ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第59話『第4回戦、始まります!』
様々な者達の思惑が交錯する中、遂に始まった鉱関機甲部隊を破ったダークホース『パシフィック機甲部隊』との試合………
試合会場は島々が点在する海洋………
水辺での戦いを得意とするパシフィック機甲部隊にとっては正にホームグラウンドだった。
果たして、大洗機甲部隊に勝機は有るのか?
試合会場・大洗機甲部隊のスタート地点………
大洗機甲部隊のスタート地点は、砂浜の海岸だった。
既に全戦車には、敏郎達の整備部とナカジマ達の自動車部が開発したフロートが取り付けられ、水陸両用に改造されている。
更に、歩兵部隊にも大発動艇を中心とした上陸用舟艇やシュビムワーゲンと言った水陸両用車が用意されている。
「皆さん。戦車に問題はありませんか?」
キューポラから上半身を出していたみほが、喉頭マイクに手を当て、各車にそう尋ねる。
『こちらアヒルさんチーム! 問題ありません!』
『カバさんチーム、言うに及ばず!』
『ウサギさんチーム、大丈夫です!』
『カメさんチームも問題無いよ~』
『カモさんチーム、異常無し!』
『サンショウウオさんチーム、オールグリーン!』
すると、各戦車から問題無しの返答が返って来る。
「西住総隊長。我々の方も舟艇と車両のチェックが完了した。全て問題無しだ」
そこで、迫信がみほに向かってそう報告を挙げる。
それに呼応するかの様に、舟艇や車両に乗って居た大洗歩兵達が疎らに手を上げる。
「了解しました」
「西住総隊長。質問、宜しいでしょうか? 部隊展開はどの様に行うのですか?」
みほがそう返すと、戦闘モードに入った弘樹が、ヤマト式敬礼をしてそう尋ねて来る。
「あ、ハイ。今回のフィールドは殆どが海です。陸地は点在する島々だけです。ですので、先ず1番面積が大きい島へ向かいます」
「あの島ですか………」
それを聞いた弘樹が、水平線の方を振り返る。
そこには、前日みほ達と共に上陸した、あの軍艦島の様な島が見えている。
「パシフィック機甲部隊は水辺での戦いを得意としています。相手のフィールドで戦えば私達に勝機は有りません。何とか陸上戦に持ち込んで戦車を各個に撃破して行きます」
「それがベターな作戦だな………」
みほの言葉に、大詔が同意する。
「では、先ず歩兵部隊は先行して上陸し、偵察と安全確認を行った後に戦車部隊を上陸させると言う形かい?」
そこで、迫信がみほが考える部隊展開を予測してそう言う。
「そうですね。その方向でお願いします」
みほはそう返すと、今回のフラッグ車であるウサギさんチームのM3リーと、サンショウウオさんチームのクロムウェルの方を振り返った。
M3リーからは梓が、クロムウェルの方は今日子が姿を見せている。
「梓ちゃん。今回はウサギさんチームがフラッグ車だからね。敵の攻撃にはいつも以上に注意を払って」
「了解しました!」
「やってやるぜっ!」
「燃えて来たーっ!!」
「ガッツと元気で頑張りまーすっ!!」
「やるっきゃないっ!!」
みほがM3リーの方を見ながらそう言うと、梓、あや、桂利奈、優季、あゆみがそう返事を返す。
「…………」
そして、外から姿は見えないが、紗希も凛々しい表情で頷いていた。
「サンショウウオさんチームは、今回が初実戦のメンバーが殆どです。無理はしないで援護に徹して下さい。唯さん、明菜さん。皆さんのフォローをお願いします」
「おう、任せとけ!」
「分かりました」
続いてみほは、クロムウェルを見てそう言い、唯と明菜からそう言う返事が返って来る。
今回、聖子が風邪でダウンしてしまい、優と伊代もその付き添いとして残った為、現在クロムウェルの乗車しているメンバーは………
今日子が戦車長、明菜が通信手、静香が砲撃手、満里奈が装填手、唯が操縦士と言った具合である。
唯は操縦士を継続しているが、明菜は装填手から通信手へと配置換えを行っており、その他のメンバーは全員今回が初試合である。
「…………」
特に、車長を任された今日子など、傍から見ただけでも分かるくらい、ガチガチに緊張している。
「オイッ!」
「!? な、何っ!?」
と、そんな今日子に白狼が不意に声を掛け、今日子は若干どもりながら返事をする。
「あんまり緊張するんじゃねえよ。オメェ1人で戦うワケじゃねえんだ。そんな姿見てるとコッチが緊張しちまう」
白狼はそうぶっきらぼうに言うと、クロムウェルから離れて行った。
「…………」
白狼の言葉に少し呆然となったが、それが彼なりの激励だった事に気づく今日子。
「………『信念をも貫く勇敢なる大神』」
離れている白狼の背を見ながら、今日子はそんな事を呟くのだった。
「よし! 全員乗船、及び乗車っ!!」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
とそこで弘樹がそう言うと、大洗歩兵部隊の一同は舟艇や水陸両用車に乗り込んで行く。
「では、アールハンドゥガンパレード!」
迫信がそう号令を掛けると、大洗歩兵部隊は一斉に海原へと繰り出す。
「私達も行きます! パンツァー・フォーッ!!」
「「「「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」」」」
そして少し間を開けて、みほ達も戦車部隊も前進。
大洗歩兵部隊と少し距離を取りながら、廃墟の島へと向かうのだった。
10数分後………
廃墟の島の海岸………
やや急勾配の斜面の上に、廃墟となっている建物が並んでいる海岸へ、先んじて到着した大洗歩兵部隊。
「よし! 上陸するぞっ!!」
弘樹がそう言うと、先ず大発が次々に海岸へと接岸し、歩板を下ろして乗って居た歩兵達が上陸を計る。
と、その瞬間!!
突如、ダダダダダダッ!!と言う轟音と共に、上陸を図っていた歩兵部隊に、雨の様な銃弾が襲い掛かったっ!!
「「「「「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
丁度上陸しようとしていた大発に乗って居た歩兵達が、一瞬で全滅する。
「! 敵襲っ!!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
弘樹がそう叫び、大洗歩兵部隊は慌てて遮蔽物を探し出す。
その間にも、斜面の上に並んでいる廃墟から、次々と銃弾が飛んで来る。
「待ち伏せだっ!!」
「クソッ! 奴等、廃墟をトーチカにしてやがるっ!!」
磐渡と重音がそう声を挙げる。
「クッ! 予想以上に敵の展開が早いっ!!」
「まさかもうこの島に上陸しているなんて………!? うわぁっ!?」
大発の陰に隠れた十河と俊も、大発に命中して火花を散らしている銃弾にビビりながらそう言い合う。
「うおわっ!?」
「頭を下げていろっ!!」
至近距離で弾けた銃弾にビビる了平にそう言いながら、海岸に在った岩の影に隠れている弘樹が、一瞬の射撃が途切れた瞬間を狙って顔を出し、九九式短小銃を3連射する。
「うわぁっ!?」
「ぐああっ!?」
「やられたぁっ!!」
その3連射で廃墟内に居たパシフィック歩兵の3人が戦死判定を受ける。
しかし、それで弾幕が弱くなる筈も無く、再び弾幕が襲って来る。
「クッ!………」
「コレじゃホントに、ノルマンディー上陸作戦だな」
再び身を隠す弘樹の近くで、横倒しになっているシュビムワーゲンの陰に隠れている俊が、まるで他人事の様にそう言い放つ。
既に海岸の彼方此方には、戦死判定を受けて倒れ伏す大洗歩兵部隊の隊員達の姿が在る。
もしコレが本当の戦場ならば地獄絵図である。
「! マズイッ! 榴弾砲だっ!!」
とそこで、DUKWの陰に隠れていた大詔が、廃墟の一角で此方にM101 105mm榴弾砲を向けているパシフィック砲兵部隊を発見し、そう声を挙げる。
「伏せろっ!!」
弘樹がそう叫んだ瞬間、M101 105mm榴弾砲が発射される!
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
放たれた榴弾は1艘の大発に命中。
弾幕に晒され、上陸し攻めあぐねていた歩兵部隊が吹き飛び、大発は爆発する。
「! 地市! バズーカッ!!」
「! おうっ!!」
とそこで弘樹がそう叫び、地市が撃った直後のM101 105mm榴弾砲とそれに付いて居たパシフィック砲兵部隊に向かって、バズーカを放ったっ!!
「「「「「うおわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」
爆発と共にM101 105mm榴弾砲がバラバラになり、付いて居たパシフィック砲兵部隊も吹き飛ばされ、アクション映画の様に廃墟から落ちる。
更に、爆発の衝撃で廃墟が崩れ、階下に居たパシフィック歩兵部隊を巻き込む!
「やったっ!………って、おうわっ!?」
敵の一角を崩したかに思えたが、すぐに別の一角がフォローに入り、地市に弾幕を浴びせる。
「砲兵部隊! 支援砲撃出来るかっ!?」
「今は無理だ!」
「砲を配置するどころか、隠れているので手一杯だっ!!」
秀人が砲兵部隊に向かってそう返すが、明夫と鷺澪はそう返す。
何せ激しい弾幕のせいで砲を撃つどころか、輸送して来た上陸用舟艇から運び出す事すら出来ていないのである。
「戦車に支援してもらわないと、此処を突破するのは無理です!」
「西住総隊長ーっ!! 早く来てくれーっ!!」
楓がそう叫び、海音が悲鳴の様な叫びを挙げる。
「戦車?………!?」
と、そこで弘樹が何かに気付いた様な顔になる。
「どないした、弘樹!」
そこで、その隣に転がり込む様に大河が姿を見せる。
「待ち伏せと激しい攻撃に気を取られていたが………敵の戦車が見当たらない………歩兵部隊の総隊長であるカジキやホージロー達もな………」
弘樹は九九式短小銃をリロードしながらそう返す。
「! そう言えば………」
「!? まさかっ!?」
竜真がハッとして、みほ達が向かって来ている海の方を振り返る。
時間は少し戻り………
大洗歩兵部隊が上陸を開始した頃………
その後方、やや沖合に浮かんでいた大洗戦車部隊は………
「歩兵部隊の皆さんが上陸を始めました。安全確保が完了次第、私達も上陸します」
「「「「「「了解っ!」」」」」」
大洗歩兵部隊の隊員達が上陸するのを、キューポラから上半身を出し、双眼鏡で確認していたみほが、全戦車チームにそう指示を出す。
と、その次の瞬間!
大洗歩兵部隊が上陸した海岸の斜面の上に在った廃墟から、大洗歩兵部隊目掛けて銃撃が開始される。
「!?」
慌てて双眼鏡を廃墟の方へと向けるみほ。
廃墟にトーチカを作って大洗歩兵部隊を攻撃しているパシフィック歩兵部隊の姿が双眼鏡のレンズに映し出される。
「!? パシフィック歩兵部隊! 待ち伏せされたっ!!」
「!? そんなっ!?」
「コチラの予想を遥かに上回る展開速度です!」
みほがそう声を挙げると、華が驚きの声を挙げ、優花里がパシフィック機甲部隊の展開の速さに舌を巻く。
そう言っている間にも、パシフィック歩兵部隊の攻撃で、大洗歩兵部隊には次々と戦死判定者が出て行く。
「みぽりん! 歩兵の皆が!」
「このままだと全滅するぞ………」
「! 全車、全速前進! 歩兵部隊の援護に向かいますっ!!」
沙織と麻子がそう声を挙げると、みほはすぐにそう指示を出し、戦車チームは速度を上げ、歩兵部隊の援護に向かおうとする。
だが、その時………
後方からの波が突然激しくなる。
「!? 何っ!?」
よろけそうになりながら、後方を振り返って確認するみほ。
すると、その瞬間!!
海面が大きく盛り上がり、巨大な鉄の塊が海中から姿を現す。
「!?」
驚愕するみほ。
海中より現れた巨大な鉄の塊………
それは紛れも無く………
『潜水艦』だった!
「せ、潜水艦っ!?」
「アレは『ガトー級潜水艦』のネームシップ、『ガトー』です!」
みほが驚愕の声を挙げると、側面ハッチを開けて出て来た優花里が、その潜水艦が第二次大戦中にアメリカ軍が建造した潜水艦………『ガトー級潜水艦』のネームシップ、『ガトー』である事を見抜く。
とそこで更に、ガトーの周辺の何か所かの海面が盛り上がったかと思うと、幾つもの円柱状の鉄の塊が浮上する。
その鉄の塊が少し変形したかと思うと、37mm砲を備えた水上トーチカとなる。
「!? 『浮沈特火点』!? 何てマニアックなものをっ!?」
優花里が半ば呆れた様にそう叫ぶ。
と、各浮沈特火点から、2名のパシフィック歩兵が現れたかと思うと、大洗戦車チームに向かって37mm砲を発砲し始める!
戦車チームの周りに砲弾が着弾し、次々と水柱が上がる!
「! 全車急いで陸地へ向かって下さいっ!!」
「「「「「! 了解っ!!」」」」」
「了か………」
みほが慌てて指示を出し、戦車チームの面々が返事を返し、一瞬反応が遅れたアヒルさんチームの典子も返事を返そうとした瞬間………
89式の砲弾が直撃して爆発が上がる!!
「!? アヒルさんチームっ!!」
みほの悲鳴の様な声が響く中、八九式からは撃破された事を示す白旗が上がり、波間を漂い始めた。
「よっしゃあっ! 1両やったぜっ!!」
それは、ガトーの甲板前部に備え付けられていた4インチ砲の砲撃であり、砲に付いて居た潜水艦の乗員らしき隊員がガッツポーズを取っている。
「やるなぁ」
「俺達も負けないぜっ!!」
更にそこで、後部に備え付けられていた40ミリ機関砲、20ミリ機銃に付いて居た乗員達も、大洗戦車チーム目掛けて水平射撃を行う!
機関銃の弾丸が水面を耕し、幾つかは大洗戦車チームの車両へと命中し、装甲表面で火花を散らす。
「くうっ!」
「西住殿! 側面からも敵がっ!!」
「!?」
優花里がそう声を挙げたのを聞いて、みほが西の方向を見やるとそこには………
コチラに向かって海上を進んで来る水陸両用に改造されたM24軽戦車が2両、M2中戦車が1両、T-38が3両、T-40が3両、特二式内火艇が6艇が在った。
「パシフィックの戦車チーム………」
「如何するのみぽりん!」
「このまま海上で戦っても勝ち目は有りません! 兎に角、急いで島への上陸を!!」
沙織がそう叫ぶが、今の状況では如何する事も出来ず、兎に角島へと早く上陸する様にとしか指示を出せないみほだった。
「大洗の戦車部隊、逃げてくよ」
「海上で戦っては不利と考えたみたいね」
只管島を目指して前進する大洗戦車チームの様子を見て、M2中戦車に乗って居る装填手の少女………『メロウ』と、車長であるローレライがそう言い合う。
「オーッホッホッホッホッ! この私達から逃げようなどとは、無駄な事を………全車攻撃開始! あの貧相な戦車達を海の藻屑に変えてあげなさいっ!!」
するとそこで、片方のM24軽戦車の車長で、パシフィック戦車部隊の指揮官であり総隊長である少女………『セイレーン』が、絵に書いた様な高飛車のお嬢様口調でそう言い放つ。
「はあああ~~~~、また………」
「あのキャラ作りも大変だって言ってたのに………」
ローレライとメロウが、呆れた様にそう言い合いながらも、命令通りに大洗戦車部隊を追撃するのだった。
廃墟の島の海岸………
「弘樹ーっ! アレ見てみろ!」
「!?」
地市がそう言って海の方を指差し、その方向を見やった弘樹は、戦車チームが潜水艦と浮沈特火点、パシフィック戦車部隊から攻撃を受けているのを目撃する。
「て、敵の潜水艦を発見っ!!」
「「「「「「「「「「駄目………了解っ!!」」」」」」」」」」
大洗歩兵部隊の面々も驚きの声を挙げる。
「潜水艦っ!? あんな物まで持ち出して来たのか!?」
「4回戦からは『支援要請』が可能になる………水辺での戦い………考えてみれば、艦船の投入は当然か」
俊がそう声を挙げると、弘樹は苦虫を噛み潰した様な顔でそう言う。
『支援要請』
戦車道・歩兵道公式戦では4回戦以降使用可能となる戦術の1つである。
軍艦道と行った他武道の選手達に支援を要請し、戦闘の支援を行って貰うのである。
非常に強力だが、それ故に試合ごとに要請出来る支援の回数は決まっており、要請のタイミングの見極めが重要となる。
その為、支援を要請出来るのは、分隊長以上の指揮能力を有する人物のみと言う規定もある。
「歩兵総隊長! 敵の攻撃苛烈! コレ以上は持ち堪えられませんっ!!」
「止むを得ないか………全員、一時撤退っ! 戦車部隊と合流し、この場を離れるっ!!」
とそこで、コレ以上の損害は出せないと判断した迫信は、島への上陸を諦め、歩兵部隊に撤退を指示する。
「歩兵総隊長! 撤退なさるのですか!?」
「コレ以上、此処で戦っても全滅するだけだ。一旦西住総隊長達と合流して後退し、態勢を立て直す」
歩兵部隊員の1人がそう声を挙げるが、迫信は淡々とそう返す。
「後退ーっ!!」
「後退だ、急げーっ!!」
「援護しろーっ!!」
一斉に上陸用舟艇や水陸両用車へと戻り、撤退を開始する大洗歩兵部隊。
「大洗歩兵部隊が後退し始めたぞ!」
「良し、後はカジキ総隊長達に任せよう………」
廃墟に陣取っていたパシフィック歩兵部隊の面々はそう言い合い、追撃は行わなかった………
つづく
新話、投稿させていただきました。
遂に始まったパシフィック機甲部隊との試合。
大洗は出鼻を挫かれた上に、まさかの潜水艦の出現に大損害!
果たしてこの危機を如何切り抜けるのか?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。