幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!

北海道は半分は陽がまったく差さず涼しいけど、半分は蒸し暑い変な夏になってます。


第147話 「執事体験(中編)」

こぁの部屋掃除は結局本人にやらせる事になり、俺の図書館での仕事は終わった。

で、夕食の支度に入るわけだが。

 

「夕食はあなたに任せるわ」

「私、お兄ちゃんの手料理食べたいの」

「あの、私も食べたいです」

 

と、レミリア、フラン、美鈴に立て続けに言われ。

 

「後生ですから、ユウキさんの手料理をぉ~!」

 

貧血で倒れて昼食を食べ損ねたこぁからは泣き落としをされてしまい、仕方なく夕食も俺が作ることになった。

 

「全くみんな揃って同じこと言うかな。別に作るのはいいけど、俺なんかより咲夜の料理の方が美味しいだろうに」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私だってあなたの料理は食べたいわよ?」

 

結構食材使ったから足りないかもと思ったが、いつの間にか咲夜が食材を買い足していたようだ。

昼食は、魚と野菜中心だったので夕食は肉系で行こう。

 

「で、こぁはそこで何してるんだろ?」

「さぁ?」

 

咲夜と2人でドアに視線を移すと、そこにはこぁがジーっとこっちを見つめていた。

さっきから何か言いたそうにしてるから少し気になる。

 

「こぁ、お腹空いたの? パンくらいならあるわよ?」

「あ、いえいえ。空きましたけど、ユウキさんの料理まで我慢します!」

「どんだけ俺の料理待ち遠しいんだよ。そんな大層なものじゃないぞ。咲夜の料理の方が美味しいって」

 

ここまでくると病気としか思えなくなってくるぞ。

自動で俺の料理に麻薬物質でも入ってるんじゃないだろうな。

そんな能力、学園都市でもなかったぞ。

 

「はいはい。とにかく、ユウキさんが集中できないから図書館へ戻りなさい。出来たら呼ぶわよ」

「……はーい」

 

気にはなるけど、集中力途切れるほどじゃないけどな。

 

「ねぇ、ユウキさん。夕食は和食にしてみたらどうかしら?」

「ん? レミリア達って洋食メインだろ?」

 

昼食はムニエルとかパスタとか洋食メインで作った。

紅魔館では和食より洋食の方がイメージ合ってるからな。

レミリア達には何度か博麗神社で食事出したけど、あの時は材料的に和風にしかならないからそうしていた。

 

「だからこそたまには和食がいいのよ。それに、和食なら私よりあなたの方が美味いわよ? 味噌汁とか」

「それなら霊夢の方が美味いぞ」

 

俺は料理はなんでもやれるが、得意料理というものはない。

 

「ここで味噌汁とかって合わないんじゃないか?」

「だからこそよ。それにこれはフランお嬢様からのリクエスト。レミリアお嬢様は、あなたが作る和食なら何でもいいって言っていたわ」

 

今、俺が作るって部分強調しなかったか?

ま、リクエストがあるのはいい。何を作るか考える手間が省ける。

 

「あ、そうそう。肉じゃがもお願いするわ」

「それは誰のリクエストだ? 美鈴か? パチュリーか?」

「いいえ、私よ。前に作ってくれた味が忘れられなくて。いい機会だからと思って」

 

お前かよ! 確かに以前作ったけどさ。

あの時は大ちゃんや妖夢が絶賛してたな。

何か幻想郷に来て、料理の腕上がってる気がする。

学園都市じゃ滅多に作ってなかったしな。

 

「ほかにリクエストはあるか?」

「いいえ。後はあなたにお任せするわね」

 

こうして作り始めたわけだが。

こぁがまたしても覗き見にやってきて、パチュリーに連れ戻されてくという事が3回ほどあった。

 

 

場の雰囲気に似合わない和風な食卓で、スカーレット姉妹による漫才でにぎやかな夕食を終わった。

さて、次はフランと遊ぶ番だな。

と言っても勿論、ただ遊ぶわけじゃない。

フランの特訓の成果を確認する為、俺が鬼になり鬼ごっこをすることになった。

 

「お兄ちゃん、準備はいい?」

「俺の方はいつでもいいぜ」

「じゃ、いっくよー! 【禁忌・フォーオブアカインド】」

 

スペルカードで4人になったフラン。

何度もこのスペカは何度も見てきてるけど、今回ほど4人とも強い力を感じた事はない。

全く同じように分身してるように見えて、実は4人の魔力にばらつきがあったからな。

 

「ユウキさん、頑張ってくださいね!」

「おう。美鈴、力借りるぜ 【幻符・幻想支配 モード美鈴】」

 

幻想支配で美鈴の気の力を全身に纏い、身体能力を強化する。

これで、どうにかフランの相手ができる、かな?

 

「2人共準備が整った所で改めてルール確認ね。ユウキは逃げるフランを4人共摑まえる事。フランの5秒後にユウキがスタート。弾幕なし、今使った以外のスペカなし、範囲は紅魔館の地上部分のみ。制限時間は30分。いいわね?」

「あぁ」「うん!」

「それじゃ、スタート!」

 

パチュリーの合図と同時にフランが文字通り四方八方へと飛び去って行く。

 

「5秒経過です」

「よしっ」

 

5秒待って俺がスタート。

咲夜とパチュリーが空間を弄ったので、紅魔館内は普段の何倍も広くなっている。

美鈴の力は慣れているので、スペカを使わなければ30分は余裕で力がもつ。

が、それでも30分は決してない長くはない。

ここは最初から全力で飛ばしていく。

 

「まずは……」

 

すぐ近くに隠れているフランの元へと行く。

 

「フランA、かくれんぼじゃなくて鬼ごっこなんだけど?」

「えへへっ、近くにいたら気付かれないかなーって思ったんだけど、流石お兄ちゃん」

「気配を探るのは得意なんでね」

 

だからチルノや大ちゃん達とかくれんぼする時は鬼役は絶対にさせてくれない。

ルナやサニーの能力で隠れてもすぐに見つけてしまい、勝負にならないからだ。

 

「むぅ、今度は気配を消す特訓しないとダメかぁ」

 

そう言いながらフランはパチュリーと美鈴の所へと戻って行った。

ちなみにレミリアと咲夜は部屋で俺達の鬼ごっこを見ている。

間近で見ると、レミリアが混ざりたくなるから、とは咲夜の弁。

本人は否定していたが、ありゃ図星の反応だった。

 

「さてと、次は……」

 

広間に出て上を見上げる。

上に1人いる。本人は隠れているつもりなのだろうが、羽根飾りが見えている。

 

「見つけたぞ、フランB!」

「わっ、もう?」

 

ひと息で3階まで飛び上がり、隠れている(つもり)のフランへと手を伸ばす。

が、今度はフランの方も分かっていたようで、さっと身をかわし飛び去った。

これでやっと鬼ごっこらしくなった。

 

「おーにさん、こっちら♪」

「余裕そうだな」

 

フランの飛行速度は前よりも速く、いくら美鈴の力で強化されていても俺の速度じゃ追いつけない。

が、屋外だったら難しいが、ここは屋内。

いくら紅魔館内が広くなったとはいえ、それは廊下が長くなっただけで天井の高さや壁の広さはそのままだ。

ちょうどいい所に曲がり角が見えてきた。ここで勝負を決める。

 

―タンッ、ダッ!

 

「えぇ!?」

 

まずは横の壁を蹴り勢いをつけて、正面の壁を蹴りあがり、勢いを増して体をひねり最後に天井を蹴り最大限に加速。

そして、曲がり角で速度を落としたフランの頭に軽く触る。

これで2人目ゲットだ。

 

「うー……負けたぁ」

「それはレミリアの持ちネタだからやめてあげなさい」

 

フランBも待機場所へと戻って行く。

2人をスムーズに捕まえたように見えるが、残り時間は15分。

止まってる暇などなく、走りながら気配を探る。

と、ここで壁を蹴り、反動を利用して後ろを振り向き手を伸ばす。

そこには、驚きの表情を浮かべ固まるフランCがいた。

 

「バレバレだぞ、フランC」

「わわっ!?」

 

フランBを追いかける俺の後ろをこっそり付いてきていたのは気が付いていた。

なので、気づいていないフリをして不意をついた。

 

「むぅ、バレないと思ったのに」

「フラン、少しは真面目に逃げような?」

「はーい!」

 

フランにとっては遊びとは言え俺にとっては仕事。少しは真面目に鬼ごっこをしてほしいものだ。

鬼ごっこって時点で真面目というのもどうかと思うけどさ。

 

「さて、残るは本体か」

 

これまで捕まえたフランたちはいずれも分身体だ。

 

「てか、分身体を囮にして本体はどこかへ隠れたか」

 

これじゃ鬼ごっこと言うかかくれんぼだな。

ま、フランの特訓の成果は視ただけですぐに分かったけどな。

執事の仕事としては、こっちの方が合ってるか。

 

「気配もなしか」

 

動いてはいないみたいだから、どこかに隠れたのは確かだ。

紅魔館全ての部屋を調べるのは、時間的に絶対に無理。

なら、フランが考えそうな所を探した方がいい。

 

「なら、あそこかな」

 

残り時間、5分を切った。

違っていたら負け。別にそれでもかまわないけど、何もしないで負けるのは性に合わない。

 

「ここで違っていたら、負けだな」

 

俺は、とある部屋の前に来ていた。

直感でしかないけど、フランは多分ここにいる。

一応中からは部屋の主の気配しかしない。

 

――コンコン

 

「……入っていいわよ」

 

珍しく、ノックしてからの返事が返ってくるのが遅かった。

それで確信した。フランはこの部屋にいる。

 

「レミリア、入るぞー」

「……そこは普段通りで来るのね。ホント、予測できないわあなた」

 

部屋の中には呆れ顔のレミリアが椅子に座っていた。

テーブルの上には俺達の様子を見ていたと思われる水晶が置かれていた。

 

「執事口調はやめろって言ったのレミリアだろ。で、時間ないから失礼するぞ」

「あっ、ちょっと!」

 

まるで誰かがいるように少し膨らんだベッドに近づき、その下を覗き込む。

 

「見つけたぞ、フラン」

「あーぁ、見つかっちゃった」

 

ベッドの上が少し膨らんでいたが、そこにいたのは咲夜だ。

ご丁寧にフランに似た色の金髪のウィッグを付けている。

これで俺の目を誤魔化せると思ったのか。

 

「申し訳ございません。フランお嬢様。やはりユウキさんは騙せませんでした」

「あはは、仕方ないよ。お兄ちゃんだもん」

 

いやいや、咲夜とフランじゃ体型とか違いすぎて囮にならないだろ。せめてレミリアだろそこは。

と言うか、主のベッドに入るのは良いのか咲夜よ。

 

「ま、これで全員見つけたんだが……これ、鬼ごっこなのか?」

「何でもいいわよ。フランの成長が分かればね」

 

確かに。分身体はともかく、本体のフランは力も気配もうまく消せていた。

見付ける事が出来たのは、俺が探さないであろう場所に隠れると思ったから、たまたまだ。

 

「では、レミリアお嬢様、フランお嬢様。そろそろお休みの時間です。お支度を」

 

本来、吸血鬼であるレミリアとフランは、これからが活動時間だ。

だけど、最近ではすっかり人間のペースになって、夜は寝る事が多い。

 

「あら、もうこんな時間なのね。フラン、満足したでしょ?」

「うん! とても楽しかった。またやろうね、その時はお兄ちゃんが隠れてね」

「あぁ、分かったよ」

 

その時は、本気で隠れてやる。

 

「それじゃ、ユウキ。お風呂に入るから背中流してくれる?」

「あぁいいぞ」

「「「………」」」

 

あれ? 3人共微妙な顔して固まってる。

 

「ユウキ、あなた何もいう事ないの?」

「いう事? あぁ! 吸血鬼が風呂に入っていいのか?」

 

確か流水がダメなんじゃなかったっけ。

 

「違うわよ! 流水を渡れないだけで飛べばいいだけだし。それに、風呂やシャワーダメなら致命的でしょう! じゃなくって!」

「レミリアお嬢様、落ち着いてください。ユウキさん、ワザと言ってるだけですわ」

 

あ、咲夜にはバレてたか。

 

「ワザ、と? ふ、ふーん。そんなの分かってたわよ。私も乗ってあげたのよ。ノリツッコミよ」

「お姉様、それノリツッコミじゃない」

 

さーって、これ以上ここにいると変な事になりそうだから、次の仕事に行きますか。

次は、門番の仕事だったな。

 

 

続く

 




こぁ、フランパート完了。
これで残りのパートは美鈴とレミリアだけですね。

日常編いつまでやろうか考え中。
書きたいネタはあるから今までよりも長くなりそう。

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