幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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ガウェインつえーでもエウリュアレはもっとつえー。
はい、関係ないFGOはここまで(汗)

今回から永夜抄編です。


永夜抄編
第113話 「接敵」


「おぉ、なんて動きやすいんだ。ありがとな、アリス」

「ふふっ、気に入ってもらえて嬉しいわ」

「良く似合っているな。なんか強そうだぜ」

「へぇ、なかなか様になってるわね」

 

俺は今アリスの家に来ている。

この前行った人形劇の礼としてアリスが俺の服を作ってくれて、それを受け取りにきた。

そこにはいつものように魔理沙とパチュリーもいた。

今回作った服は2人も協力しているようだ。

ちなみに、神綺はもう幻想郷にはいない。

人形劇を見た後、魔界から使いが着て半ば強制的に連れ戻されたようだ。

あの神綺にそこまで強く出れる人がいるとはすごいなと思った。

 

「で、これがあなたが向こうの世界で着ていた 【戦闘服】 ってわけね?」

「あぁ、懐かしい感覚だ」

 

パチュリーが言った戦闘服、それは俺が学園都市で仕事の時に着ていた物だ。

この服の元にしたのは、シャットアウラ達黒鴉部隊が使っているボディスーツに似た形状だが、あっちより柔軟性などに優れた素材を使っていて、防御力も機動力も上だ。

で、少し見た目を変えて、色も元は暗い色合いだったが、こっちは白や青を基本にした明るいものだ。

これなら普段着としても違和感はないはず。

 

「動きやすい素材で作ったし、魔法をかけながら作ったからちょっとやそっと弾幕じゃ傷つかないわよ」

 

アリスが言うように、柔軟性があって結構頑丈に作られているな。

以前美鈴とパチュリーが作ってくれた身代わり魔法がかかったマフラー、あれと似たような魔法を使って作ってくれたみたいだ。

 

「見た目的には普段着としても着られるし、何かあった時にも十分対処できるわ」

「戦闘服なんて、ちょっと大げさかもしれないけどな。幻想郷でもさ」

 

魔理沙が言うように、戦闘服と言うものは誰ももっていない。

危険な妖怪がたくさんいる幻想郷でも、みんな普段着で退治したりしている。

人里にいる妖怪退治屋は別だけど。

 

「でも、あなたは別。幻想支配があるとはいえ、すぐに無茶して大怪我しちゃうんだもん。これくらいの備えは必要よね」

 

アリスが睨むように言うと、パチュリーがウンウンと頷いている。

備えあれば憂いなしとは良く言うからいいけど、何か納得いかない部分があるな。

 

「うん。ありがとな、アリス。それに魔理沙とパチュリーも」

「礼はアリスだけにいいな。私とパチュリーはアリスに頼まれて少し手伝っただけだぜ」

「そうそう。今回はアリスが物凄く頑張ったんだから大事にしなさいよ」

「ちょ、ちょっと!」

 

ニヤニヤしながら魔理沙とパチュリーに言われ、アリスは顔を赤くした。

うん、照れくさいんだろうな。

 

「シャンハーイ!」

「ホウラーイ!」

「お、2人共褒めてくれてありがとな」

 

上海と蓬莱が俺の周りをパタパタしながら回っている。

何を言っているのかまでは分からないけど、この服が似合ってると言ってくれてるのは分かる。

 

 

 

アリスの家で昼食を御馳走になった後、俺は人里へと向かった。

今日は寺子屋の仕事はないけど、買い物をして帰ろうと思った。

魔理沙には、せっかくだから梨奈達に見せてこいって言われたけど、そこまでする事じゃないけどな。

森を抜けかけて、人里が見えてきた時の事だった。

 

――……っ……%、&“……

 

「ん? なんだ?」

 

微かに頭に響く声のような、ノイズのような音が聞こえてきた。

 

「あっちは、竹林か」

 

迷いの竹林へと進むと、ノイズは段々と酷くなってきた。

そして、竹林に入ると収まってしまった。

 

「何だったんだ、今の」

 

言語なのかそれともただの悲鳴なのか、それすら分からない程のノイズだったが、この竹林に向けて誰かが放ったか、あるいはこの竹林から発せられているのは間違いない

ここに入るのはてゐや妹紅からは止められているが、何か今のは気になる。

特に気になったのが、今のノイズが科学的なものに感じた事だ。

魔術師同士の念話や遠距離通信の類ではなく、念波を利用した暗号通信の類に似ていたけど、はっきりと聞こえないので結局はよく分からない。

しばらく進むと、竹林の奥に何者かの気配がした。

誰かいる。

息と気配を殺し、慎重に進む。

その人物は、ブレザーを着てウサミミを生やして俯く俺と同年代くらいの女の子だった。

ウサミミと言っても、ここで出会ったてゐ達とは違い、尖がった耳をしている。

それにあの着ているブレザー。

人里は和服中心とはいえ、洋服を着ている人も多い。

それでもあのブレザーはどこか幻想郷でも浮いているように見えた。

それ以上に気になったのが、あの子が何かに怯えているようで、真っ白な顔をして震えている。

 

「いやっ……いやだ……」

 

かと思えば、ブツブツと呟き耳を抑えて座り込んでしまった。

それを見て放っておくことが出来ず、つい声をかけた。

 

「おーい、ちょっとそこのウサミミさん?」

「っ!? だ、誰!?」

 

声をかけると、ウサミミ娘はビクッとその場を飛び抜くほどに驚いた

が、そこからの行動に今度は俺の方が驚いた。

何と、彼女は懐から拳銃を取り出して俺に向けたのだ。

拳銃自体を突き付けられるのはなれているけど、幻想郷に来て初めての事だ。

そもそも、拳銃など危ない武器は紫が回収しているはずだ。

けど、ウサミミ娘が持っているのは、型式は少し古いが、玩具などではない本物の自動拳銃だ。

しかも、彼女は表情こそ驚いているが、懐に手を伸ばし拳銃を出して向ける動作を油断も隙もなく一瞬で済ませた。

間違いなく、彼女は拳銃をかなり使いなれている。

構え方にしても、軍人のような俺のような暗殺者のような構えだ。

自然に手が腰に差したナイフへと向けられる。

彼女が何者なのかは分からない。

ただ1つだけ言えるのは、彼女は凄く強い。

アリスやパチュリーのように強大な魔力をもっているわけでもなく、妖夢や美鈴のような武術の達人でもなく、紫や神綺のように圧倒的な力をもっているわけでもない。

ただただ、彼女は強い。しかも、俺と同じタイプの強さだ。

たった数秒だけで俺はそう感じた。

命の危機や、凶悪な敵とは幻想郷でも対峙したが、それは別の懐かしい感覚だ。

 

「答えなさい。あなたは一体何者?」

 

反応を見て彼女も同じ事を思ったのか、怯えた表情はどこにもなく、真剣な表情で俺を警戒している。

 

「俺は、ユウキだ。里に向かう途中で、たまたまただ通りかかっただけだ」

 

ウソは言っていない。

 

「そう。でも、見られた以上黙って帰すわけにはいかないわね」

 

彼女は銃を向けたまま、目を瞑り開けた。

開いた瞳はルビーのように赤く輝いている。

それを見た途端、意識が飛びそうになった。

 

「なっ、なんだ?」

 

身体全体が底なし沼にハマったような感覚。

それでいて意識が乱されて、溶かされていく。

これは、精神攻撃、か?

でも、みさきちとも他の洗脳の類とも違う。

 

――このまま見た事を忘れて戻りなさい。

 

赤眼のウサミミ女の声が、心に突き刺さるように浸透して行く。

ダメだ。このままじゃ……コイツを殺さなければ。

 

「シッ!」

「っ!?」

 

腰に差したナイフを抜き、ウサミミ女の首へと振う。

間一髪、ウサミミ女は、敵は首を後ろにそらしてかわした。

 

「くっ、やはりお前は!」

 

敵は、拳銃を構え撃とうとしたが、それより早くナイフを投げる。

ナイフは銃口に突き刺さった。

 

「何っ!? ちっ!」

 

敵は、拳銃を投げ捨て大きめのナイフを取り出し両手に握った。

あれは、コンバットナイフか。

 

「やっ!」

 

敵はナイフを素早く連続で突き出してきた。

急所を狙った攻撃はなかなかに速く、1本では裁き切れなくなってきた。

わざと体勢を崩し、地面を転がりながら敵が捨てた拳銃に刺さったままのナイフを抜いた。

 

「くっ」

 

それでも敵は執拗にナイフを突き出してくる。

けど、今は俺も2本持っている。

落ちついて刃先を見定め、自分のナイフを滑らせていく。

数合渡り合って分かったが、ナイフの材質はこっちが遙かに上だ。

向こうは恐らく外の世界の一般的なコンバットナイフ。

けれども、こちらは特注のナイフだ。

しかも、俺が扱いやすい形状になっている。

そんな得物で打ち合った結果はすぐに出た。

 

――ガキンッ!

 

「ちっ、これだから外の世界のナイフは!」

 

敵のナイフが欠けた。

それを見て敵は、こちらにナイフを2本とも投げつけて、竹林へと駆け出した。

 

「……」

 

投げられたナイフの柄を掴み、敵へと投げ返す。

 

「うそっ!?」

 

それを見た敵が驚愕の声をあげ、近くの竹を盾にして防いだ。

ただ投げられた程度のナイフ、再利用する事はたやすい。

咲夜のように何本も投げつけるか、霊力や魔力を纏わせられれば無理だが。

 

「これで!」

 

密集した竹の裏から敵は、なんと短機関銃・ウージーを手にしていた。

流石にアレはまずい。

近くの岩影に転がり込む。

 

――バババッ!

 

連続して発射された弾丸は、隠れた岩を容赦なく削り取って行く。

ウージーの威力は低いが、それでも人を殺すには十分であり、何より連射力が厄介だ。

武器はナイフ2本のみ、しかも敵の能力が分からない以上、幻想支配で視るのは最後の手段にした方がいい。

自分と敵の状況を確認して、使えそうな物の配置を瞬時に計算した。

敵が再装填する瞬間を狙い、俺は岩影から地面を這うように駆け出した。

 

「そこっ!」

 

竹林を蹴り上がり、宙を奔る。

ここにある竹は俺が知る普通の竹よりも太く、どれも弾力性が高い。

これなら足場にして空中を走るように動ける。

 

「落ちなさい!」

 

敵は、空中を駆ける俺に驚いたが、それも一瞬ですぐに俺に向けてウージーを乱射した。

やはりこの敵、戦闘にかけては冷静で判断力や適応力も高い。

ますます俺と同じタイプだ。

 

「っ!? 弾切れ!」

 

とうとう予備の弾倉も使いきったようで、敵はウージーを投げ捨てた。

その隙に俺は三角飛びの要領で竹を蹴り跳び、敵の背後へと回り込み首筋へナイフを振った。

 

「なめるな!」

 

だが、敵は振り向きざまにナイフを持った手を掴み、関節技に持ち込もうとした。

即座に技を外して、背中を蹴った反動で距離を取った。

 

「ぐっ、この程度」

 

と、見せかけて背後の竹に乗り、その反動を利用して再度強襲を駆ける。

だが、敵はそれを呼んでいたようで、いつから持っていたのか新しいナイフを構え俺の攻撃を受け止めた。

 

「今度はさっきのようにはいかない!」

 

このナイフは形状こそ、サバイバルナイフだがさっきのとは材質が全く違う。

これはさっきのように欠けさせるのは難しい。

 

「しっ!」

 

再度右手のナイフを振ったが、敵は左逆手にもったナイフで受け止めると右拳で殴ってきた。

咄嗟に左手のナイフを離し、受け止める。

ほぼ密接した状況で打った拳なのに、かなり重たい。

 

「くっ、ぐぐっ」

 

このまま握りつぶそうかと思ったが、なかなかに頑丈な拳だ。

そして、そのままがっちりと絡みあう状態になった。

敵は俺のナイフを自分のナイフで受け止め、俺は敵の拳を左手で握っている。

 

「やっ、ぐふっ!?」

 

俺が敵の腹を蹴り飛ばすのと、敵が俺を蹴り飛ばしたのはほぼ同時だった。

 

「けほっ、けほっ」

「は、はっ……」

 

互いにお腹に突き刺さった蹴りはダメージとなったようで、咳き込んでしまった。

 

――バンッ!

 

まだ咳き込みつつも、敵が懐から銃を取り出し俺に撃ってきた。

咄嗟にナイフで弾き飛ばした。

普通のナイフだったら危なかっただろう。

コイツ、やはり軍人か暗殺者の類だな。

 

「はっ、はっ……やあぁ!」

 

――バンバンバンッ!

 

敵は銃を撃ちながらこちらへ突撃してきた。

俺もナイフで弾きながら敵へと向かっていく。

敵の射撃は、俺と同じくらいの正確さだったが、それが逆に狙いを分かりやすくさせて何とか防ぐ事が出来る。

最も、一発防ぐ度に衝撃で手が痺れてきた。

それでもナイフを弾き飛ばされたと同時に、俺は撃たれ殺されてしまう。

ようやく、と言ってもほんの1、2秒の出来事だったが、こちらの間合いへと詰め寄る事が出来た。

 

「このっ!」

 

この距離は近すぎて拳銃は使えない。

それは敵も分かっているので、左手に握ったナイフを振って来た。

紙一重で攻撃をかわし、しゃがみこむ様にして敵の足を薙ぎ払うように蹴った。

だが、その攻撃は敵が足をあげた事で空を切った。

更に敵は後方に飛び跳ねながら、銃を撃ってきた。

しゃがんだ体制だったので、動きがワンテンポ遅れた。

銃弾はかろうじてナイフで防いだが、弾き飛ばされてしまった。

 

「っ!」

 

どうにか近くの密集した竹に身を隠し、近くに落ちたナイフを運よく拾えた。

しかし、敵は走って遠くの竹に身を隠した。

再び距離が開いてしまい不利になった。

竹を飛び跳ねて接近するしかないが、敵はそれを読んでいるだろう。

こちらも拳銃か飛び道具が欲しい。

そう言えば、敵は先程から妙に色々な武器を手にできている。

あのブレザーのふくらみから見て、最初に持っていた拳銃とナイフ以外は隠し持っていないと思った。

しかし、あのウージーや材質の違うナイフ、更にもう一丁別の拳銃も今敵は手にしている。

恐らく、竹かどこかに隠しているのだろう。

そう思い、自分が隠れた竹の根元を見てみると、違和感があった。

その竹には割れ目のような細い線が走っていた。

これは自然に出来た割れ目とは違う、明らかに誰かが加工した。

敵が再度銃撃をしながらこちらに走ってきている。

割れ目にナイフを刺し込み強引にこじ開けた。

すると、中にはリボルバー拳銃が入っていた。

ここら辺の竹はかなり幹が太いためこんな大きい拳銃も隠せたのだろう。

右手で拳銃を取り出し、敵に向けて撃つ

 

――ドガンッ!

 

「きゃっ!?」

 

敵は俺が銃を持っている事に驚き、一瞬立ち止まってナイフで防ごうとした。

だが、これはただの拳銃ではない。

マグナム銃、コルトパイソンだ。

その威力は高く、防ごうとしたナイフは大きく弾き飛ばされ、思わず敵は片手を抑えながら近くの岩影に隠れた。

そういう俺も久々にマグナム銃なんぞ片手で撃ったので、流石に少し痺れた。

左手にマグナムを装備し直す。

右手の痺れはすぐに収まったので、ナイフを握る。

敵も、呼吸を整えているのか隠れた岩から出てこない。

先手を取ろうと飛びだそうとしたのその時だった。

 

――カランカランッ、カッ!

 

足元に手榴弾が投げ込まれ、眩い光を放った。

 

 

 

続く




はい、永夜抄始まったばかりなのにもう戦闘です。
しかも、ガチでの殺し合い。
フランの時と似ていますが、あっちはフラン側が遊びでした。
ですが、今回はユウキ側もウサミミ娘(笑)側も本気で相手を殺す気です。
さて、どういう決着になるでしょうか。

ちなみにアリスが作った服ですが劇場版とある魔術の禁書目録で
シャットアウラ率いる黒鴉部隊の男性が着ていたスーツを白と青で作ったような感じです。

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