ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第67話『知波単学園です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第67話『知波単学園です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4回戦にて、パシフィック機甲部隊を破った大洗機甲部隊の次なる相手は………

 

昨年、みほが居た黒森峰機甲部隊を破り、10連覇を阻止して優勝した『プラウダ高校』の『プラウダ戦車部隊』と『ツァーリ神学校』の『ツァーリ歩兵部隊』からなる『プラウダ&ツァーリ機甲部隊』

 

みほにとっては因縁の相手と言える機甲部隊だった。

 

昨年の優勝校との対戦を前に、大洗機甲部隊は少しでも戦力の補強を図ろうと、2度目の戦車捜索時に発見していた88ミリ砲搭載の戦車の投入を考える。

 

しかし、その戦車は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・演習場………

 

自動車部のメンバーが、88ミリ砲搭載の戦車の試験走行を行っている。

 

「すごーいっ!!」

 

「強そうーっ!!」

 

その様子を見て、桂利奈とあやがそう声を挙げる。

 

「知ってます、コレ! 『ティーガー』ですよね!!」

 

「マジで!? ティーガーって言えば、ドイツ軍の最強戦車じゃないですか!!」

 

その戦車の型を見て、ティーガーであると判別する勇武と、最強と呼ばれたティーガーが手に入った事に興奮した様子を見せる光照。

 

「「「「「…………」」」」」

 

しかし、同じ様にその様子を見ていた弘樹、みほ、杏、柚子、桃は微妙な顔をしていた。

 

「コレ、レア戦車なんですよねえ!」

 

唯一、優花里だけが嬉しそうにそう言う。

 

「ポルシェティーガー………」

 

桃がその戦車………『VK4501(P)』、通称『ポルシェティーガー』を見てそう呟く。

 

「マニアには堪らない一品です! まあ、地面にめり込んだり………」

 

優花里がそう言うと、走行していたポルシェティーガーの履帯が地面にめり込み、空回りを始める。

 

「過熱して………」

 

更にそう言うと、エンジン部分から黒煙が上がり始め………

 

「炎上したり………」

 

小さな爆発と共にエンジンが火を噴き、ポルシェティーガーはガクリと停止した。

 

「壊れ易いのが難点ですけど………」

 

 

 

 

 

そう………

 

このポルシェティーガー………

 

装甲や主砲のスペックこそティーガーⅠと同じものの、ドイツ重戦車最大の弱点である『壊れ易さ』が顕著に現れている戦車なのだ。

 

元々このポルシェティーガーは、Ⅴ号戦車の試作品であり、正式採用されたのが所謂ティーガーⅠである。

 

採用されなかったのがこのポルシェティーガーであり、その名の通り、あの『フェルディナント・ポルシェ』が設計したのである。

 

独自設計に拘った彼は、このポルシェティーガーの駆動システムをガソリン=エレクトリックとした。

 

つまり、ガソリンエンジンで発電機を回し、その電力でモーターを回して走行するのである。

 

昨今のハイブリットカーに通じるアイデアだったが、当時の技術力ではこのシステムでコンセプト通りの性能を出す事は事実上不可能だった。

 

その為、重戦車ながら非常に非力な駆動システムを搭載する事になり、足回りが非常に壊れ易いと言う、機動兵器として致命的とも言える弱点を抱えていたのである。

 

しかも試作車両ながら、100両分も造ってしまったと言う始末(しかし、その車体を流用して作られたエレファント重駆逐戦車は、対ソ連戦にて大活躍をした)

 

詰まるところ………

 

兵器としては失敗作なのである。

 

 

 

 

 

「あちゃ~! またやっちゃった~。お~い、ホシノ~! 消火器消火器!」

 

そこでナカジマがキューポラから出て来たかと思うと、車内に居るホシノに消火器を取る様に言う。

 

「戦車と呼びたくない戦車だよね………」

 

杏も思わずそんな呟きを漏らす。

 

「で、でも! 足回りは弱いですが! 88ミリ砲の威力は抜群ですから!!」

 

「戦車が動けないと言うのは致命的だと思うのだがなぁ………」

 

「ぐう!………」

 

フォローしようとする優花里だが、弘樹の最もな返しを聞いて、言葉に詰まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

早速故障したポルシェティーガーのオーバーホールが、自動車部と整備部のメンバー総出で行われいる。

 

「やはり次の試合に出すのは難しいかい?」

 

「残念ながら………何せ非常にデリケートなマシンな上、部品を取り寄せるのにも一苦労ですから………」

 

迫信が敏郎に尋ねると、敏郎は発注部品のリストを見ながらそう返す。

 

「今はアテにならない部品がザッと50は有る状態ですからねぇ」

 

ポルシェティーガーの下に潜り込んでいた藤兵衛からも、そういう答えが返る。

 

「動きさえすれば頼りになるんだがなぁ………」

 

「すみませ~ん。出来る限り急ぎますんで」

 

俊がそう呟くと、エンジンを弄っていたナカジマがそう返す。

 

「プラウダ&ツァーリ機甲部隊を相手にする前に、少しでも戦力補強を図れると良かったんだが………」

 

「仕方ないよ………今の戦力で取れる作戦を考えてみるよ」

 

と、弘樹とみほがそう言っていると………

 

「あ、あの………西住さん」

 

「ん?」

 

背後から声を掛けられ、みほが振り返ると、牛乳瓶の底の様なレンズのメガネを掛け、猫耳のカチューシャを付けた、金髪のロングヘアでやや猫背気味な大洗女子学園の生徒の姿が在った。

 

「あ! 猫田さん!」

 

「知り合いか?」

 

「うん、同じクラスの猫田さん」

 

「あ、その………僕の事はねこにゃーで良いです」

 

みほのクラスメイトだと言う生徒………『猫田』こと『ねこにゃー』は、2人に向かってそう言う。

 

「それで………一体何の用だい?」

 

「あ、あの………僕も今から戦車道取れないかな?」

 

「えっ!?」

 

ねこにゃーの思わぬ言葉にみほが驚きの声を挙げる。

 

「是非、協力したいんだけど………操縦はね、慣れてるから」

 

「慣れてる………戦車道をやっていた事があるのか?」

 

弘樹はねこにゃーが戦車道経験者なのかと思ったが………

 

「ああ、いや、その………ゲ、ゲームで………」

 

「ゲーム?」

 

「う、うん………僕、『World of Panzer』って言うオンラインのゲームなんだけど、知らない?」

 

「いや………」

 

それを聞いた弘樹が一瞬困った様な顔をする。

 

「失礼だが、ゲームと実際の戦車道は違うぞ」

 

「わ、分かってます!………でも………協力したいんです!」

 

注意する様にそう言う弘樹だが、協力したいと言う意志は本物であると主張するねこにゃー。

 

「………西住総隊長。如何なされますか? 小官は総隊長の判断に従います」

 

するとそこで、弘樹は歩兵隊員モードとなり、総隊長であるみほの判断を仰ぐ。

 

「私は良いと思うよ。実際の事はコレから覚えて行けば良いんだし」

 

そんな弘樹に、みほはそう返す。

 

「了解しました」

 

「あ、ありがとう、西住さん」

 

弘樹はヤマト式敬礼をし、ねこにゃーは感謝を述べる。

 

「あ、でも………もう今は使える戦車が無くて………」

 

みほが申し訳なさそうにねこにゃーにそう言うが………

 

「あの戦車は使えないの?」

 

ねこにゃーはそんな言葉を言い放つ。

 

「? あの戦車?」

 

「うん。ずっと置いてあるんだけど………」

 

「すぐにそこへ案内してくれ」

 

ねこにゃーがそう言うと、弘樹はすぐにその場所へと向かおうとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園敷地内の駐車場………

 

「コレは………」

 

「こんな所に三式中戦車が………」

 

みほと弘樹が、屋根付きの駐車場の一角にポツンと置かれていた戦車………『三式中戦車』を見てそう言い合う。

 

「捜索の時に気づかなかったのか?」

 

「アレ? コレ使えるんですか?」

 

「ずっと置きっぱなしになってたから、使えないんだと思ってました」

 

弘樹がそう問い質すと、1年生チームの中で、桂利奈とあやがそう声を挙げる。

 

「…………」

 

それを聞いて呆れた様な様子を見せる弘樹。

 

「ま、まあ、取り敢えず、格納庫へ運ぼうか」

 

みほも苦笑いしながらそう言い、三式中戦車は輸送課によって戦車格納庫へと運ばれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

運び込まれた三式中戦車の状態を敏郎達とナカジマ達がチェックする。

 

「如何ですか?」

 

「うむ、今まで見つかったものと比べてかなり状態が良い」

 

「少し部品を取り換えればすぐにでも動かせそうっすよ」

 

みほが尋ねると、敏郎と藤兵衛がそう返す。

 

「となると後は乗員の確保か………」

 

「あ、それならもう仲間を呼んでるから」

 

弘樹がそう呟くと、ねこにゃーがそう言う。

 

「仲間?………」

 

「「わー! カッコイイーッ!!」」

 

と、弘樹が首を傾げた瞬間、背後からそう言う声が聞こえて来る。

 

みほと弘樹が振り返ると、そこには右目に桃の眼帯を付け、ピンクのカチューシャをした少女と、銀髪のロングヘアに後ろ髪を束ねているナイスバディの少女の姿が在った。

 

「皆オンラインの戦車ゲームしてる仲間です………」

 

ねこにゃーがみほと弘樹にそう言って、2人の少女の元へ近づく。

 

「あ、僕ねこにゃーです」

 

「あ! 貴方が! 『ももがー』です!」

 

「私『ぴよたん』です」

 

ねこにゃーが自己紹介をすると、右目に桃の眼帯を付け、ピンクのカチューシャをした少女………『ももがー』と、銀髪のロングヘアに後ろ髪を束ねているナイスバディの少女………『ぴよたん』が名乗りを挙げる。

 

「おお! ももがーにぴよたんさん!………リアルでは初めまして」

 

「本物の戦車を動かせるなんて、マジヤバーイ!」

 

「………不安だな」

 

「ア、アハハハハ………」

 

まるでゲームでもするかの様に燥いでいるねこにゃー達の姿を見て、弘樹が思わずそう呟くと、みほも乾いた笑いを漏らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大洗学園艦・演習場にて………

 

ねこにゃー、ももがー、ぴよたんの3人からなる新たな戦車チーム………『アリクイさんチーム』の実力を測る為………

 

空教官の監視の元、演習が行われる事となった。

 

………のだが。

 

「ギア固い! 入んない!!」

 

「ゲームだと簡単に入るのに!」

 

アリクイさんチームは早速ゲームと現実の戦車の違いに戸惑い、ギアチェンジで躓く。

 

「落ち着きなさい! チハ系統の戦車は回転数を合わせないとギアが入り難いのよ!!」

 

前後に小刻みに動いている三式中戦車を見ながら、空がそう通信を送る。

 

「ううう! うううううう~~~~~~っ!!」

 

そこで操縦手のももがーは、レバーを両手で握り、思いっきり引く。

 

それで漸くレバーが動いたと思われた次の瞬間………

 

「アレ? バックしちゃったよ!?」

 

三式中戦車は思いっきり後退を始めた。

 

「ちょっ!? ストッープッ! ストッープッ! そっちには塹壕が………」

 

空が叫ぶが時既に遅く………

 

「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

ねこにゃー達の悲鳴を響かせながら、三式中戦車は塹壕の中へと転落!

 

完全に引っ繰り返ったかと思うと、底面から白旗が上がった。

 

「あちゃ~………」

 

「…………」

 

空が呆れた表情を見せ、見学していた大洗機甲部隊員達の中に居た弘樹も頭を抱える。

 

「コレは………もっと練習しないと駄目かも………」

 

みほも引き攣った笑みを浮かべてそう呟くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三度、大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

「派手にやったな………」

 

「早速修理だね」

 

敏郎が泥塗れの三式中戦車を見てそう呟き、ナカジマは自動車部のメンバー+整備員達と共に早速整備に掛かる。

 

「すみません………」

 

「ゴメンナリ………」

 

「ゴメンだっちゃ………」

 

「その語尾って、いつも言ってるの?」

 

すっかりしょぼくれた様子のねこにゃー、ももがー、ぴよたんが謝罪していると、沙織がそうツッコミを入れる。

 

「実際の操縦が初めてだったとは言え、酷過ぎるぞ。あんな事をされては戦車が泣くぞ」

 

とそこで、弘樹からの厳しい言葉が飛ぶ。

 

「「「あうう………」」」

 

それを聞いて、更に落ち込んだ様子を見せるアリクイさんチーム。

 

「舩坂くん、そんなキツく言わなくても………」

 

流石に言い過ぎだと思ったのか、みほがそう注意する。

 

「む………すまない、確かに言い過ぎたな。馴染みのある戦車がぞんざいな扱いをされているのを見てついな………」

 

弘樹はすぐに言い過ぎた事を反省する。

 

「馴染みのある?」

 

と、弘樹の言葉の中に気になる事があり、問い質す様にそう言うみほ。

 

「ああ………中学の頃に所属していた機甲部隊にも三式中戦車が有ってな………」

 

「そういやオメェ、昔っから歩兵道やってたんだっけな」

 

弘樹がそう言うと、地市が思い出した様にそう言う。

 

「中学生の部には全国規模の大会は無いが、近隣の学校とは良く試合をしていた。自惚れかもしれないが、その地域じゃ1番強いと自負していた」

 

懐かしむ様な表情となり、そう語る弘樹。

 

「戦友達にも恵まれていたしな………」

 

「その戦友の方々は今は?」

 

と、弘樹がそう言うと、華がそう尋ねる。

 

「小官は中学を卒業した時に、湯江と一緒にこの学園艦に移り住んだからな………多分、何処かで戦車道や歩兵道を続けているだろうが、詳しくはなぁ………」

 

「舩坂くん………」

 

一瞬少し寂しそうな顔を見せた弘樹を見て、みほの表情が少し曇る。

 

「オイ! そんな事より、今はこの連中を如何にかして使える様にするのが先だろうが!」

 

するとそこで、桃がアリクイさんチームの面々を指差しながらそう言い放つ。

 

「桃ちゃん、空気読もうよ………」

 

「今のは流石に無いと思うよ、桃ちゃん」

 

そんな桃の姿に、柚子と蛍が苦笑いしながらそう言う。

 

「桃ちゃんと呼ぶな!………!? ぐええっ!?」

 

「………少しは黙れ」

 

桃が喚き出すと、熾龍がその頭を片手で鷲掴みにして持ち上げ、強制的に黙らせる。

 

「ちょっ! 栗林先輩! 河嶋先輩の頭から嫌な音がしてますけど!?」

 

「…………」

 

逞巳が熾龍に持ち上げられている桃の頭蓋骨が軋む様な音を聞いて慌てるが、熾龍は意にも介さない。

 

「だが、確かにこのままではとても公式戦に出すワケには行かんな」

 

「しかし、悠長に訓練を行っている時間も無いぞ」

 

エルヴィンとカエサルがそう言い合う。

 

「いっそ練習試合でもして、実戦を経験させてみるってのも有りだな。一の実戦は百の訓練に勝るって言葉もあるしな」

 

「けど、全国大会中のこの時期に練習試合をしてくれる相手なんて………」

 

「ああ~………あの件、受けてみるかなぁ」

 

と、俊と清十郎がそう言うと、杏が何やら意味有り気にそう呟く。

 

「? 会長さん? あの件って、何ですか?」

 

そんな杏の呟きを聞いたみほが、杏に向かってそう尋ねる。

 

「いや、実はさ………とある学園から、ウチとどうしても練習試合をしたいって申し込みが再三送られて来てるんだよね」

 

「練習試合? 全国大会開催中のこの時期にですか?」

 

杏がそう言うと、優花里が疑問の声を挙げる。

 

「うん、1回戦で負けた機甲部隊でね。丁度アンツィオ&ピッツァに勝った頃ぐらいから頻繁に練習試合をしてくれって申し込んで来てるんだよね」

 

「1回戦で負けた機甲部隊………それが何でまた?」

 

「詳しくは分かりませんけど、是非にって事で………練習試合で消費した弾薬や損傷した武器や戦車の整備費用も全部出してくれるって言ってるの」

 

清十郎がそう尋ねると、杏に代わる様に柚子がそう言う。

 

「弾も修理費も持ってくれるってか? 随分太っ腹だな」

 

「西住総隊長。神大歩兵総隊長。如何なさいますか?」

 

磐渡がそう言っていると、弘樹がみほと迫信に問う。

 

「アリクイさんチームの人達の為にも、実戦練習は必要だし………受けてみようと思います」

 

「私としても、その意見に異論は無いね」

 

みほがそう言うと、迫信が扇子を閉じながらそう賛同の意見を述べる。

 

「んじゃ決まりだね。河嶋ー、向こうさんに了承の返事と試合の日時を伝えといて」

 

「はっ! すぐに!」

 

杏がそう指示すると、漸く解放されて伸びていた桃がバッと立ち上がり、格納庫を後にして生徒会室に向かう。

 

「そう言えば、その機甲部隊って何処のどいつや?」

 

とそこで、大河が肝心の相手機甲部隊の名が挙がってない事に気付いてそう言う。

 

「ああ………『知波単学園』の『知波単機甲部隊』だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後………

 

大洗機甲部隊は、かつてグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との練習試合で使用した、大洗町の外れに在る岩肌が露出している丘陵地帯へと集まっていた。

 

知波単機甲部隊との試合は、この場所で行われる事となり、一同は武器や戦車に最終チェックをしながら、知波単機甲部隊は現れるのを待っている。

 

「知波単学園か………確か、初戦で黒森峰と当たって敗退したんだったよな?」

 

『情報によれば、試合開始と同時に、フラッグ車を含めた全車と歩兵部隊全員で万歳突撃を繰り出したそうだ』

 

海音がそう呟くと、指揮車のアインシュタインがそう通信を送って来た。

 

「ええっ!? 万歳突撃っ!?」

 

「無茶ですよ! 知波単機甲部隊の主力戦車は、確か『九七式中戦車』だった筈ですよ!? それでティーガーやパンターに突撃するだなんて!!」

 

それを聞いた清十郎と優花里が驚きの声を挙げる。

 

 

 

 

 

『九七式中戦車』

 

通称『チハ』と呼ばれている、第二次世界大戦中に於ける大日本帝国陸軍の主力戦車である。

 

しかし、中戦車と名付けられているものの、その性能は諸外国の軽戦車並みであった。

 

当時の陸軍は『戦車は歩兵の進軍を支援するもの』という考えを持っていた他、輸送能力の限界、戦闘機や艦船に予算を注ぎ込んだ事による後継機開発の遅延など、様々な事情が重なった結果である。

 

一応、完成当時の頃は、世界水準を満たしていた。

 

だが、欧州での戦いで戦車が恐竜的に大進化を遂げるとアッという間に時代遅れとなり、欧州ではティーガーに破壊されまくっていたM4中戦車にすら歯が立たない有り様だった。

 

だが、旧日本軍の主力戦車であった事や、諸外国の中戦車と比べて小さな事が可愛いと言う理由で、マニア達には愛されている。

 

 

 

 

 

「そら、蟻が象に挑む様なもんだな」

 

白狼は、そんな戦車で黒森峰に正面から突撃した知波単機甲部隊を吐き捨てる様にそう言う。

 

「何でも、その件の責任を取って、その時の総隊長は更迭されたそうですよ」

 

「それで、新しく就任した総隊長がウチとの試合を渇望してるってワケ」

 

そこで柚子と杏がそう言う台詞を言い放つ。

 

「新しい総隊長さんが………」

 

「一体誰なんだ?」

 

と、みほと地市がそう言った瞬間………

 

「! 来ました! 知波単機甲部隊です!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

楓がそう声を挙げ、一同が正面を見やるとそこには………

 

砂煙を挙げながら此方を目指して進んで来る九七式中戦車・チハ4両と、砲を47mm長砲身に換装した新砲塔チハ3両。

 

九五式軽戦車・ハ号が5両。

 

一式中戦車・チヘが3両。

 

一式砲戦車・ホニⅠが2両に、一式十糎自走砲・ホニⅡが2両。

 

二式砲戦車・ホイが1両。

 

短十二糎自走砲が1両。

 

以上の編制の戦車部隊が、一式装甲兵車や一式半装軌装甲兵車・ホハ、くろがね四起に乗った大日本帝国陸軍の戦闘服や、海軍陸戦隊の戦闘服を来た歩兵達を伴ってやって来る。

 

そして、待機していた大洗機甲部隊の前で整列して停まる。

 

「何だ。チハが中心かと思ったら、他にも色々と有るじゃないか」

 

「戦略を転換したのでしょうか?」

 

その知波単機甲部隊の編制を見て俊がそう呟くと、優花里もそんな事を呟く。

 

他の大洗機甲部隊の面々も、思ったより大規模な知波単機甲部隊の様子に少しざわめき立つ。

 

(九七式中戦車か………懐かしいな)

 

そんな中、弘樹はフラッグ車となっている九七式中戦車・チハ(旧砲塔)を見て、懐かしそうな表情をする。

 

するとそこで、そのフラッグ車となっている九七式中戦車・チハ(旧砲塔)のハッチが開き、1人の女性は姿を見せた。

 

「!?」

 

その女性の姿を見た弘樹が珍しく驚きを露わにする。

 

「? 舩坂くん? 如何したの?」

 

それに気づいたみほが声を掛けた瞬間………

 

「よっ、と!」

 

九七式中戦車・チハ(旧砲塔)のハッチから姿を見せた女性が車外へと出て、みほと弘樹の方へと歩み寄る。

 

「貴方が総隊長さん?」

 

女性はみほに向かってそう尋ねる。

 

「あ、ハイ。西住 みほです」

 

「私は知波単機甲部隊の新総隊長、『西 絹代』よ。今日は良い試合をしましょうね。よろしく」

 

そう言って女性………知波単機甲部隊の新総隊長『西 絹代』は、みほに向かって右手を差し出す。

 

「あ、よ、よろしくお願いします」

 

若干戸惑いながらも、みほはその手を取って握手を交わす。

 

「フフ、良い目をしてるわね。良き総隊長の目だわ」

 

絹代はそんなみほの目を見ながらそんな言葉を漏らす。

 

「…………」

 

そして次に、その隣に居た弘樹の事を見やる。

 

「…………」

 

無言で絹代の事を見返す弘樹。

 

「…………」

 

絹代も黙ってジッと弘樹の事を見据えている。

 

「? あ、あの………」

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

そんな少し異様な様子に、みほが戸惑い、大洗機甲部隊の面々も首を傾げる。

 

すると、そこで………

 

「………久しぶりね、弘樹」

 

「西総隊長もお変わりなく………」

 

絹代がそう言い、弘樹はそう返しながらお馴染みのヤマト式敬礼を絹代に送った。

 

「えっ? あ、あの、西さん。舩坂くんの事、知ってるんですか?」

 

それを見たみほがやや慌てて絹代にそう問い質す。

 

「ええ、良く知ってるわよ」

 

絹代がそう返したかと思うと………

 

「西総隊長は小官が中学時代に所属していた機甲部隊の総隊長を務めていた方だ」

 

弘樹がそう説明をした。

 

「!? ええええええぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~っ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その説明に、みほは驚きの声を挙げ、大洗機甲部隊の面々も驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊に練習試合を挑んで来た『知波単学園』の『知波単機甲部隊』

 

その新しい総隊長である『西 絹代』は………

 

何と!

 

弘樹が中学時代に所属していた機甲部隊の総隊長であった!

 

かつての上官との戦いが幕を開ける………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

プラウダ&ツァーリ機甲部隊との戦いを控え、少しでも戦力アップを図る大洗機甲部隊。
そこで三式中戦車を駆るねこにゃー達『アリクイさんチーム』が加入するが、実戦経験の無い彼女達の腕は散々たるものだった。

そこでみほは、アリクイさんチームの即応教育も兼ね、以前より申し込まれていた知波単学園の知波単機甲部隊との練習試合を受ける。
だが、その知波単機甲部隊の新総隊長『西 絹代』は………
弘樹のかつての上官だった!

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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