幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
イタリア編です!
さくっと終わらせ……たいなぁ


第133話 「イタリアへ」

9月25日

 

今日は大覇星祭最終日。

と言っても、大覇星祭自体初日しか参加してない俺にとってはどうでもいい事だった。

俺はここ数日ダウンしていた。

木原幻生を殺す為に、エツァリの魔術で操祈の姿になり、更に操祈の能力を重ね掛けして見た目も中身も操祈になった。

おかげで幻生に近づき、完全に殺す事が出来た。

だが、魔術と能力の重ね掛けした反動がやってきた。

2日ほどは何ともなかったが、一昨日から頭痛や眩暈など調子が最悪に悪くなった。

念のため冥土返しに見てもらったが特に異常はなく、ただの過労と言われた。

なので、大人しく休養していたわけだ。

 

「珍しく彼が入院しないと思ったら君がダウンとはね。入院するかい?」

 

と、冥土返しに言われたけど、病院は落ち着かないのでこうやって医療設備が整ったアジトで休んでいる。

今日は頭痛も引いて食欲も出てきたので、久々に外に出るかと体を起こしたら、携帯にメールが届いているのに気付いた。

 

「大覇星祭委員会からのお知らせ? 何でそんな所からくるんだ?」

 

チェーンメールかと思い読まずに捨てると、また同じ送り主からメールが来た。

何度も削除しても送られてくるので、仕方なく開くことにした。

チェーンメールやウイルスとかだったら送り主を特定して半殺しにすればいいだけだ。

でも正直言って、チェーンメールやウイルスメールの方がまだ可愛げがあってマシだ。

メールにはこう書かれていた。

 

【おめでとうございます! あなたは、大覇星祭参加者全員を対象とした特別懸賞に見事大当たりいたしました! つきましては、景品である北イタリア五泊七日旅行のチケットや、その他必要書類などをご自宅へ郵送させていただきましたのでご確認ください】

 

「…………」

 

無言でメール本文を何度も読み直し、思案する事2秒。

すぐにとある馬鹿へ電話をかけた。

 

『はろはろー☆ 一体どうしたのかにゃ~?』

 

とある馬鹿、木原尼視の無駄にハイテンションな声が聞こえてきた。

 

「気色悪い声を今すぐ止めて、あのメールの説明をしろ」

『気色悪いとは失礼だな。あのメールとは何のことだ?』

「しらばっくれるな。イタリア旅行が当たったとかふざけたメールの事だ! お前が仕組んだ事くらいお見通しだ!」

 

俺にあんなメールが来るわけがない。

とすれば、尼視以外に考えられなかった。

 

『ふざけてなどいないぞ? 念願の幻生を殺したお祝いと労いを兼ねて、学園都市の下らない仕事の事なんか忘れて海外で羽を伸ばせるようにという私の親心なのだが?』

「マジで鳥肌立ってきたからやめろ……」

 

親心なんて、鳥肌どころか吐き気までしてきた。

どんな猛毒よりも効くなこりゃ。

というか何を考えていやがるんだこのババアは。

 

『あ、そうそう。海外は仕事以外ではほとんど初めてと言っていいほどだったな。ちょうどいい、上条当麻が同じく北イタリア旅行に当選したそうだ。向こうは来場者数ナンバーズで見事に当選だ』

「おい」

『いやぁ~よかったなぁ。向こうはペアだがこっちはシングル。いかにお前でも慣れない海外旅行に1人旅は寂しいだろう?』

「おいまてや」

『上条当麻は当然インデックスを連れて行くだろうし。さすがに幻想殺しと魔導図書館を2人だけで海外へ行かせるのは危険だからなぁ』

「おいまて聞けこら」

『うんうん。護衛としてもお前は最適だからな。同級生で、しかも、何度も死線をともに潜り抜けてきた戦友。上条当麻も安心だろう。これぞwin―winだ』

「ころすぞ」

『なんだ。一体何が不満なんだ?』

 

コイツは……まぁ、素直に慰安旅行なんて企画するとはこれっぽっちも思ってなかったが、こう来たか。

 

「素直に最初から当麻とインデックスの護衛だっていえばいいだろう! すぐバレる仕込みなんかしてんじゃねぇ!」

『簡単に仕事だって言うのは、つまらないだろう?』

 

こういう手段で知らせれば俺が能天気に喜ぶと思ってんのか、そこまでボケたか。

 

「……で、いつ出発だ?」

『なんだ。まだ送った書類は見てないのか。出発は明日だ』

「早いな!?』

『あー言われてなくても分かっていると思うが、武器や装備は持っていくなよ? 発信機程度にしておけ』

「はいはい。何かあったら現地調達すればいいんだろ」

 

俺、当麻、インデックスの3人で海外か。

しかもイタリアって、ローマ正教の総本山がある所じゃねぇか。

まぁ、いくのは北部だからローマとは逆方向か。

でも、つい先日ローマ正教のシスターとやりあったばっかりなのに、まさか報復してこいってか?

なら俺だけ行かせるはずだよな。

 

『じゃお土産を楽しみにしているぞ』

「ローマ教皇の生首でも送りつけてやる」

 

はぁ、とりあえず、当麻に連絡するか。

せっかく、インデックスと2人きりでの旅行を楽しみにしてたのに!

とか文句は……言わないな。というかそういう気はあいつにはまったくないな、うん。

 

実際、当麻は俺が着いてくると知り物凄く喜んでいた。

曰く、インデックスと2人きりじゃ不安だからと言っていたが、俺に何を期待しているんだか。

まぁ、何かあった時のスケープゴート役を期待されている気がしないでもないが。

それから海外旅行の準備をした、が。

学園都市外部へ長期で、しかも、海外に行くというのが仕事でもあったことがないため。

着替えやらを持っていくスーツケースがない事に気づいた。

武器や爆弾を入れている大きいバッグがあるが、形状と色的に多分目立つ。

テロリストが武器を詰め込んでいるように無駄にでかくて黒いバッグ。

これを持っていったら、向こうの警官に不審者扱いされかねないな。

仕方ない。買うか。

多分、使うのはこれっきりだろうけど。

 

 

そして、翌日の26日。

北イタリア旅行はツアー旅行のようなもので、27日に現地集合となっていた。

なので、日本からは前日の出発になる。

当麻とインデックスとは、学園都市にある無駄に広い国際空港を待ち合わせ場所にした。

で、いざ着いてみると、当麻とインデックスが何やら騒いでいた。

 

「忘れ物はないよな。財布にパスポート、必要書類に着替え、あとそれから……」

「もう、とうまは家を出てからずっとそうだけど、何をそんな心配性になってるの?」

「そう、だよな。うん、たまにはこんな幸せが舞い込んできたっていいよな!」

「そうそう。その意気その意気!」

 

あまりのネガティヴさに思わずホロリときそうだったが、当麻の心配は当たってる。

この旅行が無事に済むとは、俺も全く思ってない。

それは心配とかそんな次元の話じゃなく、確信だ。

 

「おーい、当麻、インデックス。こっちだ」

「あ、ゆうき! やっほー」

「やぁ、ゆうきくん、おはよう! いい天気だね。まさに海外旅行日和じゃないか!」

 

うわぁ、当麻の奴。さっきまで心配と不安が顔中に付きまくってたのに、今はもうすっかりハイテンションというか、変なテンションになってる。

正直、うざいくらいだ。

 

「うん。当麻は一度頭を再起動しようか?」

「うわっ、じょ、冗談だからその振り上げたこぶしを下げてくれー!」

「ったく、で、お前は海外旅行初心者丸出しの恰好なのはいいとして、インデックスはその恰好で行く気か?」

「この恰好??」

 

当麻はいつもよりちょっと恰好をつけた服装だが、財布にチェーンを付けていたりとか、予備の財布を別ポケットに入れていたりとか、いかにもスリに狙ってくださいと言っているような恰好だ。

俺がスリなら本人に気づかれる前に身ぐるみ全部剥ぎ取れそう。

インデックスは、相変わらず安全ピンだらけの修道服だが、これはダメだな。

海外旅行初体験の俺でもわかる。

 

「私はシスターだもん。どこに行くんでも修道服なのは当たり前なんだよ」

「いや、それじゃなくて安全ピンつけたままゲート抜けるのか?」

「ゲート?」

 

インデックスは何を言いたいかさっぱり分からないという顔をしている。

当麻が言うにはパスポートもよくわかってなかったみたいだし。

空港の出入国とか、そこら辺のシステムを理解してないのかな。

そういえばインデックスって海外からどうやって日本の学園都市にやってきたんだろ?

まさか密入国とかじゃないよな。

 

「あ、安全ピン!」

 

当麻は俺が何を言いたいのか分かったようで、しまったという顔をして頭を抱えた。

安全ピンなんて出国ゲートで引っ掛かるに決まっている。

いや、そもそも金属探知機は国内線でもあるんだからこの恰好じゃ飛行機はどれも乗れない。

 

「どうする!? 今から街へ行って服を買う余裕なんてないぞ!」

「落ち着け。ショッピングエリアが向こうにあるからすぐに行ってインデックスの服を買ってくればいいだろ」

「お、おぉ~! その手があったか! 走るぞインデックス!」

「えっ? なになにお洋服買ってくれるの!?」

「飛行機の時間あるから早めに終わらせろよー!」

「わかった―!」

 

当麻のスーツケースを預かり、俺はロビーで待機となった。

こうなる予感がしたから待ち合わせ時間早めにしといてよかった。

 

 

 

そんなこんなでインデックスの服も買えて、何事もなくゲートをパスして日本を出国できた。

機内では飛行機慣れしてないインデックスがそわそわしたり、食事はまだかと当麻に詰め寄ったりと、まぁ退屈はしなかった。

で、問題はイタリアについてからの事だった。

 

「……誰も来ない」

 

そう。現地集合で合流するはずの案内ガイドや他のツアー客たちが、集合場所にいつまでたっても現れなかった。

やっぱりこのイタリア旅行、ただで終わる気がしない。

 

 

続く

 




短いですけど、今回はここまで!
インデックスってホントどうやって日本の、それも学園都市に入ってこれたんだろ。

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