ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第97話『スクールカーニバル・ウォーです!(男子校サイド・パート2)』

ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第97話『スクールカーニバル・ウォーです!(男子校サイド・パート2)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦の学園祭2日目………

 

大洗男子校が主催となり、遂に大洗機甲部隊による劇の披露が始まった。

 

演目はアレンジされた『眠れる森の美女』………

 

大洗の町に住む侯爵夫妻(迫信・杏)の間に、待望の子宝が生まれた。

 

親族と町の住人達を屋敷に招き、盛大な宴を開く侯爵夫妻。

 

そして生まれた娘に、12人の巫女達が祝福の贈り物を捧げて行く。

 

しかし、招待されなかった事に腹を立てた悪の呪術師が、娘に『17歳の誕生日までに、糸車の針で指を刺して死ぬ』と言う呪いを掛ける。

 

だが、まだ贈り物をしていなかった12人目の巫女が、この呪いを『死ぬのではなく眠りにつき、愛する者の口づけで目が覚める』と言う内容に修正する。

 

それでも安心出来なかった侯爵夫妻は町中の糸車を燃やし、娘を12人の巫女の元へと預けた。

 

それから月日が流れ………

 

娘の17歳の誕生日が近づく中、1人の陸軍少尉(弘樹)が、森の中でいつも夢に見ていた女性を見つける。

 

その女性こそが、巫女たちの元に匿われ、美しく成長していた侯爵夫妻の娘(みほ)であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗男子校の校舎内・多目的ホールの舞台にて………

 

「~~♪~~~♪」

 

森の奥深くの花畑のセットの中心で、歌いながら舞い踊っているみほ。

 

周りには小鳥が飛び交い、小動物達が輪を作っている。

 

「………間違いない。彼女だ………小官の夢に出て来た」

 

そのみほの姿を見て、弘樹はそう呟く。

 

と、思わず1歩踏み出してしまった瞬間、足元に在った小枝を踏み折り、音を立ててしまう。

 

「! あ!………」

 

その音で弘樹の存在に気付いたみほが歌うのを止め、立ち尽くす。

 

「だ、誰なの?………」

 

若干怯えた様子を見せながら、みほはそう問い質す。

 

「ああ、コレは失礼を………驚かせる積りは無かったのです。貴方の姿に見惚れていて、声を掛けるのを躊躇ってしまいまして」

 

すると弘樹は、そんなみほの警戒を解く様に、軍帽を脱いで、将校用のマントを外して腕に携えてそう言う。

 

「あ………」

 

そこでみほは何かに気付いた様に声を挙げる。

 

「小官は帝国陸軍の少尉です。初めまして」

 

「は、初めまして………」

 

「………と言っても、実は小官は、貴方とお会いするのは初めてではないのですが」

 

「えっ?」

 

「この様な話をするのもおかしいと思われるかも知れませんが………ここのところずっと………貴方の事を夢に見ていたのです」

 

「ええっ?」

 

弘樹がそう言うと、みほは驚きを露わにする。

 

「その貴方がこうしてココに実在するとは………未だに信じられません」

 

「あ………」

 

「美しい方………もし宜しければ、お名前をお聞かせ願えません」

 

そう言ってみほの前で畏まる弘樹。

 

「あ、えっと………ゴメンなさい。私、人に名前を言っちゃいけないって言われてるんです。だから………さよなら!」

 

しかし、みほは申し訳無さそうな表情を見せたかと思うと、弘樹の前から逃げ出す様に走り出した。

 

「ああ! 待って下さいっ!!」

 

そう呼び掛ける弘樹だったが、みほの姿は舞台袖へと消える。

 

「行ってしまった………とても美しい人だった………そう、まるで天女の様に………」

 

取り残された弘樹は、みほが消え去った方向を見ながらそう呟く。

 

「もう………彼女とは会えないのだろうか………」

 

更に続けてそう呟いたところで舞台は暗転。

 

暗闇の中で弘樹は舞台袖に姿を消し、整備部がセットを森の奥深くから、大洗磯前神社の境内へと組み替え、照明を再点灯させる。

 

「ハア………ハア………」

 

そこで舞台袖からみほが登場し、息を切らせている演技を見せる。

 

「思わず逃げて来ちゃった………陸軍の少尉さん………実は、私も貴方の事を夢に見ていました」

 

そのまま客席の方を向いて語る様に台詞を続けるみほ。

 

「その貴方が、私の事を夢に見ていたなんて………何だろう? 胸が………胸が苦しい………少尉様………とても………とても素敵なお方………」

 

と、みほがそう言うと………

 

「お嬢様。此処に居たのですか」

 

「探しましたよ」

 

そう言う台詞と共に、12人の巫女達が舞台上に登場する。

 

「あ、巫女様方………」

 

「さあさあ、そろそろ支度の時間ですよ」

 

「今日は貴方の17歳の誕生日」

 

「そして呪術師の呪いが効力を失う日でもあります」

 

みほに向かってカエサル、エルヴィン、左衛門佐がそう言う。

 

「やっと父上と母上の元で一緒に暮らせる様になるのです」

 

「と~っても、おめでたい事なの~」

 

続けて梓と優希がそう言う。

 

「あ、あの………でも、私………」

 

「辛かったでしょうね………17年も離れ離れで………」

 

「でも、それも今日でお終い」

 

「今日からは侯爵夫妻の娘に戻るんだよ~」

 

みほが何か言おうとしたが、それを遮る様にあゆみ、あや、桂利奈がそう言う。

 

「そんな! 待って下さい!」

 

「如何したぜよ? お嬢様?」

 

「何かあったのか?」

 

戸惑いの様子を見せるみほに、おりょうと麻子がそう言う。

 

「わ、私………」

 

「お嬢様。色々とおありでしょうが、身支度を………」

 

「侯爵夫妻がこの17年間、首を長くしてお待ちになっておりますよ」

 

何かを言おうとしたみほだったが言い出せず、華と優花里がそう声を掛けて来る。

 

「………ハイ。分かりました」

 

「さ、こちらへ………」

 

みほはそう言って頷き、12人の巫女達はみほを連れて舞台袖へと消える。

 

そこで一旦幕が下りる。

 

『お互いに惹かれ合う少尉とお嬢様………しかし、お嬢様は今日で侯爵夫妻の屋敷へ戻らなければなりません。もう2人が会う事はないのでしょうか?』

 

そして沙織のナレーションが終わると同時に幕が開き、舞台上にはお嬢様となって侯爵の屋敷へ戻り、自室に居るみほが現れる。

 

「少尉様………」

 

その胸の内は、森で在った陸軍少尉・弘樹の事でいっぱいだった。

 

「如何してこんなに会いたくなるの?………会いたい………貴方に会いたい………」

 

切なげにそう語るみほ。

 

とその時………

 

何処からともなく、糸車を回している音が聞こえて来た。

 

「アラ? 何かしら? あの音?………」

 

みほはその音がとても気になり、音の元へと向かいだしてしまう。

 

舞台が暗転すると、セットが屋敷内の別の一室に組み替えられ、糸車を回している老婆………悪の呪術師・桃が現れる。

 

「何をしているのですか?」

 

「糸を紡いでいるのさ………お前さんもやってみるかい?」

 

そうとは知らずにその老婆の元へと近寄ったみほがそう尋ねると、老婆はみほに向かってそう言う。

 

「如何やるのですか?」

 

「簡単さ。そこの針にちょ~と触れるだけで良いんだよ………」

 

みほには見えぬ様に不気味に笑いながら老婆はそう言う。

 

「針に………」

 

まるで暗示を掛けられているかの様に、みほは糸車の針へと手を伸ばす。

 

そしてその指先が針に触れた瞬間!

 

「あ!………」

 

みほはバタリと倒れ、そのまま深い深~い眠りへと着いた。

 

「ア~ッハッハッハッハッ! 私の呪いは絶対だ! 逃れる事は出来ぬ! ア~ッハッハッハッハッ!!」

 

そこで老婆の衣装を脱ぎ捨てた呪術師・桃が、そう高笑いを挙げ、特殊効果を使って舞台上から姿を消す。

 

その直後に、ステージ上のセットを、茨が覆い尽くした。

 

『巫女の贈り物により、お嬢様は死なず、眠りにつきました。しかし、呪いは屋敷中のみならず、大洗の町中へと広がり、全ての人々が同じ様に眠りにつき、茨が町全体を覆い尽くしました』

 

幕が閉じられると、沙織のナレーションが響き渡る。

 

『その後、幾度となく茨の城と化した大洗の町と侯爵の屋敷に侵入を試みた者が現れましたが、鉄条網の様な茨と呪術師に敗れ、悉く命を落として行きました。もう、お嬢様と街の人々は永遠に目覚めないのでしょうか?』

 

と、沙織がそうナレーションした瞬間、『陸軍分列行進曲』が流れ始める。

 

『いえ、1人………たった1人ですが、お嬢様を救える者が居ました』

 

そして幕が開くと、舞台上には陸軍参謀本部の参謀総長室と思しきセットが組まれていた。

 

その参謀総長席には、陸軍参謀総長役を演じている熾龍の姿が在る。

 

そこで、背景のセットに付けられていた扉をノックする音が響く。

 

「………入れ」

 

「失礼致します」

 

熾龍がそう言うと扉が開き、弘樹が舞台上へと登場する。

 

「参謀総長殿、お呼びでしょうか」

 

弘樹は熾龍の前に立つと、陸軍式敬礼をしながらそう尋ねる。

 

「少尉………貴様に命令だ。それも陛下からの直々の大命だ」

 

「!? 陛下から!?」

 

陛下からの直々の大命と言う事に、弘樹は驚いた演技を見せる。

 

「不服か?………」

 

「いえ! 身に余る光栄です! 陛下の大命とあらば、この身を賭してでも完遂致す所存であります!」

 

姿勢を正すと、宣言する様にそう言う弘樹。

 

「良い覚悟だ………では、命令を伝える」

 

「ハッ!」

 

「少尉………精鋭の部下を連れ、茨に閉ざされた大洗の町へと向かい、その呪いを解け」

 

「! 大洗の!?………」

 

「部下の選定は貴様に任せる。陛下の期待を裏切るなよ」

 

「ハッ! では、失礼致します!!」

 

弘樹は再び陸軍式敬礼をして、参謀総長室から退室して行った。

 

そこで舞台が暗転すると、整備部がセットを組み替え始める。

 

『そう………お嬢様を救える只1人の人物………それはあの少尉だけなのです。大洗へ行けば、お嬢様とまた会える………そんな期待を胸に、少尉は軍馬に跨り、精鋭の部下を引き連れて、茨に閉ざされた大洗の町へと向かったのでした』

 

沙織がそうナレーションを終えると、組み替えられた茨に覆われた大洗の町のセットが照明で照らされる。

 

そのセットが組まれた舞台上に、軍馬(演:シュトゥルム)に跨った弘樹と、彼が引き連れて来た精鋭の部下達が現れる。

 

「何と言う禍々しい光景だ………コレがあの大洗の景色なのか?」

 

茨の生え広がった大洗の町の様子を見て、弘樹がそう呟く。

 

引き連れられていた部下達も、戸惑いの演技をする。

 

「! 何者だっ!!」

 

とその時!

 

何者かの気配を感じ取った弘樹が、軍刀を抜き放ってそう言い放つ。

 

すると舞台上に、12人の巫女達が登場する。

 

「私達は………」

 

「お嬢様を守る………」

 

「巫女だよ~」

 

梓、あゆみ、優希がそう言う。

 

「巫女?………」

 

「私達はお嬢様を心から愛し………」

 

「邪悪な呪術師を打ち砕く………」

 

「勇者を待っていました」

 

弘樹が首を傾げていると、あや、桂利奈、カエサルがそう言葉を続ける。

 

「貴方様こそが………」

 

「我々の待ち望んだお方………」

 

「お嬢様は呪術師の呪いによって………」

 

「侯爵様の屋敷の最深部で眠っている」

 

「お嬢様………! もしや!?」

 

エルヴィン、左衛門佐、おりょう、麻子がそう言うと、弘樹はお嬢様と呼ばれた人物に心当たりを覚える。

 

「そう………貴方がこの大洗の森の奥深くで出会った夢に見た女性………」

 

「あのお方こそ、この呪いを掛けられた侯爵家のお嬢様なのです」

 

「やはり………」

 

華と優花里の言葉に、弘樹は納得が行った表情となり、背景のセットに描かれた、大洗の町を一望出来る丘の上に建てられている侯爵の屋敷を見やる。

 

「………小官に彼女が助けられるだろうか?」

 

「真の愛の道は楽なものではありません………」

 

「真実を武器に戦い………」

 

「勇気で身を守るのです」

 

と、弘樹がそう言うと、巫女達は一斉に御幣を取り出し、お祓いをする様に振る。

 

すると、弘樹に光が降り注ぐ様なエフェクトが掛かる。

 

「ありがとう………お嬢様の呪いは、必ず解いてみせる」

 

弘樹がそう宣言する様に言った瞬間!!

 

「アーッハッハッハッハッ!!」

 

最早お馴染みとなった高笑いを響かせ、天井からワイヤーで吊るされた状態で、呪術師・桃が登場する。

 

「! 貴様はっ!?」

 

「我こそは悪の呪術師………陸軍の少尉よ………お嬢様の呪いを解くだと? アーッハッハッハッハッ!! やれるものならやってみるが良い!!」

 

弘樹を馬鹿にする様に再度高笑いを挙げる桃。

 

「但し………無事にお嬢様の元へと辿り着けたらなぁっ!!」

 

桃がそう言い放った瞬間!!

 

「「「「「イーッ!!」」」」」

 

「「「「「ギーッ!!」」」」」

 

呪術師が呼び出した、悪の式神達が次々に舞台上へと登場する。

 

………しかし、恰好が黒い全身タイツ姿に覆面という事と、前述の掛け声もあって、如何見ても『戦闘員』にしか見えなかった。

 

(チキショー、何でこんな役なんだよ………)

 

(貧乏くじ引いたぜ………)

 

演じている大洗歩兵部隊の面々も覆面の下で渋面を浮かべている。

 

「お嬢様の呪いは絶対に解かせん! 絶対にだ!!」

 

そんな中、1人猛烈なやる気を見せている式神・了平。

 

………明らかに私情が入っている。

 

「リア充死すべし! 慈悲は無ぁいっ!!」

 

私怨たっぷりなアドリブと共に、了平は弘樹へと飛び掛かる。

 

「セイッ!!」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

だがそのまま巫女の加護を受けて光を帯びている軍刀で斬り捨てられ、敢え無く退場した。

 

「………貴様がお嬢様に呪いを掛けた呪術師か」

 

そして弘樹は、斬り捨てた了平には微塵も興味を示さず、ワイヤーで吊られている桃を睨みつける。

 

「!? ヒッ!?………」

 

「お嬢様は小官が助け出す………必ずだ」

 

その迫力に若干ビビった桃に、弘樹はそう宣言する。

 

「な、生意気なぁっ! 式神達よ! やぁっておしまい!!」

 

「「「「「「「「「「アラホラサッサーッ!!」」」」」」」」」」

 

何処かで聞いた様な遣り取りの後、桃は天井へと消え、式神達が一斉に弘樹へと襲い掛かる。

 

「むうっ!」

 

軍刀を握ったまま、空いている片手で手綱を握って、シュトゥルムを操る。

 

しかし、そこで!

 

「むんっ!!」

 

弘樹に襲い掛かろうとしていた式神の棍棒を、着剣した三八式歩兵銃で受け止める勇武。

 

「隊長殿! ココは僕達に任せて下さいっ!!」

 

「何っ!?」

 

「隊長殿は屋敷へ!」

 

「お嬢様を御救い下さいっ!!」

 

驚く弘樹に、同じく部下役の光照と清十郎がそう言って来る。

 

「………任せたぞ!」

 

弘樹は一瞬考える様な様子を見せた後、シュトゥルムを走らせた!!

 

舞台が暗転し、セットが組み替えられる。

 

大洗の町を覆っている茨を軍刀で斬り開きながら、屋敷を目指して進む弘樹。

 

「お嬢様………今参ります!」

 

その視線は、屋敷を一心に見やっている。

 

そして遂に、弘樹は屋敷の真ん前まで辿り着く。

 

「ええい! そうはさせるかぁっ!!」

 

とその行く手に、天井からワイヤーで降りて来た桃が立ちはだかる。

 

「!!」

 

手綱を引き、シュトゥルムを止める弘樹。

 

「こうなったら私が相手だ! 思い知るが良い! 悪の力をっ!!」

 

桃がそう叫ぶと、その身体がスモークに包まれる。

 

少しして、スモークが晴れるとそこには………

 

『何と! 呪術師はその力によって、自らを竜へと変身させたのです!!』

 

沙織がナレーションする通り、桃は変身したと言う設定で、竜の着ぐるみを着ていた。

 

しかし、その着ぐるみは………

 

3つの頭部と、それを支える長くしなやかな3本の首、2本の長い尾、全身を覆う黄金色の鱗、腕の代わりに巨大な一対の翼を持つ姿………

 

如何見ても『キングギドラ』だった!!

 

「アーッハッハッハッハッ!!」

 

構造上の都合なのか、変身していると言う事を分かり易く表現する為か、3つ在る首の内、中央の首の根元部分には、桃の顔が露出しており、高笑いを挙げている。

 

それと同時に、3つの頭からも、エレクトーンの様な独特な咆哮を挙げる。

 

「………ハアッ!」

 

と、そのキングギドラとなった桃に、弘樹は軍刀を掲げる様に構えて、シュトゥルムを突撃させる。

 

「死ねぇっ!!」

 

するとキングギドラ・桃は、やけに感情が籠った声でそう言い放ったかと思うと、3つの口から稲妻状の光線………引力光線を放つ!

 

「!?」

 

咄嗟に弘樹は、これまた巫女の加護を受けたマントを翻して引力光線を防ぐ。

 

しかし、衝撃によって落馬してしまう。

 

「クウッ!………」

 

すぐに体勢を立て直しながら、軍刀を構える弘樹。

 

「アーッハッハッハッハッ!!」

 

その弘樹に向かって高笑いと共に再び引力光線を放つキングギドラ・桃。

 

「ッ!!………」

 

周辺に着弾し、弘樹の周囲で爆発が連続で起こる。

 

「ハアッ!!」

 

しかし、そんな中で敢えて踏み込み、キングギドラ・桃を斬り付ける。

 

「ぐああっ!? お、オノレェッ!! 三下如きがぁっ!!」

 

するとキングギドラ・桃は、3つの口から同時に引力光線を発射!!

 

3つの引力光線が1つに合わさり、弘樹の足元に着弾する!

 

「!? うおわっ!!」

 

爆風に吹き飛ばされ、仰向けに倒れる弘樹。

 

「クッ!」

 

「させんっ!!」

 

すぐに起き上がろうとした弘樹だったが、キングギドラ・桃が巨大な足で踏みつけて来る。

 

「ガハッ!………」

 

弘樹はキングギドラ・桃と床の間に挟まれ、身動きが取れなくなってしまう。

 

「グウッ!!」

 

キングギドラ・桃を退かそうとする弘樹だがビクともしない。

 

「アーッハッハッハッハッ!! 所詮愛の力など、この程度だ! 邪悪の力の前には全てのモノが平伏すのだぁっ!!」

 

(オ、オイ! 段取りが違うぞ!?)

 

(桃ちゃん、完全に役に成り切っちゃって芝居を忘れちゃってる)

 

トリップしているかの様な様子でそう言い放つキングギドラ・桃だが、完全に芝居を忘れてしまっている為、舞台袖で控えている大洗機甲部隊の面々は大慌てとなる。

 

(マズイ! 止めないと!!)

 

(でも! お客さんはまだ芝居が続いていると思ってるし、ココで乱入したら滅茶苦茶になっちゃうよ!!)

 

(既に手遅れだと思うけどなぁ………)

 

桃を止めないとと言う楓だったが、蛍がそう言って止め、俊がツッコミを入れる。

 

と、その時………

 

『陸軍分列行進曲』が流れ始める。

 

(!? オイ! 何で此処で『陸軍分列行進曲』を流すんだ!?)

 

(いや! 自分は操作していません!)

 

地市が音響スタッフ役の機甲部隊員にそう言うが、そう返事が返って来る。

 

(何っ!?)

 

(あの、この音楽………外から聞こえませんか?)

 

そこで優花里がそう指摘する。

 

その言葉通り、今流れている『陸軍分列行進曲』は、ステージのスピーカーからではなく、校舎の外の方から聞こえて来ている。

 

その次の瞬間!!

 

突然多目的ホールの舞台上の壁が、爆発と共に吹き飛び、大穴が空いた!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々と観客達、そしてキングギドラ・桃と弘樹も、何が起こったのかと驚愕を露わにする。

 

やがてその大穴から………

 

『九七式中戦車』が姿を現した!!

 

(!? チハです!! それにあのマークは!?)

 

優花里が舞台袖でそう声を挙げると………

 

「ハーッハッハッハッ!!」

 

高笑いと共に九七式中戦車のハッチが開いて、『西 絹代』が姿を現した!!

 

「!? 西総隊長!?」

 

「西 絹代、見参! 義によって助太刀致ーすっ!!」

 

弘樹が驚きの声を挙げた瞬間に、絹代がそう言い放ち、九七式中戦車が発砲!

 

放たれた砲弾は、キングギドラ・桃を直撃した!!

 

「!? ギャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?」

 

重たい着ぐるみを着た桃が、まるで木の葉の様に宙に舞い、舞台の床の上に叩き付けられる!

 

「!!」

 

自由になった弘樹は、すぐさま起き上がり、キングギドラ・桃に向かって軍刀を構えて突撃!

 

「グウウ………」

 

「悪の呪術師! 覚悟ぉっ!!」

 

「!??!」

 

そして、大上段から一気に軍刀を振り下ろし………

 

キングギドラの真ん中の首を真っ二つにした!!

 

「…………」

 

根元の桃の顔まで刃が到達するかと思われた瞬間に、寸止めをする弘樹。

 

「ヒイイイイイイイイッ!? あ………」

 

恐怖の余り、桃はそのまま気絶。

 

その光景が、まるで本当に悪の呪術師が倒されたかの様に見える。

 

「…………」

 

倒れたキングギドラ・桃を一瞥すると、弘樹は軍刀を鞘へと納める。

 

「やったわね。さあ、行きなさい! 貴方を待っている人が居るわ!」

 

そこで絹代が、弘樹にそう言い放つ。

 

まるで話の流れを分かっているかの様に………

 

「お嬢様を目覚めさせる事が出来るのは、真にお嬢様を愛する者のキスだけ………貴方が真にお嬢様の事を愛しているのなら………口づけを」

 

「………ハッ!」

 

何処か含みがある様な絹代のセリフに、弘樹は一瞬戸惑いながらも、陸軍式敬礼をすると、みほの元へと急いだ。

 

(! 暗転だ! すぐにセットを組み換えろ!!)

 

((((((((((!?))))))))))

 

とそこで、敏郎がそう呼び掛け、大洗機甲部隊と整備部の面々は大慌てて劇の続きに取り掛かる。

 

「フフフ………」

 

それに合わせる様に、絹代が乗る九七式中戦車も後退し、壁に空けた大穴から出て行く。

 

直後に整備部の面々が壁を応急修理で塞ぐ。

 

そして、舞台上のセットは組み替えられ………

 

照明が点灯すると、ベッドの上で眠っているみほの姿が現れる。

 

直後に、舞台袖から弘樹が登場する。

 

「おお………正しくあの時、森で出会った人だ」

 

登場した弘樹が、みほの姿を見てそう台詞を言う。

 

「もう2度と会えないと思っていたが………」

 

そう言いながら、眠っている演技をしているみほの傍へと寄る弘樹。

 

(ふえええ~~~………)

 

一方、眠っている演技をしているみほは、表にこそ出していないが、いよいよクライマックスのシーンと言う事もあり、緊張の渦の中に居た。

 

(い、いよいよなんだ………)

 

「お嬢様………小官の愛で、貴方に掛けられた呪いを解いて差し上げましょう」

 

みほの緊張が高まる中、弘樹はそう言って、顔をみほへと近づける。

 

尚、流石に公衆面前でホントにキスは恥ずかしいとの事で、観客からそう見える様にする事になっている。

 

その際に沙織が『公衆面前じゃなかったら良いの?』と問い質し、みほが真っ赤になって黙り込んだのは余談である。

 

「………誰?」

 

と、キスシーンが終わり、みほが目を覚ます。

 

「小官です、お嬢様」

 

「陸軍の………少尉さん」

 

「お助けに参りました。また貴方とお会い出来て………とても、嬉しいです」

 

「少尉さん………」

 

そこで黙り込むみほ。

 

本来ならばこの後も台詞が続く筈である。

 

突然黙り込んだみほに、観客達はざわめき立つ。

 

(みほくん、如何した?)

 

小声でみほにそう尋ねる弘樹。

 

(………台詞、忘れちゃった)

 

(!? 何っ!?)

 

観客達に見えない様に青い顔をするみほと、ポーカーフェイスを保ちながら驚く弘樹。

 

(ちょっ!? みほちゃん台詞忘れてるぞ!!)

 

(カ、カンペを!!)

 

(それが、さっきのドサクサで何処かに行ってしまって………)

 

(ん何ぃっ!?)

 

舞台袖に控えていた大洗機甲部隊の面々も大慌てとなる。

 

(ど、如何しよう!?………)

 

(…………)

 

益々青褪めて行くみほを見ながら、弘樹は何かを考える様子を見せる。

 

そして次の瞬間!

 

弘樹はみほの事を、横抱き………

 

所謂、『お姫様抱っこ』で抱え上げた!

 

「!? ふええっ!?」

 

(! 明かりを消せ! そして真上からスポットライトだっ!!)

 

(! ハ、ハイッ!!)

 

みほが驚きと戸惑いの混じった声を挙げていると、敏郎が何かを察した様にそう指示を飛ばし、照明が消えて、弘樹とみほの姿だけが、真上からスポットライトの光で照らされる。

 

するとそこで、光の粉が降り注ぐようなエフェクトが掛かった。

 

その神秘的な光景に、観客達は全員見惚れる。

 

「…………」

 

そして、抱き抱えられているみほも、弘樹の毅然とした顔を間近から見て、頬を染めていた。

 

『お嬢様の呪いは解けました。そして、侯爵の屋敷と大洗の町も元通りとなり、美しさを取り戻したその町で、少尉とお嬢様は末永く………いつまでも幸せに暮らしましたとさ………御終い』

 

沙織の締めのナレーションが響く中、舞台の幕がゆっくりと下りる。

 

そして完全に幕が降り切ると、観客達から割れんばかりの拍手が送られたのだった。

 

様々なトラブルやドタバタがありながらも………

 

最後は咄嗟の弘樹のアドリブの行動と、沙織のナレーションが劇を上手く纏め、何とか終了させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

大洗機甲部隊による演劇、終了です。
一応は最後までやり遂げましたけど、内容はホント、ドタバタものでしたね(笑)
最後は弘樹のアドリブの行動で締めました。
彼の場合、台詞のアドリブよりも行動のアドリブの方が似合いそうなので、あんな感じにしました。

さて、次回で学園祭編も終了。
女子学園側の方で、あんこうチームのカップリングを描写したので、今回は他チームのカップリングを紹介も兼ねて描写して行こうかと。
人数が人数ですので多少纏まって描写しますの、予めご了承ください。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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