ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第49話『ダークホース出現です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第49話『ダークホース出現です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗水族館でのデートを楽しんだ弘樹とみほ。

 

その帰り、学園艦に乗船しようとしたところ………

 

みほが心の師匠と呼ぶ、黒森峰学園関係者以外の友人である鉱関高等学園の機甲部隊・歩兵部隊総隊長の『金剛崎 堅固』とその仲間達と出会う。

 

堅固は、明日に鉱関機甲部隊の試合があり、その試合に勝ち、更に大洗機甲部隊が地走機甲部隊に勝てば、鉱関機甲部隊VS大洗機甲部隊のカードが実現すると言う。

 

憧れの人や友人達と試合が出来るかも知れないと思い、みほは浮かれる。

 

そして、その鉱関機甲部隊の試合の日………

 

敵情視察を兼ねて、大洗機甲部隊の面々は、試合の様子を見に行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱関機甲部隊の試合会場・大きな河に面した平原………

 

『さあ、いよいよ始まりました! 戦車道・歩兵道全国大会、第3回戦! 今日は優勝候補の一角である鉱関学園の鉱関機甲部隊の試合です!』

 

『いや~、いよいよですか。鉱関機甲部隊の試合を楽しみにしてたんですよ』

 

観客席に、ヒートマン佐々木とDJ田中の実況が響く。

 

「「「「「「「「「「鉱関! 鉱関! 鉱関!」」」」」」」」」」

 

観客席に居る鉱関学園の生徒達や関係者、ファンも試合開始前から熱いコールを送っている。

 

「スッゲェー声援だな………」

 

「鉱関学園は古豪の機甲部隊だ。それだけファンの数も多いのさ」

 

その声援の迫力に地市が圧倒されていると、迫信がそう言って来る。

 

「…………」

 

そしてみほも、試合が始まるのを今か今と待ちかねている様子を見せている。

 

「みぽりんってば、楽しそうだね」

 

そんなみほの様子を見た沙織がそう言う。

 

「うん! だって久しぶりに堅固さん達の試合が見れるんだもん!」

 

「いや~、私も鉱関機甲部隊の戦いを生で見られるなんて、感激です!」

 

みほが笑顔を浮かべてそう言うと、その隣で優花里が同じ様に嬉しそうな顔をしながらそう言う。

 

「呑気なものだな………もしかするとその鉱関機甲部隊と試合になるかも知れないと言うのに………」

 

「それはそれですよ、冷泉さん」

 

麻子がそうツッコミを入れると、華がそう窘める様に言う。

 

「そう言えば、鉱関機甲部隊の対戦相手って、何処なんですか?」

 

「『パシフィック高等男子校』と『パシフィック高等女子校』からなる『パシフィック機甲部隊』だな」

 

清十郎が鉱関機甲部隊の相手は何処なのかと尋ねると、俊がトーナメント表を片手にそう答える。

 

「今年から参戦して来た部隊ですが、ウチ(大洗)みたいに、昔は戦車道をやっていたとか、歩兵道をやっていたと言う記録はありません。全くの無名校です」

 

「1回戦、2回戦共に辛勝………ま、運だけで勝ち抜いてきた様な機甲部隊だな。だが、鉱関機甲部隊相手では流石にその運も尽きるだろう。運だけで勝てる相手では無い」

 

逞巳がそう言うと、十河が集めた情報が書かれた資料を片手に、ドヤ顔でそう言う。

 

「となると、大洗が次の試合で勝てば、その次に戦うのはやはり………」

 

「鉱関機甲部隊………って事ですね」

 

「うへえ~~、マジかよ………」

 

楓と飛彗がそう言い合うと、了平がげんなりとした様子を見せる。

 

「私は戦いたいな………堅固さん達、今年が最後の試合なんだし」

 

「あ、そっか。あの人達、3年生だもんね………」

 

みほがそう呟くと、沙織が思い出した様に言う。

 

そう、堅固達は現在高校3年生………

 

今年の試合が最後の試合なのである。

 

『一同! 礼っ!!』

 

『『『『『『『『『『よろしくお願いしまーすっ!!』』』』』』』』』』

 

とそこで、両チームが揃ったらしく、主審の香音の声で、集合していた鉱関機甲部隊のメンバーと、パシフィック機甲部隊のメンバーが互いに挨拶をする。

 

「お! 始まるで!」

 

「頑張れーっ! 鉱関機甲部隊ーっ!!」

 

「戦う相手かも知れないのに、応援するの?」

 

「西住総隊長の知り合いだし、良いんじゃない?」

 

大河がそう言うと、桂利奈が鉱関機甲部隊に向かって声援を飛ばし、それを見たあやと優季がそう言い合う。

 

『さあ! 試合開始です!! 鉱関機甲部隊! パシフィック機甲部隊! 君に、幸あれ!!』

 

『試合開始っ!』

 

ヒートマン佐々木がそう実況した瞬間、香音の声と共に、試合開始を告げる信号弾が撃ち上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合開始から1時間弱………

 

流れは終始鉱関機甲部隊有利で進んでいた。

 

数の上ではパシフィックが勝っていたが、鉱関機甲部隊は巧みな戦術と戦車部隊と歩兵部隊との連携、そして何より経験で数の差をカバーし、パシフィック機甲部隊の戦車と随伴歩兵分隊を其々に分断して各個に撃破。

 

着実にパシフィック機甲部隊を消耗させている。

 

『鉱関機甲部隊、圧倒的ーっ! コレが経験の差か! いぶし銀の実力! 此処にありだぁーっ!!』

 

『パシフィックも無名ながら3回戦まで良く来たと思いますよ。けど、まだまだ経験不足ですね』

 

ヒートマン佐々木とDJ田中の実況にも自然と力が入る。

 

「「「「「「「「「「鉱関! 鉱関! 鉱関!」」」」」」」」」」

 

観客席の応援コールも鳴り止むところを知らない。

 

「凄ーいっ! 鉱関機甲部隊が勝ってるよっ!!」

 

「流石は古豪・鉱関機甲部隊! その経験値は伊達ではありませんねっ!!」

 

沙織と優花里が、興奮した様子でそう言い合う。

 

「凄い凄い! これなら、ひょっとして鉱関機甲部隊と………堅固さん達と試合が出来るかも知れないね、舩坂くん!」

 

みほも喜びを露わに、優花里と逆側、右隣に座って観戦している弘樹に声を掛ける。

 

「…………」

 

しかし、弘樹は何やら難しい顔をして、試合の様子をジッと見ていた。

 

「? 舩坂くん? 如何したの?」

 

「あ、いや………少し、試合の様子に見入ってしまっていただけさ」

 

みほが首を傾げながらそう尋ねると、弘樹は我に返った様にそう返す。

 

「そっか。確かに、堅固さん達の試合運びは凄いもんね」

 

納得が行ったみほはそう言い、再び試合の様子を見やる。

 

「…………」

 

だが弘樹は、また難しい顔をして試合の様子を見ている。

 

(何だ………この妙な予感は………この試合………『何か』が起こる………)

 

その原因は、先程から胸中を過ぎっている妙な予感のせいだった。

 

『堅固! 敵の数も減って来た! そろそろフラッグ車を叩くわよっ!!』

 

「そう来ると思ってたぜ。コッチは既に準備は整ってる」

 

とそこで、戦車部隊の隊長で鉱関機甲部隊の総隊長である瑪瑙がそう言うと、堅固はそれを読んでいたと返す。

 

『流石ね! 良し! 全部隊に通達! 勝負を掛けるっ! フラッグ車を集中攻撃よっ!!』

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

それを聞いた瑪瑙が改めて指示を出すと、鉱関機甲部隊はパシフィックのフラッグ車目掛けて一斉に突撃を開始した。

 

コレで試合が決まる………

 

そう思われた瞬間!!

 

「「「「「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

突如明後日の方向から飛んで来た砲弾が、鉱関歩兵部隊の一部を吹き飛ばした!!

 

「!?」

 

『何っ!?』

 

すぐさま砲弾が飛んで来た方向を確認する堅固と瑪瑙。

 

そこには、パシフィック機甲部隊のマークを付けた、新たな戦車部隊と随伴歩兵部隊の姿が在った。

 

『パシフィックの増援!?』

 

「別働隊が居たとはな………だが、ちょいと不意を衝いたぐらいで勝てると思わん事だ」

 

瑪瑙が声を挙げる中、堅固は冷静に新たな出現したパシフィック機甲部隊の部隊に対処しようとする。

 

「増援っ!?」

 

一方、観客席のみほも、突如現れたパシフィック機甲部隊の増援に驚いていた。

 

「大丈夫だよ、みぽりん。流れは鉱関機甲部隊に向いてるし、何よりベテランの人達ばかりなんでしょ? ちょっと増援があったからって、負けたりなんてしないよ」

 

しかし、沙織は鉱関機甲部隊に分があると見て、余裕を見せてみほにそう言う。

 

「………うん、そうだよね。これぐらいで動じる堅固さん達じゃないもんね」

 

その言葉でみほは落ち着き、再び試合の様子を見やる。

 

「…………」

 

だが、その横で………

 

弘樹は険しい表情を浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

アレほど騒がしかった鉱関機甲部隊側の観客席が、まるで通夜の様に静まり返っている。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々も、大半のメンバーが言葉を失い、呆然としていた。

 

「そ、そんな………まさか………」

 

『し、試合終了です! しかし………コレはっ!!』

 

『まさかですよ………』

 

十河が絞り出すかの様にそう呟いた瞬間、実況の佐々木と田中の声が響き渡る。

 

今、鉱関機甲部隊とパシフィック機甲部隊が戦っていた場所では………

 

鉱関歩兵部隊の面々が全員戦死判定を受けて彼方此方に倒れ伏せ、戦車部隊もフラッグ車を含めた全ての車両から撃破を示す白旗が上がっていた………

 

『戦車道・歩兵道全国大会。第3回戦・鉱関機甲部隊VSパシフィック機甲部隊の試合。勝ったのはまさかの………無名のパシフィックです!!』

 

『いや~、大番狂わせですよ、コレは………』

 

「堅固さん達が………」

 

佐々木と田中がそう告げる中、みほは戦死判定を受け、地面に倒れ伏せている堅固の姿を見て、呆然自失の状態となっている。

 

「………平賀くん」

 

『分かっている。大至急パシフィック機甲部隊に関するデータと情報を集めよう』

 

と、唯一平静を保っていた弘樹が、ノートPCを通じて煌人とそう会話を交わす。

 

「頼んだぞ………」

 

「如何やら………我々が勝ち進んだ場合の相手は………彼等の様だね」

 

弘樹がそう返すと、何時の間にか背後の席に着いて居た迫信がそんな事を言う。

 

「イエーイ! 4回戦進出だぁっ!!」

 

と、増援で現れたパシフィック機甲部隊の分隊の中に居た男子生徒の1人がそう歓声を挙げる。

 

「はしゃぐな。まだ3回戦を突破しただけだ」

 

その男子生徒を、歩兵部隊の総隊長と思わしき男子生徒が諌める。

 

「心配ご無用ですわ。この私が居れば、優勝なんて容易い事ですわ。オーッホッホッホッホッ!」

 

すると今度は、車外へ姿を晒していたフラッグ車の車長の女子生徒が、高笑いを挙げる。

 

「あちゃ~、また悪い癖が………」

 

「まあ、らしいけどね」

 

そんな女子生徒の姿を見て、同じ様に車外へ姿を晒していた隊長車の車長と操縦手がそう言い合う。

 

………その5人を含めた、歩兵部隊と戦車部隊の隊員達全員が、2m以上の身長を誇っていた。

 

「デケェ………」

 

「増援で現れた部隊の奴等、戦車部隊の隊員達まで、長身の連中ばっかだぞ」

 

そのパシフィック機甲部隊の増援部隊のメンバーを見て、磐渡と鷺澪がそう言い合う。

 

「あの体格じゃ、接近戦に持ち込まれたらコッチが圧倒的に不利だな………」

 

俊も、パシフィック機甲部隊の増援部隊のメンバーを見てそう言う。

 

大洗にも陣やシャッコーと言った長身の隊員は居るが、飽く迄一部である。

 

もし、あの長身のガタイで接近戦に持ち込まれれば、大洗の歩兵部隊ではは一溜りもない。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

特に戦々恐々としているのは、ウサギさんチームとハムスターさん分隊のメンバーである。

 

「あ、明日の試合に勝ったら、次はあの部隊と戦うの?」

 

「無理だよ………だって、ベテランで優勝候補の鉱関機甲部隊が負けちゃったんだよ!」

 

「私達じゃ敵わないよ!」

 

ウサギさんチームは、ベテランの鉱関機甲部隊を負かしたパシフィック機甲部隊の実力に完全に飲まれており、

 

「あの人達と対峙した場合………1番危ないのは」

 

「僕達デス………」

 

「僕達とあの人達との身長差じゃ………本当に何も出来ない」

 

ハムスターさん分隊は、小柄なメンバーが多い為、長身ばかりのパシフィック歩兵部隊と対峙した際に勝てるのかと尻込みしている。

 

「………西住くん」

 

そんなウサギさんチームとハムスターさん分隊のメンバーを横目で見て心配しながらも、弘樹は今1番心配なみほへと声を掛ける。

 

「堅固さん達が………瑪瑙さん達が………」

 

みほは瞳から光を失った状態で俯き、ブツブツとそう呟き繰り返している。

 

「しっかりするんだ、西住くん!」

 

「!!」

 

そんなみほの肩を掴みながら、弘樹がやや強く言うと、みほは漸く我に帰る。

 

「ショックを受けたのは良く分かる。だが、我々が嘆いたところで何も変わらない。我々に出来る事は、次の試合で勝ち、連中と対峙する事だけだ」

 

「そうだよ、みぽりん!」

 

「金剛崎さん達の仇を取りましょう!」

 

「西住殿! この秋山 優花里! 粉骨砕身の覚悟で次の試合に臨みますっ!!」

 

「戦車道での借りは戦車道で返すしかないな………」

 

弘樹がそう言うと、沙織、華、優花里、麻子も、みほに向かってそう言って来た。

 

「皆………そうだね。私達に出来る事は、次の試合に勝って………4回戦でパシフィック機甲部隊と戦う事だよ!」

 

するとみほも、表情を強張らせてそう言い放つ。

 

「その意気だよ! みぽりんっ!!」

 

「西住殿! 頑張りましょう!!」

 

「やりましょうっ!」

 

「うん………」

 

元気を取り戻した様子のみほを見て、沙織達は安堵の笑みを浮かべる。

 

「…………」

 

しかし、弘樹だけは、そんなみほの姿に、一抹の危うさを感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

戦車道・歩兵道全国大会、第3回戦………

 

大洗機甲部隊VS地走機甲部隊の試合の日が訪れた。

 

試合会場は湿地地帯………

 

彼方此方に沼と小高い丘が点在し、背丈の高い草が生い茂っている。

 

『さあ、戦車道・歩兵道全国大会、第3回戦! 今日は今大会最も注目されている大洗機甲部隊と地走機甲部隊の試合です!』

 

『いやあ、実は私、大洗のファンになりかけてまして………今日の試合も頑張って欲しいですね』

 

ヒートマン佐々木とDJ田中がそう言い合う中、既に挨拶を済ませた両機甲部隊は、其々のスタート地点に着いて居た。

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊のスタート地点………

 

戦車部隊の戦車が並んでいる周りに、歩兵部隊が其々に随伴分隊ごとに集結している。

 

「それで西住ちゃん? 今回は如何するわけ?」

 

杏が相変わらず干し芋を齧りながら、みほに今回は如何言った作戦で行くのかと尋ねる。

 

「相手は待ち伏せを得意とする地走機甲部隊です。此処はやはり各戦車部隊、随伴歩兵分隊ごと分かれて、周囲を注意しながら慎重に進むのが………」

 

と、みほの作戦を推測した優花里がそう言うが………

 

「いいえ………全部隊で一気に突撃します」

 

「!? ええっ!?」

 

みほがそんな事を言い、優花里が驚きの声を挙げ、大洗機甲部隊の面々もざわめき立つ。

 

「西住総隊長。それは危険過ぎる。下手をしたら全滅してしまう可能性が有る」

 

「いえ、相手が待ち伏せを得意とするなら、待ち伏せの態勢に入る前に叩きます。こんな試合で躓いているワケには行かないんです。この試合に勝って、パシフィック機甲部隊との試合に備えないと」

 

迫信が釘を刺す様に言うが、みほはそう言い返す。

 

(やはり昨日の件が尾を引いているか………)

 

そんなみほを見て、弘樹は昨日の試合で鉱関機甲部隊が敗北したショックをまだ引き摺っていると察する。

 

「み、みぽりん、落ち着いて………」

 

「私は十分落ち着いてるよ。皆さん! 行きますよっ!!」

 

沙織が宥めようとするが、みほは聞き入れず、大洗機甲部隊にそう指示を出す。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし、大洗機甲部隊の面々は、戸惑うばかりである。

 

「如何したの!? 総隊長の命令だよ! 全軍前進して!」

 

みほはやや声を荒げて更にそう言い放つ。

 

「! 麻子さん! 出して下さい! 私達が先頭を行きます!!」

 

と、痺れを切らしたかの様に、みほは操縦手である麻子にそう言い放つ。

 

「止せ、西住。お前らしくないぞ」

 

流石に麻子も見かねて、みほにそう声を掛けるが………

 

「出して下さいっ!!」

 

みほは強く麻子にそう言い放つ。

 

「に、西住殿………」

 

「みほさん………」

 

そんなみほの姿に、優花里も華も掛ける言葉が見つからない。

 

「…………」

 

麻子も最早何も言うまいと、Ⅳ号を前進させ始めた。

 

………すると!

 

「…………」

 

前進を始めたⅣ号の前に、弘樹が無言で立ちはだかる。

 

「!?」

 

「! 退いて! 舩坂くんっ!!」

 

慌てて麻子がⅣ号を止めると、キューポラから上半身を出しているみほが、弘樹に向かってそう言う。

 

「…………」

 

しかし、弘樹は全く退く様子を見せない。

 

「! 総隊長命令です! 舩坂 弘樹分隊長! そこを退きなさいっ!!」

 

業を煮やしたかの様に、そう言い放つみほ。

 

「………その御命令には従えません」

 

そんなみほに向かって、弘樹はそう言い返す。

 

「えっ?………」

 

「西住総隊長………恩師の仇を討つ為に、パシフィックと戦いに臨みたいと言う総隊長の気持ちは、この舩坂、十二分に理解出来ます………」

 

驚くみほに向かって、弘樹はそう言葉を続ける。

 

「しかし、総隊長は今、その思いに囚われ、目の前の事が見えていません」

 

「舩坂くん………」

 

「思い出して下さい………総隊長は何故………1度は止めた戦車道を、また始める気になったのかを」

 

「!?」

 

弘樹のその言葉で、みほはハッとする。

 

「みぽりん」

 

「みほさん」

 

「西住殿」

 

「西住」

 

とそこで、Ⅳ号の各ハッチが開き、沙織、華、優花里、麻子が車外へと姿を晒す。

 

「沙織さん………華さん………優花里さん………麻子さん………」

 

そんな沙織達1人1人に視線をやり、何かを思いやるみほ。

 

「!!」

 

やがてキューポラから飛び出すと、大洗機甲部隊の面々の前へと出る。

 

「皆さん! 御免なさい!!」

 

そして、一同に向かってバッと頭を下げた。

 

「私、昨日の試合の事で頭に血が上ってて、それで………兎に角、御免なさい!!」

 

只管に大洗機甲部隊の面々に向かって謝るみほ。

 

「気にしないでいいよ~」

 

「西住くんも人間だ。時には感情に囚われる事もあるだろう」

 

すると、杏と迫信がそう返す。

 

「そうだよね~。私も頭に血が上ると色々とやっちゃう事あるし」

 

「あるある」

 

優季とあやもそんな事を言う。

 

「感情のままに行動するのは正しい人間の生き方だ」

 

「おっ! ヒイロ・ユイのセリフだな」

 

磐渡がそう言うと、それがガンダムWの主人公のセリフである事を見抜く圭一郎。

 

「気にしないで下さい! 総隊長!!」

 

「総隊長のお気持ち、分かります!」

 

「そうですよ」

 

「そうだよ」

 

次々にみほを気遣う声が挙がる。

 

「皆………」

 

「西住総隊長………改めて、御命令を」

 

みほがその様子に感動している様な様子を見せていると、弘樹がヤマト式敬礼をして、そう言って来た。

 

「………各戦車部隊と随伴歩兵分隊ごとに分かれて、周囲を注意しながら慎重に進軍します。お互いに連絡や連携を取り合い、警戒を密にして下さい」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

みほが改めてそう命じると、大洗機甲部隊の面々は進軍準備に掛かる。

 

「………皆、ゴメンね」

 

その様子を見ながら、みほはあんこうチームの面々に改めて謝罪する。

 

「気にしないで良いって、みぽりん」

 

「いつもの西住さんに戻ってくれて、安心しました」

 

「やっぱりいつもの西住殿が1番であります!」

 

「やれやれだな………」

 

沙織達も、大洗機甲部隊の一同と同じ様に気にしていないと言う。

 

「うん………舩坂くんもゴメンね………それと………止めてくれて、ありがとう」

 

それを見たみほは、今度は弘樹に謝罪と礼を言う。

 

「気にしないで良い。総隊長を支えるのは隊員の義務だ」

 

生真面目にそんな言葉を返す弘樹。

 

「そして君の望みがパシフィック機甲部隊と対決する事ならば………小官はその為に出来る事を全力で遂行する所存だ」

 

「舩坂くん………」

 

「では、任務に戻ります」

 

弘樹はそう言ってヤマト式敬礼をすると、とらさん分隊の面々が居る場所まで戻った。

 

「…………」

 

みほはそれを見送ると、自分もⅣ号の車長席へと戻る。

 

「進軍準備、完了致しました、西住総隊長」

 

とそこで、迫信が進軍の準備が整った事を報告する。

 

「………行きます! パンツァー・フォー!!」

 

「アールハンドゥガンパレード!」

 

そして、みほと弘樹の掛け声で、進軍を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

心の師である金剛崎 堅固の所属する鉱関機甲部隊の試合を見に行ったみほ達。
しかし………
鉱関機甲部隊は、今年度より参戦して来た全くの無名校………
『パシフィック高校』のパシフィック機甲部隊の前に敗れてしまう。

心の師の敗北に動揺を隠せないみほ。
その雪辱を晴らそうと燃える余り、地走機甲部隊戦で無茶な指示を出してしまう。
だが、弘樹とあんこうチームの仲間達。
そして大洗機甲部隊の戦友達がそんなみほを立ち直せる。
果たして、みほは鉱関機甲部隊の雪辱を果たす事が出来るのか?

前回登場した鉱関機甲部隊の面々ですが、今回で試合からは退場となってしまいます。
一応、客席にゲストとして来たりするので、それで勘弁して下さい。

お気づきになった方も多いと思いますが、今回の展開は某有名アメフト漫画がモチーフとなっています。

次回の地走機甲部隊ですが、TV版でのアンツィオに代わる出オチ役なので、次回だけ決着は着きます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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