ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第48話『鉱関高等学園です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第48話『鉱関高等学園です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗水族館でデートを楽しむ弘樹とみほ。

 

陰で見守っていたあんこうチーム&とらさん分隊の面々も、何時の間にか水族館に夢中になっていた。

 

そんな中………

 

ふとした事で逸れてしまったみほを探しに向かった弘樹が………

 

みほと良く似た声を持つ少女『イオナ』と出会う。

 

一方、逸れたみほも、『千早 群像』と言う青年と出会った。

 

弘樹を知る様子の群像と、そんな群像を知る様子を見せる弘樹。

 

果たして、イオナと群像は何者なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗水族館・オーシャンゾーンのオーシャンシアター………

 

「さあ~皆~! アシカさんとイルカさんのショーの始まりだよ~!!」

 

「「「「「「「「「「わああああぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

司会の飼育員が挨拶をすると、オーシャンシアターの客席に居る子供達から歓声が挙がる。

 

「は~い、今日も元気一杯の子供達が大勢居てくれて嬉しいです。じゃあ、先ずはアシカさん達の演技です!」

 

飼育員がそう言うと、アシカ達が演技に入る。

 

飼育員が投げた輪っかを輪投げの様にキャッチしたり、ボールを見事にヘディングしたり、前ヒレをバタバタと振って観客に答えて見せる。

 

「お~~」

 

「凄い凄い~」

 

その様子に、無表情だが感心した様子で拍手するイオナと、無邪気に笑顔を浮かべて拍手するみほ。

 

「見事なものだな」

 

「うむ………」

 

群像と弘樹も、短くそう言い合う。

 

一通りの演技が終わると、観客席から一斉に拍手が鳴る。

 

「は~い、ありがとうございま~す! 続きましては、お待ちかね! イルカさん達の演技です!」

 

飼育員がそう告げると、今度はイルカ達の演技が始まった。

 

背面泳ぎや立ち泳ぎ、更には息の揃った大ジャンプが披露されて行く。

 

「おお~」

 

「凄い迫力だね」

 

水槽間近の席に居る為、イルカの大ジャンプの迫力に圧倒されるイオナとみほ。

 

と、その時!!

 

イルカ達が一斉に大ジャンプを行い、着水の際に跳ねた水が、みほの方へと向かって来た!

 

「!? ふええっ!?」

 

咄嗟の事に反応出来ないみほ。

 

このままではずぶ濡れになってしまう!

 

だが、しかし!

 

「…………」

 

弘樹がとんびコートのケープ部分を翻し、みほを隠す様に覆ったかと思うと、そのまま跳ねて来た水を受け止めた!

 

「!?」

 

「大丈夫か、西住くん?」

 

すっかりずぶ濡れになったとんびコートを脱ぎながら、みほにそう尋ねる弘樹。

 

「う、うん………ありがとう、舩坂くん」

 

そんな弘樹を見て、みほは頬を染めながらお礼を言う。

 

「群像。みほは如何して赤くなっているの?」

 

「さてな………」

 

そんなみほの姿を見て群像にそう尋ねるイオナと、それをはぐらかす群像。

 

その後もショーを満喫した4人は、遅めの昼食を取ろうと、フードコートへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗水族館・フードコート………

 

「しかし、まさかこんな所で千早 群像と出会えるとはな………驚いたよ」

 

「俺の方も、舩坂 弘樹と出会えるとは思っていなかったよ」

 

食事をしながら、弘樹と群像がそう言い合う。

 

「イオナちゃんって、『軍艦道』の人だったんだ」

 

「そう。潜水艦の部門を受講してる」

 

みほとイオナもそんな事を言い合う。

 

 

 

 

 

『軍艦道』

 

戦車道、歩兵道に並ぶ兵器を使用する武道の1つである。

 

その名の通り、第二次世界大戦終了時までの軍艦を使い、競い合うのである。

 

戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、水雷艇など、艦種ごとに部門が分かれているが、対戦時には艦隊を組んだり、其々別の艦種が対決し合う事が多々ある。

 

使う兵器が兵器なだけに、その試合の様子は迫力満点であり、高い人気を誇っている。

 

また、歩兵道が女子も少数存在するが基本的に男子、戦車道が女子の武道であるのに対し、軍艦道は男女混合で、割合も半々の武道であり、艦船を使う特性上、何よりもチームワークや連携が重視されている。

 

 

 

 

 

「やはり、父親に憧れて軍艦道を?」

 

「まあ、そんなところだ………」

 

群像の父『千早 翔像』は、かつて軍艦道・世界大会で日本を優勝させた名提督の1人であり、軍艦道を求道する者達にとっては憧れの的である。

 

「そう言う君も、祖先の影響かい?」

 

「影響と言うよりも………」

 

「? 言うよりも?」

 

「『血』だな………」

 

「フフフ、成程。納得出来る理由だ」

 

お互いに兵器使用武道の求道者ゆえに、会話が弾んでいる群像と弘樹。

 

「西住 みほ。一体如何やって大洗機甲部隊を勝たせたの?」

 

「えっ?」

 

「私にとって大洗機甲部隊の戦い方は非常に興味深い。いつも数や練度で負けていながら、最後にはその不利を覆して勝利する………一体あの機甲部隊の何処にそんな力が有ると言うの?」

 

一方のイオナも、みほに向かって淡々とした様子でそう問い質す。

 

「それは西住くんの指揮が的確だからさ」

 

と、みほに代わる様に、弘樹がそう答えた。

 

「一頭の羊に率いられた百頭の狼の群れは、一頭の狼に率いられた羊の群れに敗れる………」

 

「ナポレオンか………」

 

それを聞いた群像がそんな言葉を口にすると、弘樹がそれはナポレオンの言葉であると言い当てる。

 

「そんな! 私の指揮なんて、そんな大した事ないよ。皆が頑張ってくれてるから………」

 

「群像。みほはああ言ってるけど………」

 

「謙遜しているだけさ。西住くん、君はもう少し、自分を誇っても良いと思うぞ」

 

「あ、ありがとうございます………」

 

真正面から褒めて来る群像に、みほはすっかり縮こまってしまう。

 

その後、群像とイオナはスーベニアショップ『モラモラ』で土産を買い、大洗水族館を後にしたのだった。

 

弘樹とみほも、一通りの見物を終えたので、次はアウトレットへ向かった。

 

当然、沙織達もその後を尾けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、夕方………

 

大洗学園艦の停泊港………

 

「いや、すっかり遅くなってしまったな………」

 

大洗の海の水平線に沈もうとしている夕日を見て、弘樹がそう呟く。

 

「急がないと、出航の時間になっちゃう」

 

みほもそう言い、学園艦への連絡橋へと急ぐ。

 

(ん? 隣に別の学園艦が入港中か………)

 

とそこで弘樹が、大洗学園艦が入港している隣の港に、別の学園艦が入港している事に気付くが、学園艦が複数入港する事は良くある光景な為、余り気に留めなかった。

 

「コレで2人の仲、進展したかな?」

 

「如何だろうな………あの弘樹だからなぁ」

 

2人を覗き見していた沙織達や地市達は、相変わらず離れた場所から2人の姿を見ている。

 

「あ、あのね、舩坂くん」

 

「ん?」

 

と、連絡橋を渡っている最中、みほが弘樹へと声を掛ける。

 

「えっと………きょ、今日は! とっても楽しかったよ!」

 

一瞬言葉に詰まったが、やがて意を決した様にそう言い放つ。

 

「………そうか。小官の様な者と一緒で退屈させてしまったのではないかと心配していたが………それなら何よりだ」

 

弘樹はそんなみほの言葉を聞いて、微笑を浮かべるのだった。

 

「おお~、やっぱり西住殿と舩坂殿はお似合いですね!」

 

「何でそんな自信満々に言うんだよ」

 

その光景を見ていた優花里がそう言い放ち、そんな優花里に白狼がツッコミを入れる。

 

「華さん、僕も今日は楽しかったですよ」

 

「ええ、私もです」

 

一方、結局弘樹とみほの事をそっちのけで、自分達も楽しんでいた飛彗と華も、そんな事を言い合っていた。

 

『全く、何しに行ったのやら………』

 

『バカばっか………』

 

指揮車で先に学園艦に乗り付けていた煌人は、そんな様子の一同の会話を聞いて呆れた声を無線に零し、麻子も何処ぞの電子の妖精の少女時代の台詞を言い放つのだった。

 

そんなこんなをしている内に、弘樹とみほは連絡橋を渡り切り、学園艦へと乗り込もうとする。

 

と、そこで………

 

みほが持っていたハンドバックの口が少し開いていた為、連絡橋を渡っていた際の振動で、そこから財布が零れそうになる。

 

「! 西住くん! バックから財布が!」

 

「えっ!?」

 

と、それに気づいた弘樹が声を掛けたが、その際にみほが振り返った時の遠心力で、財布は完全に飛び出してしまう。

 

「あっ!?」

 

「くっ!!」

 

驚くみほと咄嗟にキャッチしようとした弘樹だったが、一瞬間に合わず、財布は連絡橋の上をバウンドして、港に落ちる。

 

「良かった~。海には落ちなかったみたい」

 

「取ってこよう」

 

「あ。良いよ。私行くから」

 

海に落ちなかった事を安堵したみほが、弘樹が取って来ると言うのを断り、連絡橋を下って自分で取りに行く。

 

だが、その瞬間!

 

「!? あっ!?」

 

あと少しで降り切ると言う瞬間に、みほは連絡橋の出っ張りに躓き、転びそうになる!

 

「! 西住くんっ!!」

 

「!? みぽりん!!」

 

「!? 西住殿ぉーっ!!」

 

「隊長っ!!」

 

弘樹が慌てて駆け出し、沙織達も最早見ている場合じゃないと飛び出す。

 

しかし………

 

「おっと!」

 

「うわっ!?」

 

そんな弘樹や沙織達よりも早く、突如現れた4人の学生らしき人物の内、その中に男性の1人が、みほの事を受け止めた。

 

「そう言うドジな処は変わってないな、西住ちゃん」

 

「えっ?」

 

その男性がそんな事を言って来て、みほは戸惑いながらその男性の事を見上げる。

 

「よお、久しぶり」

 

男性は親しげにみほに挨拶をする。

 

「! 堅固さん! 堅固さんじゃないですか!!」

 

堅固と呼ばれたその男性を見たみほが、驚きと喜びが入り混じった声を挙げる。

 

(堅固………だと?)

 

一方、出番を失った弘樹は、みほが堅固と呼んだ男性を見て、何やら考え込む様子を見せる。

 

「ハイ、西住ちゃん。財布」

 

とそこで、もう1人の男性が、みほが落とした財布を拾い上げて手渡す。

 

「あ、ありがとうございます、琥珀さん」

 

「気を付けないと駄目よ」

 

「連絡橋って、意外と危ないんだからね」

 

みほが、その男性の事を琥珀と呼び、お礼を言いながら財布を受け取ると、女性2人もそう声を掛けて来る。

 

「うん、心配掛けてゴメンね。瑪瑙さん、瑠璃ちゃん」

 

その女性2人を、其々瑪瑙と瑠璃と呼ぶみほ。

 

(琥珀、瑪瑙、瑠璃………やはり)

 

それを聞いていた弘樹の中で、ある考えが確信に至る。

 

と、その時!!

 

「弘樹いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

地獄の底から響かせて来るかの様な恨みの籠った声と共に、戦闘服姿で、丑ノ刻参りの様に赤く『呪』と刻まれた鉢巻に、火の付いた蝋燭を2本差した了平が、着剣している三八式歩兵銃を握って現れた。

 

「了平?」

 

突如珍妙な恰好をして現れた了平に、弘樹は首を傾げる。

 

「ふ、舩坂さん! 逃げて下さいっ!!」

 

そこで、そんな了平の背後から、慌てた様子の楓が現れ、弘樹に向かってそう叫ぶ。

 

「リア充死すべし! 慈悲は無いっ!!」

 

その瞬間、了平は血走った目を見開いてそう叫び、着剣している三八式歩兵銃を構えて弘樹に突っ込んで行った。

 

「!!」

 

迎え撃とうとする弘樹だったが………

 

「ちょいと邪魔するぜ」

 

それよりも早く、堅固と呼ばれた男性が間に割って入った。

 

「邪魔だぁっ! 退けぇっ!!」

 

堅固と呼ばれた男性に構わず、了平は突撃する。

 

だが、その次の瞬間!!

 

「むんっ!!」

 

「!? ぐええっ!?」

 

堅固と呼ばれた男性は、一瞬にして了平を組み伏せた!

 

(! 速い! しかも了平が怪我をしない様に配慮までしている………)

 

了平を組み伏せたその手際に、内心で軽く驚く弘樹。

 

「どうもすみません! ホラ、了平!」

 

「チキショーッ! モテる男は皆敵だぁーっ!!」

 

その後やって来た楓が了平を引き摺って退散し、了平は最後まで個人的な恨みの言葉を叫んでいたのだった。

 

「ふふふ、元気が良いな」

 

「分隊員がご迷惑をお掛けしました。謝罪致します」

 

そんな了平の姿を見てそう言う堅固と呼ばれた男性に、弘樹が謝罪する。

 

「おう、何だ? お前のとこの分隊員か? ハハハ、気にすんな。アレぐらいの気迫が無きゃ、歩兵道なんてやれねえよ」

 

「『ダイヤモンドの堅固』にそう言って貰えるとは、光栄です」

 

堅固と呼ばれた男性にそう言う弘樹。

 

 

 

 

 

彼の名は『金剛崎 堅固(こんごうざき けんご)』

 

『鉱関高等学園』の機甲部隊の歩兵総隊長である。

 

鉱関高等学園は、日本をモチーフとした学園艦であり、鉄の如き学園をモットーとしている。

 

鉄と言うのは硬いと言う意味だが、鉄の様に硬い心とも言われており、生徒全員が不屈の心を携えている。

 

この学園艦は男女共学高等学校であり、お互い硬い心を敬い重んじている。

 

本島に降り立った際には、鉱山にて地学の授業と共に、採掘などをしている。

 

歩兵道歴や戦車道歴は古く、創立から大会に参加しており、ベテランから教えられたテクニックを駆使しながら勝ち進み、優勝した事もある。

 

戦車の数こそ少ないのにも関わらず、歩兵道の兵士達が見事な連携でサポートしている為、戦車達が無事なまま勝った事と言う記録も有る。

 

そんな学校の機甲部隊で歩兵総隊長を務める堅固も、小学生の頃より歩兵道を求道しているベテランである。

 

 

 

 

 

「何だ、知ってたのか。流石は英霊の子孫だな」

 

「堅固、大丈夫だったか?」

 

「まあ、心配はしてなかったけどね」

 

「堅固さんが負ける姿なんて想像出来ませんしね」

 

堅固が弘樹にそう返していると、鉱関機甲部隊・歩兵部隊副隊長の『榊 琥珀(さかき こはく)』

 

戦車部隊総隊長である『鬼瓦 瑪瑙(おにがわら めのう)』

 

隊長車通信手である『龍宮 瑠璃(たつみや るり)』がそう言いながら、みほと共に傍に寄って来る。

 

「綿貫くん………一体如何したんだろう?」

 

「さあな」

 

狂気さえ感じさせる様子で弘樹へと襲い掛かろうとしていた了平の姿を思い出し、みほと弘樹はそう言い合う。

 

2人とも、何故了平があんな行動に走ったのかはまるで分かっていない様である。

 

「それにしても、西住くん。鉱関機甲部隊の隊長達と知り合いだったのかい?」

 

「あ、うん。黒森峰に居た頃、練習試合をした事が有ったんだけど、その時に知り合ったんだ」

 

「西住くんが黒森峰から去ったと聞いて残念に思ってたんだが………まさか20年ぶりに大会出場して来た大洗の総隊長になってるとは、驚いたぞ」

 

そこで弘樹が、堅固達の事を尋ねると、みほがそう答え、堅固も口を挟んで来る。

 

「練習試合は黒森峰が勝ったんだけど、かなりギリギリの勝利だったんだ。鉱関機甲部隊の戦術や戦略、歩兵1人1人の実力に圧倒されちゃって………」

 

(あの黒森峰がギリギリの勝利か………やはり侮れん)

 

みほがそう言うと、弘樹は感心しつつも、鉱関機甲部隊への警戒を強くする。

 

「あんな事があった後だったからな。てっきり戦車乗りを止めちまったんじゃないかと思ってたが………良くまた戦車に乗ったな」

 

「色々ありまして………でも、今はこの大洗で頑張ろうって決めたんです」

 

「そうか。偉いぞ」

 

そう言うと堅固は、みほの頭を撫でる。

 

「ふわ~~」

 

撫でられて嬉しそうにはにかむみほ。

 

(まるで兄と妹と言った感じだな………)

 

弘樹はその光景をそう感じ取り、内心でそう思う。

 

「ところで………あちらの方達は西住ちゃん達の知り合いかい?」

 

とそこで、琥珀が港の一角を指差してそう言う。

 

その指差した先には、飛び出したままボーッとしていた沙織達の姿が在った。

 

「!? 沙織さん!? 華さん!? 優花里さん!?」

 

「地市? 飛彗に白狼も? 何をやってるんだ?」

 

沙織達や地市達の存在に気付いたみほと弘樹がそう声を挙げる。

 

「!? ヤッバッ!!」

 

「逃げろーっ!!」

 

「まあまあ!」

 

「結局こうなるんですか………」

 

「西住殿ーっ! 申し訳ありませんーっ!!」

 

「やれやれ………」

 

沙織達と地市達は、多種多様な反応を見せ、その場から逃げる様に去って行った。

 

「如何して沙織さん達が………」

 

(まさか今日1日中付けられていたのか? 気づけないとは………何たる不覚だ)

 

沙織達が居た理由が分からずに居るみほと、尾けられていた事に気づけなかった事を悔やむ弘樹。

 

「ねえ、みほちゃん。コレ見て」

 

とそこで、瑪瑙がそう言って1枚の紙をみほに見せる。

 

それは、戦車道・歩兵道全国大会の対戦表だった。

 

「明日、私達は試合なんだけど、その次の日は大洗でしょ?」

 

「私達が勝って、大洗が勝てば、鉱関機甲部隊VS大洗機甲部隊のカードが実現するよ」

 

瑪瑙の言葉に、瑠璃がそう乗って来る。

 

「堅固さんや瑪瑙さん達と試合に!?」

 

「むう………」

 

みほは嬉しそうな声を挙げるが、弘樹は表情を強張らせる。

 

何せ強豪中の強豪との試合となるかも知れないのである。

 

弘樹にしてみれば緊張感の走る内容だった。

 

「で、でも、その為には次の試合に勝たないといけないし………」

 

「何言ってるんだ、西住くん。君の機甲部隊は十分強いさ」

 

若干自信無さげなみほに、琥珀がそう言う。

 

「俺達は明日の試合を勝ち抜く。だから西住ちゃん。お前も勝ち抜いて来い。全国の舞台で戦おうぜ」

 

「堅固さん………ハ、ハイ! 頑張りますっ!!」

 

続いて堅固にそう言われると、みほはやや上擦った様子でそう返事を返す。

 

「良い返事だ、うん………」

 

堅固はそれを聞くと、今度は弘樹の傍へと寄る。

 

「………この娘の事を………宜しく頼むぜ」

 

「…………」

 

みほに聞こえない様に堅固はそう言い、弘樹は無言のまま堅固を見返す。

 

「フッ………じゃあな。大洗機甲部隊との戦いを楽しみにしてるぜ」

 

それを肯定と見た堅固は、そう言い残し、琥珀、瑪瑙、瑠璃と共に去って行った。

 

「堅固さ~ん! また会いましょう~っ!!」

 

そんな堅固達の姿が見えなくなるまで手を振って見送るみほ。

 

「………鉱関学園とも試合の可能性が有るか………中々に我々の前途は多難だな」

 

「そんなに気にする事無いよ。もし負けても、それはそれで良い思い出になると思うし」

 

堅固の姿が見えなくなった後、弘樹がそう言うが、みほは笑顔でそう返す。

 

(小官もそう思うさ………廃校の件さえなければな)

 

しかし、迫信から大洗女子学園廃校の件を聞かされている弘樹は、内心でそう思いやるのだった。

 

「(まあ、今その事を気にしても仕方が無い。先ずは次の試合を勝つ事を考えねばな………)それにしても、西住くん。金剛崎歩兵総隊長と話している時、随分と嬉しそうだったな」

 

だが、すぐに頭を切り替えようと、話の話題も変える。

 

「うん、堅固さん達は私のとっては、憧れの人だし、何て言うか………心の師匠って、感じかな?」

 

「心の師匠か………なればこそ、無様な試合は見せられないな」

 

「うん、次の試合も勝って………堅固さん達と戦おう!」

 

みほはそう言って決意を固めた様な表情を見せる。

 

「………了解しました、西住総隊長」

 

そんなみほに向かって、弘樹は姿勢を正し、いつもの様にヤマト式敬礼をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

前回のラストに登場したアルペジオのイオナと群像。
この世界に存在する『軍艦道』という武道の求道者です。
乗艦は………言うまでもないですよね。

そして、デートを終えた弘樹とみほは、帰りにベテランの機甲部隊が存在する鉱関高等学園の機甲部隊隊長陣に出会う。
その人達はみほにとって心の師匠と呼びべき人々だった。
全国大会の場で戦おうと約束するが………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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