頑張れ!ザイトルクワエちゃん   作:ビエン

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第三話

視界が変わった後に現れたのは見たこともないほど豪華で美しい宮殿の通路。

 

「凄いのじゃ・・・」

「そうだろうそうだろう。此処は私が仲間たちと共に作り上げた場所なのだ」

 

アインズは自分が褒められたかのように嬉しそうに言うと聞かれてもいないのに様々な事を話す。

 

その中でこの場所がナザリック地下大墳墓という墳墓であること、そして今はその第九階層なのだと言うことをザイトルクワエは知った。

 

「何か欲しいものはあるか?」

 

一頻り話したところで元に戻ったアインズは私室に入る前にザイトルクワエに尋ねた。

 

客員として迎えると言ったからには満足してもらわねばならないと思い尋ねたのだ。

 

「そうじゃな・・・とりあえずは栄養のあるもの。強者の死骸か食べ物が欲しいのじゃ」

「ふむ。高レベルの物か・・・どうするのだ?」

「栄養を吸い取って成長するのじゃ!そしてお前に吹き飛ばされる前の体を手に入れるのじゃ!」

 

ふんすっと胸を張るザイトルクワエだが、アインズはそれを聞き流して代替案を提示する。

 

「ようは経験値が欲しいということだな?」

「む?けいけん・・・なんじゃと?」

「いや、気にしないでくれ・・・そうだな、適当にメイドに持って来させよう」

 

そう言いアインズは一般メイドに食事を持ってくるように命じて私室へと入る。

 

そして執務机の椅子に座ると隅にあるテーブルを指差した。

 

「とりあえずお前はそこの椅子に・・・何をしている」

 

言葉の途中で問いただした。

 

何故なら───

 

「お主と一緒にいるのじゃ」

「それは分かっている。何故、私の膝の上に座るのか聞いているんだ」

 

───ザイトルクワエがアインズの膝の上に座ったからだ。

 

「少しでも離れておったら殺されるじゃろう。じゃから、一番殺されないであろう場所にいるのは当然じゃ」

「なるほど」

 

ふふんっ反論できまい。

 

生き残るための完璧な作戦なのじゃ!

 

「だが、思いつくだけでもアルベド、シャルティアと二人の強者に睨まれるぞ?」

「しゃるてぃあ?誰じゃそれ」

「お前の体を吹き飛ばした後、お前の頭を殴った銀髪の少女だ」

「・・・・・強いのか?」

「お前の体を吹き飛ばした時にいた者たちの中では一番だな」

「ひっ」

 

か、体が震えだしたのじゃ。

 

怖いのじゃ。逃げるのじゃぁ!

 

コンコンッ

 

「ひぃっ」

「落ち着け、ただのノックだ」

「アインズ様、シャルティア様です」

「ぴぃっ!」

「落ち着け!下ろしてやるから暴れるな!」

「アインズ様!何事でありんすか!?」

 

アインズが入室許可を与える前に一大事と勘違いしたシャルティアが扉を開けて入ってきてしまった。

 

ザイトルクワエを持ち上げて情けを与えようとしているアインズ(シャルティア目線)。

 

「て」

「お?」

「てめぇえええええええええええ!何アインズ様を横取りしてんだああああああああああああ!!!」

「ぎゃひいいいいいいいいいいいいいい!」

 

怖いのじゃ!怖いのじゃあ!

 

「落ち着けシャルティア!」

「落ち着け!?落ち着けるわけないです!このクソチビ!私のっ私の愛するアインズ様を横から掠め取りやがったクソやろぉああああああああああああああああああああ!」

 

怒鳴り散らすシャルティアの声を聞いたのか、アルベドが飛び込んできた。

 

「アインズ様!なにご」

 

ザイトルクワエを持ち上げて情けを与えようとしているアインズ。そしてザイトルクワエを血涙を流して睨むシャルティア(アルベド目線)。

 

「クソチビがぁあああああああああああああああ!」

 

怖いのじゃ!怖いの・・・じゃ・・・。

 

「ひぃいいいいいいいぃぃぃ・・・ぁ・・・」

 

 

 

「・・・・・はっ!」

「気がついたか」

 

周りを見回してアインズとメイド以外の・・・あの二人がいないのを確認して安心したのじゃ。

 

「何なんじゃあやつら・・・」

「私の配下だ。そして理解できていると思うが、あの二人は私に惚れていてな・・・」

「惚れてるって・・・お主、アンデッドじゃろ。子はなせんじゃろ」

「そうなんだ。なのにアルベドはちょっとしたことで暴走するし、シャルティアは隠すべき場所を隠していない下着で誘惑してくるし・・・」

「大変じゃな・・・」

 

アインズがため息混じりに呟くのを聞いて同情するザイトルクワエ。

 

「ともかく、お前を膝の上に置くのは危険だとわかっただろ?」

「むしろ逆じゃ!これでお主から一瞬でも離れたらわしが死ぬと決定づけられたわ!」

「誤解は解いておいたが?」

 

首をかしげるアインズを見てザイトルクワエは戦慄する。

 

こやつ、本気でそう思っとるのか・・・!?

 

「恋する乙女を舐めるでない!誤解を解いても蟠りが消えるわけではないのじゃ!絶対に何かと付けてイチャモンをつけて合法的に殺す事を企んでいるに違いないのじゃ!」

「考えすぎだと思うが・・・」

「絶対そうなのじゃ!」

 

 

 

第九階層のアルベドの部屋。

 

「───だからね。あのガキを耐久実験といって恐怖公の所に入れて事故で死んでしまったということにするのよ」

「それはいい考えでありんす」

 

 

 

「まぁ大丈夫だと思ってお前が死んでしまったらアインズ・ウール・ゴウンの名が泣くか。分かった、後で二人によーく言っておく」

「頼むのじゃ。本当に頼むのじゃ」

 

ザイトルクワエはアインズに頼み込んだ時にノックが鳴った。

 

「アインズ様、お食事が参りました」

「入れろ」

 

メイド数人がワゴンと共に入ってきて、近くのテーブルに料理を並べていく。

 

クロッシュが取られると食欲を誘ういい匂いが部屋を満たす。

 

「食事中はあの二人は入れないようにするから安心して食べるといい」

「うむ・・・」

 

ザイトルクワエがすぐに食べると思っていたアインズはザイトルクワエはそれをチラチラと見ているのを見て遠慮しているのかと思い告げる。

 

「私は仕事をしているから食べるといい」

「む・・・むぅ・・・その、じゃな。マナーが分からん・・・」

 

ザイトルクワエはアインズを見上げると呟くようにそう言った。

 

「ははははっ!マナーなど気にしなくてもいいぞ。私も食事は不要だからマナーなど分からんからな」

「そ、そうかっなら遠慮はしないのじゃ!」

 

アインズの膝の上から飛び降りたザイトルクワエはタタタッと料理が並べられたテーブルに行くとマナーなど関係なく食べていく。

 

「美味いか?」

「ふはいほは!」

「そうか。どのような味なんだ?」

「ゴクンッ・・・このパンはふかふかで小麦の匂いがするのじゃ。バターがぬられているからそれが噛むたびにジュワッと出てきて僅かな塩味と濃厚な味と香りが絶妙にマッチして美味いのじゃ。次にこのスープ。これはコーンポタージュで、コーンの風味を生かしつつ隠し味の生クリームの香りと甘味も合わさって美味いのじゃ。次のこの肉は・・・ハグッ・・・むぅ!柔らかいのに噛むたびに肉汁が迸って美味い!まるで肉汁の間欠泉じゃ!」

 

ザイトルクワエの解説を聞いて、アインズは無いはずの喉を鳴らす。

 

(え、何それ。凄く食べたい)

「このサラダもシャキシャキで美味いのじゃ。今度、あの森の木でも食べてみようかのう」

 

しゃくしゃくとサラダを食べながらそう呟いたザイトルクワエだが、最後の品のデザートを口にして愕然とする。

 

「甘い・・・甘いのじゃあああああ!お代わり!」

「持ってきてやれ」

「畏まりました」

 

その後、数回お代わりしたザイトルクワエは小さく「ケプッ」とすると大きくなったお腹を擦りながらアインズの膝の上に座った。

 

「・・・・何故座る?」

「まだ二人に言い聞かせてないのじゃ」

「はぁ・・・アルベドとシャルティアを呼べ」

「はっ」

 

後にしようとした二人への言い聞かせを前倒しにしたアインズはもう一度大きなため息をついた。

 

 

 

色々と言い含めた結果。

 

「わしがペット二号とはな・・・」

「言うな・・・」

 

ザイトルクワエはアインズのペット二号という事になった。

 

一号である森の賢王ことハムスケとは違って愛でる為のペットという事になった。

 

「・・・・わしを愛でるのじゃな?ロリコン」

「俺はロリコンじゃない」

「口では何とでも言えるのじゃ」

「どうしてこうなった・・・」

 

こうして、ザイトルクワエはナザリック内で命を奪われる危険はなくなった。

 

だが、それと同時に何か大切なものを失った気がしたアインズであった。




シャルティア「この者がペットになってもいいのなら、わらわもペットに!」
アインズ「謹慎三日間」
シャルティア「 」
アルベド「馬鹿ね。次は体も胸も大きい私が・・・」
アインズ「謹慎七日間」
アルベド「 」



ようやく身の安全を手に入れたザイトルクワエちゃん。

でも、アルベドとシャルティアはまだあの手この手で命を狙っています。

頑張れ、ザイトルクワエちゃん!

真っ暗な未来しか見えないけど、くじけないで!

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