幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
後編です!


第148話 「執事体験(後編)」

さて、後は美鈴の仕事を手伝って今日は終わり。

のはず、だったのだがレミリアに図書館に呼ばれた。

 

「どうしたレミリア? 眠れないから絵本読んで欲しいのか?」

「違うわよ! それにあなた、フランクにしろとは言ったけど、程度が過ぎるんじゃない!?」

「失礼いたしました、レミリアお嬢様。早速ですが、こぁが持ってきたこの絵本をお読みいたしますので、ベッドにお入りください」

「わーい! 絵本絵本♪ ……ってなるかー! いつの間に用意したのよ、このベッド!」

 

一度はベッドに潜り込んだレミリアが勢いよく起き上がってのノリツッコミ、流石は紅魔館の主だ。

ちなみにベッドを用意したのは、こぁだ。

 

「こぁ、ナイス」

「イエーイ♪」

 

満面の笑みで俺とハイタッチをかわすこぁは、まさしく小悪魔だった。

 

「あなた達、レミィで遊ぶのは後にしなさい。ってこれ私のベッドじゃないの!」

「はい。私よりパチュリー様の部屋の方が近いので」

「近いので、じゃないわよ! 早く戻してらっしゃい!」

「はーい」

 

気を取り直して、本題に入ろう。

 

「コホン。あなたを呼び出したのは他でもないわ。実は、今とある計画をパチェと立てていてその意見が聞きたいのよ」

 

そう言ってレミリアが取り出した大きな紙には 【紅魔館ホームアローン計画】 と書かれていた。

 

「「……」」

「どれどれ? あぁ、トラップの質はともかく配置はいいな。なかなかえぐい位置になっている。後はもうちょっと効果的なトラップを仕掛けられれば完璧だ。で、このトラップは撃退・捕獲・抹殺、どういうレベルを想定しているんだ?」

 

トラップと言っても、その用途に応じて様々なレベルがある。

ただ撃退するだけなら殺傷能力よりも派手さを重視すればいいし、捕獲なら麻酔や電撃を使って一瞬で敵の意識を刈り取るトラップを仕掛ける。

抹殺は簡単だ。爆弾や猛毒などを仕掛ければいい。

で、この計画に使われる予定のトラップは撃退と捕獲を重視しているようだな。

 

「違うわよ! てか何よこの計画! パチェ!」

「あーこれ確かに私が考えたものね。思い出したわ。魔理沙に泥棒に入られて魔導書を盗まれて、ヤケ酒飲みながら考えたのよね。レミィが言ってる計画はこっちよ」

「……もうつっこむ気もないわ。とにかく、この計画は見なかったことにしましょう」

 

ホームアローン計画はレミリアの手で燃やされてしまった。

結構、面白い計画だと思うんだけど、主であるレミリアが乗り気じゃないなら仕方ない。

まぁ、既にいくつか取り付けられているようだけど、それは解除しなくていいのかな。

 

「私達が計画しているのはこれよ、コレ」

 

レミリアは今ので気が削がれたようで、半ば投げやりにパチュリーが出してきた紙を広げた。

 

「月面侵略計画? 随分と物騒な計画だな」

 

これによると、外の世界にならって月へ行けるロケットを作り、鈴仙達がやってきた月の都へ信仰するという計画らしい。

 

「侵略と言ってるけど、別に征服したいわけじゃないわ。レミィが仰々しくかっこつけただけ。本当の目的は、月の都の技術力を手に入れる事」

「あら、ロケットで乗り込んで何でもいいから月の都にある物を持ってくるのよ。立派な侵略じゃない」

「で、なんでそんな計画を? 鈴仙達に何か触発されたか?」

 

宇宙人が珍しくて宇宙に行ってみたくなった、かな。

今思えば、宇宙人に初めて会ったんだよな。

鈴仙に会った時、もっとリアクションすればよかったか。

ま、これ以上はないってリアクションしたからいいか。

 

「そんな所ね。月には都があるのは知っていたけど、あまり興味なかったのよね。月はそこにあるだけで意味があり、月に行こうなんて思わなかった。けど、実際に月の住民に会い、その技術力に興味が湧いたって言うわけよ」

 

鈴仙達、何か月の都の技術力見せたっけ。なるべくそういうのは見せないようにしていた……あ、あの薬か。

俺も世話になった。瀕死の重傷でも完治させるあの薬。

あれがあればどんな大怪我しても問題はないな。

人間である咲夜やフランに万が一があった時の為に欲しいのか。

でも、咲夜は一度あの薬の世話になっているから、もう効かない。

ならば、あの薬を調べる事が出来れば似たようなものが作れるようになる。

 

「で、こことは別世界とはいえ、外の世界よりも遥かに進んだ科学力の持つ学園都市から来た俺に」

「そう。宇宙へ行くロケットの事を聞きたかったのよ」

「なるほどな。だけど、生憎俺は宇宙関係には詳しくないぞ?」

 

いくら学園都市の裏側の人間で科学にも詳しいとはいえ、宇宙は俺の専門外だ。

宇宙空間用の駆動鎧や、無重力空間での戦闘って言うならわかるけどな。

エンディミオンへ行った時も、当麻達みたくロケットで行ったはなく、シャットアウラと一緒に軌道エレベーター使ったし。

 

「それでも、ロケットに関する科学的な知識はあなた以上の存在はここにはいないわ。あなたが知る限りで構わないわ。それが私達に必要な知識かどうかは問題ではないの」

 

俺のわずかな知識でも手掛かりにするって事は、はかどっていないのかな。

まぁ、いい。専門外とは言え、一般的な知識ならあるしな。

教えるにしても科学が発達してない幻想郷じゃ、初歩から教えた方がよさそうだな

 

「じゃ、まずロケットの構造から行くぞ」

「「お願いします。ユウキ先生」」

 

レミリアはともかく、パチュリーまで俺の先生と呼ぶとは。

しかも、ニヤついてるし。俺が先生呼びされるの苦手なの知ってて思いっきり確信犯だな。

さっきの仕返しのつもりなのだろうか。

 

 

それからレミリアとパチュリーにロケットについて色々と話をした。

色々と言っても、ホントに俺が知ってる事って少ないんだけどな。

 

「以上が俺の知ってるロケットの知識だ。な、少ないだろ?」

 

話を終えて2人を見ると、揃って苦笑いを浮かべていた。

やっぱり、分かりにくかったかな。

一応専門用語を使わないようにして、使ったとしても補足説明はいれていたんだけど。

それでも幻想郷じゃ科学の話は厳しいか。

 

「いやいやいや、ユウキ。あなた、それのどこが少ない知識なのよ。長々と4時間も説明しちゃってるじゃない」

「しかも、途中で私達にもわかりやすいようにかみ砕いた説明まで挟んで、休憩時間まで入れて。ホント、呆れるほどだわ」

 

あーそっちの事か。

どうやら俺の説明は分かりやすかったようなのでそこは安心した。

 

「これでもかなり少ない方だぞ。宇宙工学とかそっち系の専門家たちに比べたら、初歩中の初歩だ。で、少しは役に立ったか?」

「えぇ、それはばっちりよ。役に立たないからこそ役に立ったわ」

「ん? 役に立たないなら、役に立ってないんじゃないか?」

 

言ってる意味がわからない。

 

「違うわ。言ってなかったけど、私達が行きたいのは科学のロケットでは行けない月なのよ。だからあなたの知識が完璧でそれを元にロケットを作っても意味がないの」

 

ん~ますます意味が分からない。

 

「月と言っても2種類あるわ。あなたみたいに外の世界の人間が言う月は 【表の月】 私達幻想郷の者が言う月は 【裏の月】 あのウサギ達がやってきたのは裏の月なのよ」

「それで私達が作りたいロケットは科学のロケットと正反対のロケットなの。で、科学の要素を少しでも無くすために科学のロケットの知識が必要だったというわけ」

 

つまり失敗作にならないようにするために、失敗の見本を知りたいってわけか。

 

「それでもロケットとしての根本は一緒にする必要はあるのよね。これで、私達のロケットの設計図が書けるわ」

「計画の企画だけでホントに何にも進んでなかったのか」

 

まぁ、鈴仙達と知り合ってすぐだから計画もスタートしたばかりって所か。

 

「ユウキのおかげで助かったわ。ご苦労様、今日はもう休んでいいわよ。私もスッキリしたから寝るわ」

「私も休む事にするわ」

 

魔理沙と違って純粋な魔法使いであるパチュリーは寝る必要はないけど、身体の為に寝る習慣は残している。

 

「それじゃ、おやすみなさい。ユウキ」

「今日は楽しかったわ。おやすみなさい」

「おやすみなさいませ、レミリアお嬢様、パチュリーお嬢様」

「「ッ!? ゲホゴホッ!?」」

 

図書館の去り際に、髪を整え執事らしい満面の笑みとお辞儀をして挨拶をした。

思った通り、レミリアとパチュリーは揃ってむせかえていた。

予想通りの反応だけど、なぜだ……

 

 

休んでいいとは言われたが、俺はまだ仕事が残っている。

予定の時間よりかなり遅れたが、美鈴の元へとやってきた。

レミリアに呼ばれたから遅くなる。とはメイド妖精に伝言を頼んだのだけど、今思えばこぁか咲夜に頼めばよかったかも。

 

「なるほど。それでこんなに遅くなったわけですか。随分とレミリアお嬢様とパチュリー様とお楽しみだったようで」

 

美鈴は、明らかに不機嫌と分かる笑顔で出迎えてくれた。

ニコニコといつものような明るい笑顔だけど、目が笑ってない。

 

「メイド妖精から何を聞いたか知らないしお楽しみの意味も分からないけど、とりあえず遅くなってごめん」

「いーえ、気にしてません。どーせ彼女達の言う事なんて信じてませんから」

 

思いっきり気にしてるじゃん。

 

「それにあの2人にそんな度胸あると思いませんし」

「えっ? 度胸?」

「なんでもありません。それよりも、来てもらってから言うのもなんですが、門番の仕事は今度で構いませんから寝てください。もう真夜中過ぎてます」

 

今まで気付かなかったが、既に時計の針は夜中の1時を回っていた。

普通なら寝る所だけど、俺は普通じゃないので全く問題ない。

 

「俺なら大丈夫だ。1日程度なら徹夜に入らない」

 

ホントに全く眠くない。幻想郷に来てからは徹夜はしたことなかったけど、学園都市じゃ4日徹夜した事もあるしな。

 

「それ大丈夫って言いません。いいから寝てください」

「あ、おい。ちょっと」

 

いきなり美鈴の肩に抱えられた。

 

「口で言っても聞いてくれないから実力行使です!」

 

普通の女性に見せても、しっかりと人間離れした妖怪の美鈴にガッチリと抱えられてしまっては、流石に抜け出せない。

うーん、この展開は予想外だったから隙を見せてしまった。

その時、誰かが空か飛んでくる気配を感じた。

 

「おーおー、こりゃどうした事だ? 美鈴がついにユウキを夜這いにかけてるぞーこりゃ傑作だ!」

「「魔理沙!?」」

 

こんな真夜中に魔理沙が紅魔館にやってきた。

なんでこんな時間に……って、図書館に忍び込むために決まってるよな。

美鈴は俺を肩に抱えながらも魔理沙が突破しないように警戒してる。

流石だな。でも、弾幕ごっこで突破されたら美鈴じゃ分が悪い。

 

「なぁ、美鈴。俺が魔理沙を追っ払ったら、このまま門番の仕事手伝うって事でいいか?」

「えっ? ダメですよ。ユウキさんなら簡単に魔理沙を追っ払えるじゃないですか」

「ちょっと待て、簡単にってなんだよ! まーそりゃ、流石にユウキ相手なら分が悪いと思うけど……」

 

美鈴はどうしても俺を寝かせる気か。

でも、今は魔理沙への対処が先だ。

 

「魔理沙、ユウキさんを寝かせて来るまでそこまで待ってなさい!」

「いや、そう言われて大人しく待つ奴がいるかっての!」

「あ、待ちなさい! 魔理……「待て、美鈴。大丈夫だ」……えっ?」

 

魔理沙は俺達をスルーして紅魔館に侵入しようとし、それを俺を担いだままの美鈴が駆け出そうとして止めた。

 

「どうして止めるんですか?」

「まあ見てろ」

 

魔理沙はそのまま、窓へと突撃し……

 

――グニョ

 

「わぷっ!?」

 

大の字になって窓にへばりついてしまった。

 

「な、なんだよ、コレ……」

「何ですかアレは」

「パチュリーが設置したトラップだな。魔理沙が窓から侵入しようとしたら引っ付くようになってる」

 

そう。窓にはトラップがしかけてあった。

ご丁寧に魔理沙にしか反応しないように組み込んである。

まるでハエ取り紙だ。

俺なら電流流すとかするけど、パチュリーは優しいな。

 

「私は虫じゃないぞ。これ剥がせよー!」

「設置したパチュリーじゃないと解除できないから俺らじゃ無理。それと、パチュリーさっき寝たばっか」

「な、なんだってー!?」

「朝になったらパチュリー起きてくるだろうから、その時解除してもらえよ」

 

俺が幻想支配でパチュリーの魔力を使ってもいいけど、流石にこれからパチュリーの寝室に行くのはマズイ。

 

「いい機会ですから、そこで一晩反省しなさい。パチュリー様も大体あと6時間くらいしたら起きて来るわ。ささって、あんな泥棒はほっといて、ユウキさんも早く寝ましょうね~♪」

「いや、俺の事はホントいいから。門番の仕事ほったらかしていいのかよ」

「おい、こら! お前ら、私の事をほったらかしてイチャイチャするな~! これ取ってくれよー!」

 

魔理沙が騒いでいるけど、それを無視して俺は美鈴に担がれて半ば強制的にベッドに寝かされた。

そして、なぜか添い寝をすると言って美鈴がベッドに潜り込んできて、咲夜がやってきて強制退出させられた。

 

「レミリアお嬢様に休んでいいと言われたのだから、早く眠りなさい。でないと、私が寝かせるわよ?」

 

という目が笑っていない咲夜の優しさに甘える事にして、眠ることにした。

翌日、まだ窓にへばりついていた魔理沙の隣の窓に、なぜかレミリアもへばりついていた。

 

 

こうして、俺の紅魔館での執事体験は終わった。

 

 

続く

 




お待たせしました!
気が付いたら食欲の秋になりました……柿や梨が美味しい時期。

さて、予定では次の次くらいで日常編も区切りが付いてきて、次は花映塚編です。

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