ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

79 / 287
第79話『舩坂 弘樹、怒りの雪中戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第79話『舩坂 弘樹、怒りの雪中戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の第5回戦にて、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の罠に嵌り、完全包囲された大洗機甲部隊………

 

降伏勧告が出され、3時間の猶予が与えられたが、それも士気を削ぐ為のプラウダ&ツァーリの作戦であった。

 

寒さと空腹、そして大洗女子学園廃校の話により、士気の低下した大洗機甲部隊………

 

遂には歩兵部隊の間で喧嘩が始まってしまう………

 

戦わずして大洗機甲部隊崩壊かと思われた瞬間!

 

みほが弘樹を真似て、部隊の一同を厳しく叱咤した!!

 

そして、みほが怒鳴ると言う予想外の光景を目にして呆然としていた一同の前で、『あんこう踊り』を始めた。

 

更に、歩兵部隊達も歩兵達の応援歌『突撃軍歌ガンパレード・マーチ』を斉唱。

 

崩壊しかけていた士気を持ち直させたのだった。

 

いよいよタイムリミットが迫り、大洗機甲部隊の反攻作戦が開始されようとした時………

 

通信回線に、弘樹の声が響き渡った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5回戦・試合会場………

 

北緯50度を超えた、雪の降り頻る雪原地帯の窪地………

 

大洗機甲部隊が立てこもっている窪地に在る廃村の中央・廃墟となった大きな教会跡の中………

 

「舩坂くん! 舩坂くんなんだね!!」

 

「何っ!? 弘樹!?」

 

「舩坂先輩が来たんですか!?」

 

「あの野郎! 散々待たせやがってっ!!」

 

通信回線から弘樹の声が聞こえた事で、みほが思わず戦車の外まで響く歓喜の声を挙げ、周辺に居た大洗歩兵部隊の面々が集まって来る。

 

「忍! 回線を繋いで!!」

 

「ハイ、キャプテン!!」

 

「コッチも繋いで!」

 

「ちょっと待って~!」

 

更に、他の戦車チームも、みほが受けている通信回線を開く。

 

『西住総隊長。申し訳ありません………試合開始までには戻る積りでしたが間に合わず、この様なタイミングでの参戦となり………』

 

「ううん、良いんだよ、気にしないで。舩坂くんが来てくれただけで十分心強いよ」

 

そんな中、弘樹はみほに遅参の件を謝罪すると、みほはそう返す。

 

『感謝します………そちらの状況は把握しています。どの様な作戦をお考えで?』

 

それを聞いた弘樹は、すぐさま戦闘行動へ移るべく、みほがどの様な作戦を立てているかを問い質す。

 

「あ、うん………私が考えている作戦は………『ところてん作戦』だよ」

 

そしてみほは、立案している作戦………

 

『ところてん作戦』について説明し始める。

 

 

 

 

 

現在、大洗機甲部隊を包囲しているプラウダ&ツァーリ機甲部隊の包囲網には、1箇所だけ防御が緩い場所が在る。

 

しかしそれは明らかに罠である。

 

そこを突いて脱出しようとしたところを、包囲網の更に外に居る予備戦力が駆け付け、また包囲されるのがオチである。

 

フラッグ車を撃破しようとしても同じ事である。

 

ならば敵の意表を突く為、敢えて包囲網の中で最も敵戦力が集まっている場所………

 

つまり、カチューシャやノンナ、デミトリやピョートル達が居る本陣へと突っ込むのである。

 

無論コレは、玉砕覚悟の無謀な突撃では無い。

 

敵の本陣を突いて攪乱し、予備戦力を足止めしてから、主力を反転させ、フラッグ車の撃破に向かう。

 

コレがみほの考えた『ところてん作戦』の大まかな概要である。

 

 

 

 

 

「………以上が作戦の概要です」

 

『流石は西住総隊長。小官が思っていた通りの作戦です』

 

みほが作戦の説明を終えると、弘樹はそう言葉を返した。

 

「舩坂くんは今何処に居るの?」

 

『包囲しているプラウダ&ツァーリ機甲部隊のすぐ近くです。サンショウウオさんチームとアリクイさんチーム、タコさん分隊とおおかみさん分隊、それに砲兵部隊のメンバーも近くまで来て待機しています』

 

「じゃあ、サンショウウオさんチーム達には脱出のタイミングに合わせて援護砲撃を行ってくれる様に言って下さい」

 

『了解しました。小官も微力ながら援護します』

 

「舩坂くんも? 如何言う事?」

 

弘樹自身も脱出の援護を行うと言う台詞に、みほは首を傾げる。

 

『小官に策が有ります。兎に角、小官を信じて、作戦通りにプラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣に突っ込んで下さい』

 

詳しくは説明せず、只自分を信じて作戦通りにプラウダ&ツァーリ機甲部隊に突っ込んでくれと言う弘樹。

 

「………分かったよ。信じるよ、舩坂くん」

 

そう言われて信じないみほではなかった。

 

『感謝します。では、作戦開始時にまた………』

 

弘樹はそう言い残し、通信を切る。

 

「…………」

 

通信が切れた後も、ヘッドフォンを耳に押し当て、余韻に浸るかの様な様子を見せるみほ。

 

「みぽりん………」

 

「みほさん………」

 

「西住殿………」

 

「…………」

 

そんなみほに視線を向ける沙織、華、優花里、麻子。

 

「………!」

 

と、不意にみほは立ち上がると、ハッチを開けて車外に姿を晒す。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

弘樹との通信を車外で聞き耳立てていた大洗歩兵達が驚く。

 

「舩坂くんが来てくれました。包囲網突破援護の策が有るそうです。この試合………勝てます!!」

 

そんな大洗歩兵達に向かって、みほはそう言い放つ。

 

「よっしゃあっ!!」

 

「コレで百人力だぜぇっ!!」

 

「ひゃっほーっ!!」

 

「大洗バンザーイッ!!」

 

途端にテンションが上がる大洗歩兵達。

 

普通に考えればこの状況で歩兵が1人加わったところで何の意味も為さない。

 

だが、弘樹は大洗機甲部隊にとって、みほと並ぶ象徴の様な存在………

 

弘樹が居ると言うだけで、大洗機甲部隊の士気は大きく跳ね上がる。

 

「では、コレから、敵の包囲網を一気に突破する『ところてん作戦』………略して『と号作戦』を開始します! パンツァー・フォーッ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そして、みほが作戦の開始を告げると、大洗機甲部隊の面々からは、勇ましい掛け声が挙がったのだった。

 

『さあ、大洗機甲部隊は如何やら試合を続行する様です。果たしてプラウダ&ツァーリ機甲部隊に完全に包囲されているこの状況から如何出るのでしょうか!?』

 

『普通に考えれば先ず勝ち目は無いんですが、何せ逆転に次ぐ逆転勝利をしてきた大洗機甲部隊ですからね。何かトンでもないモノを見せてくれるのではないかと、正直期待しています』

 

その様子を見ていた放送席のヒートマン佐々木とDJ田中がそう実況を流す。

 

何時の間にか吹雪は完全に収まり………

 

雲も無くなって月と星の明かりが煌めき………

 

まるで昼間かと錯覚しそうな明るさが辺りに広がっていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

包囲しているプラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣では………

 

「敢えて包囲網に緩いとこ作ってあげたわ。奴等はきっとそこを衝いて来る。衝いたら挟んで御終い」

 

T-34-85のハッチから姿を晒しているカチューシャが勝ち誇る様にそう言う。

 

如何やら予想通り、包囲網の緩い所は罠だった様である。

 

「へっへっへっ………覚悟しろよ~、大洗の連中め~」

 

「包囲したら1人残らず蹂躙してやるぜ」

 

若干ゲスい笑みを浮かべたピョートルとマーティンがそんな事を言い合う。

 

「上手く行けば良いんですが………」

 

「総隊長、油断は禁物ですぞ」

 

しかし、ノンナがそう呟き、デミトリもカチューシャにそう注意する。

 

「カチューシャが立てた作戦が失敗するワケないじゃない! それに第2の策で、万が一フラッグ車を狙いに来ても、その時は隠れてるKV-2がちゃんと始末してくれる。用意周到なる偉大なカチューシャ戦術を前にして、敵の泣きべそ掻くのが目に浮かぶわ」

 

すっかり勝った気で居るカチューシャ。

 

本陣にて展開している部隊の面々も、既に勝利を確信しているのか、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。

 

「……………」

 

と、そんな中で只1人………

 

仏頂面を浮かべている、例の『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』が在ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊が立てこもっている窪地に在る廃村の中央・廃墟となった大きな教会跡の中………

 

いよいよ『ところてん作戦』、略して『と号作戦』が発動しようとしていた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の一同は、全員が緊張の様子を露わにし、作戦開始をじっと待っている。

 

「………小山、行くぞ」

 

「ハイ!」

 

と、杏と柚子がそう言い合ったかと思うと、カメさんチームの38tが前進。

 

それに続く様に、他のチームの戦車達も動き出す。

 

歩兵部隊の面々も、車両に乗ってそれに随伴する。

 

そして教会の入り口が近づいた瞬間………

 

「突撃!」

 

杏がそう言い放ち、38tは一気に加速して教会を飛び出す!

 

「バンザーイッ!!」

 

「「「「「「「「「「バンザーイッ!!」」」」」」」」」」

 

更に、後続の戦車部隊と随伴歩兵分隊もスピードを挙げて、万歳の掛け声と共に、一気に雪崩出た!!

 

「「「「「「「「「「ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

途端に、プラウダ&ツァーリ機甲部隊からの砲撃や銃撃が襲い掛かる。

 

大洗機甲部隊は砲火に晒されながらも、包囲網の薄い場所を目指す。

 

「フッ………予想通りね。流石私」

 

それを見て策が嵌ったと思い、自画自賛するカチューシャ。

 

だが、次の瞬間!!

 

大洗機甲部隊の面々は一斉に進路変更!!

 

「え?」

 

「何?」

 

「!?」

 

突如進路を変えた大洗機甲部隊の姿にカチューシャ、ピョートル、マーティンが首を傾げた瞬間………

 

大洗機甲部隊は、フラッグ車であるアヒルさんチームの八九式を部隊の中心に据えて守る様に陣形を取り、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣目掛けて突っ込む!

 

「コッチッ!? 馬鹿じゃないの!! 敢えて分厚いとこ来るなんてっ!!」

 

カチューシャが驚きながらヘルメットを被る。

 

「慌てんな姉ちゃん! 意表は衝かれたが、コッチの戦力は圧倒的なんだ!!」

 

「力でねじ伏せてやりましょう!」

 

そこで、ピョートルとマーティンがそう声を挙げる。

 

「言われるまでもないわ! 返り討ちよっ!!」

 

「ロケット弾で攻撃しろぉっ!!」

 

と、カチューシャがそう叫ぶと、ツァーリ歩兵部隊の分隊長らしき歩兵がそう声を挙げ、自走式多連装ロケット砲のカチューシャ部隊がロケット弾を大洗機甲部隊へと向ける。

 

かつてドイツ軍に『スターリンのオルガン』と呼ばれ恐れられたロケット弾の雨が、大洗機甲部隊に降り注ごうとする。

 

すると、その瞬間!!

 

「………!!」

 

『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』が、1台のカチューシャに向かって手榴弾を投げつけた!

 

手榴弾が爆発し、装備されていたロケット弾が誘爆!

 

自走式多連装ロケット砲のカチューシャが吹き飛び、更に暴発したロケット弾が周囲の自走式多連装ロケット砲のカチューシャ部隊を誤爆!!

 

更に誤爆された自走式多連装ロケット砲のカチューシャが暴発するという、連鎖反応が起こり始める。

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

「た、助けてくれぇーっ!!」

 

「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

当然被害は自走式多連装ロケット砲のカチューシャ部隊だけに留まらず、周辺に展開していたツァーリ歩兵部隊や、プラウダ戦車部隊にも降り注ぐ!!

 

ツァーリ歩兵が数10人単位で戦死判定を食らって行き、プラウダ戦車部隊の中でも、T-34-85が2両、ISU-122、SU-85が直撃弾を喰らい、白旗を上げる。

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

「ん何ぃっ!?」

 

「な、何が起こったんだ!?」

 

「クッ! 状況を報告しろっ!!」

 

突如本陣内の戦力が多数撃破された事に、カチューシャ、ノンナ、ピョートル、マーティンが驚愕し、デミトリが慌てて状況報告を求める。

 

「…………」

 

「オイッ! 如何言う積りだっ!!」

 

とそこで、この事態の張本人である『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』に、ツァーリ歩兵部隊の分隊長の1人が詰め寄る。

 

と、その瞬間!!

 

「!!」

 

『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』は、近寄って来たツァーリ歩兵部隊の分隊長の1人を、チョークスリーパーで拘束した!

 

「ゴハッ!?………」

 

「分隊長!?」

 

それに気づいたその分隊長の分隊員達が近づいて来ると………

 

「!!」

 

ツァーリ歩兵部隊の分隊長の1人が持っていたDP28軽機関銃を奪い、近づいて来たその分隊長の分隊員達に向かって掃射した!!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

「な、何をするぅっ!?」

 

「止めろぉっ! 俺達は味方だぁっ!!」

 

『味方と思っていた相手』から撃たれると言う予想外の事態に、その分隊長の分隊員達は対応出来ず、瞬く間に全員が戦死判定を受けた。

 

「!? お前っ!!」

 

「!!」

 

と、別の分隊の隊員達がその『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』に気付くが、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』は分隊長を拘束したまま盾にし、DP28軽機関銃を薙ぎ払う様に撃ち続ける!

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

次々と戦死判定者を出して行くツァーリ歩兵部隊。

 

「貴様! 我等が偉大なる母校を裏切る積りかぁっ!!」

 

拘束されて盾にされているツァーリ歩兵部隊の分隊長が、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』に向かってそう叫ぶ。

 

「………プラウダとツァーリを母校に持った覚えは無い」

 

だが、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』はそう言い返す。

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「ええいっ! あの裏切り者を撃てぇっ!!」

 

とそこで、砲兵部隊の分隊長が、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』を指揮棒で指しながらそう言い放つ。

 

「し、しかし! それでは拘束されている歩兵部隊の分隊長殿と周辺の味方まで巻き込んでしまいます!!」

 

だが、野戦砲で撃てば、当然拘束されている歩兵部隊の分隊長は元より、周囲に居る味方歩兵まで巻き込んでしまうと言うツァーリ砲兵。

 

「それが如何した! 多少の犠牲が出ようとも、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の名に掛けて、あの裏切り者を始末するのだ!! それに奴の周りに居る連中の大半は『非正規部隊』だ!!」

 

しかし、歩兵部隊の分隊長は、そう非情な指示を下す。

 

「で、出来ません!」

 

「貴様も裏切り者だぁっ!! 粛清っ!!」

 

ツァーリ砲兵が出来ないと言った瞬間!

 

砲兵部隊の分隊長は、そのツァーリ砲兵に向かってTT-33を発砲した!!

 

「うわぁっ!?………」

 

頭に被弾したツァーリ砲兵は倒れ、戦死の判定を受ける。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「そいつと同じ目に遭いたくなかったら、大人しく命令に従えっ!!」

 

驚愕する他のツァーリ砲兵達に向かって、砲兵部隊の分隊長はそう言い放つ。

 

「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

それを受けて、恐怖に駆られたツァーリ砲兵の1人が、悲鳴に似た叫び声を挙げながら砲撃!

 

他のツァーリ砲兵達も、次々に榴弾砲を撃ち始めた!!

 

榴弾が次々と降り注ぎ、ツァーリ歩兵部隊の分隊長を拘束している『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』が居る場所で爆発する!!

 

「「「「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

「!?」

 

巻き込まれたツァーリ歩兵達が次々と戦死判定を受けて行く中、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』の傍にも榴弾が着弾!!

 

爆煙で、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』の姿が見えなくなる。

 

「やったぞっ!!」

 

仕留めたと思い、歓声を挙げるツァーリ砲兵部隊の分隊長。

 

榴弾が降り注いだ場所には、巻き添えを食って戦死判定を受けたツァーリ歩兵達が倒れ、榴弾の爆発による炎が辺り一帯に燃え広がっている。

 

と、その時………

 

その炎の中に、1つの影が現れた。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

驚愕して動きが止まるプラウダ&ツァーリ機甲部隊。

 

「…………」

 

その影は、『妙に防寒着をキッチリと着込んでいるツァーリ歩兵』だった。

 

すると………

 

炎が引火したのか、そのツァーリ歩兵の防寒着が燃え上がる。

 

やがて、完全に防寒着が燃えたかと思うと、そこには………

 

「…………」

 

旧大日本帝国陸軍の寒冷地用戦闘服を着込み、右腕に大洗機甲部隊、左腕にとらさん分隊の部隊章を付けた歩兵………

 

『舩坂 弘樹』の姿が現れた。

 

「ふ、舩坂 弘樹!?」

 

「い、何時の間に!?」

 

「クッ! 急増員したのが仇になったか!!」

 

ピョートルとマーティンが驚愕し、デミトリがそう苦々しげに言い放つ。

 

如何やら、急増員で一気に歩兵人数を増やした為、隊員同士や分隊長でさえ、弘樹の変装を見破る事が出来なかった様だ。

 

「…………」

 

燃え盛る炎を背に、堂々と歩いてくる弘樹。

 

その姿には正に、炎の臭いが染みついている………

 

「! ゲホッ! ゴホッ! ガホッ!」

 

そしてそんな弘樹の姿を見たノンナが、激しく………

 

むせる

 

「ノンナ副隊長!?」

 

「如何しました!?」

 

同乗員が、突然咳き込んだノンナを見て慌てる。

 

「い、いえ、大丈夫です。只の生理現象です………」

 

ノンナはそう返しながら、改めて弘樹の姿を見やる。

 

「アレが舩坂 弘樹………成程………確かに、コレはむせさせられますね………まさに地獄を見れば心が乾くようです」

 

そして笑いながらそんな事を言い放つのだった。

 

「何やってんのよ! たかが歩兵1人! 捻り潰してやりなさいっ!!」

 

とそこで、カチューシャの怒声交じりの命令が飛ぶ!

 

「「「「「「「「「「!? ウラアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

それで我に返ったツァーリ歩兵達が、弘樹に向かって殺到する。

 

………が、次の瞬間!!

 

ズダダダッ!!と言う射撃音が次々と響き、弘樹に向かって突撃して行ったツァーリ歩兵達の『横』から、銃弾が飛び交った。

 

「「「「「「「「「「?! うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」

 

突如横から飛んで来た弾丸に、弘樹に殺到していたツァーリ歩兵の大半が撃ち抜かれ、戦死判定を受ける。

 

「なっ!?」

 

生き残ったツァーリ歩兵の1人が驚きながら横を見やると、そこには………

 

「!? アンタ達、何の積りよっ!!」

 

カチューシャが再び怒声を挙げる。

 

何故なら、横からの弾幕の正体は………

 

『非正規部隊』のツァーリ歩兵が放ったものだったからだ!!

 

「やってられねえんだよ! もうこんな事っ!!」

 

とそこで、『非正規部隊』のツァーリ歩兵の1人がそう声を挙げる。

 

「!? 何ですってっ!?」

 

「その通りだ! 無理矢理借り出された挙句、仲間から撃たれるだなんて真っ平だ!!」

 

「こうなったら試合もクソもあるか! お前等を叩き潰してやるっ!!」

 

それを皮切りに、非正規部隊のツァーリ歩兵達から次々と怒声が挙がる。

 

如何やら、溜まっていた鬱憤と不満が、先程の粛清やフレンドリーファイヤで爆発した様である。

 

「ッ! アンタ達全員シベリア送りよ! 単位とテスト免除も無しよっ!!」

 

「いるか! そんなモンッ!!」

 

「シベリア送り上等! コレ以上我慢したら人間じゃねえっ!!」

 

脅す様にそう叫ぶカチューシャだったが、怒りで頭に血が上っている非正規部隊のツァーリ歩兵達には意味を為さない。

 

「革命だぁーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そして、その台詞と共に、非正規部隊のツァーリ歩兵達は、一斉に正規部隊のツァーリ歩兵、そしてプラウダ戦車部隊に襲い掛かった!!

 

『あーっと!! プラウダ&ツァーリ機甲部隊! まさかの内紛発生だぁーっ!!』

 

『いや~、私もこの実況の仕事を長くやってますけど、これ程の内紛は見た事ないですよ………』

 

内紛発生と言う事態に、実況のヒートマン佐々木とDJ田中も驚きを隠せずに実況する。

 

「このぉっ!! 全員粛清よっ!! 粛清してやるわっ!!」

 

と、カチューシャがそう叫んだ瞬間!!

 

ズドドドドドドッ!!と言う爆音と共に、機関銃弾と思われる弾丸が、カチューシャの乗るT-34-85の周辺に展開していたツァーリ歩兵達を薙ぎ払う様に浴びせられる!!

 

「うわぁっ!?」

 

「ぎゃああっ!?」

 

「!?」

 

すぐさまカチューシャが銃弾が飛んで来た方向を見やるとそこには………

 

「…………」

 

撃破された戦車から分捕ったSGMBを持って構え、ベルト給弾式の弾薬を身体に巻き付けている弘樹の姿が在った。

 

「…………」

 

無言の仏頂面のまま、SGMBを撃ち捲る弘樹。

 

カチューシャの目には、その弘樹の背後に………

 

『右肩を血の様に赤く染めた3点ターレット式のカメラレンズを持つ緑色のロボット』の姿が浮かんだ様に見えた。

 

「!? ヒッ!?」

 

その幻影に、カチューシャが恐怖した瞬間!

 

SGMBの弾丸が、カチューシャの乗るT-34-85の装甲にも当り、火花を散らした!!

 

「!? キャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

カチューシャは悲鳴を挙げて慌てて車内に引っ込むと、ハッチを閉めて、車長席で頭を押さえる様に縮こまる。

 

「カチューシャ総隊長!?」

 

「いやあっ! 怖いっ! アイツ怖いよぉっ!!」

 

半ば泣き声でそう叫び、狂乱したかの様な様子を見せるカチューシャ。

 

「総隊長! お気を確かにっ!!」

 

『総隊長殿! 如何されたのですか!?』

 

『指示を! 指示を下さいっ!!』

 

途端に、総隊長からの指示が途切れ、只でさえ混乱していたプラウダ&ツァーリ機甲部隊は更に混乱する。

 

「落ち着け! 全員態勢を立て直すんだっ!!」

 

慌ててデミトリが代わる様に指揮を取ろうとしたが………

 

直後に砲撃音がして、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣の中に砲弾が着弾する。

 

「!?」

 

「行っけーっ!!」

 

「バ、バンザーイッ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

デミトリが砲弾の飛んで来た方向を確認すると、そこにはクロムウェルと三式を引き連れて突撃して来る、タコさん分隊とおおかみさん分隊の歩兵達の姿が在った。

 

「撃てぇーっ!!」

 

更に、窪地の稜線部分にも、明夫達を中心とした砲兵部隊が展開し、野砲やカノン砲、榴弾砲、歩兵砲での援護砲撃を開始する。

 

「!? 遅れていた別部隊か!?」

 

「んな馬鹿な!? 俺が送った猟犬部隊は如何したんだ!?」

 

デミトリが声を挙げると、ピョートルが信じられないと言う声を挙げる。

 

「ど、同志ピョートルーッ!!」

 

とそこで、サンショウウオさんチーム達を襲撃した別働隊の生き残りの歩兵の1人が、息も絶え絶えな様子で現れる。

 

「!? マスティフ! こりゃ一体如何言う事だ!?」

 

「べ、別働隊は僅かな人数を残して壊滅です! 戦車部隊も全滅しました!!」

 

「!? ん何ぃーっ!?」

 

マスティフと呼ばれたツァーリ歩兵からの報告を受け、ピョートルは何度目とも知れない驚きの声を挙げる。

 

「突然戦車部隊がやられ、重機関銃を持って構えて撃って来た化け物の様な歩兵が現れて………」

 

「重機関銃を持って構える!?」

 

そう言われて、弘樹の姿を再確認するピョートル。

 

「…………」

 

弘樹は相変わらず、SGMBを持って構えて、ツァーリ歩兵を薙ぎ払う様に撃ち抜いている。

 

「!? アイツか!?」

 

「貴様! 何でもっと早く報告に来なかったっ!!」

 

ピョートルがそう声を挙げた瞬間、マーティンがマスティフと呼ばれたツァーリ歩兵に向かって怒鳴る。

 

「も、申し訳ありません! 通信機は全てやられてしまい、皆散り散りに逃げた為、現在位置が分からず、自分もやっとの思いで辿り着いた次第で………」

 

「ええい! 貴様粛清だぁっ!!」

 

マーティンがそう言ってトカレフT-33をホルスターから抜く。

 

「ヒイイッ!?」

 

「マーティン! 今はそんな事をやっている場合ではない!!」

 

マスティフと呼ばれたツァーリ歩兵が怯えると、デミトリがそう言って止める。

 

「大洗機甲部隊の本隊、突っ込んで来ますっ!!」

 

「「「!?」」」

 

とそこでそう報告が挙がり、ピョートル、マーティン、デミトリは慌てて大洗機甲部隊の本隊の方を振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊・本隊………

 

「策って………」

 

「只アイツが暴れてるだけじゃねえかよ!」

 

弘樹の策と言うのが、自身が本陣に殴り込んで暴れまわる事だったのを見て、みほは苦笑いし、地市はそうツッコミを入れる。

 

「でも、敵は大混乱です」

 

と、楓がそう言う様に、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣は大混乱状態だった。

 

「流石やで! コリャ、弘樹にしか出来ん戦法や!!」

 

「この混乱に乗じます! 一気に突撃をっ!!」

 

大河がそう言い放つと、みほのそう言う指示が飛び、大洗機甲部隊の本隊は速度を上げ、大混乱のプラウダ&ツァーリ機甲部隊本陣に突っ込む!

 

「! 大洗! クッ! 行かせるかぁっ!!」

 

とそこで、生き残っていた1両のT-34-85が、突撃して来る大洗機甲部隊の前に立ちはだかる。

 

「河嶋! 砲手を代われ! お前は装填手だ! 蛍は通信手を頼む!」

 

「ハッ!」

 

「分かったっ!!」

 

すると、先頭を行って居たカメさんチームの38tの中で、杏が砲手となり、桃が装填手、そして蛍が通信手と配置転換を行った。

 

T-34-85が発砲し、発砲炎が煌めく。

 

「やっぱ37mmじゃ真面にやっても抜けないよねぇ。小山! ちょっと危ないけど、ギリまで近づいちゃって!!」

 

「ハイッ!!」

 

杏の指示を受け、柚子は38tを更に加速させて、立ちはだかっているT-34-85に接近して行く。

 

「馬鹿め! 良い的だっ!!」

 

突っ込んで来る38tに主砲を向けるT-34-85。

 

「…………」

 

杏は照準器越しに、その主砲の動きを注視する。

 

そして、T-34-85の主砲が完全に円になって見えた瞬間!

 

「来るぞっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

杏がそう声を挙げたと同時に柚子が38tの車体を左へと流す。

 

直後にT-34-85が発砲!

 

砲弾は38tの僅かに右を掠める様に通過した!

 

「!? かわしただと!?」

 

かわされた事に驚愕するT-34-85の車長。

 

直後に今度は38tが発砲!

 

砲弾はT-34-85の砲塔基部を直撃!

 

T-34-85は撃破されたと判定を受け、白旗を上げた!

 

その撃破されたT-34-85の横を擦り抜けて、大洗機甲部隊の本隊はプラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣へと突入する!

 

「プラウダ&ツァーリ機甲部隊の本陣に入ります! ですが、今は敵を撃破する事は忘れて下さい! 作戦通り、敵本陣の中を突っ切った後に離脱! その後主力部隊を反転させてフラッグ車の撃破を狙います! 他の部隊は、アヒルさんチームの防衛を!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そうみほの指示が飛び、大洗機甲部隊メンバーの勇ましい返事が返って来る。

 

逆転なるか?………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に姿を見せた舩坂 弘樹!
大洗機甲部隊の脱出作戦である『ところてん作戦』を支援する為に、単身敵陣の中で大暴れ!
その姿は正に今回のサブタイトルの元ネタであるベトナム帰還兵!(笑)

さあ、いよいよ逆転です。
まだまだプラウダ戦の話を続きますが、ココから大きく動き始めます。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。