抜けて避ける所だけど、今日は文の力を使って見栄えのいい弾幕ごっこをしなければならない。
なので、俺は素早く上空へ飛び上がり弾幕を避けた。
と、同時に両手を振るいこちらも弾幕を放った。
別に手を振るう必要はないけど、文の弾幕は風の弾幕だからなんとなく風を起こす動作をしたくなる。
「わっと!?」
アリスは俺の反撃に驚いたのか、慌ててその場を飛び撥ねて避けた。
「何やってるのよ、アリス」
慌てて避けたアリスをジト目で見ながらパチュリーは呆れた声を出した。
「だって、ユウキが弾幕ごっこ始まってすぐに反撃してくるなんて珍しいからつい、ね。あなたって弾幕は回避専門でしょ。避けながら打ってくるとは思わなかったわ」
「あーまあな。そうかもしれない」
俺は今まで弾幕ごっこでは攻撃する事はあったけど、大体はスペカを避けまくって時間切れを誘うやり方だった。
「今回は文からもっと攻撃してくれって言われてるからな」
「なるほどね。じゃ、遠慮なく! 上海! 蓬莱! みんな!」
「シャンハーイ!」「ホウラーイ!」
上海と蓬莱を中心に数体の人形が、俺を取り囲むように配置された。
この弾幕パターンは今までのアリスにはなかったな。
でも、この配置なら、いける気がする。
集中する為に目を閉じ両手を広げ、イメージとして自分を包み込む翼を作る。
「あやや? ユウキさんの周りの風の流れが変わりましたね」
「そうね。半透明な翼が形作られているのかしら」
文とパチュリーの言う通りなら、俺のイメージはうまく形になっているようだ。
「むっ、何かしてくるみたいね。ならこっちも 【偵符・シーカードールズ】」
アリスがスペルカード宣言をすると、俺の周囲に展開された人形たちが一斉に弾幕を放ってきた。
このタイミングを待っていた。
俺は今から文の力を使った新しいスペルカードを使用する。
が、スペルカードを使う時は名前がないとしまらない。
そもそも名前を付けるなんて事は全く未経験なので、仮としてそれっぽい単語を付けてみた。
その名も。
「【仮符・反風天開】」
スペルカード宣言と同時に、両手を広げ自分の周りを包み込んでいた風の翼を一気に解放し、羽ばたかせる。
「嘘ぉ!? 弾幕が全部弾かれただけじゃなく、戻ってきた!?」
「あやや、これは見事!」
アリスや文の驚いた声を聞いて、恐らく俺が思い描いたイメージ通りに行ったと確信した。
目を開けると、俺の周囲にいたはずの人形は全てが落ちていた。
「パチュリー、文。今のはどんな感じになった? 文の風に俺の力を加えて、防壁としてだけじゃなく反射もさせてみたんだけど」
「はい! ユウキさんが生み出した風の翼がアリスさんの弾幕の軌道を変えて、人形を撃ち落としました!」
「ふふっ、文の風にあなたの力を合わせるなんて器用な真似、すぐにできるとは思わなかったわ」
人形たちが放った弾幕は、羽ばたく翼に逸らされるようにその軌道を変え、軌道を変えられた弾幕はそのまま、人形たちの元へと戻っていったはず。
一方通行が自分への銃撃などを相手に反射させていたのを、俺なりに再現してみたのだけどうまくできたようだ。
「パチュリーの言う通り、器用な事するわね、あなたは。包囲攻撃型の弾幕を望んでいたのは今の反射スペルカードの見栄えが一番良くなるだろうと見込んでの事だったのね」
アリスは、呆れ半分の反応だけど、やっぱりマズかったのかな。
「で、文。今の文の新しいスペルカードとしてはどうだった?」
文の反応から見て、今のスペルカードは成功だと思う。
だけど、文の反応は鈍い。
「う~ん、今のはどうでしょうかぁ。確かに半透明な風の翼など、見栄えはかなりいいんですけどね。私が使うとなると厳しいですね」
厳しいというのはどういう事だろうか。
「つまり文が言いたいのは、今のユウキが使ったスペカは、文の風にあなたの力を使って反射の属性を付与してるから見栄えのいいスペカになったのよ。文の風の力だけじゃあんなキレイにはいかないわ」
「パチュリーさんに詳しく解説されちゃいましたが、その通りです。私が風を使って弾幕を反射させようとしたら、暴風レベルの風を起こさないとダメで、そんなの乱暴的過ぎて美しくありません」
なるほど。確かに2人の言う通りだ。
チルノのような新スペカと言われたが、あれはチルノの力だけで使えるスペカだった。
けど、今回俺が生み出したのは文の力と俺の力がなければ成立しないスペカだ。
これじゃ、文のリクエストに応えたとは言えない。
「悪い文。また考え直すよ」
「いいえ、私のアドバイスが悪かったわ。風の力を使って弾幕を反射すると言ったのは私だもの。ごめんなさいね、文」
「あ、あややや! そんな、気にしないでくださいな、お2人とも。そこまで真剣に新スペカを考えなくても、出来れば~レベルでしたから。それに、今のスペカはあれはあれでユウキさん専用の新スペカと言うことで有効活用してくださればいいですよ」
文はホントに気にしてないようだけど、一度頼まれた以上それに応えないとダメだ。
「ひょっとして、文。ユウキが他の人の新スペカを思いつくのに嫉妬して、自分も作って欲しかっただけ、だったり?」
「ギクッ? な、なんの事でしょうかアリスさん? 私は別に、ただユウキさんの発想力と応用力の高さを知ってるからですねぇ」
「はいはい。言ってる事変わらないじゃない。あ、言っておくけどユウキ。私のシーカードールズはまだまだ未完成なのよ。今回で改良点も分かったし、次はうまく反射出来ると思わない事ね」
「あぁ、お互いまだまだ精進しないとな」
こうして、俺と文はアリスの家を後にした。
「あやや~もうお昼時ですか。ユウキさん、迷いの竹林に行く前に人里へ行って昼食にしませんか?」
「そうだな。今から竹林に行ってもお昼時になるし、先に済ませちゃうか」
「はい、そうと決まれば行きましょう急ぎましょう!」
そう言うと、文は俺の手を取って空へと飛びあがった。
「お、おい。歩いてゆっくり行くんじゃなかったのか?」
「あはは~善は急げ、ですよ~♪」
自分の新スペカが完成しなかったというのに、文はずっと上機嫌だった。
続く
やっとかけた~!
長いスランプでした・・・
どうも頭に浮かぶ絵を文字にするのが出来なくて、他の小説同様何度も書き直しました。
次回は、あのキャラが原作に先駆けて先行登場です。