ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第55話『潜入作戦パート2です(前編)!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第55話『潜入作戦パート2です(前編)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南の島のビーチでバカンスを楽しんでいたみほ達と弘樹達は………

 

廃墟となっていた軍艦島の探索を終えて帰る途中………

 

海に浮かび、波に揺られて昼寝をしていた2メートル以上の長身の女性『ローレライ』と………

 

同じく2メートルの長身を誇る男性2人、『ホージロー』と『シイラ』と出会う。

 

直後に突然の豪雨に見舞われた大洗機甲部隊の一同は、雨宿りの為にローレライ達の学園艦へと連れられる。

 

その学園艦の名は『パシフィック学園艦』

 

そう、今度の対戦相手である『パシフィック機甲部隊』の所属する学園艦だった。

 

余裕が有るとでも言いたいのか、大洗機甲部隊の面々を馴染みの料理屋に案内し、一緒に沖縄料理の食事を楽しむローレライ達。

 

しかし、そこで現れたパシフィック歩兵部隊の総隊長『カジキ』は、何故か弘樹に対し、いきなり敵意を向けるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシフィック学園艦甲板都市………

 

料亭『はいさい』………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

先程まで和気藹々としていた雰囲気は一気に吹き飛び、大洗機甲部隊の面々は緊張した面持ちで弘樹とその彼に敵意を向けているカジキを見やっている。

 

「…………」

 

しかし、当の弘樹は、カジキからの露骨な敵意に対し、何のリアクションも見せていない。

 

「貴様………何とか言ったら如何だっ!!」

 

そんな弘樹の態度に、カジキは更にイライラを募らせる。

 

「…………」

 

それでも尚ノーリアクションの弘樹。

 

「貴様っ!!」

 

とうとうカジキは弘樹の戦闘服の胸倉を掴み、無理矢理席から立ち上がらせる!

 

「! オイオイ! 待てって!!」

 

「カジキ隊長! 駄目ですっ!!」

 

そこでホージローとシイラが慌てて止めに入る!

 

「離せ! ホージローッ!! シイラッ!!」

 

「落ち着けって、カジキ!」

 

「対戦相手を試合前に怪我させたなんて事になったら、最悪出場停止ものですよっ!!」

 

尚も弘樹に食い掛かろうとするカジキを、ホージローとシイラは両脇を抱える様にして引き剥がす。

 

「………何がそんなに気に入らない」

 

弘樹は戦闘服に寄った皺を伸ばしながらカジキに向かってそう尋ねる。

 

「………グロリアーナとブリティッシュ、天竺の親善試合。そしてサンダースとカーネルの一回戦の試合………大洗の活躍は………余りにも無様過ぎる!」

 

「!?」

 

「何だとぉっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」

 

想いも寄らぬカジキの言葉に、みほは驚き、桃が怒声を挙げ、大洗機甲部隊の面々は全員が座っていた席から立ち上がった。

 

「あの伝説の英霊なら、絶対にあんなマネはしない! 西住流と共に、かつて弱小校であった黒森峰を強豪校へと導かせる程の侠(おとこ)だった………」

 

そんな大洗機甲部隊の一同の事など意にも介せず、握った拳をワナワナと震わせながらそう言葉を続けるカジキ。

 

「多くの歩兵道者達にとって、舩坂 弘は尊敬するべき存在であり、目指すべき目標だ………それなのに………その侠の孫が………」

 

「…………」

 

そう言って弘樹を睨むカジキだが、此処へ来ても尚、弘樹はノーリアクションだった。

 

「英霊を継ぐ者など、実際には歩兵道には幾らでも居る………どいつもこいつも………口先ばかりの情けない連中だ」

 

「…………」

 

「弁明も無いか………やはり貴様は英霊の子孫などでは無い!」

 

その弘樹の態度を見て、カジキはそう言い放つ。

 

だが………

 

「………哀れだな」

 

「!? 何だとっ!?」

 

次に弘樹の口から出たのは、哀れみの言葉だった。

 

「小官とて、御先祖様の事は尊敬しているし、誇りにも思っている………だが、貴様のソレは只の妄信だ。英霊と言う言葉に惑わされているに過ぎん」

 

更に苛立つ様なカジキに向かって、弘樹は淡々とした態度でそう言い放つ。

 

「! 貴様ぁっ!!」

 

「おうわっ!?」

 

「隊長っ!?」

 

その言葉で遂にカジキはホージローとシイラを振り解き、弘樹に殴り掛かろうとする。

 

「止めなさい! カジキッ!」

 

「!!」

 

しかしそこで、ローレライが弘樹とカジキの間に割って入り、カジキはローレライに当たる寸前のところで、拳を止める。

 

「いい加減にしなさい。彼に何か言いたい事があるなら、試合で語りなさい。それが歩兵道者と言うものでしょう。違う?」

 

そんなカジキの事を見ながら、ローレライは毅然とした様子でそう言い放つ。

 

「…………」

 

カジキは暫し悩む様な様子を見せたかと思うと、ローレライの眼前に出していた手を、所在無さ気に引っ込めた。

 

「………この借りは試合で返す」

 

「…………」

 

弘樹を見ながらそう言い放つカジキだが、弘樹はやはりノーリアクションである。

 

「っ!!………」

 

そんな弘樹を再び睨みつけたかと思うと、カジキは再び裏口から店外へと出て行ったのだった。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

残された大洗機甲部隊の一同は茫然となる。

 

「ゴメンナサイ。カジキは歩兵道に人一倍打ち込んでるから………」

 

そんな大洗機甲部隊の一同に向かって、ローレライがそう謝罪する。

 

「お詫びと言ったら何だけど、ココの代金は私とホージロー達で持つから」

 

「!? ちょっ!?」

 

「ローレライ! そりゃねえよっ!!」

 

突然そんな話を振られ、シイラとホージローが慌てる。

 

「連帯責任」

 

しかし、ローレライは『イイ笑顔』でシイラとホージローにそう言い放つ。

 

「「トホホ………」」

 

シイラとホージローはその言葉通りの顔となり、しょんぼりする。

 

「よっしゃあっ! 奢りだ! 奢り!」

 

「食って食って食いまくるぞぉーっ!!」

 

そんな2人を余所に、代金の心配をしなくて良くなった大洗歩兵部隊の面々は、次々に料理を注文し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小1時間後………

 

雨もすっかり上がり、食事を終えた大洗機甲部隊の一同は、パシフィックの学園艦を後にし、大洗学園艦の帰路に着く。

 

「………あ、あの、舩坂くん」

 

「? 何だ?」

 

と、その道中、みほが弘樹に声を掛ける。

 

「えっと、その………だ、大丈夫?」

 

少々口籠りながらも、弘樹にそう尋ねるみほ。

 

「?………ああ、さっきの事か」

 

一瞬、みほが何の事を言って居るのか理解出来なかった弘樹だが、先程のカジキとの遣り取りを思い出し、もしかしてその事かと言う。

 

「別に気にしちゃいない。あの手合の事を言われたのは初めてというワケじゃない。コレまで数え切れない程に言われてきた」

 

「そう………なんだ」

 

そう言われて、みほは悲しげな顔になる。

 

自分も戦車道・西住流の人間であり、似た様な事を言われて来た経験がある為、弘樹の事が他人事には思えなかった。

 

「あの男にも言った様に、御先祖様の事は尊敬しているし、誇りにも思っている。だが、小官は小官だ。小官なりの歩兵道を貫く………それだけだ」

 

「でも、あのカジキさんって人………試合できっと舩坂くんの事を狙って来るよ」

 

「その時はただ戦うだけだ。奴も言っていたが、歩兵道に付けられたケチは歩兵道で返す………それが歩兵の流儀と言うものだ」

 

一片の揺るぎも無い顔でそう言い放つ弘樹。

 

「…………」

 

そんな弘樹の顔に、みほは思わず見惚れる。

 

「? 如何した?」

 

「!? う、ううんっ!? な、何でも無いよっ!!」

 

「? そうか?」

 

それに気づいた弘樹が声を掛け、みほは慌てて誤魔化すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び小一時間後………

 

大洗学園艦・大洗女子学園………

 

戦車格納庫内にて………

 

帰還するや否や、すぐにパシフィック機甲部隊との戦いに備えた戦略会議を始める大洗機甲部隊の一同。

 

「諸君。本日、思わぬ形でパシフィック機甲部隊のメンバーと出会う形になったが………彼等とは近い内に試合を行う事は知っての通りだ」

 

集まっている大洗機甲部隊のメンバーを前に、迫信がそう言葉を発する。

 

「パシフィック高校は無名校でしたが、今や他学園からも警戒されているダークホースとなっています」

 

続いて柚子が、迫信の言葉を補足する様にそう言う。

 

「みぽりん、パシフィック機甲部隊が使ってる戦車ってどんなのなの?」

 

とそこで、集合しているメンバーの中で、沙織が手を上げながら、一同の前に居たみほにそう尋ねた。

 

「それが、パシフィックは試合ごとに使う戦車を変えてて、試合ごとに編成が違ってるの」

 

「手の内を簡単には晒さないと言うワケか………」

 

みほが申し訳無さそうにそう答えると、白狼が苦々しげにそう呟く。

 

「歩兵部隊については如何なんだ?」

 

すると今度は、大詔がそう尋ねる。

 

「やはり突撃で突っ込んでの接近戦に持ち込み、高身長で圧倒するって戦術が基本となっていますね」

 

清十郎が、一同の前面に用意していたホワイトボードに、パシフィックの試合の様子を撮影したと思われる写真を張り付ける。

 

そこには、高身長のパシフィック歩兵部隊の隊員達が、接近戦に持ち込んだ相手の歩兵部隊の隊員達を、身長差でまるで蹂躙するかの様に蹴散らしている姿が写されていた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

その写真の様子に、真竜を始めとしたハムスターさん分隊の低身長メンバーの顔に不安が浮かぶ。

 

平均的な身長である歩兵達が蹂躙されているのだ。

 

低身長な自分達が襲われたら、それこそ如何なるか分からない………

 

そう考えると、僅かに身体が震えて来る真竜達。

 

「そう言えば、歩兵部隊の人達だけじゃなくて、戦車部隊の人達も凄く大きかったよね」

 

とそこで、優季が思い出したかの様にそう言う。

 

先程出会ったローレライと言う女性も2メートルもの身長があり、先の鉱関機甲部隊の時に見かけた戦車部隊のメンバーだと思われる女性2人も、2メートル近い身長を誇っていた。

 

戦車に乗って居る為、その身長が直接的な脅威となるワケではないが、それでも威圧感はバッチリである。

 

「…………」

 

「? 紗希ちゃん、如何したの?」

 

そこで、あやが紗希に声を掛ける。

 

いつもボーっと上の空で、皆とは違う方向を向いている事が多く、何を考えているのか分かり難いところがある紗希だが、この時ばかりは明らかに不安そうな表情をしていた。

 

「…………」

 

しかし、言葉を発する事は無いので、それが何故なのかまでは窺い知る事が出来ない。

 

「やはりまだ情報が不足しているな………」

 

「せめて今度の試合で使って来る戦車の種類だけでも分かりゃあなぁ………」

 

まだパシフィック機甲部隊に関する情報が不十分な事に、十河と俊が愚痴る様にそう呟く。

 

「…………」

 

すると、それを聞いていた優花里が、何かを決意した様な表情となる。

 

「! 秋山先輩、ひょっとして………」

 

と、そんな優花里の姿を見た梓も、何かに気付いた様な顔をする。

 

「………ね、皆。ちょっと良い」

 

「? 何っ?」

 

「何ですか?」

 

そこで梓は、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々に声を掛け、何やらヒソヒソ話を始める。

 

「…………」

 

そして、同じ様にそんな優花里の様子に気づいていたみほも、何かを考えている顔を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

昨日の雨が嘘の様な快晴のこの日………

 

パシフィック高校の学園艦が停泊している港に、1つの人影が現れる。

 

「………ではコレより、パシフィックの学園艦に潜入したいと思います」

 

手に持っていたハンディーカメラで自分を映しながらそう言う人影………私服姿の優花里。

 

如何やら、サンダース&カーネル機甲部隊の時と同じ様に、パシフィックの学園艦に潜入して情報を持ち帰る積りの様だ。

 

「幸い今回パシフィック学園艦は近くの港に停泊しており、コンビニ船を使わずに入り込む事が出来そうです。では、突撃します」

 

そう言うと優花里は一旦ハンディーカメラの電源を落とし、パシフィック学園艦へと乗船しようとする。

 

すると………

 

「優花里さん!」

 

「!?」

 

突如背後から声を掛けられ、優花里が驚きながら振り返ると、そこには優花里と同じ様に私服姿のみほが居た。

 

「に、西住殿っ!? 如何して此処に!?」

 

「私も一緒に潜入しますっ!」

 

「!? えええっ!?」

 

驚きながらもそう尋ねる優花里に、みほはそう言い放ち、優花里は更に驚きの声を挙げる。

 

「そ、そんなぁっ!? 西住殿までそんな事をする必要はありませんよ! それにもし見つかったら、試合終了まで勾留されてしまうんですよっ!!」

 

慌てた様子でみほにそう言う優花里。

 

彼女の言葉通り、試合前の偵察活動は戦車道・歩兵道連盟の名の元に許可されているが………

 

もし活動中に相手校の生徒に捕まった場合、試合が終わるまで勾留されるルールとなっている。

 

万が一総隊長であるみほが捕まる様な事になれば、それで大洗機甲部隊の勝利は無くなってしまうと言っても過言では無い。

 

「お願い、優花里さん! 一緒に連れてって!!」

 

しかし、みほの決意は固い様であり、優花里の手を掴んで連れて行けとせがむ。

 

(今回だけは如何しても負けたくない………堅固さん達と………舩坂くんの為にも)

 

その胸中には、パシフィック機甲部隊に敗れ去った鉱関機甲部隊の堅固達。

 

そして、昨日因縁を付けられた弘樹の事が在った。

 

「優花里さん! お願いっ!!」

 

「西住殿………」

 

重ねて頼んで来るみほに、優花里の表情が変わる。

 

「………分かりました。そこまで仰られるのでしたら」

 

「! ありがとう、優花里さん」

 

「ですが! 危ないと思った時には私を置いてでも逃げて下さい! 西住殿は大洗機甲部隊の総隊長なのですから!」

 

やがて優花里が折れる形となったが、そう釘を刺す様にみほに言い放つ。

 

「そんな! 出来ないよ、そんな事!」

 

「舩坂殿でもきっと同じ事を言います!」

 

「!!………」

 

そう言われてみほは黙り込む。

 

「良いですね? 西住殿」

 

「………うん」

 

若干納得が行かない様な顔をしながらも、みほは優花里の言葉に頷いた。

 

「では、行きましょう」

 

改めてみほと共にパシフィック学園艦へ乗り込もうとする優花里。

 

と………

 

「アレッ!? 西住総隊長!?」

 

「総隊長っ!? 如何して此処にっ!?」

 

「「!?」」

 

そう言う声が聞こえて来て、優花里とみほが振り返るとそこには………

 

梓を始めとしたウサギさんチームの面々。

 

そして勇武を始めとしたハムスターさん分隊の姿が在った。

 

「ウサギさんチームの皆!?」

 

「ハムスターさん分隊の皆さんまでっ!?」

 

「ひょっとして、西住総隊長も?」

 

「考える事は一緒ですね」

 

驚きの声を挙げるみほと優花里に向かって、あやと光照がそう言う。

 

「ねえねえ、早く行こうよ!」

 

「その通りっす! パシフィックの情報を持って帰ってやるっす!」

 

そこで桂利奈と正義がそう言うと、パシフィックの学園艦目指して駆け出した!

 

「ああ! ちょっと! 1人で勝手に行っちゃ駄目だってばぁっ!!」

 

「正義! 待てってば!」

 

梓と勇武がそう言いながら後を追い、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の一同は、パシフィック学園艦へと乗り込んで行く。

 

「な、何だか、何時の間にか大所帯に………」

 

「こんな人数で行ったら潜入も何もあったものじゃないですよぉ………」

 

みほがギャグ汗を掻きながら、優花里がガックリと肩を落として愚痴る様にそう呟く。

 

しかし、状況は変えられず、2人もそのままパシフィック学園艦へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話投稿させていただきました。

弘樹に敵意を向けるカジキ。
それは、彼が熱心な歩兵道者であり、弘樹の祖先『舩坂 弘』を尊敬してるが故にだった。

そして、優花里は情報が不足しているパシフィックの事を調べる為に、サンダース&カーネルの時の様に潜入を試みる。
しかし、思わぬ形でみほやウサギさんチーム、ハムスターさん分隊の面々が加わり、事態はややっこしくなってしまうのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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