幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
今年度最後の更新です!


第143話 「天狗と河童と鬼」

今日は、文、妹紅、慧音の3人に永遠亭の一件で世話になったので、遅れてのお礼だ。

人里の居酒屋は満員だったので、みすちーの屋台で飲む事にした。

まず礼を言おうとしたら、それより先に文が酒瓶を一気飲みして叫びだした。

 

「ここ数日ほんっとにもう大変だったのよ!」

「お、おう。それはアレか? 早苗の事か?」

「そうよ! というか、なんで知ってるの!? まさか既にお知り合い? 仲良くなっちゃった!? もうフラグ立てちゃった!?」

「落ち着けって文。素になってるわよ」

「あやややっ、こ、これは失礼。最初から飛ばし過ぎましたね」

 

妹紅に言われて文は、慌てて言葉遣いを戻し、落ち着くためにみすちーが差し出した水を飲んだ。

と言っても、文の素は何度も聞いてるから今更って感じしかしないけど。

 

「早苗とは、外の世界から幻想入りしたと言う東風谷早苗の事だな? 先日、人里で何やら勧誘めいたものをしていてユウキ君はその時に知り合った。そう魔理沙から聞いたよ」

「それって、ユウキ先生と同じ所から来たって事?」

 

鰻を焼きながら俺達の会話を聞いていたみすちーが興味ありげに聞いてきた。

それに対して3人共何とも言えない表情を浮かべている。

 

「いんや、似てるけど違うよ」

「なんだ。ユウキ先生が外の世界でどんな生活してたか、前からちょっと気になってたのに」

「なら本人に直接聞けよ。ここにいるんだし」

「ん~こういうのは本人より、周りの人に聞くのが一番かと思って」

 

なんだよそりゃ。

 

「はいはーい、そんな話より私の話聞いてくださいよー! あ、ミスちゃん、お酒とツマミ追加ねー♪」

「分かりましたよーってミスちゃん!?」

 

わざとらしく文が話をすり替えてきたが、俺の話だよなこれ? ま、いっか。

 

「で、要は、妖怪の山にいきなり神社がドーンと現れて天狗たちが大慌てで、文はずっと忙しかったって話だろ?」

「天狗だけじゃありませんよ。河童とか山姥とか妖怪の山には色々な種族がいて、それぞれが独自の社会築いているんです」

「最も、滅多に山から出ない種族ばかりだ。私も話で聞く程度しか知らない妖怪も多い」

「それに妖怪の山って、あなたが思い浮かぶような外の世界の山とよりも大きくて、すごく広いのよ。だから、迷子になって危険だし、あの山には踏み入らない事ね」

 

妹紅がそういうと、文と慧音はウンウンと頷いた。

 

「いや、別に用事なかったら行くつもりはないぞ。山菜とかはあの山まで行かなくても森で沢山手に入るし」

「迷いの竹林には2度も入り込んだのに、よく言えるわね」

「妹紅の言う通りだ。フランドールに誘われたからと言って、紅魔館にも行ってしまうのだからな」

「はたまた冥界にまで行っちゃいましたし。警戒心があるようでない。と言いますか、好奇心で動いているならまだいいのに、そうではないのだから、余計タチ悪いです」

 

なんでそこまで言わなきゃならんのだ。

まぁ、事実だから言い返せないけどさ。

 

 

「にゃはははっ、なんだかおもしろい話してるね。私達も混ぜてよ」

「「「っ!?」」」

 

と、いきなり声がした方へ向くと、いつの間にか現れたのか、萃香が文の隣に座っていた。

慧音と妹紅は驚いた顔をしているけど、文は顎が外れそうなくらい口を開けて声にならない声をあげている。

相変わらず萃香には大袈裟な反応だな。

 

「そんなに驚かなくても私は何もしないよー?」

「い、いや、そういう意味ではなく、今の妖怪の山はとーってもデリケートな状態でして、その……」

「あぁ、そっちね。鬼はもう山から手を引いてるんだから今更茶々入れたりしないって。好きにしちゃいなよ。ね、にとりー?」

 

萃香が横に目を向ける。そこにはぐったりとした顔をして、目が死んでいるにとりの姿があった。

 

「にとりー!?」

「大方、お前が河童たちの所で飲んで、酔い潰したって所だな」

「流石、察しがいいね~♪ にとりはまだ飲めるって言うからもう1件付き合ってもらうと思ってね」

 

いつにも増して萃香が酔いまくってると思ったら、既ににとり達と飲みまくってたのか。

 

「にとり、自分を犠牲にして仲間を救ったんだな」

「いや、慧音。あれはどう見ても逃げ遅れただけでしょ」

 

俺も妹紅の意見に賛成だ。

 

「んで、山の統制とかには興味ないけど、新しく来た神達にはちょっと興味があるんだよね。ユウキからみて彼女達どうさ?」

 

そういう萃香の目はギラリと光っていた。

全く、どこがちょっと、なんだか。興味ありまくりじゃないか。

 

「あのー? 興味があるからって挨拶には行かないでくださいよ?」

「えー挨拶にも行ったらダメなの?」

「あなた方の挨拶ってちょっかい出しに行くって事じゃないですか!」

 

と、ここでにとりがフラフラと起き上がってきた。

でも、目はまだ死んでるな。

 

「さっきもずーっと言ってたんだよぉ。外の神様がなんぼのもんじゃー、かちこみだーって……私達でずーっと抑えてたんだから」

「あやややっ、お疲れ様だね、にとり」

 

何となくにとり達の苦労は分かったが、苦労をかけた本人の前でそれ言うかな。

 

「にゃははっ、それにしてもここに戻ってきて正解だったね。ユウキと言い、宇宙人やら神様やら面白い事ばっかりだもん」

「なんか遠回しに俺が原因みたいに言ってないか?」

「言ってない言ってない。言うとしたらもっとはっきりと言ってるよ」

 

ま、そりゃそうだな。

 

「あれ? 難しい顔をして、どうしたの慧音? 何か考え事?」

「いや、何でもない。それより、私もユウキ君から聞きたいな、東風谷早苗とはどんな娘に見えたのかな?」

 

俺から見た早苗の印象? なんで慧音がそんな事気にするかな。

 

「私もです。記者としても個人的にも興味あります」

「文は記者なんだから直接取材に行けばいいでしょ。ちなみに私も興味がある」

「ついでだから私も」

 

妹紅、にとり、お前もかい。

 

「確かに早苗と話はしたけど、そんなに長い時間してたわけじゃないし。神様にだって会ってないぞ?」

「それは私もですよ。早苗さんとは話をしましたが、神様は今回復中だからって事でお話聞けませんでしたし」

 

幻想郷に来るのに神様はほとんどの力使い切ったと言ってたな。

で、信仰が増えれば回復するから早苗はこれから布教活動するんだったな。

 

「早苗の印象か。霊夢を前にして博麗神社を寂れてるって2回も、それも悪気も悪意もなく素直な感想として言っちゃう天然さはすごいと思ったな」

「霊夢相手にそんな事を言っちゃうのは確かにすごいけど。それを天然で片付けちゃうユウキ先生もすごいと思うな。はい、これお酒と鰻の追加です」

 

呆れた顔をしながら、みすちーは萃香とにとりの前に酒と料理を置いていく。

萃香はここの上客だからか、鬼相手なのに全く動揺してないな。

 

「ありがとね♪ ふーん、怖いもの知らずな娘って所かな?」

「魔理沙も言ってたよ。霊夢にあそこまで言えるなんて肝っ玉が据わってるってね」

 

早苗が怖いもの知らず? 

 

「いや、違うな。その逆だ。彼女は怖がりだ。だからこそ、失いたくないから必死なだけなんだよ。神様って言う家族をな」

 

ん? あれ? 空気がおかしいんだが?

 

「君は、本当に他人にはとても勘が鋭いよね」

「その反動か、自分には超鈍感だけどね」

「どういう意味だそりゃ。それよりもずっと気になってたんだけど、結局天狗や河童達は、早苗達を受け入れたのか?」

 

幻想郷は全てを受け入れる。

紫はしばらく静観するようだが、彼女達が現れたのは妖怪の山。

しかも、神様付きの神社と一緒にだ。

俺の時とはまた違った特殊な事例だろう。

 

「そうですね。早苗さんは私達の所に来て色々話をされて、大天狗様や他の皆さんもとりあえずは様子を見ようという事になりました」

「こっちも同じだね。と言っても、河童はそういうの気にしないからね。水場を汚されたり独占されなければ問題ないよ。そもそも私達河童の社会なんて、外の世界風に言えば工場みたいなものさ」

 

天狗は会社、河童は工場、言いえて妙だな。

そういえば、にとりには何度か工房に来ないかと誘われたけどその度に霊夢に行くなって釘刺されてたな。

あ、慧音と妹紅がジーっと俺を睨んでる。

 

「言いたい事があるならハッキリ言えって」

「「さっき言った」」

「妖怪の山には行かないっての」

 

なんでこう俺が妖怪の山に行きたがってるって勘違いするかな。

文とにとりは俺が山へ行かないと言っても別に残念には思ってなさそう。

と言うか、安心してる?

 

「個人的には遊びに来てほしいですけどね。天狗の間ではあなたの事危険視してるのも多いですし。大天狗様は面白半分で来てもらいたがっていますけど」

「大天狗様が面白半分でユウキ君に会いたがってるのは絶対文のせいだよね」

「うぐっ、そ、それは~その~……何といいますか~」

 

口笛吹いてごまかしてるけど、文は一体何をやらかしたんだ?

 

「またあることない事、というよりない事ない事新聞に書いたのか?」

「むっ、そんな事ありません。私はない事は書きません! 誇張したりするだけです」

「自信満々に誇って言える事かそれ!?」

 

新聞記者らしいと言えばらしいか。

 

「あーなるほど。大体わかったわ。そりゃあんたのせいよね、文」

「自業自得、と言えるだろうな。ユウキ君にとっても、だが」

 

妹紅と慧音は、文が何をしたのか分かった風だけど俺にはサッパリだ。

てか俺も自業自得ってなんでだよ。

 

「そろそろこういう事にも鋭くなった方がいいと思うんだけどね、ユウキ先生?」

「ん~そこまでも鋭くなったらもうユウキじゃなくなってるよ」

 

みすちーと萃香は何やら2人で酷い事言ってる気がする。

なんか俺以外の周り全員が理解しちゃってる事、最近多くなってる気がするな。

 

「あ、新聞で思い出しました。近いうちにユウキさんにお仕事お願いする事になりますので、その時はよろしくお願いしますね」

「珍しいな、文が俺に仕事? それなら金はいらないぞ。あの一件で一番世話になったの文だしな」

「いえいえ、これは正式な依頼ですし。こんな事で借りを返されるよりも、体で返して欲しいなー……いやいやいや、嘘ですからそこで睨まないでくださいな、妹紅さん!?」

「あんたの場合、本気でしょうが」

「くっくっくっくっ、私の前で堂々と嘘をつくのかい? いい度胸だね、文?」

「あややややーー!?」

「ふぅ、やっぱり自業自得だな」

 

なんでか知らないけど怒ってる妹紅と、9割9分便乗して怒ってるだけの萃香に追いかけられる文。

それを肴にして酒を飲む慧音とにとり。

平和だなぁ。

 

さて、文が俺に依頼したい仕事ってなんだろうな?

 

 

続く

 




最近月1更新になってる……けど、エタったりは絶対にしません。

次回は久々にチルノや大ちゃん達の話になります。

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