ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第43話『新分隊、結成です!(中編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第43話『新分隊、結成です!(中編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に、サンショウウオさんチームのクロムウェル巡航戦車と、ルノーB1bisのレストアが完了。

 

ルノーの乗員には、園 みどり子が率いる風紀委員メンバーで構成された『カモさんチーム』が編制される。

 

そしてそれに合わせ………

 

歩兵部隊も増員を行う事となり、弘樹を始めとした部隊員達は………

 

新たな歩兵のスカウトに走る。

 

弘樹達は早くも………

 

転校生の『文月 弦一朗』

 

元剣道部主将の『絃賀 月人』

 

先祖代々傭兵の家系である留学生『ルダ・シャッコー』のスカウトに成功する。

 

その後もスカウトを続け、何人かの勧誘に成功したところで、一度様子を見に、生徒会室へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗国際男子校・生徒会室………

 

部屋の前では、歩兵道への勧誘を受けた生徒、追加募集に自ら志願して来た生徒達が列を作り、入隊の手続きを行っている。

 

「ハイ、此方です。この書類に必要事項を書き込んで下さいね」

 

「列を乱すなよ~」

 

入隊手続きの書類を配る清十郎と、列を整列させている俊。

 

「大分集まっている様だな………」

 

とそこで、様子を見に来た弘樹達一同が現れる。

 

「この分なら、目標数の補充は出来そうですね」

 

「うむ………」

 

楓の言葉に、弘樹が頷くと………

 

「ヘーイ! ユーがサージェント・舩坂のディセンダントですぁー!!」

 

「な、何だぁ!?」

 

「?」

 

突如聞こえて来た怪しげな英語と日本語が入り混じり、独特のイントネーションの声に、地市が戸惑いを露わにし、弘樹も思わず首を傾げながら声が聞こえて来た方向を見やる。

 

「ヘーイ! ミーをお探しですかー?」

 

そこには、カウボーイハットを被り、ポンチョを来た外人の姿が在った。

 

「君は?」

 

「HAHAHA! マイネームイズ『ジャクソン・ダート』! アッメェリカから来まーした!」

 

弘樹がそう尋ねると、外人………『ジャクソン・ダート』は再びインチキ外人口調でそう言い放つ。

 

「………コイツ、ホントにアメリカ人か?」

 

その怪しげな喋り方に、了平すらそう思う。

 

「YES! 生まれも育ちもステイツはテキサスッ! チャッキチャッキのアメリカっ子よぉっ!!」

 

「既に怪しいぞ、オイ………」

 

生粋のアメリカ人だと主張するジャクソンだが、地市は疑いの眼差しを向ける。

 

「チッ、チッ、チッ! スモールなコトは気にすんな! ミーが入隊した暁には、必ず大洗をナンバー1にしてみせるぜ! ミスター舩坂の出番は無いよぉ! それじゃあ、シーユー!」

 

言いたい事だけを言って、ジャクソンは入隊待ちの列へと戻って行った。

 

「嵐の様な人でしたね………」

 

「どんな奴でも構わん。腕さえ立てばな………」

 

「時々お前の冷静さが怖くなるぜ………」

 

楓が呆れ気味にそう呟くと、弘樹はそう言い放ち、地市がそうツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小一時間後………

 

新たに入隊したメンバーの実力を見る為、大洗男子校の歩兵演習場にて、新入隊員の実地テストが行われる事となった。

 

弘樹を始めとした各分隊メンバーも補助に付き、新入隊員達の指導を行っている。

 

 

 

 

 

そんな中………

 

演習場のオートバイ兵用の練習コースにて………

 

「クウッ! 流石はプロレーサー! 速いぜっ!!」

 

「お前も中々やるじゃないか! 弦一朗!!」

 

白狼が乗るバイクに、陸王を操って必死に食らいついている弦一朗。

 

意外にも彼はライダーとしての才能を持っており、それを見抜いた白狼がオートバイ兵に勧誘。

 

弦一郎は、敏郎が『こんなこともあろうかと』用意していた旧日本陸軍も使っていたバイク………『陸王』を受け取り、早速試乗。

 

白狼が教えるテクニックを次々に飲み込み、1日にして食らいつけるまでに成長してみせた。

 

「スゲェーな、アイツ」

 

「初めて乗ったバイクで白狼に食らいつくとは………バケモンやな」

 

そんな白狼と弦一朗の様子を見て、海音と豹詑がそんな事を言い合う。

 

「それにしても………不思議な人ですね、弦一郎さんって。気難しいところが有る白狼といきなりあそこまで仲良くなるなんて」

 

とそこで、バイクに乗って走る白狼と、それに必死に食らいついている弦一朗を見て、飛彗がそんな感想を漏らす。

 

「せやなぁ………何ちゅうか、アイツには自然と引き寄せられる気がするで」

 

「まさに、天性の友達作りの達人だな」

 

豹詑と海音もそう言い、飛彗の言葉に同意する。

 

「よおし! もっとスピード上げてくぜぇっ!! 付いて来おいっ!!」

 

「負けねえぜぇ! うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

そこで2人は更にスピードを上げ、演習場を走り回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、演習場の別の一角では………

 

「HEY! GO!!」

 

怪しげな英語と共に、ブローニングM1918自動小銃、通称BARを薙ぎ払う様に乱射するジャクソン。

 

「うおわっ!?」

 

「アブネッ!?」

 

「HAHAHA! まだまだ行きますよーっ!!」

 

相手をしていた大洗歩兵部隊の部隊員達の足元に次々と弾丸が着弾して慌てると、ジャクソンは気を良くした様に更にBARを乱射する。

 

「この野郎! 調子に乗るなっ!!」

 

とそこで、1人の歩兵がジャクソンに向かって手榴弾を投げつける。

 

「Oh!?」

 

すぐ近くに落ちた手榴弾が爆発し、ジャクソンは土片を浴びる。

 

しかし………

 

「それがユーのマキシマムですかぁ?」

 

ジャクソンは平気そうな様子で、手榴弾を投げた歩兵にそう言い放つ。

 

「野郎っ!」

 

今度は別の歩兵が小銃を連射。

 

しかし、狙いが甘かったのか、弾は全て外れる。

 

「ヘイ! ユーアー・ヘ・タ・ク・ソ! アンダスタン!?」

 

するとジャクソンは、今度はその歩兵に向かってそう言い放つ。

 

「オイ! 何かアイツ腹立つぞっ!!」

 

「クソッ! 撃て撃てぇっ!!」

 

そんなジャクソンのインチキ外人喋りにイラッと来た歩兵達は、集中攻撃を浴びせる。

 

「HAHAHAHAHA! ノォォォォォォ・プロォブレェムだッ!!」

 

ジャクソンは相変わらずイラッとするインチキ外人語を喋りながら、奮戦して見せる。

 

「アメリカが誤解されマース………」

 

そして、そんなジャクソンの姿を見て、アメリカとアメリカ人が誤解されると苦悩するジェームズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の一角にて………

 

「ハハハハハ! 我が世の春が来たぁっ!!」

 

雄叫びを挙げながら、ブローニングM2重機関銃を掃射している月人。

 

「「「「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

12.7mm弾が次々に大洗の歩兵達に戦死判定を下させる。

 

「この重機関銃凄いよぉっ! 流石ジョン・ブローニングの設計ぇっ!!」

 

完全にトリップしている様子で、月人は掃射を続ける。

 

だが、やがて弾が尽き、M2重機関銃は乾いた音を立てる。

 

「むうっ!?」

 

「弾切れだ! 今だ! 突っ込めぇーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間を見逃さずに、一斉に月人に向かって突っ込んで行く大洗の歩兵達。

 

しかし!

 

「舐めるなぁっ! この絃賀 月人! 伊達に鍛錬を繰り返していたわけではないッ!!」

 

月人はそう言い放つと、腰に下げていた軍刀を抜き放ち、逆に突撃して来ていた大洗の歩兵達に突っ込んだ!

 

「なっ!?」

 

「逆に突っ込んで来やがったっ!?」

 

「嘘だろぉっ!?」

 

「きえあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

戸惑う大洗の歩兵達に構わず、軍刀を振るう月人!

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

その一太刀を浴びた大洗の歩兵が倒れ、戦死判定を受ける。

 

「神の世界への引導を渡してくれるぅっ!!」

 

月人はそのまま、大洗の歩兵達の射線が重なる様に立ち回り、射撃させない様にして次々に斬り捨てて行く。

 

「に、西住総隊長ぉっ!!」

 

と、その光景に1人の歩兵が、今が歩兵だけの演習中にも関わらず、思わずみほの名を挙げてしまう。

 

「戦場でなァ! 恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはなぁ! 瀕死の兵隊が甘ったれていうセリフなんだよっ!!」

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

そして即座に、月人によって斬り捨てられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた、別の一角では………

 

「撃てぇっ!!」

 

1人の歩兵の掛け声で、一斉に軽機関銃や短機関銃、小銃を発砲する大洗歩兵部隊。

 

「…………」

 

それを、左腕に装着した戦車用装甲板を盾の様に使って弾くシャッコー。

 

「仕掛ける」

 

そして反撃とばかりに、右手で腰に抱える様に携えていたブローニングM1917A1重機関銃を、大洗歩兵部隊に向かって発砲する。

 

「「「「「「「「「「うおわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

毎分600発の連射力で放たれる7.62mm弾が、大洗歩兵部隊を薙ぎ払う。

 

「クソッ! コレでも喰らえっ!!」

 

そこで、三八式歩兵銃に装着していた二式擲弾器から、30mm対戦車擲弾をシャッコー目掛けて放つ。

 

「!………」

 

だがシャッコーは、飛んで来た擲弾に対し、左腕の装甲板を斜めに構え、傾斜装甲の原理で弾いた!

 

擲弾はあらぬ方向へ飛び、爆発する。

 

「なっ!?」

 

「ふんっ!!」

 

擲弾を放った歩兵が驚いていると、シャッコーはその巨体から想像し難いスピードでその歩兵に接近し、そのまま殴りつけた!

 

「がはっ!?」

 

まるで自動車にぶつかられた様な衝撃が歩兵を襲い、そのまま地面に倒れると気を失う。

 

「正に熊だぜ、オイ!」

 

「しかも片腕に戦車用の装甲板を引っ付けてる上に、重機関銃を片手で持ってるんだろ!? どんな怪力だよ!?」

 

「…………」

 

悲鳴の様な声を挙げる大洗歩兵部隊を前にシャッコーは装甲板とブローニングM1917A1重機関銃を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新入隊員達は差は有れど、其々に目覚ましい活躍を見せている。

 

そんな中………

 

少し変わった光景が広がっているところもあった。

 

それは………

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

四四式騎銃を両手で抱える様に持った1人の歩兵が、叫びと共に砲弾の着弾による爆発の中を駆け抜けている。

 

と、1発の砲弾がその歩兵のすぐ後ろに着弾!

 

「おうわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

その爆風に煽られ、派手に吹き飛ぶ歩兵。

 

そのままツイスト回転を決めながら、派手に地面に倒れて転がる。

 

「………如何だったっ!?」

 

しかし、すぐに起き上がるとある方向を見てそんな事を言う。

 

「バッチリです、部長! 良い画が撮れてますよ!!」

 

その方向には、カメラや照明、集音マイクと言った、映画を撮影するのに必要な機材を扱っている大洗男子校の生徒達が居た。

 

彼等は大洗男子校の映画研究部の部員達である。

 

そして、今彼等が撮影していた歩兵こそ、映画研究部の部長『鎧 鋼賀(よろい こうが)』である。

 

彼は映画研究部の部長として、自らの指揮監督の元、数々の自主製作映画を撮影している。

 

そのどれもが名作と評されており、特にアクション映画では自ら主演俳優を務め、ハリウッドも顔負けの危険なアクションを披露している。

 

『役者が命を懸けてこそ素晴らしい映像が撮れる』と言う事を信条としており、コレまでも撮影の為に『学園艦の甲板から海に飛び込む』、『トラックに撥ねられる』、『階段から回転しながら落下する』、『飛んでいるヘリコプターに命綱無しでしがみ付く』など非常に命知らずな行為を行っている。

 

しかし、負傷が絶えない身にも関わらず、1度も映画を落とした事は無い。

 

そんな姿から『大洗男子校の活劇王』と呼ばれている。

 

何故そんな彼が歩兵道に参加し、それを部員達が撮影しているのかと言うと………

 

実は彼は最近、自分の取るアクション映画に煮詰まりを感じていたのである。

 

常に挑戦する姿勢を忘れない彼は、今までにない新しい映画を撮ろうと試行錯誤していた。

 

そんなある日、TVで偶然戦車道・歩兵道の試合の様子を垣間見る。

 

それを見た彼はインスピレーションを感じ、コレを次の映画の素材にしようと考えたのである。

 

迫信も、広報として使えると判断し、撮影を許可。

 

現在に至ると言うワケである。

 

「どれどれ………」

 

撮影した映像をチェックする鋼賀。

 

「如何です? 良い画、撮れてるでしょう?」

 

「う~ん………」

 

カメラ担当の部員がそう言うが、鋼賀は何処か納得が行って居ない様子を見せる。

 

「駄目ですか?」

 

「もっと迫力が欲しいな………! そうだ! 対戦車地雷を踏んでブッ飛ばされるってのは面白いかもしれないぞ!」

 

「「「「「止めて下さいぃっ!!」」」」」」

 

平然として文字通り自ら地雷に突っ込んで行こうとする鋼賀を、部員達は必死で止めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニューフェイス達は中々に優秀な様だね」

 

「ええ、期待以上の能力です」

 

そんな新メンバー達の演習風景を見ながら、迫信と傍らに居た弘樹がそう言い合う。

 

「しかし、私としてはもう少し腕利きのメンバーが欲しいところだね」

 

「小官もそう思います」

 

だが、まだまだ戦力補強が必要だと言い合う2人。

 

「もう少しスカウトを続ける必要がありそうだね」

 

「出来うる限り、人数を集めます」

 

「頼んだよ」

 

「ハッ!」

 

そこで弘樹は、迫信に向かってヤマト式敬礼をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

そんな演習場にて早速訓練に励んでいる新入隊員達の姿を眺めている生徒が1人居た。

 

「凄いなぁ………やっぱり歩兵道をやってる人は皆勇敢なんだな」

 

感激した様子で、演習を行っている大洗歩兵部隊の面々を見続けている生徒。

 

「俺も参加出来たらなぁ………でも………無理だよなぁ………」

 

そう言うと、生徒は表情に影を落とす。

 

「! あ! イケナイ! スーパーのタイムセールが始まっちゃう! 今日は魚が安いんだ! 急がないとっ!!」

 

とそこで、携帯で時間を確認してそう声を挙げ、慌ててスーパーマーケットへと向かうのだった。

 

「…………」

 

そして、そんな生徒の姿を、校舎の影から見ていた別の生徒が居た………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

大洗女子学園の方でも、新チームであるカモさんチームとサンショウウオさんチームの戦車への試乗が開始されている。

 

みどり子率いる風紀委員のカモさんチームは、指導する麻子と喧騒を展開しながらも、着実に戦車道の基礎を覚えていった。

 

一方、サンショウウオさんチームは………

 

早くも問題にぶつかっていた………

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫前のグラウンド………

 

「「「「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

車長の聖子、通信手の伊代、装填手の明菜、砲手の優、操縦手の満里奈の悲鳴が響く中、クロムウェル巡航戦車が物凄いスピードで走っている。

 

やがてその正面に、グラウンドの仕切りであるフェンスが立ちはだかる。

 

「ぶ、ぶつかるぅっ!!」

 

「満里奈ちゃん! ブレーキ! ブレーキィッ!!」

 

「どれがブレーキだっけぇっ!?」

 

伊代が叫びを挙げ、聖子が慌てて指示を出すが、満里奈はブレーキが分からない。

 

そしてそのまま、クロムウェル巡航戦車はフェンスへ激突!

 

悉くフェンスを薙ぎ倒し、踏み潰し………

 

やがてグチャグチャになったフェンスの上で静止した。

 

「ああ! 皆ぁっ!?」

 

『サンショウウオさんチーム! 大丈夫ですか!?』

 

見学をしていた静香が悲鳴を挙げ、練習の様子を見ていたⅣ号のみほからそう通信が飛ぶ。

 

「な、何とかぁ~~」

 

「うっぷ、吐き気が………」

 

「め、目が回る~」

 

「あうう………」

 

「にゃあ~~~」

 

聖子が応答を返すが、優、明菜、伊代、満里奈からはすっかりノビた様子の声が挙がるのだった。

 

 

 

 

 

その後………

 

Ⅳ号がワイヤーでクロムウェルを引っ張ってフェンスの残骸の中から抜け出させ、格納庫の前まで戻した後………

 

サンショウウオさんチームは戦車から下り、メンバーで話し合っている。

 

他の戦車チームのメンバーも集合している。

 

「如何しよう~………」

 

「まさか戦車の操縦がココまで難しいとは………」

 

「コレじゃ試合に出るどころじゃあ………」

 

沈んだ様子でそう漏らす聖子、優、伊代。

 

コレまで、戦車長、砲手、装填手、通信手、操縦手の役割を交代しながら練習していたサンショウウオさんチーム。

 

全員が各役割にある程度の適性を見せ、中にははまり役とまで言えるほど才能を発揮した者も居た。

 

しかし………

 

操縦手の適性だけが、メンバー全員から見出せなかったのである。

 

辛うじて、静香が僅かに適性を見せたが、他のメンバーは今しがた事故を起こした満里奈とどっこいどっこいの腕である。

 

静香の腕も、とてもではないがまだ実戦では通用しない。

 

やはり、素人がいきなり第2次世界大戦中最速の戦車を乗り熟すのは無理があった様だ。

 

「如何します? 一応、スピードを落とすデチューンを出来ますけど………」

 

クロムウェルの損傷を調べていた自動車部メンバーの中で、ナカジマがそう意見する。

 

「でも………出来れば速度はそのままにして欲しいです。今後の作戦にも影響しますから」

 

しかし、みほはその意見に難色を示す。

 

「ああ~~~~っ! 如何すれば良いの~~~~~っ!!」

 

思わず天を仰ぎながら大声を挙げる聖子。

 

とそこで………

 

「あ、あの………」

 

「ふえっ?」

 

「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」

 

誰かに声を掛けられ、聖子を初めとした一同がその声が聞こえて来た方向を見やると、そこには………

 

「えっと、その………」

 

何やら口籠っている、1人の大洗女子学園の生徒が居た。

 

「? 貴方は?」

 

「わ、私は、その………」

 

「! 貴方! 『天地 唯』じゃない!!」

 

その生徒が口籠っていると、みどり子がその生徒を見てそう言い放つ。

 

「『天地 唯』?」

 

「知ってるのか、そど子?」

 

みほが首を傾げ、麻子がみどり子にそう尋ねる。

 

「そど子って呼ばないで! 知ってるも何も有名よ。この大洗女子学園始まって以来の不良生徒としてね………」

 

みどり子はそう答えると、その生徒………『天地 唯』を睨みつける様に見据える。

 

「む、昔の話だよ! 私はもうスケ番は引退したんだっ!!」

 

「スケ番って………まだ居たんだ、そんな人」

 

「大洗男子校にも似た様な奴が居たがな」

 

唯がそう言う傍らで、沙織がそう呟き、麻子が大河の事を思い浮かべながらそう呟く。

 

「ス、スケ番さんだったんですか?」

 

「ええ、そうよ。おまけに実家はその筋の家だったんだから」

 

「そ、その筋って………」

 

「所謂、やの付く自由業ですか!?」

 

梓の言葉にみどり子がそう返すと、優季とあやがそう言い放つ。

 

「最も、1年程前に手入れが有って、彼女の両親を含めた全員が警察に逮捕されたみたいだけどね」

 

「そ、そのヤーさんの娘が何の用だ!? こ、事と次第によっては容赦せんぞぉっ!!」

 

「桃ちゃん! 私を盾にしないでぇっ!!」

 

「落ち着きなって~」

 

みどり子の説明が続く中、桃が唯に向かって、柚子の背中に隠れながらそう言い放ち、盾にされている柚子が悲鳴の様な声を挙げ、杏が相変わらずマイペースな様子でそう言い放つ。

 

「そ、それは………」

 

「ひょっとして………戦車道をやりたいの?」

 

またも唯が口籠っていると、みほが代弁するかの様にそう言った。

 

「お、おうよ! 戦車を動かすって面白そうだからな! それに、相手の連中をボコボコにすんのが気持ち良さそうだしよぉ!!」

 

「貴方! 散々暴力沙汰を起こしておいて!!………」

 

「園先輩、待って!!」

 

そう言い放つ唯に、みどり子の説教が飛ぼうとしたところ、聖子がそれを止める。

 

「…………」

 

そして、何を思ったのか、唯の眼前に立つと、その顔をジッと見つめる。

 

「な、何だよっ!? ガン飛ばしてんのか!? 上等だ、コラァッ!!」

 

ガン飛ばされてると思った唯は、自分も聖子に向かってガンを飛ばす。

 

「せ、聖子ちゃん!」

 

「聖子! 離れなさい!!」

 

「せ、先輩っ!」

 

「あ、危ないですよ~!」

 

「にゃああ~~~っ!?」

 

伊代、優、明菜、静香、満里奈から悲鳴の様な声が挙がる。

 

「…………」

 

しかし、聖子は唯のガン飛ばしを物ともせず、只ジッと唯の顔を見据えていた。

 

(な、何なんだよ、コイツッ!? 私のガン飛ばしにちっとも怯んでないだと!?)

 

唯は、全く怯んだ様子を見せない聖子に、内心で驚愕する。

 

「………やっぱりだ」

 

やがて、唯の顔を見ていた聖子がそう呟いた。

 

「な、何だよっ!?」

 

「貴方、2回戦の後でのライブを見に来てくれてたよね!」

 

「!?!?」

 

聖子がそう言い放つと、唯は動揺を露わにする。

 

「サンショウウオさんチームのライブに?」

 

「ち、ちげぇーよ! 人違いだっ!!」

 

「ううん、間違いないよ! すっごくキラキラした目で見ててくれたから、よく覚えてるよ!」

 

「だからちげぇーって!」

 

間違いないと言う聖子を頑なに否定する唯。

 

「あの………ひょっとして………スクールアイドルをやりたいから戦車道を?」

 

するとそこで、静香がそんな台詞を言い放つ。

 

「!? ば、馬鹿言うな! 誰がそんなモンに興味あっか! ねーよ! 全然ねーよ!!」

 

((((((((((分かり易い人だなぁ………))))))))))

 

ムキになって否定する姿が逆に肯定を表しており、大洗戦車チームの一同は心の中でそう思う。

 

「スクールアイドル? 貴方が?」

 

と、唯の過去を知るみどり子が、懐疑的な視線を向ける。

 

「ぐうっ!………ああ! そうだよ! 私はスクールアイドルをやりたくて戦車道をやるんだよっ!!」

 

遂に唯は観念したのか、或いは開き直ったかの様にそう言い放つ。

 

「そりゃ、私はワルだったよ………悪い事は何でもやった。御世辞にも真面目な生徒だったなんて言えねぇよ………けどよ、親父や組の連中が逮捕されて、舎弟達も皆居なくなって………どうしようもなく虚しくなったんだよ………けど、今更変われるとも思ってなかったんだよ」

 

そのまま聖子達に向かって語り出す唯。

 

「けど! アンタ等のライブを見て! すっごく輝いてて綺麗で! 私もあんな風になりたいって思ったんだ!! だから………頼む! 私もチームに入れてくれ!!」

 

そう言って唯は深々と頭を下げた。

 

「貴方、幾ら何でも………」

 

それは流石にと思ったのか、優が断ろうとしたが………

 

「うん! 良いよっ!!」

 

「「「「「!? えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

当の聖子がアッサリと了承し、サンショウウオさんチームのメンバーは仰天の声を挙げた。

 

「い、良いのかよ!? そんなアッサリ決めて!?」

 

唯もアッサリと了承された事に戸惑いを隠せない。

 

すると聖子は、そんな唯に向かって右手を差し出す。

 

「!?………」

 

「自分を変えたい………自分も輝きたい………それは戦車道を、スクールアイドルをやるのに十分な理由だと思うよ」

 

「郷 聖子………」

 

「私は貴方の過去の事は知らない………けど! 今此処に居る貴方の気持ちは本物だと思うから!! 西住総隊長! 良いですよね!?」

 

そこで聖子はみほの方を振り返り、そう尋ねる。

 

「郷さん………」

 

そんな聖子の純粋な瞳に、みほは一瞬見入る。

 

「………分かりました。入隊を許可します」

 

「!? 西住さん!? 貴方!………」

 

「総隊長がそう言うんじゃしかたないね~」

 

「会長まで!?」

 

唯の入隊を許可したみほに、みどり子が驚きの声を挙げるが、続いて杏もそう言い放った為、何も言えなくなる。

 

「やったね! コレからよろしくお願いします! 天地先輩!!」

 

「………唯で良いぜ。聖子」

 

それを受けて、聖子が唯に笑顔を向けながらそう言うと、唯も笑顔を浮かべ、差し出されていた聖子の手を握ったのだった。

 

「全く、聖子は………」

 

「聖子ちゃんらしいね」

 

「先輩………カッコイイ」

 

「素敵です~」

 

「にゃあ~」

 

優、伊代、明菜、静香、満里奈は、そんな2人の姿に呆れると共に、感動を覚えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

新分隊結成に向けて、まだまだ新メンバーを集めています。

今回登場した新キャラは、それぞれゲッターロボに出て来たアメリカロボのパイロットと、アジアの活劇王です。

そして、サンショウウオさんチームにも新メンバーが加入。
彼女は諸事情で暫く戦車道の方専門で活躍してもらいますが、時が来たらスクールアイドルとしてもデビューさせます。

今回チラリと出ましたが、まだまだ新メンバーが登場する予定です。
お見逃しなく。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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