転生者がダンジョンに出会いを求めて異世界に行くのは間違っているだろうか   作:サクサクフェイはや幻想入り

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本編どうぞ!


第十八話

朝早くからベルの短刀を振る音と、アイズの鞘で弾く音を横目に俺は自分の鍛錬をしていた。 にしても、今日のベルはいつも以上に真剣、いや雑念が多いだけか。 昨日か一昨日だったか、アイズのLv.6昇格に何らかの影響を受けたのか、ベルほどではないにしろ俺も焦ってるんですけどねー

 

「はぁ......」

 

今日もベルは宙に舞っていた

 

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修行も終わり街を歩いているのだが、俺とベルに会話はない。 と言うよりも、話しかけてもベルから返事ばかりだからな

 

「ショウジサン、ベルさん!会いたかったです......」

 

ベルとは反対方向の腕に衝撃を感じ、そちらを見ると、上目遣いで瞳の端に涙をためたシルさんがいた。 まぁそこは良いんだけどさ

 

「会いたかったも何も、昨日食べに行ったじゃん」

 

「ショウジサンもベルさんも来てもらっていいですか?」

 

おかしいな、さっきまで泣きそうだったはずなのに、今は笑顔で俺とベルの手を引いている。 てか都合の悪いことは無視ですか、そうですかそうですか。 シルさんが制服だったこともあり、連れていかれる場所はわかっていたが、やはり豊饒の女主人だった。 ベルは厨房に連れていかれてたけど

 

「まぁ一応お礼は言っておきますよ」

 

「何のことでしょう?」

 

笑顔ですっとぼけるあたり、やはりこの人は食えない。 とりあえずエールを注文し、一口煽る

 

「とぼけなくても、わかってるんでしょう? ベルのこと」

 

「ベルさんだけ、ですか?」

 

そう言って俺の顔を覗き込むシルさん、その瞳に移る俺は苦い顔をしていた

 

「・・・・・・なんでわかったんですか?」

 

「んー、勘、でしょうか?」

 

口に指を当て考えこんだと思ったら、笑顔でそう言ってきた。 たいして俺は、ため息で返答する

 

「む、なんですかその反応」

 

「いやいや、でも当たりなんですよねー」

 

またエールを一口

 

「実際ベルは修行で着々と強くなってきてる、本人はアイズに追い付きたいと焦ってるみたいですけど。 俺は俺で、上がらないレベルに少しイライラしてますし」

 

「レベル、ですか?」

 

「みんな俺のレベルを言うと驚くんですけど、これでもLv.1なんですよ? それに俺だって、もっと強くなりたいんですよ」

 

「・・・・・・」

 

俺の愚痴を静かに聞いてくれるシルさん、あんまり語りすぎもよくないからね、それにすっきりしたしここらへんでやめておこう

 

「おっと、愚痴っぽくなっちゃいましたね」

 

「別に気にしないでください、こうやってお話を聞かせてくれただけでも私は嬉しいですから」

 

微笑むシルさんに俺は直視できずに視線を逸らす。 なんでこう言う時にそういう顔するかなぁ。 頬が熱くなっている気がするが、残っているエールを一気に煽る。 あー、ホントまずい。 その様子をシルさんは笑顔で見てたけど

 

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ベルとアイズの訓練最終日。 俺は自分の訓練をそこそこに切り上げ、ベルとアイズの方を見ていた。 この数日でベルの動きは格段に良くなった、これもアイズ様様かね。 そんなことを考えていると、どうやら終わったようだ

 

「初めて、反撃出来たね」

 

「・・・・・・はい!」

 

ほーんと成長したようだ、ベルはアイズに頭を下げ、アイズは俺の方に?

 

「どした?」

 

「最後に、ショウジとも戦いたい」

 

「はい?」

 

いうのが早いかアイズは鞘を構え、俺に突きをしてきた。 どれだけ本気でやってるのかわからないし、Lv差もある、なので俺は受け流すことにした

 

「いきなりは酷いんじゃないか?」

 

「結構本気でやったのに、っ!」

 

俺が弾くと同時にそのまま連続で突きをしてくるアイズ、俺はそれを冷静によける。 見えない速さではないが、これをずっと避け切るのは少し分が悪い。 実際体が温まってきたのか、段々早くなってるし。 距離を開けようにもすぐ詰められる。 かがんで足払い、これをジャンプでよけられる。 だが距離を開けるのには成功した。 着地と同時にこちらに突進してくるアイズ、俺はそれを迎え撃つことにした。 ギリギリまで引き付けてかわし、鳩尾に掌底をしようとしたが、織り込み済みだったのか鞘でガードされる。 少し驚きはしたが、まぁ俺よりも上級の冒険者ということで納得、すぐに攻撃に移る。 そこからは一進一退の攻防で、やがて

 

「ストップ!やめだ、やめ!!」

 

「?」

 

気が付くといつもの時間よりだいぶオーバーしていた

 

「お前今日遠征あるんだろ? 準備とかいいのか」

 

「じゅん、び?」

 

サーっと血の気が引いて行くアイズ、コイツやはり準備を忘れてたんだな!

 

「ど、どうしよう!」

 

「とりあえず帰って準備だろ」

 

コクコク頷いて、剣を回収すると大急ぎで帰って行った

 

「最後まで締まらねぇ......」

 

「・・・・・・」

 

ベルなんかポカンとしてるし。 そんなベルに一声かけ、俺たちも帰ることにした。 一応この後ダンジョンに潜る予定なのだ

 

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その日のダンジョンは空気が違った。 何がと言われればわからないが。 先頭を歩いていたベルがいきなり止まる

 

「ベル様?」

 

「ねぇリリ、なんか誰かに見られてる感じがしない? ショウジサンもそんな感じしませんか?」

 

「いえ、特には......」

 

「見られてる感じはしない、でもなんかいつもと空気が違う気がするし、嫌な予感もする」

 

「いやな予感、ですか? ふざけてるわけでもないようですし、それにリリも少し違和感があります」

 

その言葉に俺の嫌な予感は一層膨れ上がる。 リリはベテランと言っても差し支えないサポーターだ、それが違和感があるとなると。 ベルにどうするか聞こうとすると、ちょうどモンスターの叫び声が聞こえた。 そちらの方を向いてみると

 

「ほー、ミノタウロス」

 

この世界に来て以来、ミノタウロスがいた

 

「な、なんで九階層にミノタウロスが!?」

 

「とりあえずそんなことはどうでもいいだろう、リリはベルを連れて逃げろ」

 

「ショウジ様!? 何を言ってるんですか、ショウジ様も!!」

 

俺はリリの制止を聞かずにミノタウロスに踏み込もうとしたのだが

 

「あぁっ!!」

 

「っ!!」

 

横合いから何かに、思いっきり吹っ飛ばされた。 受け身を取り、そちらの方向を見てみると

 

「ふふ......ははは!!オッタル!!」

 

「・・・・・・」

 

この迷宮都市、その頂点に君臨する男だった

 

「あの時言ったはずだぞ、次に俺の家族に手を出したら、お前ら全員つぶしに行くからなって」

 

「たまたま俺がいるときに、たまたま九階層にミノタウロスがいた、だけの話だ」

 

「そんなんで通じると思ってんのか!!」

 

ミノタウロスはベルたちに距離を詰め始めていた、進行方向にはオッタル、一か八かに掛けるが、たぶんオッタルは俺をベルたちの方向には飛ばさないだろう、なら!

 

「さて、これから見せますのは、種も仕掛けもあるつまらないマジック。  皆様どうかごゆるりとお楽しみくださいませ」

 

小声で詠唱をしながらオッタルに殴りかかる、がそのまま拳を掴まれる。 そして俺が選ぶのはインフィニットジャスティス。 空いている片手でビームブーメランを取ろうとするが、そちらも掴まれる。 ならばと膝から爪先にかけて設置されているビームブレイドを展開し、蹴りを放とうとするが足でガードされる。 ならばとファトゥム-01と機体自体の推力で押そうとするが、少ししか動かない。

 

「とんだバケモノだな!!」

 

ならば仕方ない、ファトゥム-01を飛ばし、ベルに当てる

 

「いい加減正気に戻れ!」

 

ベルはファトゥム-01が当たり倒れるが、正気に戻ったようだ。 リリを抱きかかえて攻撃を回避していた

 




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