頑張れ!ザイトルクワエちゃん 作:ビエン
「何故わしがこんな目にあわないといけないのじゃ・・・」
ハメられて牢獄に入れられてから丸一日。
ザイトルクワエは貰ったジュースを飲み干すと体育座りでいじけていた。
「・・・・」
ザイトルクワエはほんの少しだけ───おぼろげだが───残っている最初の記憶を思い出して唇をかんだ。
「一人は慣れているのじゃ」
正確な年数は殆ど寝ていたから分からないが数百年。
ずっと一人だったのだから特に何も感じない。
「そすーを数えるのじゃ。えーと・・・いち、さん、ご、なな、じゅーいち、じゅうさん」
ザイトルクワエはそのまま素数を数え続ける。
「・・・いち、さん、ご」
ある数から最初に戻りまた数えなおす。
まるで誰かの言葉を真似るかのように。
「さんじゅうなな・・・む?」
カツリと足音が聞こえてザイトルクワエは数えるのを止めて顔を上げる。
カツリカツリと複数の足音が響きその主たちが現れた。
「一日ぶりか」
「・・・・何じゃ。わしの体を吹き飛ばした
「アインズ様に何と言う口の利き方。万死に値する」
「アルベド。黙っていろ」
「しかし・・・いえ。畏まりました」
ザイトルクワエは二人のやり取りを見ると顔をぷいっと横に向けた。
「何の用じゃ」
「確かめたいことがあってな。お前はユグドラシルから来たのか?」
「ユグドラシル・・・聞き覚えはあるのじゃ。じゃがそれが何かまでは分からぬのじゃ」
「ふむ」
アインズは顎に手をやりしばらく考えると何かを決めたのかザイトルクワエを見る。
「お前は突如としてこの世界に来たということだな?」
「その通りじゃ」
「実は我々も同じなのだ。そこでどうだ?我々と手を組まないか」
「手を組むじゃと?」
ザイトルクワエは眉を潜めてアインズを見るが、すぐに目をそらす。
アルベドが憤怒の形相でザイトルクワエを睨んでいたからだ。
怖いのじゃぁ!
「わ、わかったのじゃ。手を組むのじゃ。じゃから、じゃからっ・・・!」
「ん?なんだ」
「その胸デカ悪魔を何とかするのじゃ!」
「アルベドを?」
「如何しましたか?アインズ様」
満面の笑みのアルベドを見てアインズは首を傾げる。
「・・・・とりあえず客員として迎え入れる。何か要望はあるか?」
「その胸デカ悪魔と一緒は嫌じゃ!出来ればお主と一緒が良いのじゃ!」
「私と?それは・・・」
「お願いじゃ!一緒にされたら・・・殺される!絶対に殺されるのじゃ!」
ザイトルクワエは必死に懇願する。
まだ成していないのだ。
成していないのだからまだ死ねない。
成すまでは例え惨めだろうと、土を喰らってでも、絶対に生き延びる。
そう決めたのだから。
「そうだな・・・腐ってもレベル85。誰かに任せて好き勝手やられても困るか。いいだろう」
「あ、ありがとうなのじゃ!」
ザイトルクワエは首がつながった事に安堵する。
「チッ」
舌打ちしたのじゃこの悪魔。
「アインズ・ウール・ゴウンの名においてお前を保護する。アルベド。全てのシモベに通達しておけ」
「畏まりました」
「ニューロニスト。牢屋を開けろ」
「畏まりましたわん」
あの化物が現れて牢屋を開ける。
「では行こうか」
「う、うむ」
差し出された手を握ると一瞬で視界が変わる。
後ろで怨嗟の声が聞こえた気がするのじゃが気にしないのじゃ。
ザイトルクワエちゃんはアインズ様に保護されました。
こうしないと、どうあがいても死ぬ未来しか見えなかったので。
でもこれからは化物たちと渡り合っていかなければいけません。
頑張れ!ザイトルクワエちゃん!
苦労が報われる日がきっと来る事を信じて!
※ザイトルクワエについてのモロモロは独自設定となっています。