幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
ユウキが紅魔館へ泊まり込んでラブコメする話です(笑)


第146話 「執事体験(前編)」

今日明日と俺は紅魔館に泊まり込みだ。

と言っても、いつものように遊びに来たわけじゃない。

この前の異変での一件で色々心配をかけたようなので、その借りを返す為にやってきた。

そして、どう借りを返すかと言えば、紅魔館の執事になってレミリア達の世話をする事になった。

それはいいのだが……

 

「お待たせしました、レミリアお嬢様。今日と明日、誠心誠意お世話をさせていただきます」

「……似合いすぎてて逆に気持ち悪いから、髪形も戻して口調も普段通りにして」

 

解せない。

今着てる執事服はレミリアが今日のためにわざわざアリスに頼んで作ってもらったというのに。

髪型だって咲夜に執事らしいようにワックスでオールバックにしてもらったというに。

似合ってないならわかるけど、似合いすぎてて気持ち悪いって……

ちなみにこの格好を見たこぁは鼻血を出して倒れてパチュリーが看病している。

ホントに彼女悪魔と思えないよな。

 

「えぇーお兄ちゃん、せっかく似合っててかっこよかったのに勿体ないよ! 美鈴もそう思うでしょ?」

「そうですよ、普段よりもクールで上品な感じが素敵で……「惚れなおした?」……はい、惚れ直し、って何を言わせるんですかフランお嬢様! 咲夜さん、顔怖い顔怖いです!」

 

何やってんだあいつら。

 

「ま、普段通りでいいって言うならこっちも気が楽だけどな。で、執事と言っても何をすればいいんだ? 咲夜がやってるように掃除や洗濯、レミリアのボケにツッコミ入れたりすればいいのか?」

「そうね。基本的には咲夜のお手伝……って待ちなさい。私のボケにツッコミってそんな事咲夜はしてないから! そもそも私がボケるわけないでしょうが!」

「お嬢様。それがすでにボケです。そして、これがツッコミよ。わかってるじゃない、ユウキさん」

「わかってなーーい! あんたが一番わかってないわよ、咲夜!」

 

おうおう、早くも主従漫才を繰り広げるとは。

でも、咲夜がいれば俺がツッコミ入れる必要ない気もする。

 

「もう、何やってるのお姉様。せっかくお兄ちゃんが執事やってくれるっていうのに、そんな普段やってる下らない仕事を押し付けちゃダメでしょ」

「いやいや、ボケてないから仕事じゃないから! というか、今ボケてるの確実にあなた達よね? 私がツッコミ入れてるわよね!?」

「じゃあ、まずは昼食の仕込み、手伝ってもらおうかしら。掃除は午後でいいわ」

「主を無視して仕事に行こうとするなぁ!」

 

何か吠えているレミリアをほっといて、美鈴は門へ、フランはパチュリーの所へと、俺達はそれぞれの仕事場へと向かう。

これが普段の紅魔館の日常風景だから慣れっこだ。

 

 

厨房で料理に使う野菜の皮むきをしていると、魚を捌きながら咲夜がほほ笑んだ。

 

「こうしてここで一緒に調理していると、あの頃を思い出すわね」

 

あの頃とは俺が怪我をして紅魔館の世話になった時の事だろう。

そういえば、あの時もこうやって咲夜の手伝いしたっけ。

 

「思い出すって、まだ数か月ほどしかたってないだろ」

 

あの時はまだ冬だったが、今ではもう夏になっている。

 

「まだ数か月でも、私達にとってはもう数か月なのよ。だって、あの時の出来事が私達を変えたのだから」

「変えた、ねぇ。俺は以前の咲夜達を知らないからなんとも言えないけどな」

 

ここの妖精達はレミリア達が前より明るくなったとはよく言ってるけど、俺からすれば前から明るい。

ただ、レミリアとフランは互いに不器用だっただけだ。

 

「あなたなら、きっとそういうと思ったわ。さて、それじゃあ料理はこのまま任せるわね」

「あぁ、分かった。っておい。俺は手伝いで咲夜がメインでやるんじゃなかったのか?」

「せっかく執事をするのだもの。料理もやってもらわなくちゃ。それに、レミリアお嬢様をはじめ、紅魔館全員があなたの手料理を食べたがっているのよ。大丈夫、今回は私が手伝いをするから」

 

今日作る料理は最初に咲夜から聞いていたし、その料理なら俺でも作れるから問題ないが。

なんだかはめられた気分。

 

 

「本日の昼食は全て私が丹精込めて作り上げました。どうぞ心行くまでご堪能下さいませ」

「……あなた、気色悪いからやめなさいって言ったのに、わざとでしょ」

「何のことでしょうか、レミリアお嬢様?」

 

別に咲夜に嵌められたから八つ当たりしたわけじゃないぞ?

 

「へぇ、執事服結構様になってるじゃない。小悪魔が倒れたわけね」

 

俺の執事姿を初めて見たパチュリーは、興味津々で俺を観察してくる。

若干顔が赤いような気がするが、風邪でも引いたのかな?

 

「わーい! お兄ちゃんの手料理だ!」

「相変わらず美味しいですね。咲夜さんの手料理とはまた違った味わいがあります」

「なら私と彼の料理、どちらが好きかしら?」

「もちろんユウキさんの方がす……いやいや、その手には乗りませんよ、咲夜さん」

 

美鈴と咲夜は何の話をしているか知らないけど、聞かない方がよさそうだな。

 

「それで。ユウキは午後はどう回る予定なの?」

「午後は、掃除と洗濯を終えてから図書館へ行くよ」

「そう。それじゃそれまでにこぁを回復させないとね」

 

パチュリーは嬉しそうに微笑みながら去って行った。

フランと美鈴は、その後ろ姿を見ながらニヤニヤしている。

 

「パチェったら張り切ってるわねぇ。もっとゆっくり昼食を楽しめばいいのに」

「お嬢様は遅すぎます。もうお嬢様以外は昼食はお済みになられましたよ?」

「え? うそっ!? あれいつの間に!?」

 

レミリアは俺の料理を食べるフランを嬉しそうにじっと見ていたから食べるのが遅れた。

 

「もうお姉様。お兄ちゃんのせっかく手料理、残したら勿体ないでしょ。私が食べてあげるね」

「えっ? ちょ、フラン?」

「では、デザートは私が……」

「待ちなさい! ユウキ(の料理)は私のものよ。あなた達には渡さないわ……あっ」

「「「………」」」

 

面白いくらいにフランと咲夜と美鈴が同じ表情を浮かべてレミリアを睨んでる。

 

「ご、ごごごごかいしないでよね! ご馳走様! ちょっとシェスタしてくるわ!」

 

3人の視線に耐えられなくなったレミリアは、目にもとまらぬ速さで食堂から飛び去って行った。

そんなに慌てていくと、途中で窓からの日光にぶつかるぞー

 

「ギャー!? 日光、あつっ! あっついぃー!」

 

ほら言わんこっちゃない。

 

「あの程度ならすぐ回復するだろうから心配しなくていいよ、お兄ちゃん」

「さて、それじゃ午後のお勤めを始めますか」

「ユウキさん。まずは食器を片付けましょうか」

 

つくづくここの主の扱いが悪い気がする。

 

 

午後の仕事。

まずは、紅魔館の掃除からだ。

 

「私は床をやるから窓をお願いね。普段は私は能力使ってやっているのだけど、ユウキさんなら問題ないでしょ?」

「あぁ、じゃさっそく使わせてもらうぜ」

 

幻想支配で咲夜を視る。

咲夜の能力は何度も使った事があるので、使用時間も結構長くなっている。

時間を止めて、空を飛びつつ窓を拭いてく。

こんな数多くの窓を一枚一枚磨いていったら何日かかるか分からないな。

ホント、咲夜の能力は日常生活にも便利だ。

 

「よぉ、こんな所で何をしてるんだ?」

 

中の窓は吹き終えたので今度は外の窓掃除を始めると、魔理沙に声をかけられた。

どうやら門番の美鈴はピチュンしたようだな。

あとで様子を見に行くか。

 

「見ての通り、窓掃除だ」

「なんだ。今日は紅魔館でバイトか? だったら私の仕事手伝ってくれたら分け前弾むぞ」

「バイトでもない。ただの手伝い。そういう魔理沙こそ、こんな所で何してるんだ? パチュリーならフランの訓練中だ。それとも訓練相手になりにきたのか?」

「冗談言うなよ。前ならともかく、今のフランの相手はコリゴリだぜ」

 

最近のフランは、魔力コントロールが上達して弾幕ごっこも格段にうまくなった。

たまにレミリアが負けるくらいだからな。

 

「そうか。なら一体何の用だ?」

 

何となく魔理沙が何しに紅魔館へ来たかは予想できるな。

 

「いやぁ~ちょっと図書館から本を借りようと思っただけだぜ」

「ふーん。それはちょうど良かった。俺さ、今日明日と紅魔館の執事をやっているんだけど。パチュリーから一つ頼まれているんだよ」

「そ、それは非常に興味深いが、あいにく私は用事を思いだしたから……」

 

察したようで、逃げようとする魔理沙の肩をガシっと掴む。

 

「は、離してくれないかユウキ? 私はこれから帰る所なんだぜ?」

「まぁ、そう言うなよ。俺の仕事をさせてくれよ。パチュリーからさ、泥棒が入りそうになったら退治してくれって頼まれてるんだよ。その泥棒は白黒の魔法使いで箒に乗って飛んでくるっていう話なんだよ」

「それって、もしかして私の事か? 偶然だよなー? 箒に乗った白黒の魔法使いなんて私の他に沢山いるもんだぜ?」

「いるわけないだろ!」

 

――ピチューン

 

 

こうして色々な意味で掃除を終えて、俺は次の仕事場である図書館へ向かった。

図書館の掃除はこぁがやっているので、ここで仕事は何度もやっている魔導書の整理だ。

 

「さっきのアレ見てたわよ。久々にスカっとしたわ。ありがとう」

「気にするな。仕事をしただけだ。で、こぁは?」

 

図書館にはパチュリーがいるだけでこぁの姿が見えない。

そう聞くと、パチュリーが盛大に大きなため息をついた。

 

「こぁならあなたが来た途端に鼻からを血を吹き出して貧血になったわ」

「またかよ。なんだ? 俺のどこか変か? せっかく髪型元に戻したのに」

 

オールバックも新鮮だったんだけどな。

 

「多分、そのせいよ。オールバックで執事服のあなたも新鮮だったけど、普段の髪型で執事服というのにもこぁには刺激が強すぎたみたいね」

「………夕食にレバニラとか沢山作るか」

「レミィが心底嫌がるわよ、それ」

 

2人して大きくため息をつく。

しょうがないので1人で魔導書整理を始めた。

パチュリーも手伝うと言ったが、この程度なら1人で十分だ。

 

「その、へ、変な本とか怪しい本とかあったらすぐ私に言いなさいよ? 絶対に開けちゃだめよ!?」

「分かってるよ。いつかみたく日記とかポエム本とか見たりしないよ」

「っ~! あの時の事は忘れなさい!」

 

こぁの悪戯で魔導書とパチュリーの日記や恥ずかしい本の表紙が替えられる事が何度もあった。

その度にパチュリーの黒歴史が色々暴かれて悶絶するわけだが、見ている分には面白いんだよな。

でも、あの時こぁが悪戯した本は全て回収して、もう何も残ってはいないはず。

それでも、また新しくこぁがすり替えた本があってもおかしくはない。

 

「ん? これは、当たりかな」

 

そう思っていたら早速それらしき本を見つけた。

ちょっと古めかしい表紙にしては、内部は新しそうで、表紙と本の中身の匂いが微妙に違う。

 

「パチュリー、これなんか怪しいから開けてみてくれないか?」

「あら、またこぁの悪戯かしら……っ~~!??」

 

俺から本を受け取り中を開いた途端、パチュリーが顔を真っ赤に声にならない悲鳴をあげた。

 

「どうした、パチュリー? 呪いでもかかっていたのか?」

「な、ななななななんでもない、なんでもないわ! それよりも、あなた! こ、ここの本まさか見てないわよね、見てないって言いなさい! でないと呪うわよ!」

 

ここまで動揺するパチュリーも珍しいな。

よほどの事が書かれた本だったようだ。

 

「落ち着けって。俺は何も見ちゃいないよ。表紙と中身に違和感あったから持ってきただけだ」

「そ、そう……それなら、いいわ。ゴホッゴホッ!」

 

安心したように近くのソファーに座り込んだ途端、激しくむせ返した。

これは持病の発作がでたのか?

一度、永琳に看てもらった時に薬をもらって落ち着いてきたはずだったが。

 

「大丈夫か、パチュリー!? 今水持ってくる」

「だいじょ、エホッ、ケホッ……大丈夫よ。ちょっと興奮しすぎた、わ」

 

大丈夫と言いながらもなおも咳き込むパチュリーが持っていた本から、一枚はらりと何かが落ちた。

 

「なんだこれ?」

「えっ? あっ、ひ、拾っちゃダメ!」

 

パチュリーが慌てて落ちた紙を拾おうとしたが、うまくつかめず風圧で紙がぺろりと空中で表を向いて地面に落ち、思わず目が向いてしまった。

その紙切れは写真で、そこに写し出されていたのは……

 

「み、見ないでぇ~!」

「……ごめん」

 

パチュリーの寝顔だった。

 

「っ!? っ~~!!」

 

―ポカポカ

 

顔どころか首元まで真っ赤にしたパチュリーにポカポカ叩かれた。

痛くはないが、その衝撃で今度は本自体が床に落ちて、中に貼られていたであろう写真がばらまかれた。

そこにいつもの寝巻のような服とは違い、可愛らしいパジャマに身を包んだパチュリーの様々な寝顔や寝姿が写されていた。

中には、パジャマがはだけて、きわどい部分が見えそうな写真もあった。

すぐに俺は目をそむけたが、何枚かが目に写ってしまった。

 

「はっ、ハハハハ……キュゥ」

「パチュリー!?」

 

あられもない姿を俺に見られたショックからか、パチュリーは白目を向いて倒れてしまった。

 

しばらくして目を覚ましたパチュリーは即座に写真と本を燃やした。

そして、部屋で寝込んでいるこぁの所へ行き、ありったけのスペカをぶち込んで部屋ごとこぁが吹き飛んだ。

あの部屋の掃除は俺がするんだろうなーと思いながら宙を舞うこぁを見上げていた。

 

 

続く




レミリアの威厳がなくなっていく……
後編で巻き返しなるか!?

恐らく無理でしょう(ォイ

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