「当たり前だよ。私だって、こんな子知らないもん。」
クロメも同じようにぼそりと囁く。
「どっちにしても、この子の親を捜さないと。」
「そうだね。仲直りは後回し、喧嘩はいったん休戦。」
「今、仲直りしちゃえばいいんじゃない?」
「ダメ!私はちゃんと自分の気持ちを伝えないと仲直りできない!」
のび太とクロメが言い争う中、ツクモはキョトンと首を傾げる。
「パパ、ママ、なんで喧嘩してるの?」
「えっ、あ、・・・・・・・別に喧嘩してる訳じゃないよ?」
クロメがツクモに向かってにぱにぱと手を振ってみせる。そして再びのび太に視線を向ける。
「だから、一時休戦。」
「分かったよ。この子の親が見つかったら、ゆっくり話を聞くよ。」
「うん、それでいいよ。」
クロメが笑みを浮かべる。そしてそんな彼女を見たのび太も自然と笑顔になった。なんだか、これで仲直りしているように見えなくもないが、なかなかそうもいかないのが人生なのだ。
「さて、ツクモちゃん。これから僕とクロメで、君のお母さんかお父さんを捜すことにした。」
「だから、私たちと一緒に行こう。」
クロメがツクモに手を差し伸べる。ツクモはその手を握り、
「うん、ママ。」
と答えた。
のび太はツクモの右手を、クロメは左手をつないで街を歩く。どういう経緯でツクモがうちまで来たのかわからないけれど、とりあえずにぎやかな商店街あたりを流していれば、なにかわかるだろう。もしくは、
「交番に届けた方がいいんじゃないかな?」
「え、交番?」
この子の親を見つけたり、この子を知ってる人を歩いて探すより、その方が効率的な気がする。
「ツクモを一人にするの?」
ツクモがのび太とクロメの顔を交互に見る。
「え、そんなことしないよ?大丈夫。」
「そ、そうそう。ツクモのお父さんかお母さんが見つかるまで一緒にいるって。」
「ありがとう、パパ、ママ。」
ツクモがにこーと笑う。
「ところで、そのパパ、ママってやめない?別に僕達ツクモのパパとママじゃないんだからさ。」
「だって、パパとママにそっくりなんだもん。」
「そっくりねえ・・・・・」
「だから、いいでしょ?」
まあ、構わないと言えば、構わないけど・・・・。のび太は、ちらりとクロメの方を見た。
「いいよ。ツクモのお母さんが見つかるまで、私がツクモのママになってあげる。」
「ありがとう、ママ。で、パパは・・・・?」
ツクモがじーっとのび太のことを見つめる。
「いいよ、いいよ。僕のこともパパって呼んでかまわないよ。」
「ところで、ツクモ。お父さんとお母さん、どんな人だったか教えて。」
「いいよ。パパとママはね、すっごい中がいいの。ツクモはね、パパとママのことが大好きで、パパもママもね、ツクモのことが大好きなの。」
ツクモは両手で大きな輪を作り、そのくらい好きなのだと言った。
「で、どんな二人なの?」
「ママはお菓子が大好きなの。パパはのんびり屋さん!」
ツクモは元気な声でそう言った。
「そっくりだね。」
「僕は別に似てないと思うけど。クロメはそっくりだけど。」
というのは嘘。なんでそんなところまで似てるかなぁ。のび太は、バツが悪そうに、髪の毛をわしゃわしゃとかき回した。
「この前ね、3人で動物園に言った時のお話。」
のび太とクロメは、ツクモと手を繋ぎ、商店街を歩く。
「ツクモね、象さんが大好き。象さんね、すっごく大きくて、鼻が長くて、面白いの。でね、パパと一緒に、あの背中に乗ってみたいねってお話ししたの。お昼は、ママの作ったお弁当。ママ、お料理作るのがすっごく上手なの。ハンバーグはすっごくおいしいの。」
「いいパパとママじゃない。」
なのに、こんなところへ子どもを放っぱって、何をしてるんだか。
「こっちのママもお料理上手?」
「え、うん・・・・・。結構作れる方かな。」
クロメは冷や汗をかきながら、目を泳がせる。
(嘘つき。包丁を持ったことするないくせに。)
のび太はジト目でクロメを睨む。
「えへへ。嬉しいなぁ。ツクモのママはどっちも料理が上手なんだね。」
この子の笑顔はとてもかわいい。もともと綺麗な顔立ちをしているけれど、だからって訳じゃなくて、そう、笑っている表情がかわいいのだ。きっと、毎日楽しく暮らしてるんだろうな。
のび太の結婚相手は?
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アカメ
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クロメ
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チェルシー
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シェーレ
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レオーネ