ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第72話『プラウダ&ツァーリ機甲部隊です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第72話『プラウダ&ツァーリ機甲部隊です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知波単機甲部隊との練習試合も無事終わり………

 

第5回戦の対戦相手である『プラウダ&ツァーリ機甲部隊』との試合に向けた訓練が再開される。

 

知波単機甲部隊の総隊長である絹代は、去り際に弘樹へ四式自動小銃と良い事があると書かれたメッセージカードを残して行った。

 

果たしてそれは、何を意味しているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある流氷の浮かぶ海………

 

極寒の海を進む1隻の学園艦………

 

キエフ級空母に酷似した外観のその学園艦こそ、プラウダ校とツァーリ神学校の学園艦であった。

 

その甲板都市の中心にあるプラウダ校とツァーリ神学校の内、プラウダ校の応接間にて………

 

「5回戦突破、おめでとうございます」

 

「ま、その栄光もカチューシャ達と当たるまでよ!」

 

「勝負は時の運と言うでしょう?」

 

プラウダ戦車部隊の副隊長であるロングの黒髪で背の高い女子『ノンナ』と、プラウダ戦車部隊の隊長であり、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の総隊長である金髪のショートボブでかなり小柄な女子『カチューシャ』が、来客であるダージリンを持て成していた。

 

「どうぞ………」

 

「ありがとう、ノンナ」

 

「いいえ………」

 

ノンナが、カチューシャとダージリンが着いて居るテーブルの上に、トレイの上に乗せて持って来たロシアンティーとジャムを置く。

 

ダージリンは、出されたジャムを紅茶に入れようとする。

 

「違うの!」

 

しかしそれを見たカチューシャがそう言う。

 

「ジャムは中に入れるんじゃないの。舐めながら、紅茶を飲むのよ」

 

カチューシャはそう言うと、ジャムを舐めて紅茶に口を付ける。

 

コレはロシアの作法であり、寒い地方で紅茶にジャムを入れると茶の温度が下がり、体を温めるのに適さなくなってしまう事が理由の1つだと言われている。

 

ロシアと深い交流が有り、戦車や装備も旧ソ連製の物が占めているプラウダならではである。

 

「付いてますよ」

 

と、カチューシャの口の周りにジャムが付いている事をノンナが指摘する。

 

「余計な事言わないで!」

 

「ピロージナエ・カルトーシカもどうぞ。ペチーネも」

 

カチューシャが怒る様にそう言うのを聞きながら、ノンナは合わせて持って来ていた茶菓子………ピロージナエ・カルトーシカとペチーネを、矢鱈と流暢なロシア語で発音しながらテーブルの上に置く。

 

「今度はそちらの試合が近いのに、余裕ですわね。訓練しなくて良いんですの?」

 

「燃料と弾薬が勿体無いわ。幾らダークホースだなんて言われてても、所詮は聞いた事も無い弱小校だもの」

 

余裕の様子でそう言い放つカチューシャ。

 

「でも、総隊長は家元の娘よ。西住流の」

 

「えっ!? そんな大事な事を何故先に言わないの!!」

 

ダージリンのその台詞を聞いた途端、カチューシャは傍に控えていたノンナにそう怒鳴る。

 

「何度も言ってます」

 

「聞いてないわよ!」

 

「但し、妹の方だけれど………」

 

「えっ!? あ、な~んだ………」

 

それを聞いて、安堵した様子を見せるカチューシャ。

 

「黒森峰から転校して来て、無名の学校をココまで引っ張って来たの」

 

「そんな事を言いに、態々来たの? ダージリン」

 

「まさか。美味しい紅茶を飲みに来ただけですわ」

 

そう言って紅茶に口を付けるダージリン。

 

「あの、ダージリンさん。ちょっとお尋ねしたい事があります」

 

するとそこで、ノンナがダージリンに向かってそう言う。

 

「アラ? 何かしら?」

 

「ダージリンさんは、舩坂 弘樹の事も良く御存じなのですか?」

 

「ええ、直接関わったのはアールグレイだけど、彼の試合での様子も注目させてもらっているわ」

 

「そうですか………それで、如何なのですか? 舩坂 弘樹と言う人物は?」

 

「何よ、ノンナ? そんな奴の事が気になるの?」

 

とそこで、カチューシャが不機嫌そうにそう口を挟む。

 

「英霊の子孫だが何だか知らないけど、所詮は歩兵の1人じゃない。私達プラウダ&ツァーリ機甲部隊の前じゃ、吹けば飛ぶ様な存在よ」

 

「あの方を余り甘く見ない方が宜しくてよ」

 

完全に弘樹の事を見下している様子のカチューシャだが、ダージリンが真面目な表情でそう言って来る。

 

「あの方は言うなれば針………」

 

「針?」

 

「そう………心臓に向かう折れた針よ」

 

「! ゲホッ! ゴホッ!」

 

ダージリンがそう言った瞬間、ノンナが………

 

むせる

 

「!? ノンナ!? 如何したの!?」

 

「い、いえ、何でもありません………只の生理現象です」

 

カチューシャが慌てた様子でそう言うと、ノンナは呼吸を整えながらそう返す。

 

(回っている様ですわね………舩坂 弘樹と言う毒が………)

 

そんなノンナの姿を見て、ダージリンは内心でそんな事を思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小一時間後………

 

プラウダ校の正門前にて………

 

「今日はどうも御馳走様でした」

 

「またいつでも居らして下さい」

 

「カチューシャは心が広いからね。歓迎してあげるわ」

 

迎えに来たオレンジペコのSASジープの助手席に乗ったダージリンが、ノンナとカチューシャに見送られている。

 

「出しますね」

 

「ええ、お願い………では、御機嫌よう」

 

オレンジペコがそう言い、ダージリンがカチューシャとノンナに向かって会釈すると、SASジープは発進する。

 

「「ダスビダーニャ」」

 

カチューシャとノンナはロシア語で別れの言葉を送る。

 

やがて、SASジープの姿が完全に見えなくなったかと思うと………

 

突如!

 

ノンナの背後から何者かの手が伸びて来て、ノンナの胸を揉み始めた。

 

「うへへへへへ。相変わらず良い身体してるね~、ノンナちゃ~ん」

 

その犯人は男………

 

ツァーリー神学校のツァーリ歩兵部隊のエース、『ピョートル』だった。

 

台詞、行為、顔………

 

全てが法律違反だ。

 

「…………」

 

しかし、当のノンナは胸を揉まれているにも関わらず無表情のままである。

 

「………フッ」

 

だが、不意にピョートルの方を振り返ったかと思うと、微笑みを零す。

 

「おっ!………」

 

それを見たピョートルが気を良くした瞬間………

 

ノンナは、プロボクサーも真っ青なアッパーカットを繰り出し、ピョートルの顎を殴りつけた!

 

「ゲボハァッ!?」

 

ピョートルは口から光る物を撒き散らしながら、まるで漫画の様に宙に舞い、10秒ほど滞空したかと思うと、後頭部から地面の上に墜落した。

 

「イテテテ………手厳しいなぁ、ノンナちゃん。ほんの挨拶じゃないかぁ」

 

しかし、ピョートルは何事もなかったかの様に起き上がる。

 

「と言うワケで、今度はお尻の方を………」

 

と、ピョートルが再び法律違反な顔をしてノンナに近づこうとしたところ、その後頭部に何かが突き付けられる。

 

「ピョートル………バーベキューは好きか?」

 

ピョートルにそう問い質すのは、火炎放射器を持っているツァーリ神学校の生徒………ピョートルと同じくツァーリ歩兵部隊の『デミトリ』だった。

 

「いや、好きだけど………自分がバーベキューになるのはちょっと………」

 

そう言ってスゴスゴと引き下がるピョートル。

 

「全く………大丈夫だったか? ノンナ」

 

「ええ、心配ありません」

 

デミトリがそう尋ねると、ノンナは事務的にそう返す。

 

だが、その顔には微かに微笑みが浮かんでいる。

 

「アンタも懲りないわね。いい加減にしたら如何なの?」

 

とそこで、カチューシャがピョートルに向かってそう言い放つ。

 

「コレが俺の性だ。変え様が無いさ………あ~あ~、『姉ちゃん』もボンッキュッボンッな体型だったらなぁ………」

 

「! このぉっ! カチューシャが気にしてる事を~っ!!」

 

カチューシャの事を姉と呼ぶピョートル。

 

そう………

 

実はこのピョートルと言う男………

 

何を隠そう、カチューシャの実の弟なのである。

 

しかし、127cmと言う高校3年生とは思えないカチューシャに対し、高校2年生であるピョートルは平均的な171cm。

 

2人が並ぶと、如何してもカチューシャの方が妹に見えてしまう。

 

「粛清してやる~!」

 

両腕を振り回してピョートルに向かって行くカチューシャ。

 

「よっ!」

 

それに対し、ピョートルはカチューシャの頭を手で押さえ付ける。

 

「むき~~~っ!」

 

カチューシャは更に腕を振り回してピョートルを殴りつけようとするが、頭を押さえられているので一向に近寄れない。

 

まるでどこぞのお笑い芸人のギャグの様な光景である。

 

「アハハハハッ!」

 

そんなカチューシャの姿を見て笑うピョートル。

 

「むう~っ! ノンナ~っ!!」

 

最後には泣きながらノンナの方へと駆け寄って行くカチューシャ。

 

「カチューシャッ!」

 

ノンナは屈んで、そんなカチューシャの事を抱き締める。

 

「…………」

 

するとそこで、デミトリが無言で火炎放射器をピョートルに向けた。

 

「あ………」

 

「少し悪戯が過ぎたな………同志ピョートル」

 

態々同志と付けてそう言った瞬間!!

 

デミトリは火炎放射器の引き金を引き、ピョートルに火炎を浴びせた!

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!? アッチッチーッ!!」

 

全身を炎に包まれ、地面を転がるピョートル。

 

「良くやったわ! デミトリ!!」

 

「スパシーバ」

 

カチューシャがそれをみて喜び、ノンナも流暢なロシア語でお礼を言う。

 

「いえ………と、ご報告が遅れました。『例の計画』は順調に進んでおります。この分ですと、予定していた規模よりも更に拡大出来るかと」

 

するとそこで、デミトリはカチューシャに向かってそう報告した。

 

「アラ、そう? それは良いわね」

 

その報告を受けたカチューシャは上機嫌となる。

 

「しっかし良いのか? こんな事して? アイツ等にだって都合は有るだろう?」

 

とそこで、漸く火が消えたピョートルが、全身黒焦げでアフロヘアになっている状態でそう言って来る。

 

「構わないわ。ちゃんと単位やテスト免除って言った報酬も払ってるんだから。全ては我が偉大なる母校の勝利の為よ」

 

カチューシャはそう言うと、ノンナに肩車される。

 

「貴方の活躍にも期待してるわよ………『ラスプーチン』」

 

そこで後ろを振り返りながらそう言うカチューシャ。

 

そこには何時の間にか、ウェーブの掛かった灰色の髪に少々彫りの深い顔をした男が居た。

 

「お任せ下さい、偉大なる同志カチューシャ。必ずや我等が母校と貴方の為に勝利を………」

 

その男………『ラスプーチン』は、軽く会釈をしながら不敵に笑ってそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度同じ頃………

 

黒森峰の学園艦にて………

 

黒森峰男子学院・歩兵道演習場にて………

 

「良し! 今日の訓練はコレまでとする!」

 

「一同! 教官に礼!!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたッ!!」」」」」」」」」」

 

訓練を終えた黒森峰歩兵部隊の面々が、都草の号令で教官に礼をする。

 

「うむ………」

 

それを見た教官は敬礼を返し、その場を後にする。

 

「梶隊長! この後少しお時間を頂けないでしょうか?」

 

「ああ、構わな………ん?」

 

都草が歩兵隊員の1人に話し掛けられた瞬間、携帯電話のメール着信音が鳴る。

 

「すまない、ちょっと待ってくれ………」

 

歩兵隊員にそう言うと、メールを確認する都草。

 

『今男子学院の校門前に居る。すぐ会えないか? まほ』

 

メールには簡潔にそう書かれていた。

 

「(まほから?………)すまない、急用が出来てしまった。また今度で頼めるかな?」

 

「あ、そうですか。コチラこそすみませんでした。では」

 

都草がそう言うと、歩兵隊員は敬礼して去って行く。

 

(まほの方から会いたいだなんて………何かあったのか?)

 

それを見送った後、滅多に自分から会いたいなどとは言わないまほが呼び出しをしてきた事に少し引っ掛かりを感じながら、都草は校門へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰男子学院・校門前………

 

「…………」

 

制服姿のまほが、校門に背を預けて寄り掛かっている。

 

心成しか、その表情には陰りが見受けられる。

 

「まほ!」

 

「!………」

 

そこへ、戦闘服姿のままの都草が到着する。

 

「如何したんだい? 確か今日は実家の方に顔を出していたんじゃ………」

 

と、都草がそう言いかけた瞬間!

 

まほが、都草の胸に飛び込む様に抱き付いて来た。

 

「おわっ!? まほ!?………!?」

 

らしくもない大胆な行動に都草は一瞬戸惑ったが、すぐに抱き付いて来たまほの身体が小刻みに震えている事に気付く。

 

「………実家で何かあったんだね?」

 

すぐにそう察する都草。

 

「都草! みほが! みほが!!………」

 

都草に向かって事情を説明しようとするまほだが、余程動揺しているのか、声が震え、言葉が上手く出ない。

 

「まほ、大丈夫だ。落ち着いて………」

 

そんなまほを落ち着かせる様に、都草はその身体を優しく抱き締める。

 

「う、ううう………」

 

それに安心したのか、まほからは嗚咽が漏れ始めるのだった………

 

 

 

 

 

数分後………

 

「………落ち着いたかい?」

 

「ああ………」

 

落ち着きを取り戻したまほが、都草から離れる。

 

「それで、一体何があったんだい?」

 

改めてまほにそう問い質す都草。

 

「………みほが………西住家から勘当されてしまう」

 

一瞬の沈黙の後、まほは絞り出すかの様にそう答える。

 

「! 如何言う事だい?」

 

一瞬驚きながらも、平静を保って都草はそう尋ねる。

 

そして、まほ曰く………

 

 

 

 

 

最近の活躍により、大洗機甲部隊の名が知れ渡り………

 

遂にまほとみほの母であり、西住流戦車道の現師範であるしほの耳にも、みほが大洗で戦車道を続けている事が入った。

 

しほは怒り心頭の様子で、西住の名を背負っている以上、コレ以上のみほの勝手な振る舞いは許せないとの事である。

 

よって、みほを実家、引いては黒森峰に連れ戻す為、次の大洗機甲部隊とプラウダ&ツァーリ機甲部隊の試合を観戦しに行くと。

 

しかし………

 

もし大洗機甲部隊がプラウダ&ツァーリ機甲部隊に敗れれば………

 

西住流としても用は無し。

 

その場にて勘当を言い渡すと宣告したのである。

 

 

 

 

 

「しほさん………何故そこまでみほちゃんの事を………」

 

しほのその決定に、都草も納得が行かない様子を見せる。

 

「みほちゃんにはその事は?」

 

「菊代さんが知らせに行ってくれた………とても私からは話せないから」

 

「そうか………」

 

「けど、あの子の事だ。もう黒森峰に戻って来る積りなんてない………けど、今の大洗の戦力ではプラウダ&ツァーリ機甲部隊に勝つのは厳しい………そうなればみほを待っているのは………」

 

そう言いかけた瞬間、またも身体を震わせ出すまほ。

 

「まほ………」

 

「都草! 私は! 私は………如何したら良いんだ!?」

 

泣き声で都草にそう言うまほ。

 

その姿は戦車道最強の黒森峰女学院の総隊長であり、西住流次期師範ではなく………

 

只の妹を心配する18歳の少女だった。

 

「…………」

 

都草はそんなまほの事を再び抱き締める。

 

「今は信じるしかない………大洗が勝つ事を………」

 

「都草………」

 

「大丈夫。きっと大洗は勝つさ。君の妹が指揮を取っているんだからね。それに………あの英霊の子孫も居る」

 

「舩坂 弘樹………」

 

まほの脳裏に、何時ぞや、戦車喫茶の前でみほを守ると宣言していた弘樹の姿が思い起こされる。

 

「だから………今日は寮に帰ってゆっくりと休んで、気持ちを落ち着かせるんだ」

 

「うん………ありがとう、都草」

 

そこでまほは、若干重い足取りながらも、寮へと向かう帰路に着く。

 

「………さてと」

 

まほが居なくなったのを確認した都草は、何かを決意した様な顔で、校舎の方へと戻って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、プラウダ&ツァーリ、黒森峰でそんな事が在ったなど知らないみほ達、大洗の面々は………

 

大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

「よっし! こんなもんかな………」

 

「コッチも取り付け終わったよ~」

 

Ⅳ号の砲塔の上に乗って居たナカジマがそう言うと、同じ様に八九式の砲塔の上に乗って居たホシノからもそう声が挙がる。

 

良く見ると、Ⅳ号のキューポラ付近には機銃架が備え付けられ、ラインメタル/マウザー・ヴェルケMG34機関銃が装備されていた。

 

八九式の方にも、ハッチ付近に機銃架と九七式車載重機関銃が装備されている。

 

更に、格納庫内に並んでいる大洗戦車部隊の戦車全てのハッチ若しくはキューポラ付近に、機銃架と機関銃が装着されている。

 

Ⅲ突と38tには、Ⅳ号と同じMG34。

 

三式には八九式と同じ九七式車載重機関銃。

 

M3リーにはブローニングM1919重機関銃。

 

ルノーB1bisにはFM mle1924/29軽機関銃。

 

そしてクロムウェルにはビッカーズ・ベルチェー軽機関銃が装備されていた。

 

「西住総隊長。全車両への機銃架、及び機関銃の取り付けは完了した」

 

「ありがとうございます」

 

「コレで歩兵が寄って来ても多少は対処が可能ですね」

 

敏郎がそう報告を挙げ、みほがそう返している横で、機銃架と機関銃が備え付けられた戦車達を見ながら弘樹がそう言う。

 

「プラウダ&ツァーリ機甲部隊は歩兵の兵数が全校中1位ですからね………コチラの歩兵部隊だけでは対処し切れなくなる可能性がありますから………」

 

「そんなに歩兵が居るの?」

 

「どれぐらいなんですか?」

 

優花里が説明する様にそう言うと、沙織と華がそう尋ねる。

 

「………去年の決勝戦では、黒森峰の歩兵部隊が1万人だったのに対して、プラウダ&ツァーリ機甲部隊の歩兵は、凡そ5万人でした」

 

「ご、5万人っ!?」

 

「黒森峰の5倍じゃねーかよ………」

 

優花里に代わる様にみほがそう言うと、沙織が驚愕の声を挙げ、地市が戦慄した様子でそう呟く。

 

「僕達の方は度々増員を行ってますけど、まだ1000人にも満たないですね………」

 

「全然駄目じゃねえかよ! 飲み込まれて終わりだっての!!」

 

楓がそう呟くと、了平が絶望した様な声を挙げる。

 

「…………」

 

そんな了平を、弘樹が睨みつける。

 

「ヒイッ! す、すんませんでした! 分隊長っ!!」

 

「ま、確かに、数で負けてるなんざ、毎度の事だからな………」

 

了平が慌てて姿勢を正して敬礼すると、白狼が皮肉の様な台詞を吐く。

 

「せめて、パシフィック機甲部隊みたいに、支援要請が使えたら良いんですけど………」

 

「ああ、それも『航空支援』がな………」

 

逞巳がそう呟くと、俊がそう言う。

 

 

 

 

 

『航空支援』………

 

支援要請の1つで、その名の通り、『航空機道』の戦闘機、爆撃機、攻撃機、雷撃機、観測機、偵察機などによる支援である。

 

艦船による支援は、内地が戦闘フィールドとなった場合、支援不可能となるが、航空機ならば大概の戦闘フィールドで支援が可能だ。

 

空中からの支援と言う事もあり、非常に強力で、特に使用頻度・重要性が高い支援要請である。

 

航空支援の使い方が試合の勝敗を分かつとまで言われている。

 

 

 

 

 

「けど、私達の学園は元より、男子校の方でも航空機道はやってないから………」

 

「何処かの学校に支援依頼をしないと………」

 

逞巳と俊の言葉を聞いていた柚子と蛍がそう言い合う。

 

 

 

大概の機甲部隊では、支援要請を行う軍艦道や航空機道の者達は、同じ学園に所属している。

 

しかし、中には戦車道、歩兵道は有っても、軍艦道、航空道が無い学園。

 

或いはその逆に、戦車道、歩兵道が無く、軍艦道、航空道が有ると言う学園も存在する。

 

そう言った学園への救済措置として、戦車道・歩兵道委員会は、戦車道、歩兵道は有っても、軍艦道、航空道が無い学園は、戦車道、歩兵道が無く、軍艦道、航空道が有ると言う学園に対し、支援部隊になってもらう事を依頼出来ると言うルールを制定している。

 

だが、前述した通り、飽く迄『依頼』と言う形になる為、支援部隊になるかは如何かの判断は、依頼された学園側の責任者に一任されている。

 

大概は見合った報酬などを要求される為、支援依頼が出来るにはそれなりに裕福な学校とされている。

 

無論、報酬などでは動かず、琴線に触れるか如何かで支援部隊になるかを決める学園も在るが、極稀である。

 

 

 

「我々の方でも様々な学園艦を当たって見ては居るが………」

 

「強い所は既に他校に抑えられているか、報酬が高過ぎる学園ばかりで、如何にも………」

 

十河と清十郎が苦い顔でそう呟く。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

格納庫内の空気が重くなる………

 

「何だ、お前等! その空気は!? 良いか! 例え相手が去年の優勝校でどれだけの数の差が有ろうと、我々が絶対に勝つぞ! 負けたら終わりなんだからな!!」

 

とそこで、桃がそんな空気を振り払う様に、皆に向かってそう言い放つ。

 

「如何してですか?」

 

すると、歩兵隊員の1人からそんな声が挙がる。

 

「負けても来年があるじゃないですか」

 

「そもそも、今年になって戦車道を復活、歩兵道を再興させた俺達がココまで来れただけでも十分な成果だと思いますよ」

 

「相手は去年の優勝校ですよ」

 

それを皮切りに、他の歩兵隊員達からもそう声が挙がり始める。

 

「そうですよ。ココは1つ、来年に向けて胸を借りる積りで………」

 

「それでは駄目なんだっ!!」

 

と、そんな言葉が出た途端に、桃はそれを遮るかの様に大声を挙げた!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突如大声を挙げた桃に、大洗機甲部隊の面々は驚いて固まる。

 

広い格納庫内が一瞬にして静まり返る………

 

「………勝たなきゃ駄目なんだよね」

 

やがて杏が、意味有り気にそう呟いた。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

事情を知る弘樹と迫信を初めとした男子校生徒会メンバーは、そんな杏の姿を見やる。

 

「………西住、指揮!」

 

やがて桃は、場を仕切り直すかの様にみほにそう言う。

 

「あ、ハイ。では、訓練開始します」

 

みほは引っ掛かるモノを感じながらも、皆に向かってそう言い、本日の訓練を開始する。

 

「西住ちゃん」

 

「? ハイ?」

 

Ⅳ号へと向かう途中、杏に呼び止められるみほ。

 

「後で大事な話が有るから、生徒会室に来て」

 

みほの方を見ずにそう言う杏。

 

その表情は何時になく真剣である。

 

「あ、ハイ………」

 

「…………」

 

戸惑いがらも了承の返事を返すみほと、そんなみほと杏の姿を見て表情を硬くする弘樹だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、訓練が終わり………

 

すっかり日が暮れた中、弘樹は帰路に就いて居た。

 

(角谷生徒会長は西住くんにあの話をする積りだろうか………)

 

杏の様子から、みほに廃校の件を話すのだろうかと推測している弘樹。

 

(だが、今の今まで内緒にしておいて、果たして話せるのだろうか………)

 

弘樹の胸中には、一抹の不安が過っている。

 

そうこう考えている内に、自宅へと到着する。

 

すると、薄暗い中、門の前に佇む人影を発見する。

 

(? 誰だ?………!?)

 

不審者かと警戒しながら近づいて、その人物の姿を確認した弘樹は驚きを露わにする。

 

「………やあ、久しぶりだね。舩坂 弘樹くん」

 

「梶………都草………」

 

その人物は梶 都草だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




あけましておめでとうございます。
新年の初投稿をさせていただきます。

いよいよ目前に迫ったプラウダ&ツァーリ戦。
しかし、それと同時に西住家でも動きが………
更に、大洗女子学園廃校の話も動き出す………

ウチのノンナさんは若干中の人の趣味がインストールされていますので、最低野郎に片足を突っ込んでます。(笑)
それとロシア語の表記についてですが、私のPCだとキリル文学が上手く使えないのと、何と言っているか分かり易くする為、カタカナで表記させていただきます。
御了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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