映姫デート後編です!
初コメント付き評価を頂きました!
まどくんさん。誤字訂正共々ありがとうございます!
はぁ……私とした事が、なんとうかつな事を口走ってしまったのでしょう。
彼の何かに中てられたのか、人里を案内して欲しいだなんて。
まるでこれでは、デ、デートを誘ったようなものです!
「ん? どうかしたのか映姫?」
「いえ、なんでもありません……」
そう、彼です彼!
私がデートに誘ったと言うのに動揺もせず、あっさりと快諾を……ってデートじゃありません!!
「い、いきなり頭を抱えてどうしたんだ? ひょっとして食い過ぎたか?」
「何でそう言う話になるんですか!? あ、いえ、いいです。なんでもありません」
彼は悪意や敵意には敏感なのに、女性のには超鈍感ですね。
こういうのも分かっていたはずなのに、いざ実際に会ってみると調子を狂わされます。
これは霊夢とも似通っていますが、側にいるだけで魂の波長に変化を与えますね。
「そっか、じゃあ行こうか。調子が悪いようなら早めに言えよ。医者の所に連れていくから」
「お気遣いありがとうございます。ですが、本当に大丈夫です」
本当に私を閻魔と分かっているのでしょうか。
思えば、彼は相手が誰であれ対等に接しています。
でも、まさか閻魔である私にまで同じ接し方をするとは思いませんでした。
彼の事は前々から危険だとは思っていましたけど、実際に会ってみると別の意味で危険だと分かりましたね。
「よぉ、あんちゃん! 今日はまた別なべっぴんさん連れてご機嫌だなぁ。デートかい?」
「そっちこそ真っ昼間から酔っ払っているんじゃないの? デートじゃなくて、人里を案内してるんだよ」
八百屋の前を通った所で、店の主人に声をかけられました。
ユウキさんはここ以外でもよく声をかけられています。
外来人だと言うのに、人里にとけこんでいる証拠ですね。
デートを否定されるのは、何か面白くはありませんが事実なので仕方ないです。
「同じようなものだろ。で、今日は巫女でもメイドでも魔女っ子でも妖精でも天狗でも狐様でも梨奈ちゃんでもなさそうだけど? 何十人目の彼女さんよ?」
「だーから! 誤解まねくような事言わないでっての! ってかなんで梨奈だけ名前出すかな!? それに間違われそうな知り合いなんてそんな何十人もいな……いや、いるか」
ふむ、自分が女性とばかり歩いていると言う自覚はあるのですね。
モテていると言う自覚まであるのかどうかは不明ですけど。
「ご心配なく、あなたの女癖の悪さは知っていますから」
「あ、そうですか……じゃ、せめてそんな冷たい目で言わないでくれないか?」
「ふふっ、冗談です」
「んで、お嬢ちゃんは人里慣れてないって言ってたけど、どこの人かな? 見た所高貴な服装してるけど?」
高貴な服装、言われてみてみれば私は普段着ている閻魔の服装で来ましたが、目立ち過ぎでしょうか?
同僚に閻魔の事忘れてちゃんと休めと言われましたが、いざとなるとこれ以外の服と言うのはないのですよね。
「人里には来る事はあっても、ゆっくり見て回る事がありませんでしたから、彼に案内をお願いしたのです。この服は仕事着ですが、職業はヒミツです」
正直に閻魔と言って畏まられても、せっかくの休日が満喫出来ない気がしますしね。
「綺麗な女には秘密が多いって事で。そういうわけだから今日は買い物じゃないんでね。また今度くるよ」
……何この男は自然にこういう事を言いますかね。
ま、まぁ、言われて嫌な思いはしませんけど。
「あいよ。じゃ、これは選別だ」
そう言って八百屋の店主はさくらんぼが入った小さな籠を手渡してくれました。
「さくらんぼか、いいの?」
「あぁ、それならデートしながら食べられるだろ? 楽しんできなよ」
「デートじゃないっての。ま、ありがとね」
「ありがとうございました」
店主に礼を言って、2人でさくらんぼを食べながら散策再開です。
「程良い甘さと酸っぱさがいいですね。今年は異変の影響で農作物が心配でしたが、どうにかなりそうですね」
さくらんぼを堪能していると、ユウキさんが私の服を見て何か考え込んでいました。
「? どうかしましたか?」
「映姫、それ仕事着だったよな?」
「はい。私はこれで裁判をしていますが、何か?」
「うーん、やっぱり目立つな。それに仕事の事忘れて休日を堪能するには、その服は邪魔だ。よしっ、あそこ行こう」
「えっ? ちょっと、どこへ行くのですか?」
彼に連れられてやってきたのは、呉服屋。
中には着物の他に洋服や色とりどりの反物が飾られている。
見かけ以上に高級店と言う感じですね。
店に入ると、中から店主らしき女性がやってきました。
いかにもと言う感じで、この店の雰囲気にも合っている女性ですね。
「ユウキ君、いらっしゃい。今日はデート? いつもとは違った女の子連れてるのね」
「だーかーらー、なんでこうここら辺の人達は俺ら見て決まったセリフ言うかな。台本でもあるの? まぁ、いいや。今日は彼女に合う服を探しに来たんだよ」
「あら、女性に服をプレゼントだなんて、ユウキ君も女心が分かってきたのかしら?」
「そういうんじゃないって…「ちょ、ちょっと待って下さい!」……どうした?」
このままだとトントン拍子で話が進みそうだったので、強引に間に割り込みました。
「どうしたじゃありません! ここで何をする気ですか? まさか私に服を?」
「あぁ、そのつもりだけど? ここは最初和服専門だったけど、最近は咲夜やアリスから洋服の事を教えてもらって、そっちにも手を出し始めたんだよ。で、色々なサイズの服があるから作る手間がかからない」
「へぇ、そうだったのですか……じゃないですよ! なぜあなたが私に服を買う話になってるんですか!?」
私が再度問うと、彼は首を傾げ頭に?を浮かべていました。
まさに何を言っているのか分からないと言った顔ですが、それはこっちのほうです。
「ユウキ君、あなただけじゃなくて霊夢ちゃんや咲夜ちゃん達にも服を買ってあげたりしてるのよ。だから、気にする事ないわよ」
「ほほう。つまり、女性を物で釣っているのですか?」
まぁ、女性に対して打算的な考えを彼が出来るとは思いませんけど。
何となくイラっときました。
「そんなわけないだろ。霊夢達には世話になってるし、それにあいつら巫女服とかいつも同じ服装ばっかりだからさ、女の子なんだし違う服もあった方がいいだろ」
巫女にメイドなのだからそれらしい服装ばかりなのだから、それは仕方ないのでは? と思いましたが、どうも他の妖精や吸血鬼達にも同じ事をしているようですね。
「自分の服は買わないのですか?」
「それがね。霊夢ちゃん達も同じ事言っていたけれど、自分は服を沢山あるからいいって言うのよ。そればかりか彼ったら自分の事でお金使う事滅多にないのよ」
「それは言いすぎだよ。蕎麦屋とか団子屋には良く行くし、さっきもあそこでいろいろ食べたし……ってなんでそんなに俺の事詳しいの!?」
それは私も思いました。ここの人達、彼の事詳しすぎですね。
「私は、服の事で相談にのってもらっている咲夜ちゃんやアリスちゃんに良く聞くからよ。他の所でも霊夢ちゃんや妹紅ちゃんとかが話しているらしいわよ」
「あ、あいつら……」
「まぁ、いいじゃない。愚痴と言うより君の事を心配して言っているのよ。悪口は言ってないんだし、それだけユウキ君が慕われてるって事よ。と言うわけで、あなたも観念して、こっちに来なさいな」
「あっ、えっと?」
何がと言うわけなのか分かりませんが、彼女に手を引かれて店の奥へと連れられてしまいました。
全く、彼といると自分が閻魔だと言う事を忘れさせてくれますね、色々な意味で。
私が閻魔だと言う事を知ったら、この里の人達はどんな反応するのでしょうね。
結局、あれよあれよと言う間に色々な服を試着して、淡い水色のカーディガンと紺色のロングスカートを買ってもらいました。
私のサイズに合うのがあって、少し寸法直しをしただけで着る事が出来たのは幸いですね。
今まで来ていた閻魔服は包んでもらい、彼に持ってもらいました。
流されてここまで来ましたが、何から何まで彼にまかせっきりですね。
「うん、やっぱり良く似合ってる」
「それはどうも……ありがとうございます。ですが、先程よりも目立っていませんか? 道行く人の視線がこちらに向いているのですが」
通りかかる人や店先で商売している人など、様々な人が私に目を向けています。
これでは前の服の方が良かったですね。
「あぁ、映姫が綺麗だからだろ。それはどうしようもない」
「っ! あ、あなたはあれほど注意したのにそんな事を軽々しく……そう言えば、あなたは何も買わないのですか? あなたは自分のお金を自分に使う事はないのですか?」
さっきの服屋で店主が言っていた事が気になった私は、聞いてみる事にしました。
「別に買うモノないしな。食料品やら生活に必要なのは買ってるし、映姫と初めて会った蕎麦屋で餡蜜食ったり、結構自分の為に使っているだろ?」
「金銭を浪費しないのは良い事ですが、自分の事に使う事も大切ですよ」
「あまり使い道があまりないからな。世話になった霊夢達に使うのは良い事だろ」
「なら、尚更私がここまで初対面のあなたにしてもらう理由がありません」
「ん~俺の金だし。別にどう使おうが俺の勝手だ。それに、そこまで高い買い物でもなかったしな」
そう言うと、彼はどこか遠い眼差しになりました。
一体何を考えているのでしょうか。
「元いた世界でも結構稼いだけど、それは人を殺したり非道な実験とか黒い事ばかりして得た汚い金だ。だから、自分の為に使った。けど、こっちじゃ寺子屋で教えたり色々手伝いして得た綺麗な金だ。なら、他人の為に使った方がいい。そう思ったんだよ」
彼がヒドイ罪人なのは分かっています。
それを否定せず、かと言って贖罪に生きているわけでもない。
閻魔からすれば間違いなく黒の部類に入るのですが、そうとは断定したくないと言う気持ちがあります。
「ま、死んだらそこら辺も全部含めて映姫に裁いてもらうとして、せっかくの休みだ。もっと色々回ろうぜ」
「全く、あなたと言う人は。分かりました。ならとことん付き合ってもらいます」
それから、色々な店を周りました。
雑貨屋で髪飾りを買ってもらったり、本屋で私が彼に本に書かれている幻想郷の事を教えたりもしました。
そして、気が付けばもう陽が沈みかけていました。
「ユウキさん、今日は本当にありがとうございました。おかげで休日と言うモノを初めて味わえた気がします」
「いいっていって。また休みになったら仕事の事忘れてノンビリしろよ」
「ふふっ、その時はまた付き合ってもらいましょうか」
ここまでされて、何も返さずに帰るわけには行きませんね。
今日一日彼と接して、どういう人間かもよく分かりました。
色々知ってはいたつもりでも、実際に会って話さないと理解出来ない。
そして、理解した結果、私が思っているよりは警戒すべき人間ではなかった。
いえ、女性関係については聞いていた以上でしたし、警戒をすべき事なのでしょうけども!
こほん、しかし、これならば私が以前から抱いていた警戒心について、話しても問題ないでしょうね。
この事は、霊夢も八雲紫も気付いてはいない事でしょうから。
「では、今日のお礼。と言うには語弊がありますが、一つお話しておくことがあります。私は今まであなたに対して非常に警戒心を持っていました」
「あー、だろうな」
「蕎麦屋でもいいましたが、あなたと出会ったのは全くの偶然でした。ですが、これを良い機会だと思いあなたの事をもっと知ろうとも思いました」
「なるほど。それでデートに誘ったと」
こ、この人は本当に話のペースを乱すのが得意ですね!
「だ、だからそれは違います! そもそもあなただってデートじゃないと……こほん、それはともかくとして。そこまでしてあなたを警戒した理由をお話しします」
「ん? 幻想支配の事じゃないのか?」
「違います。それは八雲紫に任せてあります。私が警戒したのは、あなた自身の事です。正確に言えば、あなたの魂」
「俺の、魂?」
言われて彼は自分の胸元に目をやりました。
いきなり魂と言われてもピンとくる人間はいませんからね。
「えぇ、あなたの魂ですが……改竄されています。これはあり得ない事です」
「改竄ってどういう意味だ? 突然別人のように性格が変わったり、善人が悪人になったりって意味か?」
「それは変質と言えますね。人間には誰にでもある事です。ですが、改竄と言いましたが、具体的にどうとは分かりません。あなたの魂を見て、そう表現するほかなかった。と言う事です」
「良く分からないが、どういう事だ?」
「恐らく、あなたが幻想郷にやってきた事と関係がある……のかもしれません」
これ以上の話はすべきではありませんね。
確証の全くない私の想像でしかありません。
「俺が、幻想郷に来た理由……」
彼は考え込んでしまいましたが、その表情には困惑の色が少しあってもそれ以上の動揺はありません。
以前、伊吹萃香が指摘した事ですが、やはり彼は自分自身に対しての感覚が壊れていますね。
「私が言えるのはここまでです。これをどう捉えるかはあなた次第です。混乱させてしまいましたね。申し訳ありません」
「正直、何の事か分からないけど、教えてくれてありがとな」
彼は全く気にした様子もなく、気さくに手を振って私を見送ってくれました。
まだ伝えていない部分がありますが、ここから先はあなた自身が答えを出すしかないのですよ、ユウキさん。
彼岸へと戻った私を、小町が迎えてくれました。
「おや、御帰りなさい四季様、休暇はどうでしたか?」
「ただいま、小町。えぇ、思った以上に堪能できました。彼のおかげでしょうね」
私がそう言うと小町は心底驚いた顔をしました。
そんな変な事を言ったつもりはないのですが。
「し、四季様がそこまで素直になるなんて、一体何があったんですか!?」
「どう言う意味ですかそれは、私だって楽しい事は楽しいと言いますよ? それに、小町も見ていたのでしょう? なら隠す必要はないじゃないですか」
「あちゃー気付いていましたか、ですが蕎麦屋の所だけですよ? それ以降は何があったかなんて全く知りませんよ」
素直に白状しましたか、まぁ、私に隠し事は無駄ですしね。
それに、彼も気付いていたようですし。
あの時食べながらですが一瞬だけ、ちらりと目が小町の隠れている方へ向いていましたしね。
「さぁ、仕事に戻りますよ。あなたもいつも通りに怠けていてはいけませんよ?」
「分かっていますよ、四季様。今年はアレの年ですからね。その為に四季様には完全休暇を取ってもらったんですし」
「その事に関してはあなた達には心から感謝していますよ。おかげで彼の事が良く分かりましたから」
「……今気付きましたけど、その包みには一体何が入っているのですか?」
「こ、これは……あなたには関係ありません!」
今の私はいつも着ている閻魔服です。
彼に買ってもらった服や髪飾りは包みの中にしまってあります。
これは、休日用。彼とまた会った時用ですからね。
そう簡単には小町や他の閻魔達には見せられません。
ふふっ、その時が楽しみですね。
「あれれ~? 四季様、顔赤いですが、どうしたんですか?」
「黙りなさい!」
「きゃん!」
続く
……デレが早いです映姫様。
キャラの暴走……って事に責任転嫁しましょうか(ォイ)
次回は久々に紅魔館組の話です!