ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第70話『知波単魂炸裂です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第70話『知波単魂炸裂です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弘樹の戦友・西 絹代が率いる機甲部隊………

 

知波単学園の知波単機甲部隊との練習試合に臨んだ大洗機甲部隊。

 

初手の攻撃を凌いだかに見えた大洗機甲部隊だったが、知波単機甲部隊の策略により、あんこうチームととらさん分隊が本隊より分離させられてしまう。

 

そして、総隊長不在となった大洗機甲部隊の本隊を強襲する知波単機甲部隊。

 

みほ達は本隊との合流を急ぐが、そこに知波単機甲部隊の最強戦力………

 

幻の幻、88ミリ砲搭載の『五式中戦車』が立ちはだかる。

 

火力と高い練度の乗員により圧倒的強さを見せる五式中戦車に………

 

みほ達を本隊へ合流させる為、弘樹は単身で戦いを挑むのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習試合会場・大洗町の外れ………

 

岩肌が露出している丘陵地帯・ポイントG3………

 

みほ達との合流の為、指定されたポイントG3へと向かった大洗機甲部隊の本隊だったが………

 

その合流地点を読んでいた知波単機甲部隊は、大洗機甲部隊を包囲する事に成功していた。

 

「撃て撃て撃てぇーっ!!」

 

叫びながら38tの主砲を発射する桃。

 

しかし、明後日の方向にしか飛ばない砲弾で、敵を撃破出来る筈もなかった………

 

「ハズレ~」

 

「クソッ! オンボロ照準器めっ!!」

 

「毎日自動車部と整備部の人達が丁寧に整備してくれてるんだよぉ」

 

杏が呑気そうにハズレたと言うと、桃は照準器に文句を付け始め、蛍がそれは言っちゃいけないと諭す様に言う。

 

とそこで、知波単機甲部隊の新砲塔チハ3両が、38tに向かって一斉に発砲!

 

直撃弾は無かったが、かなりの至近距離に着弾し、38tの車体が大きく揺さぶられる。

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!? やられたあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!! 助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

途端に桃は泣き叫び始める。

 

「小山、当たるなよ。チハの攻撃でも、38tには脅威だからな」

 

「ハイ、会長」

 

しかし、最早お馴染みの光景となった為か、杏も柚子も全く気にする様子を見せず、冷静に指示と操縦を熟すのだった。

 

「桃ちゃん………不憫な子」

 

そして蛍は、そんな桃の姿に同情していた。

 

「お寝んねしなーっ!!」

 

「ハイサイナラーッ!!」

 

「誰にも俺の邪魔はさせないぜぇっ!!」

 

射撃しながら、包囲している大洗機甲部隊へと詰め寄って行く知波単歩兵部隊。

 

「砲兵隊向きの標的が在る!!」

 

「戦車の支援を頼むぅっ!!」

 

更に、その歩兵を援護する様に、知波単砲兵部隊と戦車部隊が、大洗機甲部隊へ砲撃を撃ち込む。

 

「チキショウッ! コレでも喰らえっ!!」

 

と、蛸壺を掘って隠れていた大洗歩兵部隊の中で、豹詑が少し身を乗り出すと、M24型柄付手榴弾を投擲する!

 

「「「「「うおわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

固まっていた知波単歩兵達が纏めて吹き飛ばされる!

 

「よっしゃあっ!!」

 

「アイツが仲間をやったぞ!」

 

「戦友達の仇だぁっ!!」

 

「撃てぇっ!! 即刻攻撃ぃっ!!」

 

しかし、戦友達の仇だと言い放ち、知波単歩兵の攻撃が豹詑に集中する。

 

「おわわわわっ!?」

 

慌てて蛸壺の中に引っ込み、頭を押さえて蹲る豹詑。

 

「クッ! 支援砲撃を潰さないと………」

 

「「「「アターックッ!!」」」」

 

と、同じく蛸壺に籠っていた武志が試製四式七糎噴進砲を、支援砲撃を行っていた一式十糎自走砲に向かって放ち、同じ事を考えていたアヒルさんチームの八九式も発砲する!

 

ロケット弾と徹甲弾が一式十糎自走砲を目掛けて飛ぶ。

 

だが、その瞬間!!

 

一式十糎自走砲の前に九五式軽戦車が割って入り、自らの車体でロケット弾と砲弾を受け止めた!

 

「!? しまったっ!?」

 

「ブロックされたっ!?」

 

割って入った九五式軽戦車からは白旗が上がったものの、本命を仕留め損ねて武志と典子が思わず声を挙げる。

 

直後に一式十糎自走砲は榴弾を発射!!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

八九式と武志からは狙いが外れたが、対戦車砲に付いて居た大洗砲兵達が吹き飛ばされた!!

 

「ああっ!? 貴重な対戦車砲が!?」

 

「うむ………やはり包囲された状態では圧倒的に不利だね………」

 

逞巳が動揺を露わにしていると、急いで掘った簡易塹壕の中で、戦況を見ていた迫信が、まるで他人事の様にそう呟く。

 

「なら! 此処から抜け出さないとっ!!」

 

「しかし………あそこから狙われていては………」

 

聖子がそう声を挙げるが、エルヴィンが現在大洗機甲部隊が包囲されている場所の周りの崖の上を見て苦々しげにそう呟く。

 

崖の上には、これまた大洗機甲部隊を取り囲む様に、三式中戦車改、三式砲戦車、四式中戦車が陣取り、時折牽制であるかの様に、大洗機甲部隊を狙い撃って来ていた。

 

「崖の上からスナイピングか………」

 

「コッチの対戦車砲も戦車砲も届かんぞ………」

 

「このまま包囲攻撃を受けていれば全滅………しかし、包囲を突破しようとしても崖の上からフラッグ車を狙い撃たれる可能性が有る………」

 

「手詰まりじゃねえかよ! 何かないのか!?」

 

正に文字通り四面楚歌の状態の大洗機甲部隊。

 

みほが居ない状況では、真面に指揮を取れる者も居らず、大洗機甲部隊の面々は只々知波単機甲部隊の猛攻の前に耐えるしかなかった………

 

「良いわよ! そのまま徐々に包囲網を狭めて行って!」

 

大洗機甲部隊を包囲している知波単機甲部隊からやや離れた位置に陣取っているフラッグ車兼隊長車の九七式中戦車の砲塔の上に立ち、通信機を片手に指揮を取っている絹代。

 

「総隊長! 我々も突撃しましょうっ!!」

 

「寧ろ全員で突撃しましょう! 敵は袋の鼠!! 我が知波単機甲部隊の突撃を持ってすれば、撃破容易です!!」

 

「我々の勝利だっ!!」

 

するとそこで、九七式中戦車の同乗員達からそんな意見が挙がる。

 

「それは駄目よ。何があるか分からないからね………」

 

しかし、絹代はやんわりとその意見を却下する。

 

「何故ですか!? 相手の戦車は我々より優れている物も多いですが、練度に於いては我が知波単機甲部隊が圧倒的優位です!!」

 

「大和魂を見せつけてやりましょうっ!!」

 

「臆病風に吹かれたのですか!?」

 

同乗員達から不満の声が挙がる。

 

「黙れっ!!」

 

「「「!?」」」

 

しかし、絹代はその声を一括した。

 

「大洗を甘く見るんじゃないわ。確かに練度は我々よりも劣っているかも知れない………けれど、全国大会を4回戦まで勝ち抜いたチームよ。それは決して運だけのものではないわ」

 

大洗機甲部隊の事を見据えながら、絹代はそう語り出す。

 

「コレまでの試合………大洗機甲部隊はその多くをギリギリで勝利している………だけれども、そのギリギリの勝利を掴んだ、追い詰められてからの爆発力は凄まじいわ」

 

『こちら五式中戦車! 応答願います、総隊長!!』

 

とそこで、あんこうチームととらさん分隊の足止めに向かって五式中戦車から通信が入って来る。

 

「こちら西。突破されたの?」

 

『ハイ! 追撃しようとしたのですが、現在舩坂 弘樹に足止めされている状況です!』

 

「弘樹に?………単独で?」

 

『ハイ! 信じられませんが………奴は単身でこの五式中戦車と渡り合っています!』

 

「…………」

 

『西総隊長?』

 

「総隊長? 如何なされました?」

 

突如黙り込んだ絹代に、五式中戦車の通信手と、九七式中戦車の砲手が怪訝な顔をする。

 

と………

 

「アハハハハハハハハッ!!」

 

『「「「!?」」」』

 

突如絹代は大声で笑い始め、五式中戦車の通信手と九七式中戦車の乗員達は驚く。

 

「仲間を行かせる為に、単独で戦車の足止めに掛かる………相変わらず最高ね、弘樹!」

 

そしてそう言うと、ニヤリと笑う絹代。

 

「それでこそ英霊の子孫よ………コチラ西。五式の方が突破されたわ。直にⅣ号と随伴歩兵分隊が来る。勝負を急ぐわよ」

 

『『『『『『『『『『了解っ!!』』』』』』』』』』

 

そう通信を送り、返事が返って来たのを聞くと、絹代は九七式中戦車の車内へと入る。

 

「行くわよ! 突撃っ!!」

 

「待ってましたっ!!」

 

「知波単魂を見せてやるーっ!!」

 

乗員達から勇ましい声が挙がると、九七式中戦車は前線へと突撃して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

弘樹の足止めによって、五式中戦車を突破したあんこうチームととらさん分隊は………

 

「舩坂さん、大丈夫でしょうか?」

 

くろがね四起のハンドルを握る楓が、1人で五式中戦車の足止めをしている弘樹の身を案じる。

 

「相手は日本軍最強とか言われてる戦車だろ? 流石の弘樹も今回ばかりはお陀仏か………イデッ!?」

 

「縁起でもねぇこと言うんじゃねえ、馬鹿野郎!」

 

了平が思わずそんな事を口走ると、地市がそんな了平に拳骨を見舞う。

 

「…………」

 

一方、Ⅳ号内に車長席のみほは、まるで祈るかの様に目を閉じ、両手を合わせて固く握っていた。

 

「西住殿………」

 

「みほさん………」

 

「みぽりん………」

 

「…………」

 

そんなみほの事を心配する優花里、華、沙織、麻子だったが、掛ける言葉が見つからない。

 

(舩坂くん………無事で………無事で居て………)

 

まるで呪文の様に、みほは心の中でそう繰り返すのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

その弘樹は………

 

ドゴオンッ!!と言う凄まじい爆音と共に、主砲から砲弾を吐き出す五式中戦車。

 

放たれた砲弾………榴弾は森の一角に着弾し、派手に爆発する。

 

衝撃波と破片で周りの木々が薙ぎ倒される。

 

「…………」

 

その中を、倒れる木々と爆煙、土煙に紛れて駆け抜ける弘樹。

 

そして五式中戦車から姿を隠したまま、岩の陰へと隠れる。

 

(こんな事なら何時もの通り、九九式短小銃を持って来るんだったな………)

 

五式中戦車を覗き見ながら、弘樹は内心でそんな事を考える。

 

知波単機甲部隊は突撃戦術を得意とする為、両軍入り乱れての乱戦になると踏んだ弘樹は、接近戦に備えて九九式短小銃ではなく、一〇〇式機関短銃を主武装として携帯して来ていた。

 

いつもの九九式短小銃ならば二式擲弾器を使ってタ弾を撃ち込めるので、多少は有利に戦えたかも知れないが、一〇〇式機関短銃では装甲目標に対しては無力である。

 

(まあ、他に方法は幾らでもある………)

 

しかし、弘樹はすぐにそう頭を切り替えると、ベルトに下げていた吸着地雷を手に取る。

 

とそこで、五式中戦車の砲塔が旋回する音が聞こえて来る。

 

「!!」

 

即座に弘樹は岩陰から移動!

 

直後に五式中戦車が発砲し、先程まで弘樹が隠れていた岩が吹き飛ばされた!!

 

「うおっ!?」

 

爆風に煽られ、地面の上を転がる弘樹。

 

その姿が五式中戦車からも確認出来る位置にまで転がる。

 

「! しまった!………」

 

弘樹はすぐさま起き上がって駆け出すが、そこで五式中戦車は副砲の37ミリ砲を発射。

 

「ぐうっ!!」

 

直撃は喰らわなかったが、榴弾の破片が左足に当たり、甚大なダメージを負ったと判定した戦闘服が左足の動きを制限する。

 

更に、衝撃で吸着地雷を手放してしまい、弘樹の手から零れた吸着地雷はやや離れた場所へと転がる。

 

「ッ!!………」

 

弘樹は煙幕手榴弾を投擲すると、窪地の中へと転がり込む様に身を隠す。

 

「やられたな………」

 

動きが鈍い左足に手を当てながらそう呟く弘樹。

 

コレで肉薄攻撃は難しくなった上に、頼みの綱の吸着地雷を失ってしまった。

 

只でさえ低い勝ち目が更に低くなる。

 

(煙幕が持つのはあと1分か………如何する?………)

 

だが、弘樹に負ける積りは微塵も無く、只管打開策を考える。

 

「…………」

 

と、そこで弘樹は、近くにあった他と比べてやや背丈の高い木を見やる。

 

「………一か八かだ」

 

すると弘樹は、その木へと向かった。

 

やがて煙幕が晴れ、五式中戦車が弘樹の姿を探す様に砲塔を旋回させる。

 

「…………」

 

そして、背丈の高い木を登っている弘樹の姿を発見する。

 

その木の幹に主砲を向ける五式中戦車。

 

「…………」

 

弘樹は狙われているのに気付いていないのか、只管に木を登って行く。

 

そして、遂に!

 

五式中戦車から砲弾が放たれる!!

 

放たれた砲弾は弘樹が登っていた木の幹に命中!!

 

幹が吹き飛び、木は倒れ始める。

 

「! そこだぁっ!!」

 

と、その瞬間!!

 

弘樹は倒れる勢いを利用して木から五式中戦車に向かって跳躍した。

 

そのまま、五式中戦車の砲塔の上に身体から落ちる弘樹。

 

「!?………」

 

余りの衝撃と痛みで一瞬意識が飛びかけたが根性で耐え、そのまま砲塔の上を転がって、更に車体後部へと落ちると、エンジンルームのハッチを掴んで止まる。

 

取り付かれた五式中戦車は、弘樹を振り落そうと激しく蛇行しながら走り出す。

 

「…………」

 

そんな五式中戦車から振り落とされまいとしながら、弘樹は片手に銃剣を取り、エンジンルームのハッチを抉じ開けに掛かる。

 

ハッチの固定具に銃剣を何度も叩き付ける弘樹。

 

弘樹を振り落そうと猛スピードで走り回る五式中戦車。

 

両者の意地と意地のぶつかり合いである。

 

やがて、バキンッ!!と言う音がしたかと思うと、銃剣の刃が圧し折れる。

 

しかし直後に………

 

五式中戦車のエンジンルームのハッチ固定具も壊れる。

 

「!………」

 

すぐさまエンジンルームのハッチを開け放つと、一〇〇式機関短銃を差し込む様に突き付ける弘樹。

 

「!!」

 

そしてそのまま、一〇〇式機関短銃を発砲する!

 

無数の弾丸がエンジンルーム内へと飛び込み、跳弾となって跳ね回る!

 

だが、五式中戦車はまだ止まらず、弘樹を振り落そうと暴走する!

 

「!!………」

 

それでも片手で五式中戦車にしがみ付きながら、一〇〇式機関短銃を撃ち続ける弘樹。

 

と、やがて一〇〇式機関短銃のマガジンが空になった瞬間………

 

五式中戦車のエンジンから黒煙が上がり始め、ボンッ!!と言う音を立てて炎上!!

 

暴走していた五式中戦車の速度が徐々に落ちて行き、完全に停止したかと思うと、砲塔上部から白旗が上がる。

 

「…………」

 

弘樹は地上に降りると、撃破した五式中戦車には目もくれず、左足を引きずりながらも、本隊の場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、再び知波単機甲部隊と交戦している大洗機甲部隊・本隊は………

 

「や~ら~れ~た~!」

 

杏の呑気そうな声と共に、38tの砲塔上部から白旗が上がる。

 

「カメさんチームがやられたぞっ!」

 

「おのれぇっ! コレでも喰らえぇっ!!」

 

それを見たカバさんチームの三突が知波単機甲部隊に報復する様に砲撃。

 

放たれた砲弾は一式砲戦車に命中。

 

一瞬の間の後、一式砲戦車の上部から白旗が上がる。

 

だが直後に、崖の上の四式中戦車、三式中戦車改、三式砲戦車からの砲撃がⅢ突に集中する!!

 

「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」

 

幸いにも直撃弾は無かったが、至近弾の衝撃によってⅢ突は激しく揺さぶられ、車内のカバさんチームは悲鳴を挙げる。

 

「撃てっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

明夫の号令で、砲兵達が九五式野砲から榴弾を放つ。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

知波単歩兵部隊の歩兵達が数人纏めて吹き飛ぶ!

 

「敵は手強過ぎるっ!!」

 

「救援を要請します!」

 

「了解っ!!」

 

別の知波単歩兵隊員達がそんな事を言うと、短十二糎自走砲が砲身を上向きにして砲撃。

 

まるで迫撃砲の様に榴弾を上空から大洗歩兵部隊に見舞う!

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

「まるで鉄の雨だ!!」

 

「ぐああっ!? やられたぁっ!!」

 

爆発した榴弾の破片、若しくはその直撃を浴びた大洗歩兵隊員達が次々に戦死判定を食らう。

 

「チキショウめっ!!」

 

と、そんな台詞と共に俊が手榴弾を投擲する。

 

「手榴弾や!」

 

「姿勢を低くしろぉっ!!」

 

手榴弾が近くに転がって来た知波単歩兵隊員達は、その場に伏せて爆風をやり過ごす。

 

「そこに奴等が居るぞぉ!」

 

「倍の速さでぇーっ!!」

 

と、着剣した三八式歩兵銃を構えた知波単歩兵隊員2名が、手榴弾を投げた俊へと向かう。

 

「! ヤベッ!………」

 

「司馬さんっ!!」

 

慌てる俊だったが、そこで横倒しになったくろがね四起の陰に居た清十郎がSIG KE7軽機関銃の弾丸を、突っ込んで来た知波単歩兵隊員2名に見舞う!

 

「「知波単バンザーイッ!!」」

 

突っ込んで来た知波単歩兵隊員2名は、弾丸を浴びるとそう叫んで両手を上げて倒れ、そのまま戦死と判定される。

 

「恩に着るぜ、清十郎」

 

「でも、このままじゃマズイですよ!」

 

そう言いながら、くろがね四起の陰に隠れる俊に、清十郎がSIG KE7軽機関銃のマガジンを交換しながらそう言う。

 

彼の言葉通り、大洗機甲部隊の損害は徐々に増して来ている。

 

無論、大洗機甲部隊とてやられてばかりではなく、先程撃破した一式砲戦車を始め、既に九五式軽戦車を3両、九七式中戦車を1両、新砲塔チハを2両、一式中戦車を1両屠っている。

 

歩兵部隊にもかなりの損害を与えており、砲兵の一部は活動困難に陥っている。

 

だが、元々知波単機甲部隊の方が数で勝っており、包囲されているこの状況では、大洗機甲部隊が圧倒的に不利であった。

 

「やはりこの包囲網を突破しない事には………」

 

「だがその為には、あの崖の上の戦車を如何にかせんといかんぜよ」

 

左衛門佐とおりょうがそう言い合い、崖の上に陣取ってスナイピングして来ている三式中戦車改、三式砲戦車、四式中戦車を見据える。

 

とそこで、三式砲戦車の砲が、サンショウウウオさんチームのクロムウェルに向けられる。

 

「! サンショウウオさんチーム! 狙われてるぞ!! 逃げろぉっ!!」

 

「逃げろって、何処に!?」

 

「周りは敵だらけですよ!?」

 

鋼賀がそう叫ぶが、サンショウウオさんチームの聖子と優からそんな声が返って来る。

 

そんなサンショウウオさんチームのクロムウェルに、三式砲戦車は容赦無く狙いを定める。

 

「クソッ! 駄目だ! 逃げきれねぇっ!!」

 

操縦士の唯から悲鳴にも似た声が挙がる。

 

そして三式砲戦車から砲弾が放たれる………

 

かと思われた瞬間!!

 

砲撃音がして三式砲戦車の後部が大爆発!!

 

一瞬の間の後、三式砲戦車の上部に、白旗が上がった!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その出来事に、大洗機甲部隊、知波単機甲部隊の全隊員達が驚きを露わにする。

 

そして、その直後………

 

「皆さん! 遅れてすみません!!」

 

そう言う声と共に、撃破された三式砲戦車の後ろから、みほがキューポラより姿を晒しているⅣ号の姿が現れた!

 

「! 西住総隊長だぁーっ!!」

 

「助かったーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

あやと桂利奈がそう声を挙げると、大洗機甲部隊の隊員達からも歓声が挙がる。

 

「! Ⅳ号! もう来たの!? 四式! Ⅳ号に向かって攻撃っ!!」

 

「了解っ!」

 

と、そのⅣ号の姿を確認した絹代が、驚きながらもすぐに近くの四式中戦車へと指示を飛ばす。

 

その頃には、四式中戦車は既にⅣ号へと狙いを定めていた。

 

「喰らえっ!………」

 

そして四式中戦車の砲手が引き金を引こうとした瞬間!

 

四式中戦車の後部に、白煙の尾を引いて来たロケット弾が命中!!

 

またも一瞬の間の後、四式中戦車の砲塔上部から白旗が上がる!

 

「よっしゃあっ! 見事命中!!」

 

「やりましたね!」

 

直後に、そう言う撃ち終えたバズーカを持った地市と楓を先頭に、とらさん分隊の面々が姿を見せる!

 

「! とらさん分隊!!」

 

「皆さん! 西の守りが薄いです! Ⅲ突とルノーを先頭にして突破を掛けて下さいっ!! 但し、フラッグ車を守るのを忘れずに!!」

 

竜真の歓声が挙がる中、みほは戦局を見てそう判断し、大洗機甲部隊の面々にそう指示を出す。

 

「了解しました!」

 

「了解! やはり西住総隊長の指揮がなくてはなぁっ!!」

 

みどり子とエルヴィンからそう言う声が挙がると、大洗機甲部隊はクロムウェルを守りつつも、Ⅲ突とルノーB1bisを先頭に、知波単機甲部隊の包囲網の西側に一斉突撃した!

 

「来るぞぉーっ!!」

 

「俺は防衛を行う! この位置を保てぇっ!!」

 

「離れるなーっ!!」

 

「敵の装甲車を発見っ!!」

 

「知波単魂を見せてやるぅっ!!」

 

突っ込まれた包囲網西側の知波単機甲部隊の隊員達と戦車は、先頭のⅢ突とルノーB1bis目掛けて一斉に攻撃を行う。

 

しかし、西側に展開していた知波単機甲部隊は、歩兵部隊は偵察兵が中心であり、砲兵部隊の砲は九四式37mm速射砲が主であり、戦車も九五式軽戦車と旧砲塔の九七式中戦車で在った。

 

ルノーB1bisが盾となり、砲撃を弾き返して強引に押し進む。

 

「発射ぁっ!!」

 

「撃てぇっ!!」

 

そして、時折隙を縫って、脇から姿を晒してくる三突と共に、ルノーB1bisuが砲撃を見舞う。

 

「「「「「「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

「分隊長がやられた! 誰か指揮を!!」

 

榴弾を浴びた知波単歩兵部隊の隊員達が吹き飛ばされ、次々に戦死判定を受ける。

 

更に、九五式軽戦車と旧砲塔の九七式中戦車にも徹甲弾が突き刺さり、白旗が上がって行く!

 

「着剣せよっ!!」

 

「「「「「「「「「「着剣っ!!」」」」」」」」」」

 

するとそこで、三八式歩兵銃を装備していた知波単歩兵達が、一斉に銃剣を着剣する。

 

「行くぞぉーっ!!」

 

「俺は攻撃を行う! 付いて来いっ!!」

 

「誰にも俺の邪魔はさせないぜっ!!」

 

「知波単学園! バンザーイッ!!」

 

そして、突っ込んで来る大洗機甲部隊に対し、逆に突撃を掛ける!!

 

「やらせん! 行くぞ! シュトゥルム!!」

 

「舐めるなぁっ!!」

 

「行っくぜぇ~~~~っ!!」

 

するとそこで、銃剣突撃して来る知波単機甲部隊に対し、ゾルダート、白狼、弦一朗の3人が、愛馬とマシンを駆って先行!

 

「シュトゥルムよ! 今が駆け抜ける時!!」

 

「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

ゾルダートがそう言い放ち、右手に握ったモーゼルC96を馬賊撃ちし、知波単歩兵達を薙ぎ払う!

 

「オリャアーッ!!」

 

「「「「「うおわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

白狼は敵陣の中へと突っ込んだかと思うと、その場で高速マックスターンし、まるで竜巻の様に知波単歩兵達を跳ね飛ばす!

 

「ライダアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ! ブレーイクッ!!」

 

「「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

そして弦一朗は前輪を上げたウイリー状態で、銃剣突撃して来た知波単歩兵達を掻き分ける様に跳ね飛ばして行くっ!!

 

その勢いのまま、大洗機甲部隊は知波単機甲部隊の包囲網を突破した!!

 

「良し、コレで………」

 

「西住さん! 敵の三式が!!」

 

みほがそう呟いた瞬間、楓が慌てた様子でそう叫んだ!

 

「!?」

 

すぐにみほは知波単機甲部隊の三式中戦車改の姿を確認する。

 

すると、何と!!

 

知波単機甲部隊の三式中戦車改は、傾斜45度以上は有る筈の崖を下り、包囲網を突破した大洗機甲部隊の本隊を追撃しようとしていた!

 

「嘘っ!? あの崖を下ってる!?」

 

「何て無茶を!?」

 

信じがたい光景に、沙織と優花里がそう叫ぶ。

 

「! 皆さん! 敵の三式が追撃して来ています! 逃げてぇっ!!」

 

みほは慌ててそう指示を出す。

 

「何っ!?」

 

「うおっ!? マジかよ!?」

 

「あの崖を下って来てやがる!?」

 

それを受けて、大洗機甲部隊の面々も知波単機甲部隊の三式中戦車改が追撃して来ている事に気付き、慌てて散開し始める。

 

やがて知波単機甲部隊の三式中戦車改は、地面に叩き付けられる様に立つ。

 

乗員には相当の衝撃が襲った筈だが、そんな様子は微塵も見せず、散開している大洗機甲部隊の中で、フラッグ車であるクロムウェルに砲塔を向ける。

 

「! 狙われてるっ!!」

 

「分かってるって!!」

 

「砲塔旋回、間に合いませんっ!!」

 

聖子がそう叫ぶが、唯は既に精一杯の回避行動を取っており、優も砲塔の旋回が間に合わないと言う。

 

そんなサンショウウウオさんチームのクロムウェルに無慈悲にも狙いを定める三式中戦車改。

 

だが、その瞬間!!

 

「やらせるもんかぁーっ!!」

 

アリクイさんチームの三式中戦車が、その間に割って入って静止する。

 

「! アリクイさんチーム!」

 

「ぴよたんさん! お願いっ!!」

 

「ハイだっちゃっ!!」

 

聖子が叫ぶ中、三式中戦車は知波単機甲部隊の三式中戦車改を狙う!

 

「発射ぁっ!!」

 

そして、アリクイさんチームの三式中戦車と知波単機甲部隊の三式中戦車改から、ほぼ同時に砲弾が放たれた!!

 

両者の砲弾は至近距離で擦れ違い、知波単機甲部隊の三式中戦車改が撃った砲弾は、アリクイさんチームの三式中戦車の車体前面部に命中!

 

アリクイさんチームの三式中戦車の撃った砲弾は、知波単機甲部隊の三式中戦車改の砲塔基部へと命中した。

 

両戦車の被弾箇所からは朦々と黒煙が上がり、やがて同時に白旗が上がる。

 

『総隊長! 申し訳ありません! 撃破されましたっ!!』

 

「コレでコチラの大火力は全滅ね………」

 

撃破された知波単機甲部隊の三式中戦車改から、絹代へそう報告が飛び、絹代は苦い顔をする。

 

と、その直後に、絹代が乗る九七式中戦車の近くに砲弾が着弾する。

 

「! Ⅳ号!!」

 

その砲弾が、何時の間にか崖を降りて来ていたⅣ号の物であると気付き、声を挙げる絹代。

 

「このまま一気にフラッグ車を叩きます!」

 

キューポラから姿を晒しているみほが、車内の優花里達にそう言う。

 

「来るか!………良いわ! 勝負してあげるっ!!」

 

絹代はそう言うと、同じ様にハッチを開けて姿を晒し、九七式中戦車をⅣ号に向かわせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

みほ不在の中で、知波単機甲部隊の攻撃に必死に耐える大洗機甲部隊。

一方、五式中戦車と対峙していた弘樹は、吸着地雷を失いながらも、大胆な方法で五式中戦車の撃破に成功する。

あわや全滅かと思われたところで間に合ったみほ達あんこうチーム。
フラッグ車である絹代の九七式中戦車との一騎打ちが始まる。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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