転生者のOO 作:物だよ
エイフマン教授はかなりお疲れのようで次の日の夕方まで寝ていた……まあ俺のせいなんだけど。そして教授との話が始まった。
「いろいろ聞きたいことはあるのだが説明してくれるのだろうな?」
「ええ、もちろんです」
「ではまず君の組織はなんなのだ?ガンダムと交戦したところを見るとソレスタルビーイングではないと言っていたのは本当だろう」
「それを話す前に俺のことを話さなければいけません。実をいうと私はここの世界の生まれではありません」
教授にはすべてを話すことにした。といっても俺がこの世界の知識をもって転生したといってもさすがに信じられないからそこらへんはぼかして説明することになるが。
「……それはどういうことかな?」
「言葉どうりの意味です。俺は目が覚めるとこの世界……正確にはアイルランドにいました。この艦と機体……それにこの世界の未来をの知識を持って」
「……それを私に信じろというのかね?」
到底信じられることではないだろう。俺だって目の前に異世界からきたよー、とか急に言われても何言ってんだお前としか思わない。まあ、今なら俺という実例がいるから頭ごなしに否定はしないけど。
「あなたもみたでしょう?私の機体を。あれがこの世界で作れると思っているんですか?それにこの艦も」
「……未来の知識とは?」
「それも同じです。……といっても全てを知っているわけではありません。漠然とした未来しか知りません」
転生する前に最後に見たのは結構前だった。それに加えて転生してから生きるのに忙しかった。誰がどこで死ぬかはおおよそ覚えている。しかしそういった出来事がいつどこで起こるかまでは覚えていない。
「それに……あなたを誘拐したのもあなたが死ぬとわかっていたからですよ」
「何……?」
「あなたはあのままあそこにいたらあの新型のガンダムに殺されていました。それはあなたもわかっているでしょう?」
「……」
「あなたを誘拐したときに話した内容は俺の本心です。あなたをあんな奴らに殺させるのは惜しい。だから助けたんです……まあ、できれば俺の組織に加わって欲しかったからというのもありますけど……あ、組織のことを話してませんでしたね。俺の組織は蛇の足です。まだまだ無名ですがこれからは名を挙げていこうと頑張ります。ですから私の組織に参加していただけませんか?もちろん強制はしません」
できれば一員になって欲しい。これからのことを考えると俺一人じゃどうにも手が足りない時が出てくるだろうしそれにこれから加わってもらう予定の人物にメカニックを専門的にできる人はいない。
無言のまま数分がすぎる。
「……なるほど、わしを助けて組織に加わって欲しい理由は君が言った理由のほかにわしが死ぬ存在だったからか」
「えっ?」
「蛇に足はない。過去はいたかもしれんがな。その組織名にしたのはあれだろう?君の持つ未来の知識とやらで死ぬ予定の人物で構成しようとしているからだろう?本当なら死ぬ、つまり君の知っている未来では私を助ける存在などいなかった。それなのにわしは生きておる。君は存在しないもの……そして死ぬ人物で構成される組織……蛇の足とはそういうことではないのか?」
おいおい、俺の考え全部ばれてるわ。やっぱり教授ってチートだわ。いや俺の考えが稚拙なだけか……いやそんなことはどうでもいい……別にばれてもいい。問題は参加してくれるかどうかだよ。
「そんな不安そうな顔をするでない。別に参加しないとは言っておらんだろう?」
「参加していただけるんですか?!」
良かった!正直言うと無理やり誘拐して参加しろとか拒否されると思ってた。
「わしは義理堅いのでな。助けてもらったままというのは性に合わん。あのままだとわしはあのガンダム達に殺されておったろう。それに君の機体やこの艦は私の知る技術でできておらんこともわかる。にわかに信じがたいことではないが君の言うことを信じ、君の組織に参加させてもらおう」
「ありがとうございます!」
やった!チート教授が仲間に加わってくれた!これで機体の整備とかを任せられる!
「それと頼みたいことがあるのじゃが」
「なんです?」
「君の機体を見せてもらいたい。ガンダムを見たときも思ったのだがこうも私の知らないものが出てくると研究者の性で気になってな」
なんだそんなことか。それくらいならどんどんやってもらいたい。そして持てる技術でこれから手に入る機体を魔改造していって欲しい。
「いいですよ。というかここの設備は自由に使ってもらって構いません。私は基本いないので」
「何かしておるのかね?」
「仕事です……」
「……は?君は、いやこの組織はパトロンなどがいるのではないかね?」
「私の全財産で動いています……明確に組織の一員なのは今のところ俺とあなただけです」
動くために可能な限り金は使わずこれまで働いてきた給料は貯めてきた。パトロンは一回か二回ほど動いたら誰かが俺に目をつけて動いてくれるんじゃないかなって思ってるんだけど……
「残りの予算は?」
「これだけです」
残金を教授に見せる。教授がそれを見た途端険しい目をしたあとジト目をこちらに向けてくる。
「だ、駄目でしょうか?」
「いや、君だけ動くならこれだけでも数年は持つだろう。だが私が研究するとなると話は別だ。これでは足りん」
ああ!研究費用!馬鹿みたいに金がかかる。しかしその金はない!こうなりゃあまりしたくはなかったが銀行強盗でも……
「その様子だと全然考えてなかったみたいだな……まあいい。研究資金はわしの資金でなんとかしよう」
「面目ありません……」
「だがパトロンのことは考えておいたほうがいい。何かあった時にこれではすぐに底をついてしまうぞ?」
「パトロンにはあてがないことはないです」
具体的には王留美とか。あの人確か世界が変わるのならどんなところにもそれをできる力があるところには資金
出すはず……力は示したし接触してうまく交渉すればパトロンになってくれるんじゃないかなと思っている。
「ならいいが。では私はもう一度寝らさせてもらう。まだ気分が少し優れないのでな。調べるのは明日からさせてもらうよ」
そういうと教授は奥に引っ込んでいった。このままここにいても仕方がないので俺も家に帰ることにした。
「お疲れ様でーす」
「お、久しぶりだな」
次の日、俺は会社に久しぶりに出勤した。
「そうですね、結構な間休んだからこれからはバリバリ働きますよ。新しいガンダムと謎のMSも出たらしいですね?」
「そうだよ。おかげでこっちはてんてこ舞いだ。早速で悪いがこれらの情報を元に記事にを作ってくれ」
そういうと編集長はドカッと紙の束を俺の机に置いてきた。……これ全部まとめなくちゃいけないの?
「おう、お前が休んでいる間に仕事が一気に増えたからな。今は社員を合同軍事演習とエイフマン教授が攫われた場所に派遣する予定だ。そのための準備をして貰っているから人が少ないんだ。しかしことがことだ。あまり深入りせずに適当に帰ってくるように命令するつもりだ」
「俺もそれに入ってたりします?」
今はあまり外に出たくない。いざとなったらすぐにガンダムのいる場所に駆け付けることができるようにしておきたいからだ。
「いやお前は入ってない。お前には現地で手に入れた情報を元に記事を仕上げて欲しいからな」
ならよかった。……ん?現地に派遣?
「絹江さんってその中に入っていますか?」
確か絹江さんは軍事演習の場所に行ってラグナ・ハーウェイがガンダムに関わっていると知って彼に会いに行った折にサーシェスに殺される……はず。そんなことならないようにするため、もし現地に派遣されるようならそれを止めてもらわないといけない。
「いや、あいつは入っていない。派遣に入っていないと知ったら直談判しに来たがそれでも却下した。あいつは真実をとことん追求しようとするからな。ストッパーとしてお前がいるなら大丈夫なんだが一人だと深入りしすぎる」
良かった。これで絹江さんが死ぬことはない……これからも一緒に仕事できるんだ。
「そういやお前等はどこまで進んでんだ?」
「えっ?」
「えっ、じゃねえよ。お前等付き合ってるんだろ?」
「つ、付き合ってませんよ。ただ彼女とは先輩後輩の関係で仕事仲間なだけです」
「嘘だあ。俺らの中じゃお前等もう引っ付いてると思ってるぞ。しかしじゃあなんで恋人でもないのに一緒に飯食いにいってんだよ」
「相談事とか愚痴聞いてるだけですよ。結構長く俺が絹江さんに仕事教えたり一緒にしてたからそういうことを話しやすいんじゃないですかねぇ」
まさか会社の中で俺たちが付き合っていると思われていたとは……俺自身絹江さんのことは、数年一緒に仕事をしてきた中で彼女に惹かれている。死んでほしくないと思っている。正直好きだと伝えたい。しかし……もしそれを話して絹江さんとの関係がぎくしゃくしたものになったらと思うと二の足を踏んでしまう。
「馬っ鹿、お前本当にそういった関係だけなら相談事、ましてや愚痴まで話さねえよ」
「話しやすいから話してるだけですよ、きっと」
「俺が思うに……お前から切り出してくるのを待ってんだよ」
「そうですかねぇ?あの絹江さんですよ?言いたいことはズバズバ切り込んでくる人ですよ?」
「そりゃお前、あいつだって女性だぜ?そういったことは男のほうから言ってくれることを期待してんだよ」
そうだろうか……絹江さんは指導した仲でそういったことを話しやすいから話してるだけなのではなく俺のことを好いて話してくれているんだろうか……
「まだ疑ってるようだな……じゃあ言うがあいつはお前意外とは仕事関係以外で飯食いに行ったりしてねえぞ。それに相談事ならまだしも愚痴を吐くなんてことは誰もされてない」
「それは……」
「それにお前、ガンダムが出始めた頃あいつと一緒に飯食いに行って帰り送っていっただろ。見てた奴がいるんだ。好きでもない男の前で酒飲んで送ってもらう女がいるかよ。お前もあいつのことが好きなんだろ?最初は仕事があぶなっかしくて手伝ってたようだが途中からあからさまにお前自身が進んで手伝いに行ってたぞ」
「それは……好きですが」
「だったら自分の思いをぶつけて見ろって。なに、もし降られても俺が慰めてやるよ。仕事を減らすことは無理だがな」
「編集長……」
そういわれると自信がついてくる。自分の気持ちを閉じ込めておいても相手に気持ちは伝わらない。だったら自分から伝えるしかないじゃないか。
「ありがとうございます。おかげで自信が持てました」
「おお!」
「明日にでも、いや今日にも絹江さんに俺の気持ちを伝えに行きます!」
「その意気だ!って、しまった……」
「どうしたんです?」
「いや焚きつけておいてすまん。そういえばあいつお前と入れ替わりで有休をとったの忘れていた」
「えー……」
そんなやっと自身がついて気持ちを伝えようとしていたのに……いったいこの気分の高揚をどうすればいいんだ……それにしても珍しいな。絹江さんが有休をとるなんて。何かあったんだろうか。まあいい。帰ってきたら俺の思いをぶつけよう。
エイフマン説得の部分もう少しなんとかしたかったなぁ……いい考えだ浮かびませんでした。