ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第77話『決死の偵察です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第77話『決死の偵察です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ&ツァーリ機甲部隊との試合にて、慢心により相手の罠に嵌り、完全に包囲されてしまった大洗機甲部隊………

 

降伏を勧告され、降参も止むを得ないと考えるみほだったが………

 

桃の口より、大洗女子学園廃校の話が最悪のタイミングで飛び出し、降伏は出来なくなる………

 

最後まで戦おうと、損傷した戦車の修理に掛かる大洗機甲部隊だったが………

 

希望であった唯一包囲を逃れていたサンショウウオさんチーム達にも、プラウダ&ツァーリ機甲部隊が迫る………

 

まだそれを知らない本隊では、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の戦車部隊の正確な配置を知る為に………

 

偵察兵部隊が、決死の偵察へ向かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5回戦・試合会場………

 

北緯50度を超えた、雪の降り頻る雪原地帯………

 

「アゴーニッ!!」

 

乗員の叫びと共に、ISU-152の主砲が火を噴く!

 

「「「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」」

 

砲弾はアリクイさんチームの三式の傍に着弾し、三式の車体が一瞬浮き上がる。

 

「「「「「ウラァーッ!!」」」」」

 

更に、ツァーリ歩兵達が、雄叫びを挙げながら突撃して来る。

 

「撃て撃て!」

 

「撃ちまくれぇーっ!!」

 

突っ込んで来るツァーリ歩兵達に、タコさん分隊とおおかみさん分隊の歩兵達は、次々と銃撃を加える。

 

「ぐあっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

銃弾を浴びたツァーリ歩兵達が次々と倒れて行く。

 

「「「「「ウラァーッ!!」」」」」

 

しかし、戦死判定を受けた仲間達を文字通り踏み越えて、ツァーリ歩兵達は突撃を続行する。

 

「何なんだ、アイツ等!?」

 

「倒れた仲間を踏み越えて来るだなんて、イカれてるぜ!!」

 

その異様とも言える突撃の様に、タコさん分隊とおおかみさん分隊の歩兵達の間に恐怖にも似た感情が湧き上がる。

 

「死ねぇっ!!」

 

「我が学園艦の栄誉の為にぃーっ!!」

 

「同志カチューシャの為に!!」

 

「ツァーリ万歳ーっ!!」

 

とそこで、遂に大洗歩兵部隊を射程内に納めたツァーリ歩兵達からも、銃撃が始める。

 

「うわぁっ!?」

 

「ぐはあっ!?」

 

シモノフM1936半自動小銃やDP28軽機関銃の銃撃を受けた大洗歩兵達が、次々と戦死判定を受けて倒れ伏す。

 

「いけない! 明菜ちゃん! 歩兵の皆を支援して!」

 

「りょ、了解っ!!」

 

それを見たサンショウウオさんチームのクロムウェルが、主砲をツァーリ歩兵達に向ける。

 

「アゴーニッ!!」

 

しかしそこで、KV-1の放った76.2mm砲弾が、クロムウェルに命中する!

 

「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」」」」

 

車内に走る凄まじい振動に悲鳴を挙げるサンショウウオさんチーム。

 

幸い角度が浅かった為、砲弾は弾かれて明後日の方向に飛んで行った。

 

「駄目だ! やられちゃうよぉっ!!」

 

「チキショー! ココまでなのかよ!!」

 

しかし、士気の低下していたサンショウウオさんチームからはそんな声が挙がる。

 

「馬鹿野郎! 弱音吐いてる暇が有ったら弾撃て、弾ぁっ!!」

 

と、そんなサンショウウオさんチームに白狼の叱咤が飛ぶ。

 

「白狼!」

 

「俺は諦めねえぞ………絶対に諦めないぞっ!!」

 

飛彗が声を掛けた瞬間、白狼はそう叫び、ツェンダップK800Wのアクセルを全開にして、ツァーリ歩兵達の中へと突っ込んで行った!

 

「! 白狼!」

 

「何やっとんねん!?」

 

単騎特攻した白狼に、海音と豹詑が思わず声を挙げる。

 

「ベオウルフが突っ込んで来ます!」

 

「馬鹿め! 良い的だ!! 全員、撃てぇっ!!」

 

ツァーリ歩兵の1人から報告を受けた、ツァーリ歩兵部隊の分隊長と思わしき歩兵が、そう号令を飛ばす。

 

それにより、ツァーリ歩兵部隊の攻撃が、白狼へと集中する!

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

だが白狼は雄叫びを挙げながら突撃を続行する。

 

銃弾が顔や身体のすぐ傍を掠め、足元に落ちて来た手榴弾が巻き上げた雪片と土片を浴びながらも、SU-76に向かってモロトフ・カクテルこと火炎瓶を投げつけた!

 

火炎瓶はSU-76に命中すると、忽ち中身の液体が飛び散って炎上。

 

SU-76のエンジンを誘爆させ、白旗を上げさせた!

 

「如何だっ!」

 

「オノレッ! よくも同志を!!」

 

「コレで如何だ!!」

 

と、白狼はそう叫んだ瞬間、ツァーリ歩兵部隊の中に居た工兵が、ネットの様な物を、白狼の進行方向に向かって投げた。

 

ネットの様な物は白狼の前に落ち、白狼はバイクに乗ったまま、そのネットの様な物の上を通過する。

 

「!? うおわっ!?」

 

すると、そのネットの様な物がバイクの車輪に絡み付き、車輪が動かなくなりバイクは急停車。

 

白狼はバイクから投げ出されて、ネットの様な物の上に落ちる。

 

「!? ピアノ線だと!?」

 

そのネットの様な物が、螺旋状に編み込まれたピアノ線である事を確認した白狼が叫ぶ。

 

かつてノモンハン事件にて、ソ連軍が日本軍の戦車の動きを封じる為に使った戦法………

 

『ピアノ線鉄条網』である。

 

「よくもやってくれたな」

 

「同志の戦車を破壊した罪は重い。一思いにはやらん。じわじわと嬲り殺しにしてくれる」

 

バイクから放り出された白狼を、ツァーリ歩兵達が取り囲む。

 

「チイッ!」

 

舌打ちをしながら、白狼は自分を取り囲んでいるツァーリ歩兵達を睨み付ける。

 

「白狼!」

 

「アカン、飛彗! 今突っ込んだら、お前までやられてまうで!」

 

「じゃあ見殺しにしろって言うのかよ!!」

 

飛彗が悲鳴の様な声を挙げて助けに行こうとしたが豹詑に止められ、その傍に居た海音がそう叫ぶ。

 

だが、この時………

 

プラウダ&ツァーリ機甲部隊の隊員達は1つミスを犯していた。

 

それは、突撃して来た白狼を仕留めようと躍起になった余り、ツァーリ歩兵部隊が全員戦車部隊の前へと出てしまっていたのである。

 

つまり、現在プラウダ戦車部隊の背後はガラ空き状態である。

 

本隊が包囲されており、目の前の戦力が全てと思っている以上、それは当たり前の行為だったかも知れない。

 

しかし………

 

その背後ががら空きのプラウダ戦車部隊に、音も無く走り寄る影が1つあった。

 

プラウダ戦車部隊は前方の警戒に集中しており、その存在に気付かない。

 

その影はそのまま、プラウダ戦車部隊の後部に、次々に吸着地雷を仕掛けて行く。

 

「ん? 今何か?………」

 

と、漸くツァーリ歩兵の1人が、戦車の傍で動く影が有る事に気付いた瞬間!

 

プラウダ戦車部隊に仕掛けられていた吸着地雷が次々に爆発!

 

残っていた全ての戦車から白旗が上がった。

 

「!? なっ!?」

 

「何っ!?」

 

「何だ!? 何が起こったっ!?」

 

「戦車部隊が………全滅だと!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突如として随伴していたプラウダ戦車部隊が全滅し、ツァーリ歩兵達とサンショウウオさんチーム達は驚きに包まれる。

 

「! 今だっ!!」

 

とその瞬間を見逃さず、白狼は取り囲んでいたツァーリ歩兵部隊を突破する。

 

「!? しまったっ!?」

 

「オノレ、逃すか!」

 

1人のツァーリ歩兵が、逃がしはしないと白狼の背中をトカレフM1940半自動小銃で狙うが………

 

直後に発砲音がして、トカレフM1940半自動小銃を構えていたツァーリ歩兵の頭に弾丸が命中する!

 

「ガハッ!?」

 

トカレフM1940半自動小銃を構えていたツァーリ歩兵は雪の上に倒れ、当然戦死と判定される。

 

更に2度、3度と銃声が響き渡り、ツァーリ歩兵達が次々とヘッドショットされて行く。

 

「! あそこだ!!」

 

とそこで、ツァーリ歩兵の1人が、撃破されたIS-1の影からマズルフラッシュが挙がっているのを発見する。

 

「良くも同志達を!!」

 

「報復だぁっ!!」

 

IS-1の目掛けて、ツァーリ歩兵達の銃撃が集中する。

 

一部は撃破されたIS-1に当たり、装甲上で火花を散らす。

 

「ウラァーッ!!」

 

と、ツァーリ歩兵の1人が、F1手榴弾を投擲する。

 

それに続く様に、他のツァーリ歩兵達も、撃破されたIS-1の影目掛けて、次々とF1手榴弾を投擲する。

 

投げられたF1手榴弾は次々と爆発!

 

余りの連続した爆発で、積もっていた雪が無くなり、地面が露出する程だった。

 

「やったかっ!?」

 

ツァーリ歩兵部隊の分隊長がそう叫ぶ。

 

その瞬間!

 

撃破されたKV-1の砲塔の上に、不意に人影が現れた!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」

 

ツァーリ歩兵部隊が驚きに包まれていたその間に、人影はKV-1の機銃架に装備されていたSG-43重機関銃の機銃架用バリエーションであるSGMBに手を伸ばしたかと思うと、何と!!

 

SGMBを機銃架から引っぺがし、ベルト式の弾薬を身体に巻き付けたかと思うと、14キロ近くあるその重機関銃を、腰で支える様にして持って構えた!!

 

「なっ!?」

 

ツァーリ歩兵部隊の分隊長の驚きの声が挙がった瞬間………

 

人影はSGMBの引き金を引いた!

 

轟音と共に7.62x54mmR弾が次々と放たれる!!

 

「ギャアアッ!!」

 

「グアアアアッ!!」

 

「ば、化け物めぇっ!! ウギャアアッ!!」

 

ツァーリ歩兵部隊の隊員達は、悲鳴を挙げながら、文字通り薙ぎ払われ、次々と戦死判定を受けて行く。

 

「ええいっ! 怯むな!! 我等は偉大なるツァーリ歩兵部隊………」

 

と、ツァーリ歩兵部隊の分隊長がそう声を張り上げた瞬間………

 

「さっきのお返しだ!!」

 

混乱に乗じてバイクの回収と応急修理を終えた白狼が、ツァーリ歩兵部隊の分隊長目掛けて、カンプピストルからグレネード弾を放った!

 

「!? ゲバアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

グレネード弾はツァーリ歩兵部隊の分隊長に直撃し、呆気無く戦死判定を下させた。

 

「! 分隊長がやられたぁっ!!」

 

「もう駄目だぁ! 逃げろぉっ!!」

 

指揮者がやられた事で、ツァーリ歩兵達は忽ち士気崩壊。

 

我先にと逃走に入る。

 

「逃がすなぁっ! 砲撃開始ぃっ!!」

 

「オラ、喰らえぇっ!」

 

「撃ちますっ!」

 

そのツァーリ歩兵達を逃がさんと、明夫、鷺澪、誠也を中心に砲兵部隊が榴弾砲で砲撃を開始!

 

「「「「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

無数に降り注ぐ榴弾の破片を浴び、逃走していたツァーリ歩兵達は次々と戦死判定を受けて行く。

 

結局、逃げ延びたのは僅か数名程度だった。

 

「やった!」

 

「けど、あの人は一体?………」

 

弁慶が歓声を挙げるが、拳龍は突如現れて、瞬く間にプラウダ戦車隊を撃破し、ツァーリ歩兵部隊に大打撃を与えた謎の人物を見やる。

 

その人物は、撃ち終えたSGMBを捨てると、サンショウウオさんチーム達の方へと歩み寄って来た。

 

「「「「「「「「「「!!………」」」」」」」」」」

 

タコさん分隊とおおかみさん分隊の歩兵隊員が身構える。

 

「………!? お前っ!?」

 

しかしそこで、白狼が何かに気付いた様に声を挙げる。

 

「話は後だ………先ずは状況を教えて欲しい」

 

その影は、タコさん分隊とおおかみさん分隊の歩兵隊員に向かってそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

プラウダ戦車部隊と、10万人のツァーリ歩兵部隊が取り囲む中へ、決死の偵察活動に出た大洗偵察兵部隊は………

 

「ISU-122が1両。T-34-76が2両。それに………IS-3が1両ですね」

 

雪の稜線に身を隠しながら双眼鏡で、眼前のプラウダ戦車部隊の車種と車両数を確認していた楓がそう言う。

 

「東側にISU-122が1両。T-34-76が2両。IS-3が1両」

 

その傍らに居た逞巳が、持っていた地図に、楓から報告が有った車両を書き込んで行く。

 

『コチラ西側を偵察中の蛇野。コチラにはT-34-85が3両。T-26が2両』

 

『それにSU-85が1両でござる』

 

とそこで、西側の偵察に行って居た大詔と小太郎から、そう通信で報告が入って来る。

 

「T-34-85が3両。T-26が2両。SU-85が1両………と」

 

『コチラ、南側のジェームズデス。コチラには、SU-76が2両とIS-1が1両です』

 

『更に歩兵部隊の装甲車と思わしき車両も多数です』

 

続いて、南側の偵察をしていたジェームズと清十郎からそう報告が入る。

 

「SU-76が2両とIS-1が1両………歩兵部隊の車両多数………」

 

『北側の蹄だ。如何やら此処が敵の本隊らしい。T-34-85が5両。ISU-122が1両。SU-100が1両。IS-2が1両。SU-85が1両を確認』

 

『T-34-85の内、2両は隊長車と副隊長車だ。更に多数のカチューシャが展開している』

 

そして最後に、北側を偵察している磐渡と秀人からの報告が挙がる。

 

「敵の本隊………」

 

「蹄さん、すぐにそこから離脱して下さい」

 

本隊の規模に若干戦慄しながらも、きっちりとメモを取る逞巳と、磐渡に退避する様に呼び掛ける楓。

 

『いや、まだフラッグ車が発見出来ていない。もう少し偵察してみる』

 

しかし、磐渡はそう言って、偵察活動を続けようとする。

 

「無茶をしないで下さい。そこに居るのは敵の本隊なんですよ」

 

『駄目だ。フラッグ車を見つけない事には、俺達に勝機は無い』

 

『何せ負けるワケには行かなくなっちまったからな………』

 

引き留めようとする楓だったが、磐渡と秀人の決心は変わらない。

 

「ですが………」

 

と、楓が更に何か言おうとした瞬間………

 

通信機から連続して爆発音が聞こえて来た!!

 

「!? 如何しました!?」

 

『敵に気付かれた! ロケット弾が次々と降って着やがる!』

 

『! 居たぞ! フラッグ車のT-34-76だ! 敵本隊の後方! KV-2が守ってやがる!!』

 

慌てて楓が尋ねると、爆発音に混じって、磐渡と秀人のそう言う声が返って来る。

 

「2人共! すぐに離脱を!!」

 

『いや、もう駄目だ………すまないが俺達はココまでだ』

 

『西住総隊長に必ず伝えてくれよ! 大洗万歳っ!!』

 

楓がそう叫んだ瞬間、通信機からは磐渡と秀人のそう言う声が響き、その後ノイズだけとなった………

 

「! 蹄さん! 銅さん!」

 

2人に向かって呼び掛ける楓だったが、通信機からはやはりノイズしか返って来ない。

 

「くうっ!………」

 

「2人がやられたんですか………」

 

楓が俯くと、逞巳がそう尋ねて来る。

 

「………行きましょう。2人の行動を無意味にしない為にも、何としてもこの情報を西住総隊長へ知らせないと」

 

「了解です」

 

2人はそう言い合い、撤収しようと、偵察していたプラウダ&ツァーリ機甲部隊の一部に背を向ける。

 

だが………

 

「! 敵だぁっ!!」

 

「! 敵が居るぞぉっ!!」

 

運悪く、歩哨をしていたツァーリ歩兵に、姿を見られてしまう。

 

「!? み、見つかった!?」

 

「走りますよ!!」

 

慌てる逞巳を引っ張る様に、楓は離脱を計る。

 

「逃がすなぁっ!」

 

「追えぇっ!!」

 

ツァーリ歩兵達からそう声が挙がったかと思うと、数台のRF-8が、楓と逞巳を追う様に発進した。

 

「急いで! 早く!」

 

「そ、そんな事を言っても、雪に足が取られて………」

 

急かす楓だったが、逞巳が雪に足が取られて、上手く走れない。

 

「居たぞ!」

 

「偵察兵か………」

 

「獲物としては物足りないが、片づけてやるか!」

 

「その前にちょっと遊んでやろうぜ!」

 

とそこで、RF-8に乗ったツァーリ歩兵達が追い付き、2人の姿を見てそう声を挙げる。

 

「! 追い付かれた!」

 

「ウラァーッ!!」

 

楓が声を挙げると、1台のRF-8の銃手席に居たツァーリ歩兵が、DP28軽機関銃を発砲する。

 

「!? うわぁっ!」

 

「くうっ!」

 

弾丸がすぐ傍を掠め、逞巳と楓は思わず雪の上に倒れる。

 

「そらそらぁっ!!」

 

「ヒャッハーッ!!」

 

RF-8に乗ったツァーリ歩兵達はそのまま、楓と逞巳の周りを回る様に動き、次々と銃撃を浴びせて行く。

 

しかし、その全ての弾丸は、楓と逞巳のすぐ傍に着弾するも、決して2人に命中する事は無かった。

 

「ヒイイッ!」

 

「くっ! 遊んでいるのですか………」

 

両手で頭を庇う様にして伏せ続ける逞巳と、遊ばれている事に腹を立てる楓。

 

しかし、2人は完全に取り囲まれており、少しでも動けば標的になるだけ………

 

状況はジリ貧であった………

 

「ハーハハハ! こりゃ良いぜ!」

 

「如何したんだぁ? 早く逃げないと撃ち殺しちまうぞぉ!」

 

そんな2人に向かって、ツァーリ歩兵達は挑発するかの様な台詞を浴びせる。

 

「クウッ!………」

 

歯噛みしつつも為す術の無い楓達。

 

「よおし、そろそろ終わりにしてやるかぁ!」

 

と、1人のツァーリ歩兵がそう言ったかと思うと、F1手榴弾のピンを抜いて構える。

 

………その瞬間!!

 

パアァーンッ!と言う甲高い発砲音が響いたかと思うと、F1手榴弾を構えていたツァーリ歩兵がヘッドショットを受けた!

 

「ガッ!?………」

 

ヘッドショットされたツァーリ歩兵は即座に戦死と判定され、F1手榴弾をRF-8の車内へ落してしまう。

 

「なっ!?」

 

操縦席のツァーリ歩兵が驚きの声を挙げた瞬間にF1手榴弾は爆発!

 

RF-8は炎に包まれ横倒しとなり、爆発した!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

それを見た別のRF-8の操縦手のツァーリ歩兵が驚きの声を挙げた瞬間!

 

またも発砲音が響き渡り、その操縦手のツァーリ歩兵がヘッドショットされた!

 

「ガハッ!?」

 

「おわああっ!?」

 

操縦手が戦死判定を受け、更に気を失った事でRF-8は暴走。

 

「わあっ!? 馬鹿! 来るなぁっ!!………! ギャアアアアッ!!」

 

そのまま別のRF-8に衝突したかと思うと、自身も木の幹に突っ込んで爆発する!

 

「!? 狙撃っ!?」

 

「一体何処から!?」

 

別のツァーリ歩兵達がそう声を挙げた瞬間………

 

今度は2連続で発砲音が響き渡り、その2人のツァーリ歩兵達が、またもやヘッドショットされた!

 

「「ぐはっ!?」」

 

それにより、その2人が乗って居たRF-8も暴走して、互いに正面衝突!

 

「「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」

 

生き残っていたもう1人のツァーリ歩兵諸共爆発し、全員が戦死判定を受ける。

 

そうして瞬く間に、楓と逞巳を取り囲んでいたRF-8に乗ったツァーリ歩兵達の部隊は全滅した………

 

「コレは………一体何が?」

 

「誰かが狙撃で援護してくれたみたいですけど………何処から?」

 

立ち上がって呆然となる逞巳と、狙撃手を探す楓。

 

しかし、周辺に狙撃手が居そうな場所は無かった………

 

「味方………何でしょうか?」

 

「………少なくとも、今僕達が撃たれていない事を見るに敵では無いと思います………兎に角行きましょう。追撃部隊が来ない内に、西住総隊長の所へ戻らないと」

 

「ハ、ハイ………」

 

逞巳と楓はそう言い合うと、大洗機甲部隊の本隊へ、情報を伝えに戻るのだった。

 

「…………」

 

その様子を、2人が居た場所から1キロ程離れた林の中で見ていた、白いギリースーツを纏い、小柄な身長には不釣り合いな狙撃仕様のライフルを構えた人物が、その吹雪の中に溶け込む様に消えて行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

大洗機甲部隊が立てこもっている窪地に在る廃村の中央・廃墟となった大きな教会跡の中………

 

「今戻った」

 

「只今でござる」

 

そう言う台詞と共に、大詔と小太郎が率いていた偵察部隊が帰投する。

 

「只今戻りマシタ」

 

「部隊、帰還です」

 

続いて、ジェームズと清十郎が率いていた偵察部隊が帰還する。

 

「お疲れ様です」

 

「後は蹄くん達と大空くん達の部隊か………」

 

みほがそう声を掛けて偵察部隊を迎えると、迫信がそう呟く。

 

と………

 

「ゼエ! ゼエ!」

 

「た、只今、き、帰還しました………」

 

息を切らせた楓と逞巳が、偵察兵部隊と共に帰還する。

 

「! 大空さん! 小金井さん!」

 

「オイ! 大丈夫か!?」

 

みほが声を挙げると、地市達が慌てて駆け寄って、2人と偵察部隊を教会内へ引っ張り入れる。

 

「す、すみません………途中、敵に見つかりまして………」

 

「何とか逃げ延びましたが………蹄さん達の部隊は………やられました」

 

「!? 磐渡が!?」

 

磐渡がやられたと言う報告を聞いて、重音が驚きの声を挙げる。

 

「西住総隊長………コレを………」

 

とそこで、逞巳がプラウダ戦車部隊の配置を書き込んだ地図を、みほに差し出す。

 

「蹄さん達が自分達と引き換えに得た情報です………活用して下さい」

 

「! ハイ………」

 

みほは身体を震わせながらもその地図を受け取り、作戦を練り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降伏時間まであと2時間………

 

大洗機甲部隊は如何言う作戦を立てるのか?

 

そして、サンショウウオさんチームの前に現れた人物と、謎の狙撃者の正体は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

包囲を逃れたサンショウウオさんチームだったが、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の別働隊を前に窮地に陥る。
遂に白狼がやられそうになった瞬間!
謎の歩兵が現れ、瞬く間にプラウダ&ツァーリ機甲部隊の別働隊を壊滅させた!

更に、決死の偵察に出ていた楓達も、謎のスナイパーの援護を受ける。

果たして、彼等の正体は?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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