ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

6 / 287
第6話『戦車、乗ります!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第6話『戦車、乗ります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗男子校で歩兵の兵種の講義と訓練が終わった翌日………

 

遂に、女子学園側の戦車の整備が完了。

 

戦車道の教官も訪れる事となっており、いよいよ歩兵道との合同練習が開始されようとしていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫前………

 

戦車道受講者の女子達と、特殊制服・戦闘服姿の歩兵道受講男子達が集まり、先に来ていた嵐一郎と共に、戦車道側の教官の到着を待っている。

 

大洗男子校は基本、戦闘服のデザインは大日本帝国陸軍の物が学校側から支給されているが、生徒の自由で好きな国の戦闘服を選べる様になっており、男子側の恰好は非常にバラエティ豊かな物となっている。

 

「みぽりん、如何したんだろう?」

 

と、教官を待つ一同の中に、みほの姿が無いのを見た沙織がそう呟く。

 

「もうすぐ授業開始ですが………」

 

華も、校舎の時計が間も無くチャイムを鳴らす時間になろうとしているのを見てそう言う。

 

「ま、まさか!? 登校途中で何かあったんじゃ!?」

 

優花里がそんな事を想像してしまい、やや狼狽した様子を見せる。

 

「何だ? メンバーが足りんのか?」

 

すると、その会話を聞いていた嵐一郎が、沙織達の会話に割って入って来た。

 

「は、ハイッ!!」

 

先日の歩兵道側の厳しい訓練の様子を思い出し、沙織は思わず上擦った声で返事を返してしまう。

 

「ふむ………舩坂!! 来いっ!!」

 

「ハッ!!」

 

すると嵐一郎は、弘樹を呼び出す。

 

ヤケに使い込まれた感じのする大日本帝国陸軍の戦闘服姿の弘樹が、嵐一郎の元へやって来ると、目の前で気を付けの姿勢となる。

 

「舩坂、参りました!」

 

「至急足りていないメンバーを連れて来い! 始業に間に合わなかった場合は分かっているだろうな?」

 

「了解っ!!」

 

嵐一郎にそう命令されると、弘樹は回れ右をして、みほを探しに行くのだった。

 

「怖わぁ~………」

 

「凄い迫力です………」

 

「うんうん! やっぱり教官はこうでないと………」

 

嵐一郎の迫力に本気でビビっている沙織と その迫力に感心している華。

 

そして、何故か納得した様に頷いている優花里だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、みほの捜索に向かった弘樹は………

 

大洗女子学園から、みほが住んでいる寮が在る場所までの道を逆走し、みほの姿を探している。

 

「………ん? アレは?」

 

すると前方に、グッタリとしている黒髪の少女に肩を貸して歩いているみほの姿を発見する。

 

「西住くん!」

 

「あ、舩坂くん! 如何したの?」

 

「最豪教官に言われて君を探しに来た。彼女は?」

 

軽く驚いた様子を見せるみほにそう言いながら、弘樹はみほが肩を貸している少女について尋ねる。

 

「えっと………『冷泉 麻子』さんって言うらしいんだけど………」

 

「………辛い………朝は辛い………」

 

みほが戸惑いながらそう言うと、肩を貸されている少女………『冷泉 麻子』が、心底辛そうな呟きを漏らす。

 

「重度の低血圧だな………」

 

そんな麻子の姿を見て、そう推測する弘樹。

 

「如何しよう? 置いて行くワケにも行かないし………」

 

みほが困った様にそう呟くと………

 

「…………」

 

弘樹は、無言のまま麻子の前にしゃがみ込んで背を向けた。

 

「ふえっ?」

 

「んあ?………」

 

「さ、乗ってくれ」

 

みほと麻子が戸惑っていると、弘樹はそう言って来る。

 

「…………」

 

麻子は一瞬考え込む様な様子を見せたが、すぐに力尽きた様に弘樹の背に負ぶさった。

 

「よっ、と」

 

そのまま麻子をおんぶする弘樹。

 

「西住くん。少し走るが、問題は有るか」

 

麻子を背負ったまま、弘樹はみほにそう尋ねる。

 

「えっ? う、ううん、大丈夫だけど………」

 

「良し! では行くぞ!」

 

みほが戸惑いながらそう返すと、弘樹は麻子を背負ったまま大洗女子学園を目指して走り出す!!

 

「うわっ!? は、速い! ま、待って~っ!!」

 

小柄の少女とは言え、人1人を背負ったままかなり速いスピードで駆け出した弘樹に驚きながら、慌ててその後を追うみほだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・正門前………

 

「遅刻ギリギリよ、冷泉さん。今日も遅刻してたら、連続245日の遅刻だったわよ」

 

「………如何やったらそんなに遅刻出来るんだ?」

 

如何にかギリギリのところで間に合った弘樹が、校門前に立っていた風紀委員と書かれた腕章をした少々主張が強い様に思えるおかっぱ髪をした少女………『園 みどり子』の言葉を聞いて、思わずそう呟く。

 

「朝は何故来るのだろう?………」

 

「朝は必ず来る物なの。成績が良いからって、こんなに遅刻ばかりして………留年しても知らないから」

 

「う~ん………」

 

「さ、降ろすぞ」

 

そこで弘樹は、背負っていた麻子を降ろす。

 

「おおう………」

 

「おおっと!」

 

「しっかり!」

 

しかし、降ろされた途端にフラつき、弘樹とみほは慌てて支える。

 

「えっと、西住さんと男子校歩兵道受講者の舩坂さんですよね」

 

「あ、ハイ」

 

「肯定です」

 

「西住さんはもし今度から途中で冷泉さんを見つけても、今度から先に登校する様に。舩坂さんも手助けをしないで下さい」

 

「あ、ハイ………」

 

「善処致します」

 

みどり子に言葉に、みほと弘樹はそう返事を返す。

 

「………そど子」

 

すると、麻子が恨みがましくぼそりと呟く。

 

「何か言った?」

 

「………別に」

 

目敏く聞き付けたみどり子がそう問い質すが、麻子はシラを切るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・校舎への通路………

 

「………悪かった」

 

相変わらずみほと弘樹に肩を貸されて歩いている麻子が、不意にボソリとそう呟く。

 

「あ、いえ………」

 

「コレも任務の内だ」

 

気にしないでいうみほと、まるで軍人の様な返事を返す弘樹。

 

「何時か借りは返す………」

 

そんな事を言う麻子を、無事教室まで送り届けると、みほと弘樹は戦車格納庫前へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車格納庫前………

 

「遅いから心配しましたよ」

 

「寝過ごしちゃって」

 

やっと現れたみほに、華が心配していた様子でそう言うと、みほは麻子の事を伏せて、頭を掻きながらそう答える。

 

「遅刻ギリギリか………まあ、まだ戦車道の教官も到着していない事だ。今回は大目に見てやる」

 

「ハッ! 感謝致します!」

 

「列へ戻れ!」

 

「ハッ!」

 

一方弘樹の方は、嵐一郎とそう会話を交わすと、歩兵道メンバーの中へと戻る。

 

「お前も良く従えんな、あの教官に………」

 

戻って来た弘樹に、了平がそんな言葉を投げ掛ける。

 

「教官の言葉は絶対だ」

 

「さっすが、日本軍の兵士の子孫だな」

 

当然の様にそう返す弘樹に、地市は呆れた様に笑いながらそう言うのだった。

 

「それにしても教官遅~い。焦らすなんて大人のテクニックだよね~」

 

とそこで、戦車道メンバーの中に居た沙織の、そんな言葉が聞こえて来る。

 

「アイツめ………また大雑把な事をしおって………」

 

すると、嵐一郎がそう呟いた。

 

(? 最豪教官は戦車道の教官殿とは面識が?)

 

それを聞いた弘樹がそう思っていると………

 

空からジェットエンジンの甲高い音が聞こえて来た。

 

「ん?」

 

「敵襲か!?」

 

「飛行機?」

 

「何か近づいて来てないか?」

 

了平、カエサル、楓、地市がそう声を挙げる。

 

その次の瞬間には、巨大な航空機がかなり低い高度で、大洗女子学園の上空へ侵入して来た。

 

「航空自衛隊のC-2改輸送機か………」

 

弘樹がそう呟くと、その航空機………C-2改は更に高度を落とし、後部のハッチを解放する。

 

すると、解放されたハッチから、『何か』が射出される。

 

射出された『何か』は、低高度パラシュート抽出システム・通称LAPESでパラシュートを開き、学園の駐車場へと減速しながら着地。

 

それは、陸上自衛隊の最新鋭の主力戦車・『10式戦車』であった。

 

火花を散らしながら駐車場を滑って行った10式戦車は、やがて真っ赤なフェラーリF40を跳ね飛ばして停止する。

 

「学園長の車が!?」

 

「あ~、やっちったね~」

 

柚子が思わず声を挙げ、杏が他人事の様に干し芋を齧りながらそう言う。

 

「って言うか、あのフェラーリ、此処の学園長のなのか?」

 

「贅沢してんなぁ~」

 

一方で、了平と地市が跳ね飛ばされたフェラーリを見てそう言い合う。

 

と、停止した10式戦車が、LAPESから降りる為にバックしたかと思うと、駄目押しとばかりにそのフェラーリを履帯で踏み潰した。

 

「うわ~、無残………」

 

「学園長さんも可愛そうに………」

 

了平が呆れ、楓が顔も知らない女子学園の学園長に同情していると、10式が方向転換し、駐車場越しにみほ達と弘樹達の前へとやって来る。

 

そして、キューポラのハッチが開いたかと思うと、制服姿でヘルメットを被った人物が姿を現す。

 

「こんにちはー!」

 

その人物が、ヘルメットを取り、ショートの黒髪を露わにしたかと思うと、唖然としている一同に向かってそう挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて一同が落ち着きを取り戻し、男子、女子ごとに整列したかと思うと、先程の自衛官の女性が前に立つ。

 

「騙された~………」

 

「でも、素敵そうな方ですよね」

 

イケメンの教官が来ると勘違いしていた沙織が落胆した様子を見せ、華がそうフォローを入れる。

 

「自衛官のお姉さん………ああ、何かイケナイ感じが………」

 

「お前、1回医者行け。頭の」

 

戦車道教官の姿を見て鼻の下を伸ばしている了平に、地市がそうツッコミを入れる。

 

「特別講師の戦車教導隊、『蝶野 亜美』一尉だ」

 

「宜しくね」

 

桃に紹介された女性自衛官………『蝶野 亜美』が、皆に向かってそう言う。

 

「戦車道は初めての方が多いと聞いてますが、一緒に頑張りましょう!」

 

そう言って主に女子の方のメンバーを確認する様に見回す亜美。

 

「アレ? 西住師範のお嬢様ではありません?」

 

すると、亜美の目がみほで止まり、そう話し掛ける。

 

「あ………」

 

「師範にはお世話になってるんです。お姉様もお元気?」

 

「ああ………ハイ………」

 

亜美の言葉に、みほは若干沈みながら返事を返す。

 

「西住師範って?」

 

「有名なの?」

 

と、亜美の言葉を聞いた他のメンバーがざわめき出す。

 

「西住流ってのはね、戦車道の流派の中でも、最も由緒ある流派なの」

 

「…………」

 

そんなメンバーに亜美はそう説明するが、それを聞くみほの顔は辛そうだった。

 

「あ、あの!………」

 

「オイ、亜美。お前は世間話をする為に此処に来たのか?」

 

それを見た沙織が話題を変えようとしたが、その言葉は嵐一郎によって遮られる。

 

「アレ? 嵐一郎じゃない。如何してこんな所に?」

 

嵐一郎の姿を見た亜美が、軽く驚いた様にそう言う。

 

「如何しても何も、俺は大洗男子校の方で歩兵道の授業を受け持っているんだ」

 

「アラ、そうだったの? じゃあ、此処の歩兵部隊は嵐一郎の愛弟子達って事なのね」

 

そう言いながら、男子の方を見やる亜美。

 

「アラ? あの子………」

 

するとその目が、弘樹で止まる。

 

「あの顔………何処かで見た様な気が………」

 

「当たり前だ。奴は舩坂 弘の子孫だ」

 

「えっ!? 本当!? うわぁっ、凄い!! あの英霊に子孫が居たなんて!!」

 

亜美はまるで芸能人に出会ったかの様なリアクションを見せる。

 

「成程ね。嵐一郎がこの学園艦の歩兵道の教官を引き受けたワケね。何たって………」

 

「オイ、それよりも早く授業を始めたら如何だ?」

 

更に何かを言おうとした亜美だが、嵐一郎自身がその言葉を遮る。

 

「あっと、そうね………それじゃあ、本格戦闘の練習試合、早速やってみましょう」

 

「「「「「「「「「「えええっ!?」」」」」」」」」」

 

イキナリ練習試合をすると言う亜美の言葉に、男子側も女子側も驚愕し、戸惑いの声が挙がる。

 

「あの、イキナリですか?」

 

「大丈夫よ、何事も実践実践。戦車なんてバッーって動かしてダッーと操作してドーンと撃てばいいんだから!」

 

柚子がそう問うと、亜美は矢鱈と擬音が混じった回答を返す。

 

「最豪教官殿………失礼ですが、あのお方は本当に戦車教導隊の方で?」

 

流石の弘樹も、そんな亜美の姿を見て、嵐一郎にそう質問をぶつける。

 

「言うな………ったく、アイツは………」

 

嵐一郎は頭を抱えて、亜美に向かって呆れる様な様子を見せた。

 

(………最豪教官殿も苦労されているのだな)

 

そんな嵐一郎の姿を見て、弘樹は心の中で同情する。

 

「それじゃ、歩兵道の皆は随伴する戦車チームを決めて分隊を編成して分隊長を決めて、戦車チームと一緒に其々のスタート地点に向かってね」

 

亜美はそんな事など露知らず、地図を広げて生徒達にそう指示を出すのだった。

 

「随伴するチーム決めて分隊を編成と言われても………」

 

「心配は要らん。分隊の編成は考えておいた。今から言うメンバーは其々に集合して分隊を編成しろ!!」

 

逞巳が戸惑いの声を挙げると、嵐一郎がそう言う。

 

そして、編成された分隊は………

 

 

 

 

 

生徒会メンバー+蛍の乗る38tのEチームに………

 

神大 迫信、栗林 熾龍、神居 十河、小金井 逞巳、銅 秀人、司馬 俊、日暮 豹詑を中心とし………

 

迫信が分隊長を務めるε分隊。

 

 

 

 

 

1年生達の乗るM3のDチームに………

 

柳沢 勇武、炎苑 光照、塔ヶ崎 誠也、疾河 竜真、ジェームズ・モンロー、竹中 清十郎、桑原 正義を中心とし………

 

勇武が分隊長を務めるδ分隊。

 

 

 

 

 

個性豊かな歴女チームの乗るⅢ突のCチームに………

 

蹄 磐渡、水谷 灰史、鶏越 鷺澪、狗魁 重音、江戸鮫 海音を中心とし………

 

磐渡が分隊長を務めるγ分隊。

 

 

 

 

 

バレー部メンバーの乗る八九式のBチームに………

 

黒岩 大河、本多 明夫、蛇野 大詔、葉隠 小太郎、東郷 武志、浅間 陣を中心とし………

 

大河が分隊長を務めるβ分隊。

 

 

 

 

 

そして、みほ達が乗るⅣ号戦車のAチームに………

 

舩坂 弘樹、石上 地市、大空 楓、綿貫 了平、宮藤 飛彗を中心とし………

 

弘樹が分隊長を務めるα分隊。

 

 

 

 

 

………と言う編成となった。

 

「オイオイ、大丈夫なのか?」

 

「イキナリ練習試合だなんて………先行き不安な事になっちまったじゃねえか………」

 

「大丈夫なんですか? 舩坂さん」

 

了平と地市がいきなりの練習試合に不安を感じ、楓が心配そうに弘樹に尋ねる。

 

「最豪教官の御判断だ。小官はそれに従うだけだ」

 

しかし、弘樹はさも当然の様子でそう返す。

 

「全く………相変わらず不器用な野郎だぜ」

 

地市が、呆れた様子で呟く。

 

「よおし! 分隊ごとに分かれたな! では武器を選べ!! 自分の相棒となり、試合の勝ち負けを決める要素ともなり得る物だ!! 昨日説明した兵種の事も踏まえて、良く考えて携帯する様に!!」

 

とそこで、嵐一郎がそう声を挙げたかと思うと、戦車格納庫前に数台の九四式六輪自動貨車と、同じく野戦砲を引く数台の九八式四屯牽引車『シケ』など、多数の非装甲車両が入って来る。

 

九四式六輪自動貨車達は、歩兵部隊の前に荷台を向けた状態で次々に停車すると、その内の1台の運転席から敏郎が降りて、迫信の前に立つ。

 

「会長。出来る限りの武器と車両を用意しました」

 

「御苦労、真田くん」

 

敏郎が迫信にそう報告すると、迫信は持っていた扇子をパチンと閉じる。

 

「さあさあ! 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 良い物ばかりとは言えないが、十分な数を用意して来ましたよ~!!」

 

少々ハイテンション気味な藤兵衛が、1台の九四式六輪自動貨車の荷台の幌を捲ると、荷台には様々な小銃が積まれていた。

 

それに呼応する様に、他の整備部のメンバーが次々に九四式六輪自動貨車の荷台の幌を捲ると、散弾銃、機関銃、対戦車ロケット弾、狙撃銃、対戦車ライフルなど、武器が種類ごとに分かれて多数積まれているのが露わになる。

 

「おお~っ!」

 

「スゲェな、オイ!」

 

豹詑と海音が、その光景を見て、思わずそんな声を漏らす。

 

「何をボケェッとしている! さっさと武器を選ばんか!!」

 

とそこで、嵐一郎の尻を叩く声がして、一同は慌てて其々に兵種担当の武器を手に取って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして10数分後………

 

武器を選び終えた歩兵部隊は、其々の分隊ごとに分かれ、随伴する戦車チームの出発を待っている。

 

「いよいよ試合が始まるな………」

 

「ヤ、ヤバイ………緊張と恐怖で震えて来た」

 

「震え過ぎですよ、了平」

 

試製四式七糎噴進砲を持った地市がそう呟くと、ビッカーズ・ベルチェー軽機関銃Mk.1を持った了平が全身でガタガタ震え、ウィンチェスターM1887を持つ楓がツッコミを入れる様にそう言う。

 

「良し………整備はバッチリみたいですね」

 

自分が選んだモシン・ナガンM1891/30の状態をチェックしている飛彗。

 

「…………」

 

そして、無言で三八式歩兵銃を持ち、みほ達が乗るⅣ号戦車が現れるのを待っている弘樹。

 

「ヒヤッホォォォウッ! 最高だぜぇぇぇぇっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

すると、戦車格納庫の中から優花里と思われる歓声が聞こえて来て、地市、了平、楓、飛彗の4人が思わずビクリとする。

 

「い、今の………優花里ちゃんの声だよな?」

 

「あ、ああ………そうだと思うが………」

 

「彼女………あんな人でしたっけ?」

 

「所謂、ハイになってるってやつでしょうか?」

 

困惑した様子を隠せないでいる了平、地市、楓、飛彗。

 

「…………」

 

だが、弘樹だけは相変わらず無言で仁王立ちしている。

 

それから少しして………

 

遂にみほ達が乗るⅣ号戦車が、戦車格納庫から発進して来た。

 

「おっ! 来た来た!!」

 

「おお~っ! やっぱ動いてるとこ見るとカッコイイなぁ~」

 

走って来るⅣ号を見ながら、了平と地市がそう言う。

 

しかし………

 

「………アレ? 何だか………」

 

「コッチに向かって………思いっきり突っ込んで来てません?」

 

そこで楓と飛彗が違和感を感じ、そう呟く。

 

「「へっ?」」

 

その言葉で、了平と地市がⅣ号の事を良く確認すると………

 

確かにⅣ号は、かなり速い速度で弘樹達のα分隊の方へと向かって来ている。

 

「オ、オイ! まさか!?」

 

「逃げろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

了平がほぼ絶叫する様に叫んだ瞬間、α分隊のメンバーは蜘蛛の子を散らす様に逃げ始める。

 

「…………」

 

そんな中、只1人弘樹だけが、その場で仁王立ちを続けている。

 

「!? 弘樹!? 何やってんだっ!?」

 

「轢き殺されるぞ!?」

 

「舩坂さん! 逃げて!!」

 

「…………」

 

地市、了平、楓が慌てて叫ぶが、やはり弘樹は動かない。

 

その弘樹目掛けて、Ⅳ号戦車がドンドン迫る!

 

「弘樹いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

と、地市の叫びが木霊した瞬間!!

 

Ⅳ号がブレーキを掛け、減速を始めた!!

 

履帯から土片と土煙を撒き散らすⅣ号。

 

そして、弘樹に衝突する寸前で停止する!

 

「舩坂くん!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「怪我してない!?」

 

するとそこで、Ⅳ号砲塔のハッチが全て開き、装填手席からみほ、砲手席から優花里、車長席から沙織が上半身を出して来る。

 

「ああ………」

 

「すみません。戦車の操縦って難しくて………」

 

弘樹が短く返事を返すと、今度は車体の操縦者席のハッチが開き、華が頭を出して来る。

 

「初めてなんだ。そんなものだろう」

 

平然としながらそう会話を交わす弘樹だが、Ⅳ号との距離は実に僅か10cm足らず。

 

後少しブレーキが掛かるのが遅ければ、確実に引き潰されていただろう。

 

「あ、あの………如何して逃げなかったの?」

 

と、みほもその事について問い質す。

 

「………停まると思っていた………それだけだ」

 

弘樹はそう言うと、スタート地点に向かう為に、くろがね四起の方へと向かう。

 

「カッコイイ………」

 

「正に英霊の子孫の風格です………」

 

「日本男児って、ああいう人の事を言うんでしょうね」

 

「…………」

 

沙織、優花里、華は弘樹の背を見ながらそんな事を呟き、みほも頬を染めて弘樹の背を見詰めていた。

 

「スッゲェな、アイツ………」

 

「ったく………相変わらず肝の座った奴だぜ」

 

「それが舩坂さんの舩坂さんたる所以ですよ」

 

「凄い度胸ですね」

 

了平、地市、楓、飛彗もそんな事を言いながら、弘樹と同じくろがね四起に乗り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなありながら更に10数分後………

 

各戦車チームと随伴歩兵分隊は、演習場の其々のスタート地点へと辿り着く。

 

「皆、スタート地点に着いた様ね。ルールは簡単。全ての戦車を動けなくするだけ。つまり、ガンガン前進して、バンバン撃ってやっつければ良い訳」

 

「そして歩兵は、攻撃してくる敵の戦車、或いは歩兵から自分が随伴している戦車を守り抜け。歩兵は幾らやられても負けにはならんが、戦車がやられればそれまでだ。つまり、歩兵とは戦車を守る盾!! その役割を全うせよ!!」

 

そこで、亜美と嵐一郎から全戦車チームと随伴歩兵分隊のそう通信を送る。

 

「戦車道、歩兵道は礼に始まって、礼に終わるの」

 

「一同! 礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」

 

と続けて、亜美と嵐一郎がそう言うと、戦車チームのメンバーと、歩兵部隊は礼をしながら挨拶をする。

 

「それでは! 試合開始!!」

 

そして、亜美の合図で、練習試合が開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Aチーム&α分隊のスタート地点………

 

「始まったか………」

 

「それで、如何すんだ?」

 

「スタートしたのなら、動いた方が良いのでは?」

 

Ⅳ号の周辺に展開しているα分隊の中で、地市、了平、楓がそう言う。

 

「いや、今回は自分達以外は全て敵なんだ。無策で動き回るのは得策じゃない」

 

と、弘樹がそう言ったかと思うと、Ⅳ号の車体の上に昇り、砲塔をノックした。

 

「あ、ハイ」

 

「何?」

 

すると、装填手のみほと、車長の沙織が顔を出す。

 

「武部車長。作戦を検討したいのですが、宜しいですか?」

 

弘樹は、ウェストバッグから地図を取り出し、沙織にそう尋ねる。

 

「え? 作戦って?」

 

「この分隊の分隊長は私が務めさせていただいておりますが、最上位の指揮権は戦車の車長に在ります。ですので、武部車長に部隊を如何動かし、展開させるのかを判断して頂きませんと………」

 

敬語を使い、首を傾げる沙織にそう説明する弘樹。

 

「そ、そうなの? って言うか、何でそんな畏まった口調なの?」

 

「試合中は戦車チームの皆さんが上官です。上官に対し敬語を使うのは当然であります」

 

戸惑う沙織に、弘樹はそう説明を進める。

 

「そ、そうなんだ………でも、作戦って言われても………」

 

「えっと、弘樹くん。ちょっと地図を見せてもらっても良い?」

 

「どうぞ、西住装填手」

 

何をして良いか分からないでいる沙織を見かねた様に、みほがそう言うと、弘樹は地図をみほと沙織の両名に見える位置に置く。

 

「私達が居る位置からだと………近いのは八九式のBチームとβ分隊か、Ⅲ突のCチームとγ分隊………」

 

「小官と致しましては、Ⅲ突を最初に叩くのが宜しいかと進言致します。最も火力が高く、車高の低い自走砲故に待ち伏せをされては厄介です」

 

「確かに………」

 

地図に記されている各戦車チームと随伴分隊のマークを見ながら、弘樹とみほがそう言い合う。

 

「流石、元戦車道の経験者と現役歩兵道求道者だな」

 

「頼りになりますね」

 

地市と楓がそんな2人の姿を見てそう言い合う。

 

「ねえ、真っ先に生徒会潰さない? 教官、女の人だったんだもん」

 

すると、弘樹とみほの話を無視するかの様に、沙織がそう言って来た。

 

「えっ?」

 

「Eチームとε分隊をですか?」

 

何の戦術・戦略的判断も無い、個人的な感情による判断に、みほと弘樹は戸惑いの声を挙げる。

 

「まだ言ってるんですか?」

 

「私が決めて良いんでしょう? 戦車の車長なんだから」

 

運転席に居る華からも呆れた声が挙げられるが、沙織は半ば強引にそう決めようとする。

 

「う、うん………」

 

「車長決定ですか………了解しました」

 

その言葉でみほは引き下がり、弘樹も了解してヤマト式敬礼をする。

 

「オイ、良いのかよ? そんなんで?」

 

「上官の決定は絶対だ。武部車長がEチームとε分隊を叩けと仰るなら、それに従うまでだ」

 

了平がそう言うが、弘樹はⅣ号の上に乗ったままそう返す。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

飛彗が心配そうにそう呟き、他の分隊員達も多かれ少なかれ、不安げな様子を見せている。

 

「じゃあ! 生徒会チームの居る方へ前進!………で~、どっち?」

 

自分で命令を出しておいて、そう尋ねる沙織。

 

「Eチームとε分隊ですと、此処から………!?」

 

沙織に地図を見せながら、弘樹がEチームとε分隊の位置を教えようとしたところ、不意に何かに気付いた様に、背後の林の中を振り返る。

 

「? どしたの?」

 

「静かに!」

 

首を傾げる沙織をそう言って制し、弘樹はⅣ号の上に乗ったまま背後の林を見据える。

 

すると………

 

茂みが微かに動いて、ガサガサと言う音を立てた。

 

「!!」

 

それを聞いた瞬間!!

 

弘樹は腰のベルトに下げていた九七式手榴弾を手に取り、安全ピンを外したかと思うと、茂みの中に投げつける!!

 

九七式手榴弾が、音を立てた茂みの中へと吸い込まれたかと思うと爆発する!!

 

「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」

 

すると、爆風で吹き飛んで露わになった茂みの中から、3人の偵察兵が現れて倒れる。

 

そして、遭難防止の為に携帯が義務付けられているビーコンから、戦死判定を喰らった事を告げるブザーが鳴る。

 

「!? うわっ!?」

 

「何だっ!?」

 

「アレは………β分隊の偵察兵の方!?」

 

地市、了平、楓が驚きの声を挙げる中、林の更に奥の方を見据える弘樹。

 

そしてそこに、コチラへ砲口を向けている戦車………八九式と、其々に武器を構えているβ分隊員達の姿が在った!!

 

「! 敵襲っ! Bチームとβ分隊の奇襲だっ!!」

 

弘樹がそう叫んだ瞬間!!

 

八九式の戦車砲が火を噴くっ!!

 

「!? 伏せろっ!!」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

弘樹の言葉で、α分隊員達は一斉に伏せ、Aチームの面々は車内へと引っ込む。

 

八九式の砲弾は、兵員輸送用として使用していた九四式六輪自動貨車に命中!

 

九四式六輪自動貨車の車体に大穴が空いたかと思うと、爆発・炎上する!!

 

「!? うおおおぉぉぉぉ~~~~~っ!? 怖えええええっ!?」

 

その光景を伏せながら見ていた了平が絶叫を挙げる。

 

「凄い音………」

 

「今………空気振るえたよ」

 

「こんなスパイク、打ってみたい」

 

一方、八九式の車内ではバレー部チームの操縦手の忍、通信手の妙子、砲手のあけびが、自分達の戦車の砲撃の音と振動に驚きを露わにしていた。

 

「先ずはⅣ号・Aチームとα分隊を叩く!」

 

そして、キャプテンの車長兼装填手の典子が、そう言いながら次弾を装填する。

 

「弘樹ぃ! 悪いなぁ!! 歩兵道経験者のお前さんは厄介や!! 最初に潰させて貰うでぇ!!」

 

更に、ドラムマガジンのMG34機関銃を持ったβ分隊・分隊長の大河もそう言い放ち、銃弾を乱射して来る!!

 

「死ねえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

「くたばれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」

 

それを皮切りに、まるで人が変わった様に過激な台詞を吐き、殺気立った顔した武志がM18 57mm無反動砲を放つと、同様の物を装備していたラクビー部員達も一斉に放ち始める。

 

「キャ、キャプテン………キャプテンの幼馴染の人………性格変わってません?」

 

と、砲塔側面の覗き窓を開けて、その光景を目撃したあけびが、典子にそう言う。

 

「ああ、武志の奴、実はハイになり易い性分なんだ。試合とかの時はいつもあんな感じだよ」

 

「そ、そうなんですか?………」

 

「大丈夫。終わったらいつもの武志に戻るから」

 

冷や汗を浮かべているあけびに、典子は笑顔でそう言うのだった。

 

「がはははっ! 勇ましいなぁ、ラクビー部! よおし! 我も負けんぞ!!」

 

そう言いながら、九一式十糎榴弾砲に次々に榴弾を装填し、発射している明夫。

 

「…………」

 

その傍では、陣が無言でラハティL-39対戦車銃の狙いを定めている。

 

Ⅳ号とα分隊の周りで、次々に爆発によって土片が舞い上がる。

 

「うわぁーっ!?」

 

「助けてくれーっ!?」

 

思ってもいなかった奇襲攻撃の前に、α分隊の歩兵達は浮き足立つ。

 

「慌てるな! 応戦しろっ!!」

 

まだⅣ号の上に乗ったままだった弘樹が、三八式歩兵銃をコッキングして、突撃して来るβ分隊の歩兵部隊に狙いを定めようとする。

 

しかし………

 

「恐ーいっ! 逃げようっ!!」

 

沙織がそう叫んだかと思うと、弘樹を乗せたままⅣ号が発進する。

 

「!? 何っ!?」

 

驚きながらも、すぐにⅣ号の車体にしがみ付き、振り落とされるのを防ぐ弘樹。

 

と、Ⅳ号が発進した直後、先程まで停車していた位置に、89式の砲弾が撃ち込まれる。

 

「た、武部車長! どうか冷静に!!」

 

「だって恐いんだもーんっ!! 皆も逃げてーっ!!」

 

砲塔を攀じ登るとキューポラから車内を覗き込み、沙織に冷静にと呼び掛ける弘樹だったが、今まで経験した事の無い恐怖に襲われている沙織は、若干涙目でそう訴えかけて来る。

 

「クッ!………全員、撤退っ!!」

 

すると弘樹は、一瞬逡巡した様子を見せたが、すぐにα分隊の面々にそう指示を出した。

 

「撤退っ!? 逃げんのか!?」

 

地市が驚きの声を挙げる。

 

「車長の決定は絶対だ!! 全員この場から撤退しろっ!!」

 

徐々に離れて行くⅣ号の上で、弘樹はそう叫ぶ。

 

「大賛成!! ナイス判断だよ~、武部ちゃ~んっ!!」

 

終始ビビっていた了平が、いの一番に無事なくろがね四起に乗り込む。

 

「チイッ! しゃーねえか!!」

 

「一旦引きましょうっ!!」

 

「あ! 待って下さいっ!!」

 

更にそのくろがね四起に地市と楓、飛彗が乗り込むと発進。

 

他の無事だったくろがね四起と九四式六輪自動貨車、そしてシケも次々に撤退を始める。

 

「………目標は予想通り、東へ向かって逃走を開始」

 

「Cチーム、γ分隊、任せたぞ」

 

と、その逃げるAチームとα分隊の様子を、木の上から小太郎と大詔が観察しており、通信機に向かってそう話す。

 

[ヤヴォール!]

 

[分かったっ!!]

 

通信機からは、Cチーム・Ⅲ号突撃砲の車長であるエルヴィンと、γ分隊の分隊長である磐渡の声が返って来る。

 

「!? ああっ!?」

 

と、着弾の音が遠ざかって、少々冷静さを取り戻して来た沙織が、キューポラから少し顔を出し、前方を見やると………

 

Ⅳ号から見て左右に分かれている道の左の方から、歴女達のCチームとγ分隊が進軍して来ていた。

 

「得物を捉えた!」

 

「南無八幡大菩薩!」

 

装填手のカエサルと、操縦手のおりょうがⅣ号を視認してそう声を挙げる。

 

「悪く思うな、Aチーム、α分隊」

 

「俺達のモテ道の為に死んでくれぇっ!」

 

「勝負と行こうか、飛彗!!」

 

SIG KE7軽機関銃を持った磐渡と、60mmバズーカを肩に構え、更に予備の物を多数背負った重音、そしてPIATを担いでいる海音がそう言って得物を向ける。

 

「如何しましょう!?」

 

「挟まれたーっ! あっちに逃げようっ!!」

 

その光景を操縦席の窓から目撃していた華が声を挙げると、車内へと引っ込んだ沙織が、Ⅲ突が来ているのと逆側の道を指差してそう言う。

 

「えっ!? 何ですか!? 聞こえません!!」

 

しかし、Ⅳ号のエンジン音と振動音により、華の耳には沙織の指示が届かない。

 

「狙えっ!!」

 

「貰ったぁっ!!」

 

その間に、Ⅲ突砲手の左衛門佐がⅢ突の砲を、一団からやや後方で九〇式野砲に狙いを定めていた鷺澪もそう声を挙げる。

 

「わあぁ~~っ!? やられる~っ!!」

 

悲鳴の様な叫びを挙げ、沙織が両手で頭を押さえて車長席に蹲った瞬間!!

 

「っ!!」

 

タンクデサントしていた弘樹が、三八式歩兵銃に二式擲弾器を装着し、30mm榴弾をⅢ突とγ分隊に向けて放った!!

 

「「!? おうわっ!?」」

 

「!? 視界が!?」

 

30mm榴弾は、向かって来るⅢ突の1メートル手前の地面に着弾し、大きく土片を巻き上げ、磐渡達を怯ませると同時に、砲手の視界を防ぐ。

 

「五十鈴くん! 右斜め前だ!!」

 

「! ハ、ハイッ!!」

 

その隙を付き、弘樹はⅣ号の前方へと移動すると、操縦手用のハッチを開け、華に直接指示を出す。

 

Ⅳ号はⅢ突とγ分隊の鼻先を掠める様にして、右斜め前の道へと入って行く。

 

「待ってくれ~! 弘樹~っ!!」

 

その後を、了平の情けない声と共にα分隊の車両が走り抜ける。

 

「クソッ! 逃げられたで!!」

 

「大丈夫です。逃走予想進路上には既に地雷を設置してあります。このまま追えば袋のネズミですよ」

 

追撃していた大河がそう声を挙げるが、そこでγ分隊の灰史がそう言う。

 

「よ~し! まだまだ行くよっ!!」

 

「追撃戦だぁっ!!」

 

典子とエルヴィンがそう言い合い、八九式とⅢ突がⅣ号とα分隊を追って行く。

 

「俺達も行くぞぉっ!!」

 

「続かんかいっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

更に車両に乗り込んだβ分隊とγ分隊が続く。

 

逃げ回るⅣ号とα分隊目掛けて、八九式とⅢ突の砲弾、そしてβ分隊とγ分隊の銃弾が次々と飛んで来る。

 

「うおっ!?」

 

近くに砲弾が着弾し、舞い上がって土片が降って来て、弘樹が思わず声を挙げる。

 

「舩坂くん! 危ないから中に………」

 

装填手用のハッチが開き、みほが上半身を乗り出すと、弘樹にそう呼び掛けようとしたが………

 

「!? 前方に人が居るぞ!!」

 

「!? えっ!?」

 

そこで弘樹がそう声を挙げ、みほが釣られる様に前方を見やるとそこには………

 

切り株に頭を預け、開いた本を顔に乗せて寝ている大洗女子学園の制服を着た少女の姿が在った。

 

「危ないっ!!」

 

みほがそう叫ぶが、無情にもⅣ号戦車は、全速力で少女の元へと突っ込んで行くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

どうも、またもやお久しぶりです。
再び帰って参りました。

遂に戦車道と歩兵道の合同練習となります。
原作での各チーム対抗の練習試合に、歩兵部隊を加えた形になります。

で、作中でもチラりと触れられていましたが、戦車道と合同で行う場合の歩兵道は、如何に戦車を守るかが勝敗要素となります。
例え歩兵が何人やられようと、随伴している戦車が無事ならば、その歩兵分隊は負けていない事になります。
逆に、歩兵が全員残っても、随伴する戦車が撃破されてしまえば負けです。
公式戦ルールのフラッグ戦の場合は、原作同様フラッグ車が撃破されてしまえば負けですが、フラッグ車以外の戦車が撃破され、随伴歩兵分隊が生き残っている場合、他の随伴歩兵分隊に合流し、戦闘を継続する事が可能です。
戦車に乗った女性を守る為に生まれた歩兵道ですので、歩兵は戦車を守る存在であるという事に焦点を置いているルールです。
また、コレならば、原作での勝利要素を変更しないで戦闘を描写出来るというリアルな事情もありまして(爆)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。