幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!過去編です!

このままだとアニメに追いつきそうだなぁ。
超電磁砲か禁書目録の3期マダー??


過去編Ⅳ
第125話 「大覇星祭」


9月19日

 

大覇星祭、それは9月19日~25日の間で学園都市中の学校が競いあう大運動会の事だ。

そして、普段は出入りを厳しく制限する学園都市の数少ない一般公開期間でもある。

その為、セキュリティがどうしても普段より甘くなり、敵対組織や内部の不穏分子が蠢く期間でもある。

で、俺も去年までは警備員の手が回らない外部からの侵入者や、スキルアウト、その他反乱分子の始末をしてきた。

それは今年も例外ではなく、俺はとある超重大案件の下準備をようやく終えたところだった。

 

「よしっ、色々保険もかけたし。後はあいつが動くのを待つだけ」

 

今回はいつも以上に念入りに下調べと準備をしてきた。

アイツを殺すためだけに人の手も借りた。

使える手段は何でも使わないと、決して殺せない相手だ。

 

「そういえば、そろそろ開会式か。確か軍覇と操祈が選手宣誓だったな」

 

アジトのモニターを付けると、ちょうど2人が選手宣誓を行っている所だった。

 

『すべて根性で乗り切る事を誓うぜっ!!』

 

――ドカーン

 

大参事である。

 

「……仲介人の仕事、引き受けてやればよかったかな」

 

今年の大覇星祭選手宣誓を超能力者にお願いするという、超無茶で無謀な計画があった。

で、問題児だらけのレベル5へ選手宣誓をお願いする役に最初は俺が回ってきた。

が、俺にはそんな事している暇はなかったので、一蹴した。

その事に今俺は少し後悔している。

少しは手伝ってやればよかったかな、と。

 

「うん、気持ちを切り替え切り替え。でも、どうするかな。一応最初の競技ぐらいは出るか」

 

俺が一応所属しているクラスの競技には、最初でないつもりだった。

大覇星祭にも行われる競技にも興味はなかったし。

当麻や制理達でどうにかしてもらおうと思っていた。

けど、思えば俺は2学期になってから一度も学校に行っていない。

仕事や実験で色々多忙で、学校をずっと休んでいた。

特例処置があるから退学や留年になる事はない。

とはいえ、こういうクラス行事には少しは顔を出しておくか。

多分、いや、絶対に制理が苦労してそうだからな。

逆に祭り好きなあいつらの事だから、クラス一丸となって燃えているかもしれないか。

 

 

と、思った俺が甘かった。

 

「……なんだこれ」

 

学校へ行き、教室へ荷物を置きに行こうとして、ふと生徒の待機エリアに目がいった。

そこはまさに死屍累々と言った状況だった。

元春や青ピも含めてクラスメートのほとんどが地面にダランと突っ伏している。

パッと見、日射病で倒れているかのようだ。

そんな中、割とまともな状況なのは、当麻と制理と秋沙くらいだ

いや、なぜか制理はずぶ濡れだ。

可愛い下着が丸見えなので、一先ず視線を外そう。

ま、十中八九当麻が何かしたせいか。

 

「これ、どんな状況だ?」

 

制理に背を向ける形で地面に寝転がっている青ピ達を見下ろす。

 

「ん? あらユウキじゃない。見ての通りよ。上条当麻のだらけ具合が皆に伝染したのよ」

「ちょっ! 人を病原菌扱いしないでくれませんか!?」

 

当麻の何かが伝染するならだらけ具合よりも不幸具合だろうな。

もしくはフラグ形成能力?

 

「当麻がウイルスかどうかは置いといて、ほれ、風邪ひくぞ」

「ウ、ウイルス……」

 

制理の方へタオルを数枚投げる。

 

「あ、ありがとう」

「なにーー!? カミやんではなく、よりにもよってユウキにフラグだとー!?」

「嘘やぁ、これは何かの間違いやーー!」

 

背後から何か呆気にとられた声と、なんか失礼な声がした。

 

「だから! うちの施設や設備に不備があるのは認めるのです! でもそれは生徒たちには何の非もないのです!」

 

それとは別に、体育館の裏側から何やら言い争うような声が聞こえてきた。

 

「ん? なんだ?」

「この声、小萌先生だな」

 

当麻と2人で角からこっそりと覗き込む。

そこには、なぜかバニーガールな小萌先生と、もう1人メガネをかけた初老の男性がいた。

 

「生徒の質が低いから統括理事会から追加資金が降りないのでしょう?」

 

なんだアイツ。見るからにプライドだけ高くて、他人を見下すのが趣味という感じがする。

確か、これから俺達がやる棒倒しの対戦校の先生じゃなかったかな。

 

「ふっ、失敗作を抱え込むと色々苦労しますね」

 

明らかに小萌先生ごと俺達を見下し蔑むようなセリフを吐くなアイツ。

 

「せ、生徒さん達には失敗も成功もないのです! あるのはそれぞれの個性だけなのですよ!」

 

それに対して小萌先生は、臆せずに堂々と言い返した。

流石は小萌先生。どこまでも生徒思いで生徒を信じている。

 

「なかなか夢のあるご意見ですなぁ。これから始まる棒倒し、お宅の落ちこぼれ達を完膚なきまでに撃破して差し上げましょう」

 

そう言い残して、高らかに笑いながらあのクズは去って行った。

後に残ったのは、肩を震わす小萌先生。

 

「違いますよね。みんなは落ちこぼれなんかじゃ。ありませんよね……」

 

こっちから小萌先生の表情は見えなかったが、その目に光る涙はハッキリと見えた。

 

――ブチッ!

 

上等だ。

 

「おい、みんな、もう一度だけ聞く。本当にやる気がねぇのか」

「もしそうなら、俺がやる気を叩きこんでやるが、どうだ?」

 

振り向いた先にいた皆の表情は、さっきまでとはまるで別人だった。

 

 

俺は急いでPDAから対戦校の情報を得て、敵が取るべき行動パターンを予測して作戦を立てた。

荷物を置いてくる前でよかったぜ。

悪いな、こちとら低能力者や無能力者の集まりなんでな。

使える情報はなんでも使わせてもらう。

 

『第一種目棒倒し。各校の入場です』

 

スピーカーからのアナウンスが俺たちの士気をさらに上げた。

やる気は十分、作戦も立てた。

後は、敵を殲滅するのみだ。

 

「みんな、ユウキの立てた作戦は覚えたわね? さぁ、行くわよ!」

「「「おう!」」」

 

棒倒し。互いの陣地に立てられた長さ7メートルの棒を倒すだけだ。

いたってシンプル。だが、ここは能力者がいる学園都市。

一応セキュリティエリアはあるが、炎や氷などがバンバン飛び交う危険な競技だ。

通常、棒倒しは相手の棒を倒す側、自分の棒を守る側、2つのグループに分かれる。

けど、今回俺が立てた作戦には、自分の棒を守るグループは存在しない。

あるのは、攻撃と援護のみ、超攻撃型布陣だ。

敵はエリート集団。対する俺たちを低レベルの落ちこぼれ集団と思っている。

だから、その慢心を利用させてもらう。

先手必勝、ただがむしゃらに突撃するのみ。

 

「「「うおおおおおぉぉ~!!」」」

 

競技開始の合図とともに、当麻達攻撃グループが一斉に駆け出していく。

俺はワンテンポ遅れて走り出す。

後方では、制理を中心とした援護グループがその時を待っている。

 

「っ!?」

 

敵陣地では早くも能力者達が動き始めていた。

ただならぬ気迫と共に突撃する当麻達に少しは戸惑ったようだが、玉砕覚悟の悪あがきと思ったのだろう。

冷静に迎撃準備を進めてくる。

 

「やっぱ、その手で来るか」

 

敵の炎系と爆発系能力者が作った炎を圧力系の能力者が加工して透明な球体で包み込み、爆裂弾を生み出している。

いくら全力で突撃しているとはいえ、この距離なら相手の陣地に届く前に食らう可能性が高い。

けど、そうはさせない。

 

「悪いな。能力停止!」

 

圧力系の能力者を幻想支配で視て、すぐに能力停止を発動する。

 

「なっ!? の、能力が使えなくなった!?」

 

すると、爆発を抑え込んでいた膜が消えて……

 

――ボン!

 

本来俺達に向けて放つはずだった爆裂弾は、味方陣地の上で爆発した。

その衝撃で敵の陣形が崩れた。

 

「制理!」

「OK! みんな、今よ!」

 

援護組の念動能力者達が一斉に、その力を敵陣手前の地面に向けて発動させた。

すると、地面がすくい上がり、土煙が上がった。

低レベルの能力でも、複数で放てば威力は倍増する。

敵がやった事をやりかえしただけだ。

 

「追い打ち!」

 

こっちには風力系の能力者がいないので、敵陣から能力を借りて突風を巻き起こす。

 

「けほっ、げほっ!?」

「砂が口に、えほっ!?」

 

土煙は敵陣をすっぽりと覆いつくした。

慌てて敵の風力能力者が風を吹かせようとする。

 

「借りっぱなしで悪いけど、能力停止だ」

「えいっ! ……えっ、能力が使えない!? なんで!? ぶはっ!?」

 

すぐに能力停止に切り替えて、相手が能力を使えないようにする。

下準備は終わった。後は一気に……

 

「制圧だぁ!」

「「「うおおぉ~~!!」」」

 

当麻達が砂塵舞う敵陣へと突撃した。

敵は砂で視界を防がれて混乱していて、当麻達の突撃にろくに対処ができていない。

能力を使おうにも演算に集中できないでいる。

そうこうしてるうちに青ピ達が敵陣の棒へと殺到した。

しかし、敵も黙って倒されてはくれない。

すぐに数人が棒に群がり、防御へと回る。

おや、なんでか知らないが、当麻に攻撃が集中してきたぞ?

ま、あいつには幻想殺しあるからいっか。

 

「さて……俺も行くか!」

 

状況はこちらに若干有利だが、肝心の棒が倒せなければ話にならない。

俺は、軽い頭痛をこらえながら、最後の詰めをするために敵陣へと走り出した。

いくらレベル3,4の能力とはいえ、連続で能力停止を使えばこうなるのは分かっていた。

けど、この程度の痛みは慣れっこだ。

敵味方入り乱れての乱戦の中を、するりと走り抜けて棒を目指す。

 

「ちょっと、ごめんよ!」

 

棒へと近づいた時、ちょうどガタイのいい奴がこっちに背中を向けていたので、それに飛び乗り弾みをつけた。

 

「そりゃぁ!」

 

全力で飛び上がり、空中で錐もみ回転も加えたドロップキックを棒へと叩きこんだ。

相手がただの棒なので、手加減も何もせず全力での両足キックだ。

数人、棒に群がって押さえつけていたようだが、棒と一緒に吹き飛んだ。

あ、青ピもついでに吹き飛んだ……見なかったことにしよう。

 

――ピーッ!

 

そこで競技終了の合図が鳴った。

 

「はぁ、はぁ……よしっ、俺達の」

「「「勝ちだぁ!」」」

 

みんなは当麻を中心に輪になり勝鬨を上げた。

ちらりと敵の先生に目を向けると、この結果が信じられなかったようで真っ白になって白目をむいていた。

 

「エリートってもたいしたことなかったよなー」

「上条はなんで集中攻撃くらってたんだ?」

「いつもの事だけどな」

「……不幸だ」

 

当麻達はボロボロになりながらも、しっかりと歩いて行った。

その先には涙目で救急箱を持って小萌先生が待っていた。

俺は、みんなと一緒にはいかず、こっそりとその場から離れた。

勝利の余韻はあるが、それ以上に俺には気になる事があった。

 

競技が始まる直前まで一緒にいて、やる気満々だった元春が競技に参加していなかったからだ。

これは、何かよからぬ仕事でも舞い込んだに違いない。

そして、それはきっと、当麻と俺も関わる事になる、面倒で厄介な事件の始まりだろう。

 

さて、とっとと済ませて、本命に行くとするか。

 

 

続く




はい、とりあえず大覇星祭+α編です。

棒倒しはユウキが相手陣営の能力情報を裏ワザで取得して、大暴れでした。
オリアナってユウキにとっては相性が良い面と悪い面あるんですよねー

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