ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第58話『大洗チビーズです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第58話『大洗チビーズです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシフィック機甲部隊の情報を入手する為に、パシフィック高校へと潜入したみほと優花里、竜真にジェームズと正義だったが………

 

アッサリとホージロー達に見つかってしまう。

 

しかし、ホージローはスパイをしても自分達の勝ちは変わらないと余裕を見せ、カジキは大洗の実力を見下す。

 

そんなホージロー達に対し、竜真達は闘志を燃やす。

 

だがそんな中………

 

丸山 紗希が姿を消してしまう。

 

懸命な捜索が続けられたが見つからず、天候の悪化もあって、止むを得ず大洗機甲部隊のメンバーは帰路へと就いた。

 

執事のセバスチャンとメイドのレイチェルに迎えられたジェームズと一緒に、ジェームズ宅へと向かった竜真。

 

そしてそこで………

 

雨の中、傘も差さずに佇んでいた紗希を発見するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗希を発見したジェームズと竜真は、彼女がびしょ濡れだった事もあり、一旦ジェームズの家へと上げた。

 

現在はレイチェルが一緒に風呂に入り、濡れた服も洗濯している。

 

その間に、竜真とジェームズは大洗機甲部隊の面々に、紗希を無事に保護したと連絡。

 

皆紗希の無事に安堵していた。

 

そして、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々が、すぐに駆けつけてくれる事になった。

 

 

 

 

 

ジェームズ宅・ジェームズの自室………

 

「坊ちゃま~。丸山さん、上がりましたよ~」

 

ジェームズの自室で待機していたジェームズと竜真の元に、レイチェルがそう言いながら入って来る。

 

「ああ、レイチェルさん、アリガ………」

 

「!?!?」

 

と、レイチェルにお礼を言おうとしたジェームズが固まり、竜真も仰天の表情を浮かべる。

 

何故なら………

 

レイチェルが連れて来た紗希が………

 

ダボダボで袖が余りまくっているYシャツ姿だったからだ。

 

「チョッ!? 何でYシャツナンデスカっ!?」

 

「いや~、こういう時はこの恰好が王道だって、この前買った日本のコミックに………」

 

「それは漫画の中だけです!!」

 

レイチェルがそう言うと、竜真がツッコミを入れる。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと下着は付けてますから」

 

「全然大丈夫じゃナイデスッ!!」

 

「寧ろそっちの方が危ない場合もあります!!」

 

色々な意味で危険な紗希の恰好に、ジェームズと竜真は大慌てである。

 

「と、兎に角! 早く着替えさせてクダサイッ!!」

 

いつも以上に片言が酷くなっているジェームズがそう叫ぶ。

 

「ええ~、可愛いのに~」

 

レイチェルが不満そうに紗希を連れて部屋を後にする。

 

「あの人いつもあんな感じなの?」

 

それを見送った竜真が、ジェームズにそう尋ねる。

 

「悪い人ではないんデスけど………ハア~~~~」

 

それにそう答えながら、ジェームズは深い溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紗希は無難な感じの服に着替えさせられ、改めてジェームズの自室へ通される。

 

更にそこで、ウサギさんチームの面々とハムスターさん分隊の面々も駆け付け、それなりに広かったジェームズの部屋は一気に狭苦しくなったのだった。

 

「もう~、紗希~。心配したんだからね~」

 

梓が紗希を抱き締めながらそう言う。

 

「無事で良かったよ」

 

「ホントホント」

 

「紗希ちゃん、一体如何しちゃったの?」

 

「何か悩み事?」

 

あゆみ、桂利奈、あや、優季も紗希へそう声を掛ける。

 

「…………」

 

しかし、梓に抱き締められている紗希は、相変わらず暗い表情で黙り込んでいるだけだった。

 

「多分デスけど………今度の試合の事じゃないデスか?」

 

「パシフィックとの?」

 

そこでジェームズがそう推測すると、光照がそう口を挟む。

 

「相手の高身長に圧倒されたって事っすか?」

 

「!!………」

 

続けて正義がそう言うと、紗希がピクリと一瞬震えた。

 

「そうなの、紗希?」

 

「…………」

 

それに気づいた梓がそう尋ねるが、紗希は黙り込んだままである。

 

「確かに、あの高身長のチームには圧倒されるね。特にそんな歩兵達と対峙する僕達なんか………」

 

「何言ってるんですか、分隊長!」

 

勇武が弱気な意見を挙げたところ、竜真がそう叫ぶ。

 

「と、竜真くん………」

 

「身長が何ですか! 相手が高身長だったらチビは勝てないだなんて、誰が決めたんですか! 僕達は勝ちます! 勝ってチビでも最強になれるって事を証明しましょうっ!!」

 

戸惑う勇武に、竜真は重ねる様にそう言い放つ。

 

「………確かにそうだ。ゴメンよ、皆。分隊長である僕がこんな弱気な事を言ってしまって」

 

そこで勇武は、ハムスターさん分隊の面々に向かって謝罪する。

 

「いえ、気にしないで下さい」

 

「誰だって不安を感じる事はあります。大切なのは、それに如何向き合って行くかです」

 

そんな勇武に向かって、誠也と清十郎がそう言う。

 

「紗希サン。貴方は1人でパシフィックと戦うワケではアリマセン。ウサギさんチームの皆サンや僕達ハムスターさん分隊の皆。そして、大洗機甲部隊の皆さんと一緒に戦うのデス」

 

「…………」

 

ジェームズは優しく紗希へとそう語り、紗希はそんなジェームズの姿を見やる。

 

「そうだよ、紗希!」

 

「私達が付いてるから!」

 

「一緒に戦おう!」

 

「身長が何だ! 高さが何だ!」

 

「そうだそうだ~!」

 

そこで梓、あゆみ、桂利奈、あや、優季も、紗希を励ます。

 

「…………」

 

皆の言葉を受け、遂に紗希の顔から影が消え、笑みが浮かんだ。

 

「あ! 紗希が笑った!」

 

「やった! 元気になった!」

 

途端に燥ぐウサギさんチームの一同。

 

「おっす! 大洗チビーズの結成っすね!」

 

「何ソレ?」

 

正義がそう言うと、あやが首を傾げる。

 

「俺等ハムスターさん分隊とウサギさんチームとの合同名っす! チビでも最強になれるって事を証明する名前っす!!」

 

「ええ~、もっとカッコイイのが良いんじゃない~?」

 

ドヤ顔気味にそう言う正義だが、優季が若干不満そうにそう言う。

 

「いや、それで行きましょう。敢えてね………」

 

だが、勇武は気に入った様子で、皆にそう言う。

 

「よ~し! 頑張るぞ!! 打倒! パシフィックッ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

勇武がそう言いながら拳を突き上げると、皆も同じ様に拳を突き上げ、声を挙げる。

 

「ご近所迷惑ですよ」

 

「「「「「「「「「「アッハイ…………」」」」」」」」」」

 

しかし、レイチェルに注意されて、すぐに静かになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

粗徹夜だったウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々………『大洗チビーズ』だったが、翌日の訓練には揃って参加。

 

打倒パシフィックに向けての猛訓練を開始する。

 

 

 

 

 

ウサギさんチーム・サイド………

 

「撃てっ!!」

 

車長の梓の声で、M3リーの主砲と副砲が火を噴く。

 

主砲と副砲から放たれた砲弾は徐々に近づいて行き、最後には2発揃って的に命中した。

 

「やったぁっ!!」

 

「当たったっ!!」

 

「まだまだ! もう1回! 次弾装填急いでっ!!」

 

あやとあゆみが歓声を挙げるが、梓はすぐにそう指示を出す。

 

「…………」

 

それに呼応するかの様に、紗希が副砲に次弾を装填する。

 

「桂利奈ちゃん! 次撃ったら移動ね! スラローム走行の練習ね!」

 

「アイアイーッ!!」

 

「優季ちゃん。他のチームとの無線、聞き逃さないでね!」

 

「ハ~イ!」

 

桂利奈と優季にもテキパキと指示を出す。

 

「ウサギさんチーム、凄く頑張ってるね」

 

「コレはコッチも負けていられないね!」

 

「後輩が頑張ってるのに、我々がのほほんとしているワケには行かないからな」

 

そんなウサギさんチームの頑張りに触発される様に、他のチームの面々も、自然と訓練に力が入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ハムスターさん分隊の面々は………

 

「たああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「…………」

 

「!? うわぁっ!?」

 

着剣した三八式歩兵銃を構えた竜真が、陣(190cm)に向かって突撃したが、アッサリと身長差で上から押さえ付けられる様に止められる。

 

「どりゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」

 

「がははははははっ! 何だソレはっ!!」

 

「げふっ!?」

 

その傍では、軍刀を握った正義が明夫(200cm)に斬り掛かったが、同じ様に身長差で上から押さえ付けられる様に止められる。

 

「どっからでも掛かって来い!」

 

「…………」

 

「掛かって来い! このクソ共がぁっ!!」

 

「「「…………」」」

 

更にその近くでは、重音(191cm)、シャッコー(230cm)、武志(190cm)と対峙しているものの、恐怖で1歩も動けずに居る勇武、光照、ジェームズの姿が在った。

 

打倒パシフィック歩兵部隊を誓ったハムスターさん分隊の面々は、大洗歩兵部隊の中でも高身長な面子に頼み、パシフィック歩兵部隊の隊員と対峙した時の特訓を行っている。

 

「う~ん………」

 

「成果が上がりませんね………」

 

しかし、誠也と清十郎の言う様に、イマイチ成果は上がらなかった。

 

「真面に正面から遣り合っても駄目だ。何か策を練らん事には話にならんぞ」

 

そんなハムスターさん分隊に向かって、シャッコーが厳しくもそう言い放つ。

 

「分かってますよ、それぐらい………」

 

「でも、如何したら良いんすか………」

 

起き上がった竜真と正義が、若干途方に暮れる様にそう呟く。

 

すると………

 

「如何だ、特訓の方は?」

 

そう言う台詞と共に、その場に弘樹が姿を現した。

 

「! 舩坂先輩!」

 

「先輩!」

 

その姿を見た勇武と光照が姿勢を正す。

 

「中々上手く行きませんね」

 

「相手との身長差は圧倒的ですからね。遣り合うと如何しても潰されてしまいます」

 

「うむ………」

 

誠也と清十郎がそう説明すると、弘樹は顎に手を当てて一瞬考える様な様子を見せる。

 

「………シャッコー。少し相手をしてくれ」

 

「ああ………」

 

するとそこで、弘樹はシャッコーにそう言い、模擬戦闘の態勢に入る。

 

「お前達、良く見ておけ」

 

「「「「「「「ハイッ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹がハムスターさん分隊の面々にそう言うと、ハムスターさん分隊の面々は弘樹に注目する。

 

「「…………」」

 

威圧感抜群に佇むシャッコーに対し、弘樹は刀を居合いの態勢で構える。

 

「「…………」」

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

両者はそのまま黙り込んで対峙し、注目しているハムスターさん分隊の面々にも緊迫感が走る。

 

「…………」

 

とそこで、弘樹が右足を1歩摺り足で下げた。

 

「!!………」

 

それを見たシャッコーが仕掛けてくると踏み、先んじて仕掛けようとする。

 

「!!」

 

だがその瞬間に弘樹は刀を抜き放ち、シャッコーの首元で寸止めした!

 

「むっ!?………やられたな」

 

動きが止まったシャッコーがそう呟く。

 

「…………」

 

弘樹はシャッコーの首筋から刃を離すと、鞘へと納める。

 

「凄いっ!!」

 

「今の、どうやったんですか!?」

 

忽ちハムスターさん分隊からは歓声が挙がる。

 

「………先先の先手攻撃だ」

 

そんなハムスターさん分隊の方へと向き直ると、弘樹はそう言葉を発する。

 

「さきざきのせんてこうげき?」

 

「って、何ですか?」

 

弘樹の言った言葉に首を傾げる正義と竜真。

 

「簡単に言えばフェイントだ。コチラが先に仕掛けると思わせ、相手の攻撃を誘い、相手が攻撃してきた瞬間にカウンターを決める」

 

弘樹はそう説明する。

 

「どんな相手だろうと攻撃を行う瞬間には隙が生じるものだ」

 

「! そうか! 相手に態と先制攻撃をさせようとして、その隙を衝けば!」

 

清十郎が合点が行った様な声を挙げる。

 

「! ナルホドッ!!」

 

「例え身長差が有っても、隙を衝く事さえ出来れば如何にかなりますっ!」

 

ジェームズと誠也もそう声を挙げる。

 

「だが、コレはかなり高度な技だ。試合までにものに出来るか?」

 

そこでそう尋ねる弘樹だったが………

 

「やってみせます!」

 

「チビでも最強になれるって証明するんです!」

 

竜真と正義がそう答え、他のメンバーも力強い表情で頷いた。

 

「良い返事だ………試合での働きに期待しているぞ」

 

そんなハムスターさん分隊の面々の様子を見て、弘樹は微笑を浮かべるとお馴染みのヤマト式敬礼をする。

 

「「「「「「「!!………」」」」」」」

 

それを見たハムスターさん分隊の面々も、ヤマト式敬礼を返す。

 

ウサギさんチーム、ハムスターさん分隊共に、パシフィック機甲部隊との戦いへ向けての特訓を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな中………

 

張り切るウサギさんチーム、ハムスターさん分隊とは逆に、不調を見せているチームが在った………

 

「標的撃破! 聖子! 次の目標は!?」

 

砲撃で仮想標的を撃破した優が、聖子に指示を求める。

 

「…………」

 

しかし、聖子は若干赤みが差し、目が潤んだ状態でボーっとしている。

 

「聖子っ!」

 

「!? えっ!? あっ!? な、何、優ちゃん!?」

 

再度優に声を掛けられて、初めて反応する聖子。

 

「如何したじゃありません! 訓練中ですよ! 何をボーっとしてるんですか!」

 

「ゴ、ゴメン!………」

 

と、聖子が謝罪した瞬間、クロムウェルの至近距離に、Ⅳ号が放った訓練弾が着弾!

 

「!? キャアッ!?」

 

「あうっ!?」

 

クロムウェルの車体が揺れ、搭乗しているメンバーから声が漏れる。

 

「ぜ、全速後退! 榴弾装填っ!!」

 

「おうっ!」

 

「榴弾、装て………!? ええっ!? 榴弾!?」

 

聖子はすぐに唯に後退指示を出し、明菜に榴弾装填の指示を出すが、榴弾を装填しろと言う指示に、明菜が驚きの声を挙げる。

 

「唯ちゃん、待って! この後ろって………」

 

更に、伊代が何かを思い出した様に唯に声を掛けようとしたが………

 

その瞬間にクロムウェルの車体が後ろに傾き、聖子達はシートの背凭れに倒れる様に押し付けられた!

 

「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」」」」

 

如何やら、後方に在った塹壕に落ち込んでしまった様だ。

 

『サンショウウオさんチーム! 大丈夫ですかっ!?』

 

その様子を見たみほが、慌ててクロムウェルに通信を送る。

 

「だ、大丈夫です~」

 

通信手の伊代が何とかそう返事を返す。

 

『貴様等ぁっ! 何をやっているぅっ! さっきからまるで駄目ではないか!』

 

「キャッ!?」

 

と、続いて桃の大きな怒声が聞こえて来て、伊代は慌ててヘッドフォンを外す。

 

「聖子。今回ばかりは河嶋先輩の言う通りですよ。一体如何し………!?」

 

そこで聖子を見やりながらそう言った優が仰天する。

 

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

 

何故なら、背凭れに倒れている聖子が、顔中に脂汗を浮かべて、グッタリとしていたからだ。

 

「聖子! 如何したのですか!? 聖子っ!?」

 

慌ててシートベルトを外すと、聖子に近寄り、その額に手を当てる優。

 

「!? 酷い熱!? 誰か! 誰か手を貸して下さいっ!!」

 

「聖子ちゃん!」

 

「先輩!」

 

「聖子っ!?」

 

優は慌ててハッチから顔を出してそう叫び、他の搭乗メンバーも騒然となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・保健室………

 

「………風邪ね。それと過労もあるみたい」

 

保健室のベッドに寝ている聖子の症状を見た養護教諭が、そう診察結果を下す。

 

「まあ、暫く安静にしてれば大丈夫よ………だから、皆静かにしてね」

 

養護教諭は、保健室内と窓の外や廊下に、所狭しと犇き合う様に集まっていた大洗機甲部隊の面々を見ながら、苦笑いしつつそう言う。

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ、ちょっと外すけど、その間はお願いね」

 

と、優がお礼を言うと、養護教諭は所用で保健室を出て行く。

 

「聖子ちゃん………大丈夫?」

 

そこで、伊代がベッドに寝ている聖子に向かってそう尋ねる。

 

「うん、大丈夫………ゴメンね、皆」

 

「一体如何したんですか、先輩」

 

「昨日まではあんなに元気だったのに………」

 

聖子が力無くそう返すと、静香と満里奈が心配そうにそう尋ねる。

 

「実は………今朝まで紗希ちゃんの事を探してたんだ」

 

「!? 何だって!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

と、聖子がそう答えたのを聞いて、唯とウサギさんチームのメンバーが驚きを示す。

 

「雨が降って来た時点で全メンバーに帰宅命令が出た筈だが?」

 

「そうなんだけど………私、如何しても気になっちゃって………それで一旦帰った後、コッソリと………」

 

「あの雨の中を探してたんですか!?」

 

「そりゃ風邪も引くぜ………」

 

飛彗がそう言うと、白狼が呆れた様に呟く。

 

「だって、放って於けないじゃん………」

 

「郷先輩!」

 

「「「「先輩~っ!」」」」

 

そこで、ウサギさんチームの面々が群がる様に聖子の傍に寄る。

 

「…………」

 

紗希も、申し訳ない表情で、両手で聖子の手を握る。

 

「アハハハ、気にしないで………私が勝手にやったんだから………」

 

だが、聖子は気にするなと言う様に、弱々しくも笑顔を浮かべてそう言う。

 

「先輩!………」

 

そんな聖子の姿に感極まった様に、梓達は目尻に涙を浮かべる。

 

「しかし、こうなると試合は無理だな………」

 

「誰か、代わりの車長を務められる人は居ますか?」

 

そこで俊がそう言うと、逞巳が聖子以外のサンショウウオさんチームの面々にそう尋ねる。

 

「あ~、如何しよう?………」

 

「車長の適性が1番高かったのは聖子でしたからね」

 

「アタシ達じゃ聖子さんほど上手く纏められねえよぉ」

 

伊代、優、唯がそう返す。

 

「そうも言って居られん。試合はもうすぐなんだ。次に適性が高い者が………」

 

と、弘樹がそう言い掛けた瞬間!

 

「その役目………我に任せてもらおうか」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突然聞こえて来たその声に反応する様に、大洗機甲部隊の面々が保健室の入り口へ向き直ると、そこには………

 

「フフフフ…………」

 

ゴシック風に改造された大洗女子学園の制服を着て、室内にも関わらず日傘を差している両目の色が違う少女の姿が在った。

 

「君は?」

 

「我が名は『黄昏の真祖(レティシア・フォン・ファンタズミク)』………悪魔と吸血鬼の間に生まれ、人間の環境で育てられた。この右目は過去や未来を見通す瞳であり、左目は全てを屈服させる力を持つ」

 

弘樹が尋ねると、少女はそんな事をドヤ顔で語る。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

途端に、大洗機甲部隊の面々は黙り込んだ。

 

「ね、ねえ………何言ってるの?」

 

「さあ………ちょっと分かりかねます」

 

そう小声で言い合う沙織と華。

 

「典型的な中二病だな………」

 

「私、中二病の人って、初めて見ました………」

 

麻子と優花里もそんな事を言い合う。

 

「西住くん………彼女は一体何語で喋っているんだ?」

 

「えっ!? ええと………」

 

弘樹に至っては、彼女の言葉を日本語として認識出来なかった様子である。

 

「貴方………『諸星 今日子(もろぼし きょうこ)』じゃない」

 

するとそこで、みどり子がその少女を見てそう言った。

 

「!? ドキッ!?」

 

古典的な驚きの表現をしながら、明らかに動揺を示す少女………今日子。

 

「諸星 今日子?」

 

「ああ~、聞いた事有るね。確か重度の中二病で、意味不明な会話を繰り出す、電波系の子が居るって」

 

柚子がその名を反復すると、杏が思い出した様にそう言う。

 

「わ、我は黄昏の真祖(レティシア・フォン・ファンタズミク)! 悪魔と吸血鬼の間に生まれ………」

 

「いや、それはもう良いから………」

 

明らかに動揺している今日子は、先程の台詞を繰り返そうとするが、地市にそう遮られる。

 

「それで、黄昏の真祖(レティシア・フォン・ファンタズミク)殿。我々に如何なる御用ですかな?」

 

そこで迫信が、いつもの様に口元を広げた扇子で隠すポーズでそう尋ねる。

 

「あ、う………わ、我に掛かれば、鋼の獣を操る事など容易い!」

 

「要するに、アンタがクロムウェルの車長になるってか?」

 

今日子の言葉をそう翻訳する俊。

 

「如何にも!」

 

「って、言ってるけど、如何する?」

 

自信満々にそう返す今日子の事を見ながら、磐渡が優達に尋ねる。

 

「わ、私に聞かれても………」

 

優は如何判断して良いか分からず、他の面々も視線を反らすばかりである。

 

「………それじゃあ、お願いしようかな?」

 

と、そこでそう言ったのは、他ならぬ聖子だった。

 

「!? 聖子ちゃん!?」

 

「聖子! 貴方はまた………」

 

「優ちゃん………その子も私達のライブを見に来てくれてた子だよ………」

 

「えっ!?………」

 

抗議の声を挙げようとした優だったが、聖子にそう言われて黙り込む。

 

「きっとその子もスクールアイドルがしたいんだよ………だったら………私達の仲間だよ」

 

「聖子………」

 

「聖子ちゃん………」

 

聖子の言葉を受けて、優と伊代は一瞬顔を見合わせると頷き合う。

 

「分かりました………リーダーの言葉ですからね」

 

「よろしくね、今日子ちゃん」

 

そして今日子の方へと向き直ると、共に歓迎する。

 

他の面々も笑みを浮かべて、新たな仲間を迎えていた。

 

「! ハイ! よろしくお願いします!!」

 

「何だ。普通の言葉も喋れるのか」

 

「!?!?」

 

思わず普通に返してしまった今日子に、大詔がそうツッコミを入れ、今日子は慌てて口を押える。

 

「「「「「「「「「「アハハハハハハハッ!」」」」」」」」」」

 

そして、誰からともなく、笑いが巻き起こるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた試合当日………

 

試合会場となる諸島海域………

 

『戦車道・歩兵道全国大会、第4回戦! 本日の対戦カードは大洗機甲部隊VSパシフィック機甲部隊! 今大会のダークホース同士の対決です!』

 

『いやぁ、正直この試合がどうなるかは僕にも分かりませんよ。一瞬たりとも目が離せませんね』

 

お馴染みとなったヒートマン佐々木とDJ田中の実況と解説が響き渡る。

 

「「「「「「「「「「GOGO、パシフィック! パシフィック、GOGO!」」」」」」」」」」

 

パシフィック側の応援席では、人魚をイメージしたチア衣装に身を包んだチアガール達が、パフォーマンスを披露している。

 

「凄い応援………」

 

「ウチはまだ若干空席が有るなぁ………」

 

沙織と地市が、初戦から比べれば大分埋まって来ているものの、まだ若干の空席が有る大洗側の応援席を見てそう言い合う。

 

「マーメイドのチアガール! 何て羨ましいっ!!」

 

「何処を見てるんですか、了平」

 

そして、相変わらず悪い意味でブレない了平に、楓がツッコミを入れる。

 

「げへへへへ、チアお嬢さん達があんなに………」

 

そんな楓のツッコミを気にせず、パシフィックのチアガール達を舐める様な視線を見渡していた了平だったが………

 

「GOGO、パシフィック!」

 

「!??! 何か変なの居るぅっ!?」

 

その中にチア衣装姿のホージローの姿を見つけてそんな声を挙げる。

 

「何をやっているんだ、アイツは………」

 

「アラララ………」

 

集合していたパシフィック機甲部隊の中に居たカジキは呆れ、ローレライも思わず苦笑いを零す。

 

「………ハアッ!」

 

だが、その次の瞬間!!

 

ホージローは一瞬でチア衣装を脱ぎ捨て、水着姿になったかと思うと、応援席をまるで体操選手の様なアクロバティックな動きで駆け下り始める!

 

「うおおっ!? スゲェッ!?」

 

「大した身体能力だな………」

 

それに素直に感嘆の言葉を漏らす海音と、冷静にそう呟く大詔。

 

「ハアーッ!」

 

そのままホージローは応援席から飛んだかと思うと、空中で回転しながら逆さまになり、両手で地面に着地を決める!

 

「何て奴や………」

 

「ケッ、カッコ付けやがって………」

 

豹詑が若干の戦慄を覚え、白狼がそう悪態を吐く。

 

「大洗機甲部隊。悪いけど、俺等は『高さ』を武器にアンタ等に圧勝するよ。宣戦布告って奴だ」

 

逆立ちしたまま、両手を足代わりに近づいてきたホージローが、大洗機甲部隊の面々に向かってそう宣言する。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その宣戦布告に黙り込む大洗機甲部隊の面々。

 

と、そこでホージローの前に人影が立ちはだかった。

 

「…………」

 

「しょ、勝負ですって言ってます!」

 

「約束通り証明しに来ましたよ!」

 

「Ⅰ’m Back!」

 

「勝負っす!」

 

紗希と梓、竜真にジェームズと正義だ。

 

「月まで逃げなかったのか、ウサギ達………ハムスターさんも巣に引き籠ってれば良かったのによぉ」

 

そんな紗希達や竜真達を見ながら、ホージローは不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

「一同! 礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「よろしくお願いしまーすっ!!」」」」」」」」」」

 

その後、改めて整列した大洗機甲部隊とパシフィック機甲部隊は礼を行い、お互いのスタート地点への移動を開始する。

 

「………必ず貴様を叩き潰す」

 

そんな中、カジキが相変わらず敵意が籠った視線と共に、弘樹にそう言い放つ。

 

「好きにしろ………」

 

だが弘樹は興味が無いと言い放ち、スタート地点へと向かう。

 

「!!………」

 

カジキは表情を強張らせながら、自分達のスタート地点へと向かうのだった。

 

「近海VS大洋………あんこう鍋VS舟盛りの刺身ね………どちらが一番価値があるのか、ハッキリしようじゃないの………」

 

スタート地点へ向かう中、杏が不敵に笑ってそんな事を呟く。

 

『さあ! 間も無く試合開始です!! 大洗機甲部隊! パシフィック機甲部隊! 君に、幸あれ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

行方不明だった紗希を発見したジェームズと竜真。
如何やら彼女は、パシフィック機甲部隊のメンバーを前に、戦意喪失状態になった様だ。
しかし、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々からの励ましを受けて立ち直る。

サンショウウオさんチームのトラブルが起こるが一応解決し、遂に臨んだパシフィック機甲部隊との試合の日。
荒波に立ち向かうあんこうの運命や如何に?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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